綱手の兄貴は転生者   作:ポルポル

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活動報告で執筆する最中に聞きまくってた曲を紹介しています。興味があれば聞いてみてください。


辿り着いた未来

 木の葉隠れの里の、九尾事件で命を散らした者たちの亡骸が集められた広場に、多くの人々が集まっている。それは里に暮らすものの忍者ではなく、決戦に参加できない非戦闘員たちや、また、直前まで畳間にチャクラを譲渡して疲弊している下忍や中忍たちだった。彼らは九尾襲撃によって命を落とした伴侶や親兄弟、あるいは子供や友の亡骸に寄り添いながら、始まった決戦の終わりを―――送り出した里の勇士たちの帰りを、祈りとともに待ち望んでいた。

 

「なんだ……あれ……?」

 

 そのとき、顔の中心を横切る一文字傷を持つ少年が、異変に気付き、空を見上げた。その声に反応し、周囲の人々もまた、空を見上げる。

 同時刻、里の思い思いの場所で、あるいは最期となるやもしれぬ時間を過ごしていた者達もまた、異変に気付き空を見上げた。家屋内にいて気づかなかった者達は、気づいた者たちに慌てて外へと連れられ、同じように空を見上げ、呆然と固まった。

 

「おお……おお……!」

 

 空を見上げていた老婆が突如、その皺くちゃの顔をさらにくしゃくしゃに歪め、祈るように両手を合わせ、涙を流して膝をついた。老婆の様子を見て、近くにいた女性が心配そうに駆け寄り肩に手を添え”あれ”を知っているのか尋ねるが、老婆は嗚咽し応えられず、ただただ、感涙にむせいた。

 そのような反応を示したのは、その老婆だけではなかった。老人たちは皆一様に膝をつき、おしなべて祈るように両手を合わせ、そして涙を流す。

 

「おお……柱間様……! 柱間様……!! 我らを、救いに来てくださったのか……」

 

 皆が一様に吸い寄せられるように見上げた先に―――火影岩すら小さく見える、あまりにも大きな仏像が、木の葉を守るように聳え立っている。

 里の周囲にそびえたつ金剛の壁。その壁の丈すらも越えて、天まで届くほどの巨体。背中に背負うのは―――木の葉の家族を守る、千の手。

 

「お兄様……」

 

 空を見上げた綱手の目じりから、一筋の涙が零れ落ちる。

 

 綱手以上に慕っていた祖父を、己のために失い涙を流した幼年期。

 不器用な尊敬と信愛を向けていた師を失い、苦しみとともに道を迷った少年期。

 両親を、弟を、幼馴染を失い―――兄自身もまた落胆とともに虐げられた青年期。

 

 綱手は、綱手こそが、千手畳間という一人の忍びを、一番近くで見つめて来た人間だった。

 千手一族の後継者として、偉大な火影の直系として、そして家族の長男として、兄が、千手畳間という一人の男が、どれほどの重荷を背負い、その半生を歩んできたのか―――。ずっとその影で守られていた綱手には、その苦しみも辛さも、推し量ることは出来ない。

 それでも―――兄が傷つき打ちひしがれる姿を見て来た。聞く者の胸を刺す、その慟哭を聞いて来た。

 

 千手一族の直系にして長男でありながら、偉大な祖父にあまりに劣ると―――言葉の槍で串刺しにされた、その背中を見続けた。

 きっと見限ることも出来たはずだ。すべてを棄て、自由に生きる道もあったはずだ。それでも、兄は歩み続けて来た。

 

『仲間を守る千の手になる』

 

 己の見据えた道を、少しだけ照れ臭そうに語った、いつかの少年の顔を綱手は思い出す。

 

 家族を越えて、一族を越えて、木の葉に暮らすすべての者の想いが、願いが―――今、その背中に注がれている。

 

 ―――皆はオレを信じ、オレは皆を信じる。それが―――。

 

 かつて『里の問題児』と呼ばれたあの日の少年は今―――長き旅の果てに、里を背負う影となった。

 

