二つのナツメヤシキャンディ   作:降臨してない異邦人

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5.冒険

 

 森の中のコレイは驚くほど頼もしかった。

 

「ぬかるんだ道は滑りやすいから気をつけないといけない。こういうつたを靴に巻けば棘が刺さって滑りにくくなる。」

 

「本当だ!」「流石コレイ姉ちゃん!」「ありがとう!」「なるほど、スパイク代わりになるのか、棘があれば他の種でもできるのかな。」

 

「このキノコは潰して毒を動物用の罠に使えるんだ。」

「へー!」「美味しそう!」「私もやりたい!」「罠に毒を使うのか。食べる時に困らないのか。いや、焼けば大丈夫なのか?」

 

「ホタルの幼虫は頭を潰して食べれる。食べるか?」

「え、まじで?」「姉ちゃん…」「流石にちょっと…」

 

 豊富なサバイバル知識からくる洞察は聞いているだけで面白い。子供達が勝手に遊んだりせずにしっかり話を聞くくらいだ。

 とはいえ、ホタルを食べるのは子供たちも厳しいらしい。

 

「じゃあ、僕はいただこうかな。」

 

 ティナリから仲良くするよう頼まれたんだ。これくらいやって見せよう。それにコオロギはエビの味とか聞いたことあるし、案外いけるんだろう。

 

「お前が食べるのか。」

 

 コレイが意外そうな顔をして頭を潰したホタルを渡してくる。

 子供達が見つめてくるなかで、それを口に入れる。

 

 不思議な緊張感の中、それを咀嚼する。

 

「おぇ」

 

「「「ん?」」」

 

「おえぇぇぇ!」

 

 なんだこれ、まずすぎる!

 苦いとかそういう次元ではない、人を苦しめるために生まれたみたいな味をしている。

 

『蛍は幼虫の頃も光るの。雌雄のコミュニケーションが必要のない幼虫が光るのは、毒や不味い物質があることを伝えるためだそうよ。』

 

 先に言ってよ。

 

『私は知識を持っているだけ。知識と見識は違うもの。』

 

 ナヒーダにどう反論すべきか考えながら、ホタルを渡してきたコレイの方を見る。

 コレイは食べるそぶりも見せず、こちらを見ている。

 

「おぇっ、コレイはたべないのか?」

 

「あたしは美味しくないから食べないな。」

 

 じゃあ最初に教えてよ。

 子供達もかわいそうなものを見るような目つきでこちらを見ている。

 

「どんなに不味くても必要なときには食わなきゃいけないんだ。」

  

 実感のこもった言葉だった。

 サバイバルスキルの一環なら納得はできるけど…彼女はどのような体験をしてきたのだろうか。

 とはいえ、教えては欲しかったのでじっとした目線を向ける。

 

「悪かったな…あっちの方から声が聞こえる。レンジャーとして見に行ってくる!」

 

 コレイはそう言って走り出してしまった。

 残された子供達と顔を見合わせる。

 

「君たちも食べるかい?」

 

「「「絶対嫌!」」」

 

「実はそんなに不味くなかったよ?一口だけさ。」

 

「アルド、悪い顔してる。」

「じゃあもう一回食べてよ。」

 

「いやぁ、それはちょっと…」

 

『仲が良いのは精神性が似てるからなのかしら?」

 

 言い過ぎだろ。

 

 子供たちの反撃にナヒーダの援護射撃まであっては流石に黙るしかない。

 

 そうして生まれた沈黙にコレイの声が響き渡る。

 

「なんでお前らが!」

 

 普段の彼女から考えられないような怒りの声だ。

 何かあったのかもしれない。

 

 子供たちに「ちょっと待っててくれるかな」と声をかけて見に行こうとする。

 

「「「えー!」」」

「アルドがいくなら俺も行く!」

「俺も!」「私も!」

 

『コレイがもし危ない状況にいるなら、子供たちに行かせるわけにはいかない。けれど、待っていてもらうというのも子供には厳しい。難しい状況ね。』

 

 ふむ、待たせなければよいのか。それなら、

 

「それじゃあ、コレイ姉ちゃんが危ないかもしれないからティナリに伝えに行ってくれないかな。」

 

「えー、アルドは行くのに?」

「ずるーい」

 

「僕は小さくて森を歩くのか苦手だから、君たちにしか任せられないんだ。お願いできないかな?」

 

「仕方ないなー!」

「アルドはチビだからね!」

「チビ!」

 

「そこを強調しなくてもいいだろ。」

 

 そうしてコレイの声の方角へ向かった。

 

 コレイの背中がみえる。

 コレイはかなり大きい三人組の男と話しているようだった。

 

「コレイ!」

 

 その場の全員がこちらを向く。

 男たちはその場に似合わない雪山のような格好をしていた。

 一人は赤いコートに身を包み、すらりと長い身長で見下ろしながら両手で銃を持っている。

 その横の黄色いコートは同じような格好だが、右手には岩でできた杖を持っている。

 その後ろは青いコートに包み、膨らんだ腹を持っていて、右手にはブラスターのような銃を抱えていた。

 

 一瞬の沈黙の後、青コートが声を上げた。

「仕事だ!」

 

 それと同時に赤コートがこちらに銃を向ける。

「これでも喰らえ!」

 

 その銃から球が発射される。

 

「は!?」

 

 咄嗟に地面に身を投げてかわす。

 

「強火で焼くぞ!」

 

 それに第二射を構えようとする赤コート。

 

「何でこんなことに!」

 

 地面に両手を打ち付けながら、そのままの元素力を地面に伝える。

 

 元素力にぶつかって赤コートが怯む。奥を見ると黄コートがコレイに岩を飛ばそうとしていた。

  

「まだ…いける!」

 

コレイは青コートとの戦闘に集中していてそちらに気づいていないようだ。

 

 体を全力で走らせコレイを突き飛ばす。

 

「っ!?」

 

 突然の行動に驚くコレイ。

 けれど、何とか避けれたかな?

 

 すぐに起き上がってコレイを見ると、かわし切れず腕から血が出ていらようだった。

 

 そこから根が生えてる様が重なって見える。

 

 気持ち悪い。

 

「態勢を整えよ。」

 

別の声と共に半球状の黄色い膜が現れる。

 

 動悸がする。『アルド!』

 

『あなたにあんな思いはもうさせないわ。』

『少し体を貸してくれないかしら。』

 

 ナヒーダの声に意識が現実に戻される。

 

 体を貸すってどういうことだ?

 

『難しいことは考えないで良いわ。あなたが許可をくれれば良い。』

 

 それがこの状況を変えてくれるなら、お願いだ。ナヒーダ。

 

『もちろんよ。』

 

 自分の体が動かされる。

 手が指カメラの形を作る。

 

「蔓延りなさい。」

 

 自分の口からの声が聞こえる。

 それと共に、指のフレームの中に捉えられた男たちの体の動きが不自然に止まる。

 

「これこそが知恵の殿堂──」

 

 視界が再び暗転する──

 




元素関連はどんどん独自解釈していきます。
ゲーム用にデフォルメされてるから仕方ないね。
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