「「「アルドー!」」」
「わっ。みんな、久しぶり」
子供達に抱きつかれて身動きが取れなくなる。
「コレイー!助けてー!」
コレイがこっちに近づいてくる。引き剥がしてくれるのかな?
その手が頭上から近づいてきて
「よしよし」
僕の頭上に着地した。
「なんで!?」
「みんなアルドのことを心配してたんだぞ?」
「それは…そうだね。みんな、不安にさせてすまなかった」
「そうだそうだ!」「わかればよろしい!」「別に心配してないし!」
「ははは、ありがとう。…けど撫でる必要はないんじゃないか?」
「…」
撫でる手は止まらない。
「そろそろ恥ずかしいって!」
……
「そして、悪者を打ち倒したってわけだ」
「かっこいい!」「俺もアルドみたいになる!」「すごい!」
子供たちにせがまれてこれまでの出来事を話していた。
「大変だったんだな…」
「色んな人が助けてくれたおかげだよ。ナヒーダにティナリ、コレイもね」
「あたしは関係ないだろ?」
「実は戦うのにトラウマがあったんだ。コレイがいなかったら克服できなかったかもしれないさ」
「僕は?」「俺は?」「私は?」
「ハハッ、みんなも仲良くしてくれて嬉しかったよ」
「そうか…あたしもアンバーみたいになれたかな…」
コレイほ呟くように言った。
「前もそんなこと言ってたっけ。コレイの想い人?」
「ば…馬鹿!アンバーはそういうのじゃない!そもそも女だし!」
コレイの反応は可愛くてつい揶揄いたくなってしまう。
子供達はそんなコレイを珍しそうな目で見ていた。子供達の前でしっかりしてるのだろうか。
「僕は女の子同士でも良いと思うけどね?」
「だから、そういうのじゃなくて!アンバーはあたしが一番尊敬してる人なんだ!そういうアルドはどうなんだ!」
「ハハハ、僕かい?そうだね、心は男だし、ティナリはカッコよくて可愛くて良いなあと思ってるよ」
「え〜!?」「大レンジャー長が好きなのか!?」「きゃ〜!」
「師匠のことが好きなのか!?」
「良いかもってだけ、そんなに言わせないでくれよ」
「そうなのか…ところで心は男だし、ってどういうことだ?」
「説明が難しいけど、実は元々男だったんだ」
「どういうことだ!?ってそうじゃなくて…一応確認するけど…師匠は男だぞ?」
「え!?そうなの!?」
「たまに間違えるやつはいるけど…」
コレイが白い目でこちらを見つめる。
「いや、これは、その、ほら、ティナリってお母さんみたいな抱擁感があるっていうか、あの」
「お母さんが恋愛的に好きなのか?」
コレイの目が細くなっていく。
目が呆れてるだけでなく、若干引いている。
「そうじゃなくて、え〜っと」
「はあ、それで師匠のことは好きなのか?」
「うーん、男ならちょっとなあ」
「アルド…」
コレイの目線は変わらず、なんなら距離を取ろうとしている。
「「「えー…」」」
子供達からも白い目が向けられる。
「えっと…ごめんなさい?」
──
「クラクサナリデビ様はアルドの方には行かないのですか?」
「再開の邪魔をしたら悪いもの。せっかくだから少しお話しをできるかしら?」
「もちろんです。…おーい、僕の見回りを場所を変わってくれる?…場所は…うん、そうそう…ありがとうね。」
「我儘を言ってごめんなさいね」
「いえいえ、クラクサナリデビ様とお話しできる貴重な機会は逃せないですから」
「ありがとう。それじゃあ早速なのだけれど…」
「アルドのことをどう思っているかしら?」
アルドが子供達の方へ向かった後、クラクサナリデビ様は残って僕をお話に誘われた。
「アルドのことをどう思っているかしら?」
どういう意味の質問なのだろう?
いまいち二人の関係が把握しきれないけど、アルドは眷属になったらしいし、相応しいか情報を集めてるのかな?
