二つのナツメヤシキャンディ   作:降臨してない異邦人

13 / 28
13.アルド

 

──

 

 目の前に紫電が迫る。

 

「ッ!?」

 

 迫る光は突如生えてきた木によって防がれる。

 

 こちらを庇うようにしてナヒーダが立っていた。

 

「アルド!あなたはここらから逃げて!」

 

「させると思っているのか?」

 

 出口を背にした博士とナヒーダが元素力の応酬を始める

 

 木が雷を弾き、炎が木を燃やし、岩の礫を葉で防ぐ。

 

 そんな攻防が続くうちに徐々にナヒーダは傷が増えていく。

 

「ナヒーダ…」

 

 結局、僕はナヒーダに守られることしかできないのか。

 

 戦いに参加することもできず見守ることしかできないのか。

 

 

 僕は……弱い。

 

 

『そんなことないわ』

 

 誰かの声が頭に響く。

 

 じゃあどうすれば良いんだよ!

 

『あなただって夢境が作れるはずよ』

 

 仮に作れたとしても、また同じことになるだけじゃないか

 

『夢境はもっと自由なものなの。想像力があればどんなことだってできるわ。』

 

 ナヒーダでもできなかったのにどうすればできるって言うんだ!

 

『あの子は直接世界を見たことがないんだもの、世界を知るあなただからこそ夢の世界が光り輝くのよ』

 

『私が力を貸してあげるわ。博士をどうしたいか、あなたの意思と想像力で世界を形作って』

 

 ……。

 

 

──

 

 

 突如として視界が闇に包まれた。

 

 「夢境か?また無駄なことを」

 

 周囲を確認しようとしたが、その前に地面が明るくなる。

 

 目に入る範囲全てが炎に包まれたのだ。

 

「何?貴様も無事では済まないだろう」

 

水元素で自身の周りの火を消しながら周囲を確認する。

 

 草神の姿が見えない。

 

「地獄に落ちなよ、博士」

 

 声の方には遥か上から閻魔のように見下ろす姿が見える。

 

「ふざけたことを──」

 

 胸から木が突き出る。

 木と身体を薪にして炎が燃え上がる。

 声をあげるまもなく地面から生え続ける木が突き刺さっていく。

 

 その様はまさに、地獄の罪人そのものであった。

 

──

 

 夢境を維持しきれず、現実に帰還する。

 

 

「アルド」

 

 ナヒーダが博士だったものを背に駆け寄ってくる。

 

「どうやって夢境を作り出したのかしら?」

 

「急に頭の中に聞こえてきた声が教えてくれたんだ。どこかで聞いた声な気がするんだけど…」

 

 視界がぐらりとゆれる。

 

「アルド!?」

 

「疲れた…少し…眠るね…」

 

──

 

「よかった、本当に眠っているだけのようね」

 

 あれほどの力を使ったのなら反動が来て当然。けれど、そもそもアルドにあそこまでの力はないはず。

 

 草神と同じような肉体を持っても、神の力は体に依存するものではなく、主な能力は民の信仰があってこそ支えられるもの。

 信仰の少ない私でもあそこまで力を使うのは難しい。

 

 七神ならば各元素の権威や神の心によって力を引き出すこともできるけれど、アルドにはそれもない。

 

「懐かしい…」

 

 そして、どこか懐かしさを感じる力。何故かしら…。

 

 

「クラクサナリデビが二人…?」

 

 続々と賢者が外から集まってくる。

 

「どうやって障壁を…」

「クラクサナリデビが街に出ているという噂は本当だったのか…」

「閉じ込められている現状を認めなかったのでは…」

 

 閉じ込められていたはずのナヒーダを前に話し合う賢者。

 

 私から話すべきかしら──「皆集まっているかね」

 

 後ろから声が聞こえてくる。

 

「大賢者様、見ての通り賢者は全員集まっておりますよ」

 

「ふん、まあ良い。私から事態を説明しよう」

 

「私がクラクサナリデビを障壁から解放したのだ。ファデュイの刺客の襲撃を見てやむを得ないことだった」

 

 やられたわね。

 

 ナヒーダは大賢者、アザールの思惑を推測する。

 

 おそらくアザールは博士と繋がっていた。障壁について明かされたくなければそこを探るなと言うことかしら。

 

「大賢者様、クラクサナリデビが二人にいるのはどういうことでしょうか」

 

「それは─「私が説明しましょう」

 

 賢者達がナヒーダの声に驚く。

 

 長い間、彼らにとって私は彫像にすぎなかった。仕方のないことね。

 

「この子は私の眷属よ。今後も襲撃がある可能性を踏まえてアザールの提案でスメールをこの子に守ってもらうことにしたの」

 

「なっ」

 

 アザールの顔が歪む。

 

 そもそも、アザールは繋がりを暴かれればその地位から転げ落ちるが、私はそれほど損害は受けない。

 だからアザールはアルドを交換材料にするつもりだったはず。そこはこちらの条件で進めてもらいましょう。

 

「クラクサナリデビ…様、あなた様は私達を、恨んでいないのでしょうか」

 

 他の賢者が発言した賢者をギョッとした目で見る。

 

「あなた達も皆愛すべきスメールの民、恨んでなどいないわ。けれど生まれたばかりのこの子に教えるためにあの中に戻るのは少し先になるかしら」

 

「クラクサナリデビ様…」

 

「期間は次の花神誕祭の前日まで、ということでしたかな。クラクサナリデビ()

 

 せめてもの対抗といった風にアザールが期限を指定する。

 

「ええ、そうね。安心して頂戴。今までと何か変わるわけではないわ」

 

「民へはどのように説明しましょうか、クラクサ─」

「瞑想していたクラクサナリデビが出てきたと広めるように、これで解散だ」

 

 アザールが足音を叩き鳴らしながら去っていく。

 

 それに準じて他の賢者達も去っていく。

 

 振り返りもしなかったアザールと対照的に、尊敬、疑惑、様々な眼差しを向けながら去っていった。

 

 

 

「これでひとまずは解決、かしら」

 

 床に眠るアルドの頭を膝に乗せて撫でる。

 

「お疲れ様、アルド」

 

 

 

 




原作の賢者目線、そこにあるだけで何もしてない(一応アーカーシャを動かしてるらしい)のでクラクサナリデビへの信仰心が薄くなるのはしかたない気がしますね
逆に、ナヒーダを閉じ込めた500年前の賢者は強火すぎません?
全然知恵ないわ、先代草神の作った瞑想場所に閉じ込めたろ
とはならないでしょ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。