第3話どうぞ!
放課後。逢魔アイランド高校から少し離れたところにある逢魔西公園では、今日もアコースティックギターの音色が奏でられている。
ギターの演奏者は、逢魔アイランド高校の2年生・
「どんな壁も乗り越えていく〜、明日が待ってると、信じているから〜」
静まり返った公園の中でも、彼は笑顔で歌い続ける。最近染めた明るい髪色が、夕陽に照らされ一際輝いていた。
喜多川は1番のサビを歌い終えると、ギターに取り付けていたハーモニカを吹こうと口を近づける。すると、展望台に植えられていた針葉樹の陰から空気のこもった拍手が鳴り響いた。
演奏の手を止めてじっと木を覗き込む喜多川。木の向こうから出てきたのは、三つ編みを肩にかけた紫髪の少女だった。
「素晴らしいですー、私あなたのファンになっちゃいました!」
「ふぁ、ファン? なんや嬉しいな、まさかデビュー前からファンができるなんて」
喜多川は鼻の下を伸ばしながら、ギターを持って少女の元に行く。
「こんな素晴らしい才能を持ってるのに、デビューしてないなんて勿体ないですよー」
「そ、そう? まあ何回か有名な芸能事務所に売り込みとかオーディションとか受けに行ったけど……全然あかんのよ」
「そんなあ、こんなに人の心を動かす曲を作れるのに……」
少女から向けられる潤んだ青い目に何故か心が踊り、彼女から発せられる褒め言葉一つ一つに頭がのぼせてしまう。
「ああ泣かんでよそんな。まだ荒削りやし、それに勝負事には運がツキもんやん」
「運、ですか?」
「せや。しゃあけど言うやん、『数打ちゃ当たる』って。心の中で感じたこと、響いたことを曲にして届ければいつかはデビューできるはずや」
少女に背を向けて自身のポリシーを語る喜多川。あまり気にしてないように振舞ってはいるものの、夕陽が目に染みたのか彼も目が潤んでしまっていた。
「よっしゃ、今日は出血大サービス! 俺が初めて書いた曲、聞いてくれへんか?」
「ええ! いいんですかあ?」
少女は両手を合わせて目を輝かせる。その手は妙に膨らんでいたが、喜多川はそれに気づかず彼女の方に向き直って笑顔を振りまいた。
「家族以外で初めてのファンや、俺はファンを大事にするシンガーソングライターやからね」
「私嬉しいです! ここまでサービスして貰えるなんて……」
「ええねんええねん。じゃあ聞いてください、曲名は──」
喜多川がベンチに戻ろうとしたその時、胸に鋭く何かが突き刺さった。
見ると、ファンを名乗った少女がルビーの鍵を両手でまっすぐに刺突している。彼女は女神のような微笑みを喜多川に向けつつ、鍵をゆっくりと回していく。
「あなたの曲、この街にもっと響かせてみませんか?」
「なっ、何……を……」
少女が鍵を右に90度傾けると、喜多川の体から黒色のオーラが発現する。やがてそのオーラは彼の体を飲み込み、喜多川の視界は複眼レンズのように多数に展開されていく。背中からは透明な羽が生え、両腕からは鋭いカッターが伸びてきた。
ハーモニカとアコースティックギターが彼から離れると、喜多川はその姿をセミの悪魔・シケーダマギーへと変化させていた。少女は彼の進路を開けるように横へはけると、両手で彼を扇動する。
「さあ、セルフプロデュースしちゃってください」
「俺ノ……俺ノ歌ヲキケエエエエ!!」
シケーダマギーは助走をつけてジャンプすると、背中の羽根で空へと飛び立っていく。少女はシケーダマギーに手を振って見送ると、落ちていたアコースティックギターのボディを勢いよく踏み潰した。
花蓮がグレースで働くことになって数日後。彼女は今日も学校帰りに店に寄り、エプロンに袖を通して接客に応じていた。
