闇に包まれている。
体が闇に溶けていく。
何故僕はこの世界に来たのか、何故僕はこの体に生まれ変わったのか。
何故ナヒーダはこの体に転生させたのか。
この世界に僕の体の写真があるということは死んで異世界転生したわけではないのか?
勝手にこの世界に体ごと連れてきたのか?
元の体を失ったのはまあ良い。けど、どうしてそれを隠していたんだ?
そんなことを隠しながら自分とずっと接していたのか?
自分のことを嘲笑っていたのか?
どうして──
意識は闇に覆われ、思考も闇に囚われていく──
『あなたは本当にわかっていないの?』
知らない声が鳴り響く。
僕だってナヒーダの気持ちが嘘だとは思いたくない。
けど、隠してたのは本当じゃないか!
『それはあなたが直接聞くべきよ。』
意識がはっきりとしてくる。闇の中で自分の体が感じられる。
よくよく考えてみれば、おそらくファデュイの鳥面のことが信用できるわけない。
けどナヒーダは転生させたということを否定しなかった。
いや、声の通り直接聞くべきだ。
それにしたってどうすれば。
「ごめんなさい…」
遠くから小さく声が聞こえる。
声の方角に歩いていくと、そこには自分と同じ姿があった。
けれど、僕の頭にある、子供たちにもらった花がそこにはなかった。
「ごめんなさい…」
「ナヒーダ!」
ナヒーダの声だ。本当に同じ姿だったなんて。
けど、こちらには気づいていないみたいだ。
「ナヒーダ!」
直接会おうにもなにか障壁があるみたいだ。
一体どうすれば…
──
「民にも、彼にも見捨てられられて、神としての資格があるかしら?」
「私は…どうすれば良いのかしら?」
「私自身…本当は何がしたいの?」
……
「もしあなたが「知恵の神」なら…
さっきの質問の答え、最初から知ってるでしょ?」
「あなたは…誰?誰の声…懐かしい…」
「…でもあなたの言う通り。」
「私はもう…自分の声を無視したくない。」
──
「ナヒーダーー!!」
ナヒーダに聞きたいことがたくさんある。ナヒーダとまた共にいたい。
強い願いに神の視線は注がれる。
赤く輝く宝玉がゆっくりと舞い降りてくる。
なんとなく力を感じる。使い方を考える必要はない。
力の使い方ならナヒーダに教わった。
「ナヒーダーー!!!」
感情に任せて力を障壁にぶつける。
炎が障壁に伝わる。
これでは足りない。もっと。ナヒーダに会いたい!
炎が大きくなっていく。
障壁全体を包む必要はない。必要なのは小さな点からこじ開ける力だ。
ナヒーダに教わった感覚でその炎を小さくまとめていく。
感情と共に荒れ狂う力を小さく、小さく抑えていく。
そして炎は明るい点に収束していく。
「ナヒーダーー!!!!」
それを障壁にぶつける。
ぶつかる同時に解放された力が爆発する。
そして、障壁が弾け飛んだ。
「アルド?」
「ナヒーダ、色々聞きたいことはあるけど…君と会えて良かった。」
「ええ、私もよ。私は…あなたと共にいたい。」
そうして、僕はナヒーダに今までの疑問をぶつけた。
「どうして僕に事情を隠していたんだい?」
「あなたが事情を聞けば拒絶してしまうかも知れないと思ったからよ。
だからせめて一人で生きていける知識を得るまで隠していようと最初は思っていた。
あなたがファデュイを倒せるようになった時…本当は事情を伝えるつもりだったの。
けれど、私は、あなたとの生活が惜しくなってしまった。拒絶を恐れた私は、あなたに事情を隠し続けた。」
「そもそもなんで転生させたんだ?」
「それは…」
ナヒーダは包み隠さず教えてくれた。
「ごめんなさい。許されることではないわ」
「ナヒーダ。」
「っ!何かしら?」
「そんなことで僕は拒絶しないさ。そもそも、君は僕の安全のために転生させたんだろ?」
「けど、枝をそのまま放っておけば、あなたは普通に生きる可能性もあったじゃない!」
「それは仕方ないだろ。ナヒーダは立派に神様の勤めを果たして、それでさらに僕に配慮までしようとしたんだから誇るべきだ」
「アルド…、こんな私に神の資格があるのかしら?」
「当然だろ。僕にとっては見ず知らずの世界で救ってくれた立派な神様だ。
それでも足りないって言うんなら…また僕と一緒にいてくれないかな」
赤らめた顔のアルドに、ナヒーダは一瞬呆気に取られた後、笑って答える。
「ええ、もちろんよ。」
…
牢屋の中で目を覚ます。
外には誰もいないみたいだ。
夢の中で手にした宝玉は元々そう言うデザインだったみたいに右腕の腕輪に嵌め込まれている。
『神の目を手に入れたのね』
ナヒーダ、また話せるようになったのか
『ええ、けれどすぐに気づかれてしまうわ。早くここから出ないと』
『あなたのいる場所はスラサタンナ聖処、私のいる場所の奥にある部屋よ。おおよその場所の検討はついているから案内するわ。』
牢屋の鉄格子、障壁は炎元素で簡単に溶けた。ナヒーダの案内に従って道を進んでいく。
『次が最後の部屋よ。』
扉の先には大きな空間が広がっている。
その中心に球状の障壁に閉じ込められたナヒーダがいた。
「ナヒーダ!」
障壁の中のナヒーダと目が合う。
頭の中ではなく、そこから直接声が聞こえる。
「これは民の意思よ。先代の草神に遠く及ばない私を見た500年前の賢者達の意思によって私はここにいる。」
「500年前からそこに…!?今の人たちがどう思っているかなんてわからないじゃないか!」
「いいや、今の賢者もそうあるべきだと考えているとも。」
コツコツと鳴り響く足音と共に声が聞こえる。
「教令院の追放者…」
「知恵の神に知っていただけているとは光栄だ。尤も、真に知恵の神ならば当然のことだが。」
鳥面の男は余裕を持った態度でこちらに近づいてくる。
「君がこの事態の黒幕か?」
怒気を気取られないよう、できる限り落ち着いて対応する。
「何を指すのか不正確で曖昧な表現だ。だが、答えてやろう。私はファデュイ執行官第二位、「博士」ドットーレ。 」
「