「そうですね…優しい子、だと思います。クラクサナリデビ様のように見た目と年齢が違うのかもしれませんが、それでも子供達と遊んであげてくれます。
コレイのことも助けてくれましたから。」
「ふふ、よかったわ。何か個人的に抱いた感情とかはあるかしら?」
「感情…?」
感情って好きとか憎いとか?
個人的な印象の方が信用に足るってことなのかな?
「好感を抱いていますよ。理知的でありながら、学者達とは違って素直なところが好ましいですね。」
クラクサナリデビ様は難しい顔をしてこちらを見ている。
「どうかしましたか?」
「いえ、続けてちょうだい」
「他には…寂しがり屋、かもしれませんね。普段は精神年齢の高さを感じますが、疲れている時には親を求める子供のような雰囲気を感じました」
「そう…ありがとう。あなたは私に聞きたいことはあるかしら?」
クラクサナリデビ様は憂いを含んだ表情を切り替えて仰った。
アルドのことが心配なのだろうか。とはいえ、クラクサナリデビ様が追及しないのであれば素直に話題を変えた方が良いだろう。
「では、この植物についてなのですが…」
「あら、アルド達が帰ってきたみたいね」
クラクサナリデビ様はやはり知恵の神というべきか。僕ではとても及ばない知識を持っており、夢中で話し込んでしまった。
「もうこんな時間とは、今日は泊まって行かれますか?」
「大丈夫よ。私達ならこの時間からでも安全に早く帰れるもの」
アルドが僕たちの方へ近づいてくる。
「二人はずっと話してたのかい?」
「ええ、とても興味深い話ができたわ。ティナリ、今日は楽しかったわ」
「帰るんだね。ティナリ、久しぶりに会えてよかった。みんなもまたね」
「帰っちゃうの?」「もっといようよ」「泊まらないの?」
「アルドは無事だったのに村に戻ってこれなかったくらい忙しいんだから仕方ないだろ」
引き留める子供達を嗜めつつコレイは棘のある目をアルドに向けている。
「心配させてごめん、また来るよ」
「なっ!」
アルドがコレイに抱きついて言った。
「わ、わかった。うぅ…師匠の前で恥ずかしいからやめてくれ」
「ハハ、撫でられた仕返しだよ」
「うぅ…!」
「ごめんって!」
ポコポコと優しく叩かれてアルドがコレイから離れていった。
「アルド、無事で良かった。村のみんなは歓迎してくれるからまたいつでも来て大丈夫だよ」
「ティナリ、ありがとう。じゃあ今度こそ、またね」
──
帰り道、アルドと森を進んでいく。
「ティナリとは何を話してたんだい?」
「植物の話ね。彼はそう言った研究をレンジャー業に役立てているのよ」
ティナリの気づいたアルドの印象に私は気づけなかった。
私は未だ心を理解しきれていない。
やはり、そんな私より彼の方が良いのだろうか…
「彼って、もしかしてはナヒーダは男ってわかってた?」
「気づいていなかったのかしら?」
「いや〜、可愛かったし…ナヒーダって僕の前世を知ってたよね?好きかもって言ったときに教えてくれたってよかったんじゃないか?」
「世界樹を通して記憶を見ただけだもの。彼女はいなかったみたいだし、男性が好きな可能性を考慮していたわ」
「え、僕付き合ったことないのがバレてる上にディスられてる?」
「私の前で安易に『好きかも?』なんて言葉をいう地点で自白しているようなものじゃないかしら?」
「コレイにも怒られたし、ナヒーダにまで言われるなんて…」
そんなアルドを見ているとなんだか安心する。
「ふふっ」
「笑わなくたって…いや冷たい目で見られるよりましかな…」
心というものは理解しきれていないけれど、悩みからは解放されたような気がした。
「私はもう気にしてないわよ。早く帰りましょう?」
「いや、口角上がってるじゃないか…」
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