森を進んでいく。
高低差がある森に知らない動植物。進むたびに変わっていく景色は、新たな世界ということもあって全く飽きることはない。
とはいえ、それ以上に気になることは多くある。
ナヒーダ、この世界について教えてくれないかな?
『この世界の名前はテイワット。7つの国に分かれていて、それぞれの国を魔神が治めているわ。』
ナヒーダも国を治めているってことかい?
『そうね…立場としてはそうなるわ。けれどわたしは直接的に統治しているわけでないの。』
そういうものなのか。7つしか国がないなら文明レベルはそこまで高くないのか…?
『あなたの世界と比べるとそう言えるかもしれないわね。けれどこの世界には元素力と呼ばれる力があるの。それによる技術を考えると比較するのは難しいわ。』
元素力って言うのは魔法みたいなもの?もしかして、僕も使える?
『元素力と言うのは──』
「「Ya!!」」
急に聞こえた声の方を見ると、変な仮面をつけた二人の人間(?)が棍棒を持って近づいてきている。会話に集中していて今まで気付けなかったみたいだ。
『リシュボラン虎の子は親と共に獲物を追い詰めることで狩を学ぶの。私が元素力を使うのを手助けするから、その感覚を真似てみて頂戴。』
『ジャンプしてみて』
なにやらわからないが、元素力を教えてくれるらしい。ひとまず言われた通りに跳ねる。
地面を踏み締めると同時に力が足下から流れていくような感覚が伝わる。そして人間(?)の方に向かって力の感覚と共に地面を緑の光が這っていく。
力にぶつかった人間(?)が怯んだ。
『彼らはヒルチャール。今はもう対話もできない魔物に過ぎないわ。今のは草元素力を直接ぶつけたもの。足を踏み締めていて。こんな使い方もできるわ。』
再び力を足下に感じる。今度は流れる感覚ではなく、繋がったまま伸びていくような感覚だ。伸びていく力の先端がヒルチャールの足先で根として突き出る。
急に現れた根に気づかず歩みを進めたヒルチャールは間抜けな格好をさらして転倒した。
『草元素はこんなふうに植物の力に変えることもできるの。さあ、やってみて頂戴。』
先ほどの感覚を頼りに自分の元素力を足下からもう一体の方へ伸ばし、ヒルチャールの足先から地上へ伸ばそうとする。
しかし、うまくいかずヒルチャールの足先の草をパタパタさせるのみに留まった。ヒルチャールは普通にその草を踏んで歩いていく。
もう一度やってみる。今度は、根が足の後ろに出てしまった。またしても普通に歩いているヒルチャールの足をなんとか絡め取ろうと、ヒルチャールを追いかけるように根を伸ばす。
そうこうしているうちにヒルチャールは目前まで近づいていた。
棍棒を構えるその姿をみて咄嗟に拳に元素力を込めて腕を殴る。
人を殴るいやな感覚が手から伝わると同時に元素力が伝わる。
直前までの感覚で使った元素力は根となってヒルチャールの腕を刺した。
「Ggyaaa!」
あまりの痛みにヒルチャールは棍棒を取りこぼしながら叫ぶ。
人の形をした存在が悲鳴をあげて痛がる様子を見るのはどうも気持ちが悪い。
『気にする必要はないわ。襲ってきた地点でどうにもできなかったの。早く楽にしてあげましょう。』
ナヒーダの言葉は、まるで聞き分けの悪い子供を諭すようだ。けれど、それは暖かい親のものとは違う、冷たい機械のように感じて──
「Baa!」
右腕を使えなくなったヒルチャールが頭から突進しようと構えた。
咄嗟にヒルチャールの動かせない右腕に手を当てて、再び根を操る。
けれど、楽にするとはどうすれば良いのだろうか。心臓でも止めれば良いのか?
イメージは根に伝わる。使い手の意に従うようにしてヒルチャールの体内を突き進み、心臓を突き破る。
「Ggyaaaaaa!」
体内を異物に荒らされる感覚に一際大きな叫び声をあげるヒルチャール。心臓を突き破るその痛みに、思考もままならず横になって手足を暴れさせる。
「Gaa…」
心臓が潰れた地点でもうどうしようもない。手足の勢いもなくなっていき、ついに動かなくなった。
動悸が止まらない。視界が定まらなくなってくる。両手が地面につく。
こんなことをする必要があったのか?自分はこんな残酷だったのか?
臓器をも出してしまいそうな吐き気は、その内容物が無いゆえに涙を出させるに収まる。
「Baaa!」
転んでいたヒルチャールが、仲間の惨状を見て怒りの声と共に襲ってくる。
『構えて!すぐにくるわよ!』
顔を上げればヒルチャールが棍棒を振りかぶる姿が見える。
さっきみたくならないよう、直接元素力をぶつけようとするが、思考がまとまらない。うまく元素力を操れない。
こんなところで死ぬのかな。
まだ転生したばかりなのに。
「大丈夫!?」
声と共に矢が飛んでくる。それは正確にヒルチャールの頭を打ち抜き、安らかな死を与えた。
「なんでこんなところに一人でいるの!?ん?これは君が…?」
狐のような大きな耳を持った人だ。叱るような調子の言葉にはそれでいてどこか暖かさがあった。
涙はもう出ていないけれど、赤くなった目に気づいたのか、優しい顔をしてこちらにやってくる。
「もう大丈夫だからね。」
優しい声と共に抱きしめてくれた。
その暖かさに包まれていると、瞼が重くなってきて… ──
おかしい…ちょっとした戦闘チュートリアルが気づいたらこんな展開になってる…
あとリシュボラン虎の話は普通に嘘だから原作と矛盾してたら変えます。