二つのナツメヤシキャンディ   作:降臨してない異邦人

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8.スメールシティ

 

「世界が…私を…忘れて…」

 

 

 

 夢の中で声を聞いて目を覚ます。

「ふあぁ…おはよう」

 

 

「おはよう、アルド。」

 ティナリの声が聞こえる。体を起こして確認すると今日はしっかり村長の家だ。どうやらもう迎えにきてくれたらしい。

 

「今日は商団に連れていってもらうから早く準備して行かないと。」

 

 少し起きるのが遅くなってしまった。今日もナヒーダの声で起きたし、前の世界の生活リズムが治ってないのかもしれない。

 

 ありがとう、ナヒーダ

 

 

 

 返事がない。

 これまでナヒーダが返事を返さないことはなかった。

 ナヒーダの精神も眠りにつく時間があるのだろうか?

 普通に無視されてるだけか?

 特に何かした覚えはないが…

 

 思考しながら支度を終わらせていく。持っていく物もないので大したものはない。

 

「アルド、行こう」

 

「わかった。」

 ひとまず思考を中断してティナリについていった。

 

──

 

 街までは道があるので歩くのはそこまで苦じゃない。

 ティナリと、コレイや子供たちのことについて話しながら進む。

 

「そういえばファデュイのやつらってどうしたんだい?」

 

「あの後マハマトラに連れていかれたよ。」

 

 ナヒーダ、マハマトラって何?

 

 

「…マハマトラって何?」

 

「罪を犯した人を捕まえたり罰する仕事だよ。アルドが知らないなんて珍しい」

 

「ハハハ…まだ子供だからね」

 

「大丈夫?」

 唐突にティナリが聞いてきた。

 

「何が?」

 

「なんだか余裕がないように見えるよ。これからのことが不安?」

 

 自分でも気づかないうちに顔に出ていたようだ。

 

「まぁ、ちょっとね…」

 ナヒーダが反応しないことが原因だが、正直に説明するわけにもいかないので誤魔化す。

 

「アルド、森では小さな油断が大怪我に繋がるんだ。君の行く道は森ではないけど気をつけて」

 

「もちろんさ」

 ナヒーダのことは不安だが、今更どうすることもできない。

 

 そうこう話しているうちに街についた。

 

「ここがスメールシティだよ。ここでご飯を食べてから行こうか。」

 

 近くの露店でタフチーンという食べ物を食べる。

 ヨーグルトに漬け込まれた肉を葉の香りが引き立てている。米も入っていてしっかりお腹いっぱいだ。

 

 ご飯も食べ終わったのでティナリについていく。

 

 スメールシティは前世ほどではないが道もしっかり整備されてている。

 ところでみんな耳に緑色の何かを浮かべているがここのファッションなのだろうか。

 

 ナヒーダ、教えてくれないかい?

 

 

 …

 

「着いたよ。」

 

 ティナリに声をかけられる。

 商団に着いたのかと思ったが、目の前には舞台のようなものが広がっていた。屋内だし周りも活気があるけど商隊のありそうな雰囲気ではないが…?

 

「ここはグランドバザール。元気が無さそうだったからね。少しここで舞台でも見てから行こうか」

 

 ティナリにチケットを買ってもらって舞台を見る。

 

 少しすると舞台の袖から白と水色の踊り子衣装を身に纏った赤髪の女の子が出てきた。

 露出度が高いなぁ、などという思考は彼女が踊り出すと飛んで行ってしまった。

 

 

 彼女の手の後には水飛沫が上がり、

 

 彼女の足が舞台に触れれば波紋が広がる。

 

 彼女の顔は天使のような満面の笑みだった。

 

 

 そんな幻想的な美しさに心を奪われていると舞はすぐに終わってしまった。

 

 余韻にひたっているとティナリに話しかけられる。

「ここにいると元気が出てくる。耳には優しくないけれど僕はこの雰囲気が大好きなんだ。君はどう?」

 

 舞台の外に目を向ける。

 露店の人たちは笑いながら客に声をかけ、道行く人も楽しそうで、活気に満ち溢れている。

 それに、先ほどの舞台は素晴らしかった。

 

「すごく楽しいところだよ。僕も元気が出てきた。」

 

「それはよかった!それじゃあ、そろそろ行こうか。」

 

 活気のある騒がしい声の中を彼女と共に歩く。

 本当に良いところだ。

 

 ナヒーダと一緒に見たかったな。

 

 

 シティを出てしばらく歩き続けると巨大な木の壁が見えてきた。

 近づくとますますその大きさがわかる。

 

 その壁のすぐ近くには村があった。

 

「ここはキャラバン宿駅、砂漠を通る商隊はみんなこの村を通るんだ。」

 

 村の周りには壁が作られ要塞化されている。中にも武器を持った人が多く、シティとは打って変わって危ない空気だ。

 

 少し歩くと商団の元についた。

 砂漠を渡るだけあって屈強な男たち、そして隣に大きな動物がいる。人の背丈を超える大きさだ。

 

「ティナリレンジャー長、その嬢ちゃんがナタに行くって子供ですかい?」

 

「そうだよ。ほら、アルド。」

 

「ご紹介に預かりましたアルドです。元素力も扱えるので、もしもの時は戦えます。短い間ですがよろしくお願いします。」

 

「ハッハッハ!、礼儀正しい嬢ちゃんだ!敬語はよしな、ティナリレンジャー長に頼まれたってなら問題ないさ!」

 

 男たちが動物に荷物をくくりつけていっている。しばらくして、準備は終わったようだ。

 

「よし、嬢ちゃん行くぞ。」

 

「わかった。ティナリ、短い間だったけどありがとう。」

 

「入林者の安全を守るのがレンジャー隊の仕事さ。大変な境遇だろうけどナタでも頑張るんだよ。」

 

 そうして僕は砂漠へと歩みを進めた。

 

 

 今更気まずくて話出せないとかなら気にしなくて良いよ?ナヒーダ

 

 

 神様だから大丈夫だろうけど…少し寂しいな。

 

 

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