二つのナツメヤシキャンディ   作:降臨してない異邦人

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冒頭普通に捏造


7.一炊の夢

──

 今は昔、ある男がいた。

 

 男は貧乏な村に生まれ、そんな生活に嫌気がさし、村を出た。

 

 しかし、彼は森の中で迷ってしまった。

 

 何を為すこともできず、こんなところで飢えて死ぬのか。

 

 そんなことを思っていた彼の前に女が現れた。

 白髪に長身、特徴的な瞳を添えた人知を超えた美貌であった。

 

「こんなところでどうしたのかしら?」

 

 男が迷ってしまった旨を伝えると、女は言う。

「お腹が空いているでしょう?ご飯を作ってあげるわ。」

 

 女は偶然近くに生えていたのか、村でも食べられていた穀物を手に取り、近くにあった川から取った水と共に木の器に入れた。

 いつの間にやら置かれていた薪に火をつけ、それを熱しながら男と話した。

 

 男は女と薬草についての話で盛り上がり、実に楽しそうに話していた。

 だがしばらくすると男は女の美しい白い服を見た後、自分のぼろぼろの服を見て、ため息を吐き出しながら言った。

「今の生活はつらい。砂漠の国では好きに生きていけるのだろうか。」

 

女は驚いて口に出した。

「あなたは怪我も病気もない。さっきまであんなに楽しそうにしていたのにどうしたのかしら?」

 

「誰にも邪魔されずに、世界の法則を解き明かし、豊かな生活をする。そうであってこそ楽しいと言えるんじゃないか。俺も昔は学問に熱を燃やし、毎日研究をしていた。けれどこんな歳になっても、田畑でせっせと汗を流している。これが辛くなくて何が辛いんだ。」

 男は、疲れ切っていたのか、ついそんなことを言ってしまった。

 

「そう…それなら思いのままに、その夢を見せてあげましょう。」

 彼女がどこか遠くを見ながらそういうと、男は眠りに落ちてしまった。

 

 その後、男は砂漠の国へと行き、研究者として才覚を発揮し、王に取り立てられた。

王に与えられた知識は、世界の法則を解き明かし、それを超越するような可能性を示した。

 そんな男を周りはよく思わず、手を出してくるような人間もいたが、男は独りその研究に没頭し続けた。

 しかし、その知識は男の体を蝕んでいった。

 男は苦しんで床につき、王にその命を惜しまれるのを見届け、目を閉じた。

 

 男は女の膝の上で目を覚ました。

「夢だったのか。」

 

 男がそのままぼんやりしていると、女に頭を撫でられた。

「ご飯を食べるかしら?」

 男は赤くした顔をあげ、食事を終えた後、女に向き直って言った。

「人生というものの価値がわかりました。あなた様は私の欲望を抑えてくださったのですね。」

 

 男はその後、村へ帰り、田畑を耕しながら研究を続け、老後は教令院で活躍し、つつましやかながらも仲間達と幸せそうに研究していたという。

 

 

 

 さて、これが昔からスメールに伝わる一炊の夢という話だ。多くの学者は目覚めたら消えてしまう夢から欲の虚しさを説いたりする。

 

 しかし、彼が死んだ時、目を覚まさなければどうだった。

 それが夢か現実か、彼にとって同じだったとは思わないかね?

 夢も現実も不意に失われる、それなら好きに夢を見ればよい。そうは思わないかね?

 

 まあ、私にとっては夢による実質的な寿命の延長と神から知識を得た人間の方が興味深いがね。

 

──

 

『そろそろ朝よ、アルド。』

 

「ふぁぁ…おはよう」

 重たい瞼と軽い体を頑張って起こす。

 

『おはよう。ティナリが朝ごはんを作ってくれてるわ。』

 

 ナヒーダの声を聞いて、瞼を擦りながら考える。

 僕はこの村に来てから村長の家に住まわせてもらっている。宿もないこの村で一番広いのが村長の家だからだ。なんでティナリがご飯を…?

 

『昨日のことを覚えていないのかしら。ティナリが話を聞こうと家に入れてくれたのに、座った後そのまま眠ってしまったじゃない。』

 

 そう言えばそうだったね。というか、この後どう説明するんだい?

 

『そうね…コレイのことがあるもの、ファデュイに追われているとだけ伝えれば彼女ならある程度察してくれるはずよ。』

『ファデュイに追われているならここにも長くはいられないわ。明日にでもここを出ましょう。』

 

 ファデュイは他の国でも暴れているんだろう?他の国でも同じじゃないのかい?

 

『ファデュイも一枚岩じゃないわ。場所によって対応も大きく変わってくるの。隣の"戦争の国"ナタまで逃げれば良いんじゃないかしら。』

 

 戦争の国って…行くまでに見つからないかな?

 

『見つかっても私の力で守ってあげられるわ。ナタに行くためには砂漠を越える必要があるの。そのための準備をティナリにお願いしましょう。』

 

 そうこう話しているうちに料理を持ったティナリとコレイが部屋に入ってきた。

 

「おはよう、そろそろ起きてると思ったんだ。今食べれるかな?」

 

 ティナリの持ってきた食事は植物の実によって彩られていて、初日のお粥とは違う心踊るものだった。

 

「良いね!食べるよ。」

 お盆を受け取って小さな口にゆっくりと運んでいく。おいしい。

 

『ナタまで行く間のために料理ぐらい作れた方が良いかしら…』

 ナヒーダの声を聞きながら食べ進める。

 

 食べ終わった後、ティナリと昨日のことについて話した。

 

「子供たちを逃がさせた判断は良かったけど、まず君たちが逃げるべきだったよ。」

 コレイと一緒に怒られる。

 

