二つのナツメヤシキャンディ   作:降臨してない異邦人

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2.交渉

 

「こんにちは、旅人。私はクラクサナリデビ。草神としてあなたを歓迎するわ」

 

 そこには"草神"がいた。

 以前のように神としての姿に惑う姿はなく、優しい語り口でありながら確かにそこに威厳と神秘を感じさせる。

 

「…!

私のことは知ってるんでしょ?

早速だけど、私のお兄ちゃんについて教えて欲しい」

 

 旅人は可愛らしい姿とは裏腹に溢れるそれらに一瞬気圧されるも、今までの経験もあってかすぐに気を取り戻した。

 

「構わないわ。けれど、この国では知恵とは美しい宝石のようなものなの。皆がそれを羨み求めるからこそ、それ得るには相応の宝石が必要じゃないかしら?」

 

「何が知りたいの?」

 

 他の国はわからないが、スメールでは知恵というものが非常に重要視される。人の経験や知識を詰め込んだ缶詰知識というものはその象徴と言えるだろう。それが禁じられてた今でも裏で取引されているのが良い証拠だ。

 とはいえナヒーダがそんなことに拘るのは不自然に感じる。

 

「ここで話すようなことでもないわ、場所を変えましょうか」

 

「どこで話すの?」

 

 鋭い目をした旅人が尋ねる。まあ村のど真ん中で話すようなことではないだろうが、実際どこへ行くのだろうか?

 

「アルド、あなたの夢境に連れて行ってくれるかしら?」

 

「え、僕?」

 

 旅人はそもそも夢境を知らないのか若干の困惑をしながらこちらを向く。

 

「ええ、"あなたの世界"ね。権能をうまく使えば精神だけでなく、体も共に行くことができるの。私も手伝うから頼むわね」

 

 最初は疑問系だったのに気づいたら拒否権が無くなっている。まあ断る気はないが。

 ナヒーダが手を差し出してくる。その手を掴むと力が伝わってきた。

 

「な、何をするんだ?」

 

 状況を掴みきれていないパイモンがアワアワと移動しながら浮いている。

 

 自分の心の芯を意識して、夢境を想像する。そして、ナヒーダの手から力と共に伝わってくる感覚に従って自分たちをその世界へ投影していく─

 

 

────

 

 

 

「ええっ!?どこだここ!?」

 

 パイモンが周りを見渡して騒いでいる。

 

「列車?」

 

 旅人の呟くような声と共に電車が鋭い音を立ててホームへと止まった。

 

「な、何だこれ!?」

 

 パイモンが電車を見て再び声を上げる。

 

「立ち話も何だし、乗ろうか」

 

 

──

 

 電車の席に端から僕、ナヒーダ、少し隙間をあけて旅人、と言う順に座りパイモンは僕たちの前でふよふよと浮いている。

 他の人はいない。一応は僕の夢境なのである程度は操作が可能だ。

 

「ここはどこなの?」

 

「あなたはこの"世界"は知らないのかしら?」

 

「…もっと発展した世界も見たことはあるけれどこれと同じような景色は見たことがない」

 

「ここは夢境、夢の世界のようなものね。テイワットにないものがあることもあるわ」

 

 旅人はナヒーダの答えに不満げな顔をするが、諦めたように小さく「はあ」と息をついた。

 旅人は他の世界から来たと言っていたが地球は知らないらしい、少し残念だ。

 

「アルド」

 

「何でもないよ」

 

 いつのまにか旅人から顔を背け、こちらを眉を下げて心配そうに見ていたナヒーダに首を振って堪える。

 ナヒーダが一瞬何か考えるような素振りをしてから旅人に向き直ると、旅人が口を開けた。

 

「それで、あなたの知りたいことっていうのは何?」

 

 焦れたような旅人の言葉は僕にとっても疑問だったことだ。

 僕、それにパイモンも緊張してナヒーダの言葉を待つ。

 

「あなたはどうやって世界を渡っていたの?」

 

「宇宙船で渡っていた」

 

「ふふ、ありがとう」

 意趣返しと言わんばかりに短く答える旅人につい苦笑するが、ナヒーダはそれで十分だったようだ。

 

「いつになったらお兄ちゃんについて教えてくれるの?」

 

「そうね、解析するのに少し時間がかかるから一週間後くらいかしら」

 

 旅人が先から立ち上がり剣に手をかける。

 目はより鋭く殺気じみたものとなり、僕も咄嗟に元素力を使えるように構える。

 

 その二人に挟まれる中、ナヒーダは動じることもなく旅人を見つめている。

 

「…わかった」

 

 そんなナヒーダに呑まれたか、それとも冷静に争うことの無意味に気づいたか旅人が席に戻る。

 それと同時に電車が駅に着いた。

 

「これで話は終わりなら帰してくれない?」

 

「そうね、アルド──「磔刑」

 

 ホームから出てきた獣域ハウンドを突き刺す。

 

「前は全然こんなところまで出てこなかったはずだけど」

 

「念の為"樹"を見に行きましょうか。あなた達は先に帰るかしら?」

 

 突然のことに旅人が固まる。

 

 しかし、気を取りなおしこちらを向いた。

 

「いや、私達も着いていく」

 

 そうして僕達は世界樹へ向かった。

 

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