赤井が研修中と分かるようにと渡した初心者マークを胸につけてはいるが、ホールの仕事をほぼ完璧にこなしている。優希人は彼女に付き添ってはいるものの、特に助言や手助けが必要なことは起きなかった。
そうして気づけば夜の6時半。短い時間だったが、バイトの終了時刻が近づいていた。花蓮はラストオーダーの有無を聞くべく、本棚の近くの席でホットコーヒーを嗜む一也の元へ行く。一也も壁掛け時計で時間を確認すると、カップを置いて彼女の方を向く。
「ラストオーダーだろ? ないよ。それより、清嶺が前にバイトしてた──」
「かしこまりました、ごゆっくり」
花蓮は一也の話に耳を傾けることなく、キッチンの洗い物を片付けに向かってしまった。一也は両手をあげるジェスチャーを取り、カップ片手に店内の優希人を探す。
優希人はすぐ前の席で机を拭いていたが、その目線はキッチンの方を向いている。一也は指を鳴らして彼の注意をひくと、向かいの席に逆座りしてコーヒーを口にする。
「何、どうしたの米子くん」
「いや、ちょっと街の方で奇妙な事件が起きててな。それが清嶺の前のバイト先と関係があるから」
「……あのスーパーがどうかしたの?」
優希人も椅子に逆座りして彼の話に耳を傾ける。清嶺と違って自分の話に食いついてくれる優希人に、米子は顔をニヤつかせながら話を続けた。
「つい先週、あのスーパーが廃業に追い込まれたのは知ってるよな。一応原因はガス爆発ということになっている」
「そう、なんだ……知らなかったなあ」
「だが不可解な点が3つある。1つは爆発の時間だ。警察の発表では20時頃だったらしいが、それより前からあのスーパーで規制線が張られていたはずだ」
米子は口を潤すようにコーヒーを飲む。
優希人は初めてデビンスとして戦った時のことを思い出していた。あの後誰かに銃を向けられ、逃げるように去っていた。その後のスーパーがどうなっていたかは彼自身把握していなかった。
「2つ目は火災発生からの対応。普通あれだけの火災が起きたら、消防とか救急とかやってくるだろ。にも関わらず、その現場にやってきたのは……」
米子はサッと懐から写真を取りだしてみせる。そこには白い防護服の特殊部隊と、銃を携行したスーツ姿の男女が規制線の向こうに立っているのが写っていた。
優希人はそれを食い入るように見ていたが、やがてその男女の片方がデビンスとして顔を合わせた女性であることに気づく。
「そして3つ。これは俺もつい最近までそうだったんだけど……」
「米子くんも?」
「ああ。理由は分からないが、この件に関して誰も興味を持ってなかったんだ。俺だって街中に飛ばしてた"ハト"の回収してる時に気づいたんだよ」
「ハト?」
優希人が首を傾げると、一也はグレースの窓を指さす。一瞬何かキラッと光ったと思うと、そこには小型カメラを搭載したドローンが上空を飛んでいた。
「既存のドローンにステルス機能を搭載した特注品さ。AIに俺の興味関心を学習させ、いつでもどこでも情報収集ができるようにしてある」
「それ普通に犯罪じゃないの……まさか、清嶺さんのあの写真も──」
一也は「ご馳走様」と言ってお代を机に置くと、コートに袖を通して店の扉に手をかける。
お金をレジにしまおうとする優希人が来るまでその場で待つと、彼の肩を掴んで小声で話す。
「あと最後にもう1つ。この件に関して、必死に情報操作をしようとしてる奴がいる事は確かだ」
「情報操作?」
「もしかして、かなーりヤバい事件だったりするかもな」
逢魔市から海峡を渡った隣町の山頂、そこには時代錯誤の洋館がそびえ立っていた。
明日海は零吾の黒いアウトランダーに同乗してそこにたどり着くと、玄関扉の虹彩、指紋による認証を順に受ける。扉のロックが外れる音が鳴ると、今度は玄関前を監視するカメラに2人で人差し指と小指を立てるデビルサインを向けた。