「いや、思ったより僕って強くてさ。」

 正確には強いのはナヒーダなんだけれども。咄嗟に反論しながら、草元素で葉を生みだす。

 

「やっぱりあの時のは、あっ。」

 

 しまった、という顔したティナリに言葉を返す。

「ああ、あのヒルチャールを殺したのは僕だ。」

 

 あっさり話した僕に驚きながら、話題は昨日のことに戻って行った。

 

 ナヒーダと考えた通りに話して、逃げるためにナタに行きたい旨を伝ると、

「なるほど…それじゃあ、僕が準備しておくよ。知り合いに明日ナタに行く商団があったはずだ。僕が話をつけておくから、今日は遊んでいると良い。」

 

「流石に遊んでるのは何か気まずいな、何か手伝えないかい?」

 

「子供がそんなことを気にする必要はないよ。それに君には子供たちに別れを告げる責任がある。もちろんコレイにもね。」

 

 そう言われると従わざるを得ない。「わかったよ。」と短く答える。

 

「わかったなら行動すること。僕はこれからその知り合いに話をつけに行ってくる。コレイ、今日のパトロールは良いから後はよろしくね。」

 そのまま去っていくティナリ。

 

 残されたコレイと僕との間に気まずい空気が流れる。

 

 昨日も森から帰る時ほとんど話さなかったからな…

 

「あたしは…ファデュイから逃げた後、優しい人たちに出会えたから今こうしていられる。だからお前も、ナタで良い人に出会えると良いな。」

 

 彼女の言葉に確かな重みがあった。

 

「ありがとう。僕にとっては、コレイも間違いなくその優しい人だよ。」

 

「私も、アンバーみたいになれたかな…」

 コレイは小声で何やら呟きながら嬉しそうな顔をしている。

 

『そろそろ子供たちのところに行った方が良いんじゃないかしら?』

 時計を見ると、結構な時間が経っていた。

 

「子供たちのところにも行こうか。」

 コレイに声をかけて家を出る。

 

 あ、もちろんナヒーダが一番優しい人だよ。

 

『ふふ、私にとってもあなたが優しい人よ。』

 

──

 

「「「えっ、アルドいなくなるの!?」」」

 

「ちょっと色々あってね。ナタに行くことにしたんだ。」

 

 

「知ってるぜ、ナタって戦争の国なんだろ。」「戦争!?」

「大丈夫なの…?」

 

「急に可愛いじゃないか。大丈夫。こう見えて強いからね(ナヒーダが)」

 

「本当にー?」「チビなのに?」「チビ!」

 

 なんでそんなに強調するの?子供なら許容される範囲のサイズじゃない?

 

 コレイが援護してくれる。

「大丈夫。アルドは昨日の森でも強いやつらを倒してくれたんだ。」

 

「コレイ姉ちゃんがそういうなら…」「じゃあ、思い出に何かプレゼントしようよ!」「コレイ姉ちゃん、あれもう1回教えてよ。」

 

「あれ?」

困惑するコレイに他の子供が答える

「ドライフラワーでしょ!」

 

「ドライフラワーなんて作れるとは、やっぱりコレイは器用なんだね。」

 

「あたしは練習しただけだ…それにこれは師匠が教えてくれたんだ。」

 

 そんなこんなで、森に花をとりに行くことになった。

 

「ここだ。」

 

 色鮮やかな花がそこかしこで咲き誇っている。

「綺麗な花だね。種があったらあっちで育てられるかな?」

 

「この花はここだととても綺麗だけど、外では二日もすれば枯れるんだ。」

「シティで流行って森でゴミが問題になった時にレンジャー隊に師匠がドライフラワーの作り方を教えてくれたんだ。花屋と話して痛む前に交換するようにして、花屋の人にも感謝されたんだ!」

 

「ハハッ、流石ティナリだ。コレイはティナリの話になると楽しそうだね。」

 

「うぅ…」

 

 

 そんなこんなで森でとったその花でドライフラワーを作った。そのままだと持ち運び辛いから髪飾りにしてくれた。

 

「良いじゃん!」「可愛い!」「妖精みたい!」「似合ってると思うぞ。」

 

 僕としては男なのに女の子みたいに褒められると恥ずかしいな…

 

『私も似合ってると思うわ』

 

「ありがとう。」

 少し俯きながら感謝を伝える。

 

 というかナヒーダは見えなくない?

 

『ふふ、珍しい反応だったもの。』

 

 ぐぬぬ…

 

 熱った顔を冷ましていると、ティナリがやってきた。

「そろそろ暗くなってきた。お別れは済ませたかい?」

 

「みんなのおかげで楽しかった。ありがとう!」

 

「俺を楽しかった!」「気をつけてね!」「チビ!」「私も感謝してる…頑張れ。」

 

──

 

 そうして、村長の家に帰った僕はご飯を食べてすぐにベッドに入る。

 

 こうやって親しい人もできて…幸せだね。

 

『この世界を楽しんでくれて、よかったわ。』

 

 前の世界では、親が死んでからちょっとナーバスになってて、ちょっとその時の態度が引きずって周りとなかなか仲良くなれなくてね…

 つまらない話をしちゃったね。

 

『そんなことないわ。あなたは頑張ってきたもの。私が認めるわ。』

 

 ありがとう…

 

 一日中森の中を歩いて疲れたのか、瞼が沈んでく──

 

 

 




一炊の夢は中国の故事。詳しくは邯鄲の夢で検索。
ナヒーダとのイチャイチャを早くちゃんと書きたい…
それが読みたくて書き始めたのに…
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