 静かに涙を流し、万感の思いを込めて空を見上げる綱手の肩を、自来也は優しく抱いた。

 

 

 

 

 決死の戦場から一変。

 木の葉の広場へと一瞬で移動した者達もまた、戦いの疲労も痛みも忘れ、皆視線を吸い寄せられるように空を見上げていた。フガクも、ヒアシもヒザシも、シカクもチョウザも、カカシもガイも―――誰も、言葉を発さなかった。呆然と力なく口を開き、ただ黙してそれを見上げた。

 

 そのあまりにも雄大な姿に、忍びたちは神の姿を幻視する。

 

 ―――仙法木遁・真数千手。

 

 真数千手の頭の上に立ち、中腰に両掌を合わせる畳間が、落ち着いた眼で地上を見下ろしている。その顔には柱間と同じ隈取が浮かび上がっていた。

 オオノキが塵遁によって消し飛ばした真数千手の胴体は、すでに塞がれている。その巨体からすれば、一部の消滅など、微々たるものでしかない。

 オオノキが、エーが、ビーが、四代目風影が、三代目水影が、呆然と空を見上げた。しかしその心中は、木の葉の忍びたちが抱くものとは、まったくの真逆。絶望すら通り越した虚無が、その心の中を染めていた。

 

「あ……。あ……」

 

 オオノキの体が震える。

 武者震い、ではない。それは、恐怖だった。あまりにも巨大な、身を裂くような恐怖だった。

 かつてまだ青年だったオオノキは、同盟のために木の葉に訪れた際に、師である二代目土影とともにうちはマダラの襲撃を受け、手も足も出ず完敗し、恐怖によってその心をへし折られたという過去を持つ。マダラの須佐能乎を前に心折られた者が、それを遥かに超える真数千手を前に、己を保てるはずがない。

 マダラが柱間との戦いを経て命を落とし、間もなく柱間が世を去って以後、オオノキに宿った恐怖は報復を望む怒りにも似た感情に変わりその心の内で燻り続け―――三代目土影となって以後、砂より連合の打診を受けたことで、その感情は木の葉包囲網に加わる決定打となった。柱間も扉間も世を去った今、肥沃な土地を保有する木の葉は、岩場が多く土地が痩せている土の国からすれば、確かに垂涎で格好の得物だったということもある。奪わない理由も、奪えない理由も、既に無い。

 だからだろうか。二代目土影・無は、オオノキの選択に対し、賛成も反対も表明せず、オオノキの決定に従った。それは火の国の領土を奪うことが土の国と岩隠れの里に大きく利益を齎すものであったが故のものかもしれない。あるいはオオノキに跡目は任せたという信頼であったのかもしれないし、マダラが去り、初代・二代目火影の逝去した木の葉になら勝てるという確信があったが故のものだったのかもしれない。 

 その理由は今となっては分からないが―――今、オオノキは先代・無にもっと相談をすればよかったと、心の底から後悔した。

 

「なんだあれは……。 なんだ、あれは!!」

 

 四代目雷影が、信じられないものを見て、訳が分からず怒鳴り散らした。木の葉陥落は目前で、あとは千手畳間を討ち取るだけだったはずだ。だというのに、今、目の前にあるこの化け物は何なのだと、雷影は声を荒げた。

 幻術か?

 そう考え、幻術返しをするが、目の前の”それ”が消えることはなかった。

 

「あれは……初代火影の奥の手だ」

 

 友となった人柱力の器・ビーを守るため、己が意思で八尾が尾獣化し顕現する。しかしその諦念を帯びた声音は、八尾が、九尾に次ぐ尾獣だという事実を忘れさせるほど、力ないものだった。

 

「てめェら、悪いことは言わねェ。勝ち負けなんて考えは捨てろ。生き残ることだけ、考えな」

 

 直後、数十の手が振りかぶられ、大地を穿った。数を減らしていた白ゼツの群れは、文字通りその一撃を以て消滅する。

 

「……まさか。動くのか……。あれが……?」

 