『入りたまえ』
どこかに隠されているスピーカーから枯れた男の声が響くと、玄関の扉がゆっくりと開いた。2人は玄関ホールを抜けて、絵画室や洋間を通り過ぎ、奥にある書斎の前に着く。
書斎の前で控えていた執事にハントガンブレードと腕につけた通信機器を渡すと、扉を叩いて部屋の中に入った。
書斎のデスクに座っているのは、全身を包帯で巻いた異様な男だった。彼は前に置いてあったノートパソコンをパタンと閉じると、明日海と零吾のために用意した椅子を手のひらで示した。
「掛けたまえ」
「失礼します、木灰さん」
男──
写真にはこれまでに現れたマギーに加え、悪魔や人狼の力を使って戦うデビンスの姿も収められていた。木灰は写真の1枚1枚に目を通しながら、前に座る零吾に声をかける。
「T、君は新種のマギーについてどう思う?」
「新種ですか?」
「そう。彼はこれまでのマギーと違って、他の誰かによる要因ではなく自分の意思で力を解放している。そしてそれは、人でなく他のマギーに向けられている」
木灰の言葉に、零吾は忌憚のない意見をぶつけてみた。
「現段階では、警戒の手を緩めるつもりはありません。ベルズィーズ同士の仲間割れとも考えられます」
「ベルズィーズ……ああ、いたねそんなの。悪魔神ベルーゼを呼び覚ますお遊びグループだったかな」
「そのお遊びで今、逢魔市が甚大な被害を受けています。組織の洗浄音波だけでは記憶操作が追いつかないほどに」
すると、それまで黙っていた明日海は真っ直ぐに右手を挙げた。隣でそれを静止しようとする零吾だったが、木灰は構わず彼女に意見を促した。
「私は彼に2度危機から助けられています。そして私だけでなく、市民を守るために活動しているようにも見えました。仮に内輪もめだったとしたら、マギーを処分するだけに留まるのではないかと」
「そうか……そう、かもしれないね」
「何を仰りたいのでしょうか」
木灰は引き出しを再び開けて写真をしまうと、代わりにUSBを取り出して明日海に投げ渡した。
「エージェントN、君に新しい兵器の受け取りを頼みたい。兵器の受け渡し場所はそこに載せてある」
「えっ、は、はい! いや了解!」
「その間、逢魔市の巡回はエージェントTに任せる。必要があれば待機しているRとSも向かわせよう」
木灰は指令を伝えると、立ち上がって彼らに背を向ける。彼の前にある窓からは海に浮かぶ逢魔市の夜景が望め、亡霊のように包帯で巻かれた顔がぼんやりと反射している。
窓越しにエージェントたちが部屋から立ち去るのを確認すると、逢魔市の外れにある巨大な空き地に目を向けるのだった。
「ナンバーの若手は怖いもの知らずか……」
月曜1限の公共の時間。
優希人のクラスでは現代の経済についての授業が行われていた。担当しているのは銀縁の眼鏡をかけた初老の先生だ。
市場経済のしくみについて解説すべく、生徒たちをグループ単位で区切って問いを投げかけていた。
「最近君たちの周りなら……野菜か。野菜をはじめとしたモノの値段が上がったりするのは何でだろう。反対に値段が下がったりする場合は何が起きているんだろう。グループで考えを話し合って──」
先生がグループワークを促すと、4人ほどのグループを作って机を向かい合わせる。優希人は男子2人、女子2人のグループで話し合うことになった。
「まーたグループワークかあ」
優希人のグループの男子生徒は、ぶつぶつ言いながら文句をたらしながら窓を開ける。それに気づいた女子が口をとんがらせて止めさせようと苦言する。
「ちょっとやめてよね、ここたまに虫入ってくるんだから」
「いいじゃん空気こもってるし」
男子生徒が窓を開けると、うっすらとセミの鳴き声が聞こえてきた。
