──
意識が浮上する。
「ここは私の作った夢境。夢の中のようなものね。」
自分の口からでるナヒーダの言葉。
周囲は森のようだが、先ほどまでとは違う場所だ。
そして、男たちもそこにいた。
「油断するなよ!」
赤コートが銃を構えるのが見える。
危ない!
ナヒーダは体を動かそうともしない。
「森羅万象もただの逆さになった幻の摩耶の夢に過ぎないわ。」
横にあった木から生えてきた太い枝が赤コートから放たれた炎の弾を受け止める。
ぶつかったところが激しく燃え上がった。
「異なる元素がぶつかると、元素反応というものが起きるの。草元素と炎元素なら燃焼反応ね。」
今必要かい!?
「一人で生きていくためには必要な知識よ。」
「面白い。」
その間にも攻撃が飛んでくる。
「水元素と草元素では、草原核を形成するわ。」
飛んできた水の弾は地面から生えてきた葉に受け止められ、周囲の草元素が緑の実へと姿を変える。
そしてそれは葉によって男達の方へ投げられた。
「態勢を整えよ。」
黄コートの言葉共に現れた半球状の黄色い膜によって弾かれる。
「草原核は一体時間で開花反応を起こして破裂するわ。」
「これでも食らえ!」
シールドの中きら赤コートが炎の弾を撃つ。
「そして、炎元素と反応し烈開花を起こす。」
再び投げられたのか、飛んできた草原核と炎がぶつかり、周囲の空間ごと炎上する。
「あなたも同じようにできるはずよ。
とはいえ、ここまでじゃなくても一人で生きていくには問題ないわ。」
シールドの中の地面から生えたつたが男達に足下から巻きついていく。
「燃料、切れだ…」
「時間か…」
細身の黄コートと赤コートは身体中を覆われて動けなくなる。
流石神様だ。
「それじゃあ、やってみて頂戴。」
「え?」
「邪魔するな!」
つたから逃れた青コートが水弾を撃ってくる。
「おわっと!」
弾速は遅く何とかかわすが、第二射第三射が続く。
「急すぎるって!」
咄嗟に地面から木を生やして防ぐ。ぶつかった部分から草原核が生まれてた。
「使命を果たす時が来た!」
青コートがシールドを貼っている。先ほどのものとは違い、青コートの体を囲うだけの球状だ。
木の裏に隠れてどうするか考える。
草原核を投げつけるか?
先ほどのシールドにも弾かれていた。通じるかわからない。
シールドの地面からつたを?
シールドが小さいから中に地面がほとんどない。シールドに弾かれてしまうかもしれない。
いや、待てよ。
この木を作った時の感覚で分かったことがある。
元素力を空間に伸ばすのではなく、空間の元素力の形を変えた。
それがこの空間の特性なら…
木の裏から出て、ナヒーダのように指カメラを作る。
青コートは頭から突進しようと構えている。
嫌な思い出が顔を出す。
しかし、全身を写す必要はない。枠を狭めて、下半身だけを収める。
「蔓延れ!」
青コートは足を踏み出す。
が、その下半身では
踏み出した足の勢いで体は地面に投げ出された。
青コートが転び狭めた指カメラに全身が収まる。
「絡みつけ!」
下半身に伸ばしたつるを全身に伸ばす。
「責任は終わり…」
青コートは完全に動けなくなってしまった。
「これでよかったかな、ナヒーダ。」
『秘境を構成する元素力を利用した?私の秘境がなきゃできないのかしら、いえでも事前に元素力を空間に撒いておけば…』
ナヒーダ?
『…素晴らしいと思うわ。私にも思いつかない発想だったわ。今後も戦闘はできそうかしら?』
「この空間がないとここまでは、いや、そのためにしてくれたのか。
トラウマは治ってきた気がするよ。これからもやって行けそうだ。」
『よかったわ。あのままでは私がいないとすぐにやられてしまいそうだったもの。』
元の世界が戦闘なんて必要なかったんだけどな。
そういえば、彼らは何で襲ってきたんだい?
『そうね。まず、彼らはファデュイと呼ばれる集団。氷神を女帝として崇め、多くの国で怪しい動きをしているわ。
そして、彼らがアルドを襲った理由はおそらく…この体よ。
彼らはきっとこの体を見てあなたを私だと思ったのね。
実は…あなたは──』
「ナヒーダの体に憑依してたってこと?」
『いえ──』
それならずっと一緒か。安心だね。
『…そうね。』
体を使わせてもらっているなんて申し訳ないな。
『気にする必要はないわ…』
神様がそう言うんだったら大丈夫なのかな。
そういえば、元の場所にはどうやって戻るんだい?
『ここは夢境。私の夢のようなものだもの。すぐに帰れるわ。』
その声と共に意識が離れていく。視界が再び暗くなっていく──
──
「アルド!」
「うわあっ!」
「痛っ!」
目の前にあったコレイの顔に驚いて頭を上げようとすると、彼女の頭とぶつかって頭が落ちる。
「いてて、ごめん。そういえば怪我は大丈夫!?」
「こんなのなんてことない。お前の体の方が大事だ!急に倒れたんだぞ!」
「それは…ちょっとね。とにかく僕の体には何の異常もない。健康そのものだよ。」
後頭部から暖かい感触がする。どうやら膝枕をしてもらっているようだ。
顔を上げて立ち上がる。今度はぶつからなかった。
「しっかり血が出ているじゃないか!」
コレイの腕の部分は服が赤く染まっていた。
『このぐらいなら草元素で治してあげられるわ。』
そんなこともできるのか。ナヒーダ、頼む。
『ええ、もちろんよ。これからも一緒だもの。』
座っているコレイの肩に手を当てると、草元素力が流れていった。
「傷が…治った。あ、ありがとう。」
ナヒーダの力によってみるみるうちに傷が治っていった。
「そういえば、何だか違和感があると思ってたんだけど、コレイって僕のこと避けてなかったっけ。」
「えっ!それは…えっと…お前の話し方が苦手だったんだ…」
「あたしは昔、病気の治療のためにあいつら、ファデュイのところに送られたんだ。いや、あれば治療なんかじゃなく実験だった。
ああいう環境に長くいるとなんで誰も助けてくれないんだって、そのうちファデュイ以外の人も恨むようになった。今思えば…本当に幼稚だったと思う。」
「それで、あいつらが…その、お前みたいな喋り方だったから。それを思い出しちゃって、嫌ってたんだ。
けど、お前はあたしを助けてくれた…ごめんな。
…わっ。」
こんな重い過去を持っていたなんて…思わず頭を抱きしめてしまった。
「うぅ…やめてくれよ…」
『ふふ…』
口ではそういうものの、抵抗はなかった。
そのままぎゅっと抱きしめる…
「大丈夫!?」
子供たちの話を聞いたのだろうティナリが村の方角からやってきた。
一瞬、沈黙が場を支配する。
「その…お邪魔だったかな。ちょっとゆっくりしてるね。」
そう言って横を向いた。
けれど、耳はこっちを向いている。
「うううぅぅぅぅ!!!」
コレイが涙目でぽこぽこ叩いてくる。
「ごめん。」
僕はどうにもできず、おとなしく叩かれていた。
『子供は甘えるものだもの。恥ずかしいことじゃないわ。』
それじゃフォローにならないかな…
(※憑依じゃないです。)