 目を見開いた四代目風影が、八尾の言葉を聞き、また目の前で白ゼツが撃滅された光景を見てもなお、信じられないと小さく零す。

 千を数える巨大な手。山をはるかに越える巨体。

 これを人工的に作り出したとして、どれほどの年月が掛かるか想像も出来ない。そもそも、今の世界技術では、これほど巨大なものを創造することなど不可能と言い切れる。

 

 だというのに―――それが、ただ一人の忍びが操る術で? 一瞬のうちに生み出された? しかも生き物のように動き―――自分たちを殲滅する。

 

 信じられるはずがない。受け入れられるはずがない。質量的にも、物量的にも、あれは人間一人の忍術で立ち向かえるものでも、どうこうできるものではない。そしてそんなものを操る忍びが、存在していいはずがない。

 あれの前では、傀儡など子供の玩具に等しく、砂金や砂鉄の波など、砂場程度のものに貶められる。そんなものに、勝てるはずが―――。

 

「勝っていたはずだ!! 我々は、勝っていたはずなんだ!!」

 

 風影の叫びが、虚しく響く。

 各里も戦後疲弊し、冷戦に移り終戦を考え始めたころ、白ゼツとかいう胡散臭い奴らに、必ず勝てると諭された。その宣言通り、事実木の葉の里は尾獣によって壊滅し、里の守りのために前線拠点から”昇り龍”は消え、その勢力は大きく衰退した。しかし木の葉は手強い。再起される前にその芽を叩き潰す必要があったし、それが可能な状況だった。

 今代最速と謳われた四代目火影は九尾によって命を落とし、唯一危険とされた『昇り龍』千手畳間には、四影を以て封じる。うちは一族には倍の数を以て戦いを臨み、木の葉の戦力は自軍の被害を出さずに疲弊させ、弱り切ったところを各里の主要部隊で叩きつくす。木の葉の各一族の秘伝忍術も、この二年の間に口伝や目撃情報を調べ上げ、そのすべてを明らかにしたわけではないものの、その対応策も用意してきた。

 二代目火影が残した卑劣な術『口寄せ・穢土転生』も、封印術による無力化が可能であることはすでに調べがついている。その対策とて十分にしてきた。戦略的に完璧で、負ける要素などなかった。

 うちはだろうが、日向だろうが、千手だろうが、その対策は万全にしてきた。どれほど追い詰められた木の葉の忍びたちが抗おうと、そのすべてを凌駕しつくし、この戦争に打ち勝つ確信があった。

 

「―――絶対に、勝てたはずなのに……っ! ―――こんなもの! こんなもの! どうすれば……どうすれば良い……っ!」

 

「だから、言ってんだろ……」

 

 受け入れられないのも当然だがなと八尾が吐き捨てる。

 かつて柱間に捕らえられた身として、八尾は”あれ”の恐ろしさは身をもって知っている。だからこそ言えるのは、先ほどと同じ言葉しかない。

 

「……来るぞ」

 

 八尾は八本の尾を伸ばし体を丸めて身を隠すと、チャクラで体全体を固め、来たる衝撃に備える。

 

「逃げろ、雲隠れ!!」

 

 雷影が後方へ向かって叫んだ。四代目雷影の幼少期、八尾の暴走は、亡き父・三代目雷影でなければ止めることは出来なかった。そんな存在が、戦うことを放棄した。その衝撃は、四代目雷影に現実を受け入れさせる冷静さを生んだ。

 このままでは為すすべもなく同胞が殺される。それだけは阻止せんと、雷影が声を荒げる。

 

「はやく!!」

 

 雷影が叫ぶ。雷影の、自分たちの長が浮かべる、これまで見たこともない恐怖と焦りで引きつった表情を見て、雲隠れの者が蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。その時間を稼ぐため、四代目雷影はカカシによって奪われ血が流れだす左腕の痛みなど気にしてはいられないと、真数千手へ突貫した。

 

 ―――轟音。

 

 仏像の腕の数本が動き―――躱す隙のない”壁”が、四代目雷影を地面に叩きつけ押しつぶした。呻き声すら聞こえないほどの、まさに一瞬のことであった。

 たった一撃で、四代目雷影は戦闘不能となった。

 

 ブラザー!と、八尾の中でビーが叫ぶ。四代目エーは、ビーにとって本当の兄弟よりも硬い絆で結ばれた仲である。

 

「しょうがねえな……」

 

 八尾はため息を吐くと、尾の一本でエーを回収し、その身の内側に庇うように連れ去った。それでも、九尾に次ぐ力を持つ八尾の守りといえど―――生き残れるとは限らない。

 

「―――頂上化仏」

 

 千の手が、起動する。凄まじい轟音とともに大地を穿つ拳の流星。

 

「―――」

 

 そのとき、オオノキの耳に、息子の声が届き―――。

 

 ―――数分の時も経ず、対木の葉連合軍は壊滅した。

 

 

 

 

「……」

 

 木の葉の里、表門の先―――大地は大きく抉られていた。しかしそれでも、畳間は警戒を解くことはしなかった。視線の先に、わずかだが大地の抉れていない箇所がある。そこには、生き残った木の葉包囲網の忍びたちの姿があった。

 

「塵遁で頂上化仏の直撃を免れたのか……」

 

 真数千手。その初弾、確かにいくつかの腕が塵遁で消滅させられたことは把握していた。だが、塵遁の発動にはタイムラグがあるうえ、いくら範囲を広げても、真数千手すべてを消し飛ばすことは不可能だ。

 オオノキは初撃で撃破の不可能を悟り、ただ仲間と生き残るためだけに、数分間の間、塵遁を発動し続けていたのだろう。ゆえに、少数だが、彼らは生き残った。

 

「これで終わりだ。頂上―――」

 

 再び掌を合わせ、残りの敵を殲滅せんとする畳間の写輪眼に、”その姿”は映った。映ってしまった。

 

 ―――両天秤のオオノキが、土下座をしている。

 

「なにを……」

 

 畳間は困惑する。だが、その意図は分かった。

 命乞いだ。それ以外にない。

 血継淘汰は強力がゆえに大きくチャクラを消費する。千手とうずまきの血を引き、膨大なチャクラを生まれ持つ畳間と比べれば、オオノキは術に恵まれただけの忍びに過ぎない。真数千手の攻撃を防ぎ切り、チャクラを消費しつくしたがゆえの行動だろう。

 

「今更……」

 

 過去を思い返す。畳間はミナトとともに何度も、停戦や休戦、和平の申し出を送っていた。しかしその全てを蹴ったのは奴らだ。もともと同盟を結んでいた木の葉を裏切り、攻め込んできたのは他でもない岩隠れだ。

 

「今更、何を……っ!」

 

 怒りが、畳間の中に生まれる。ごめんなさいで、許されるものではないだろう。

 

 ―――だが、畳間は目を伏せる。

 

 分かっているのだ。自身の取るべき行動は。

 よく見なくとも分かる。今の畳間には、分かってしまう。

 この写輪眼に映る敵は皆、哀れなほど、恐怖に身を震わせていた。

 

 ―――だからどうした。木の葉が受けた痛みはそんなものではない。

 

 ヒルゼン。ダンゾウ。ダイ。ミナト。サクモ。イナ。縄樹。多くの先輩、後輩。両親。多くの人を、続く戦争で失った。アカリを除き、共に少年時代を生きた同期は既に亡く。畳間の前を行く者は、もはや数えるだけとなった。残ったのは、あまりにも辛い、身を裂くような悲哀と憎悪。

 

 ―――だからこそ。

 

 目を閉じれば浮かんでくる今は亡き家族たちの姿。皆が皆、平和を望み、志半ばに世を去った。

 

 ―――だからこそ。

 

 二つの戦争の発端となった、雲隠れとの平和条約の締結の、クーデターによる失敗。あのとき、続く戦争を予見できる者はおらず、遂に結ばれる平和条約と来たる平和を想い、皆が胸を躍らせた。

 精鋭部隊として選出され喜びに震える畳間や、共に和平の場に居合わせることが出来ると喜んだヒルゼンやダンゾウよりも、誰よりも平和条約の実現に喜んでいたのは―――。

 口調は変わらず、纏う雰囲気も変わらず厳格なままだったが、それでも畳間には分かった。兄の意志を継げたことを、平和という夢の実現を―――誰よりも喜んでいたのは、きっとあの人だった。

 だから畳間は、あの人の平和への想いを踏みにじった雲の兄弟を決して許せなかったし、だからこそ憎しみに呑まれるきっかけとなった。それがあの人の望まぬ道だとしても、畳間は止まれなかった。

 

 ―――だからこそ。

 

 畳間は両目から涙を零し、痛みに耐えるように歯を食いしばる。

 握りしめた拳からは、血が流れだした。

 

 ―――だからこそ……っ 

 

 あの時芽生えた憎しみを、痛みを―――今ここで、断ち切ろう。

 忍び耐える、者として。

 

「……おっちゃん」

 

 涼やかな風が吹き―――ふと、畳間は空を見上げた。

 空は青く、雲は白い。ゆっくりと、瞳を閉じる。

 畳間の短く尖った髪が、どこか嬉し気に静かに揺れた。 

 

 

 

 

 

 その後。

 畳間は辛うじて生き残っていた雷影と風影を回収しオオノキに投げ渡すと、自分の里に帰れと告げた。

 しばらくして、その役目を終えた真数千手の消滅を確認したアカリと自来也が里から現れ、戦いの行方を、畳間に尋ねた。

 

「生き残った者は、里へ帰した。彼らにも……家族がいる。死ねば……悲しむ人がいる」

 

「畳間……」

 

「それは……」

 

 二人は、困ったような表情を浮かべる。いくら平和を望む自来也やアカリとて、木の葉が受けた被害に怒りや憎しみを持たぬわけではない。本当に帰して良かったのかと、疑問を抱いてしまう。

 

「……影たちには、飛雷神のマーキングを付けた。次はない」

 

「えっ……」

 

 アカリと自来也が、小さく零す。あの真数千手の姿は、二人も目の当たりにしている。生き残った者達は、いつでもどこでも、いつ現れるやもしれぬ畳間と真数千手の恐怖に、怯え続けることになる。 

 それはそれで……と、二人が口ごもるのも、無理はないのかもしれない。

 

「しかしのォ。これはひどい……。地図を書き換えんといかんのォ」

 

 視界に広がる荒れ果てた大地と、不自然に消し飛んだ森を見て、自来也が呟く。

 

「そんなにか……。見たかったな」

 

 アカリが、自分の眼で見れないことを残念そうに言う。

 

 これで良かったのか。本当は皆殺しにすべきだったのではないか。

 終わりのない考えが、畳間の思考を巡る。それでも、長く続いた戦いは、この日、終わりを告げた。木の葉の勝利―――と呼ぶには、犠牲はあまりにも大きく、得たものは無い。

 

 それでも―――

 

(うち)に帰ろう。みんな、待ってる」

 

 ―――耐え忍び、生きていくのだ。

 

 

 

 

 

 

 ある日の昼下がりでの、火影の執務室。

 火影装束を身にまとった男が、静かに書類に目を通している。

 

 そんなとき、どたどたと、廊下を走る音が聞こえてくる。また来たのかと、仕事が滞ることに男はため息をついて、しかし少し嬉しそうに頬の端を緩めた。

 

 そして―――大きな音を立てて、扉が開かれる。

 

「昼めし食ったから遊んでくれってばよおっちゃん!!」

 

「まったく……」

 

 男が芝居がかった仕草で、小さくため息を零す。しかし男はやはりどこか嬉しそうに椅子から立ち上がると、準備運動をするかのように肩を回し―――言った。

 

「外では五代目様(・・・・)と呼べと、いつも言っているだろうに……」

 

 

 ―――ナルト(・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 第三次忍界大戦編―――終幕。

 

 


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