「あれ? まだセミっていたんだ」
セミの鳴き声は徐々に大きくなり、それにつれて羽音が遅れてやってくる。
優希人も振り返って窓の方を向くと、突然視界が開けて青空の彼方にいる異形を目にした。それに気づいた優希人はカバンからイグナイフを取り出すと、手の中に収めたまま大声をあげた。
「みんな伏せろ!!」
優希人が忠告した次の瞬間、空の向こうにいたシケーダマギーが教室の窓を突き破って侵入してきた。シケーダマギーは窓の近くにいた男子生徒を踏み台にして辺りを見回すと、セミのような鳴き声を出しながらがなり声を出す。
「オ前ラ、俺ノ歌ヲ聞ゲー!!」
シケーダマギーの放つ奇声は、教室にとどまらず他のクラスにも被害を及ぼした。生徒たちは必死に耳を塞いでみるも、その効果はほとんどない。マギーの声を聞いた生徒や教師は脳が揺れるような感覚に襲われ、その場で嘔吐する者や失神する者が続発する。
優希人は目の虚に響く声に苦しみながらも、隠していたイグナイフをシケーダマギーの足に突き刺して鳴くのを中断させる。
「みんな体育館に避難するんだ!」
公共の先生に促され、優希人たちは教室を飛び出して体育館を目指す。体育館までは直通の渡り廊下を抜けてすぐの場所だ。
優希人はイグナイフを回収してクラスメイトと共に体育館まで道を急ぐが、頃合いを見て集団から抜け出し反対方向に走る。それに気づいたのは委員長の花蓮だけだった。
「黒裂? どこ行くんだ黒裂!!」
物が散乱する廊下を抜けて教室の前にたどり着くと、そこにはシケーダマギーが両腕のカッターを研ぎ澄ませて待ち構えていた。彼の足元には数人の生徒と公共の先生が倒れている。見る限りでは全員気を失っているようだった。
「オ前、俺ノ曲聞クカ?」
「喋る奴もいるんだね。申し訳ないけど、君のライブだけはゴメンだね」
優希人はイグナイフで掌を切りつけ、腰にデビルゲートを出現させる。
「ナラ、オ前ノ悲鳴ヲ聞カセロ!」
襲いかかってくるシケーダマギーの斬撃を避けながら右側にイグナイフ、左側にはデビルデビンキーを装填した。
【エンゲージ】
【セット・デビル】
「変身!」
シケーダマギーの腰に一発、流れるように顔面にハイキックを食らわせて蹴り飛ばすと、指を鳴らしてデビンキーを回した。
【オープン・ユア・ハート】
【デビルフォーム】
優希人はデビンスに変身するとシケーダマギーを掴みかかり、割れた窓枠から外に飛び出した。落ちた先の自動販売機をぺしゃんこにしてしまい、両者共にふらつきながら立ち上がって対峙する。
先に仕掛けてきたのはシケーダマギーだ。両腕のカッターを広げて距離を詰めると、デビンスの腹を刺突しようとする。
「くそっ!」
デビンスは咄嗟に避けてイグナイフを取り出す。
だが武器のリーチ差は大きかった。デビンスが踏み込んで懐に飛び込もうにも、手甲を斬られてイグナイフを離してしまう。イグナイフを回収しようにも、シケーダマギーのカッターが首先に突き立てられる。
ゆっくりと後方に下がっていくデビンス。背後には調理実習室の壁がそこまで迫っている。
「これはまずい……」
デビンスはシケーダマギーに気づかれないようユニコーンデビンキーに手を伸ばそうとする。
その時、シケーダマギーの背中に何発もの光弾が撃ち込まれた。倒れるシケーダマギーに代わってデビンスの前に現れたのは、ハントガンブレードを構えた零吾だった。
「貴方は!」
「ん? お前が例のやつか。俺の後輩が世話になった」
零吾は起き上がったシケーダマギーに再び発砲する。弾はマギーの身体に加えて羽根にもヒットしており、真ん中に大きな穴を開けていた。
シケーダマギーは胸を抑えて苦しみつつも、再び奇声を放ってデビンスと零吾を撹乱しようとする。
「くっ、またか!」
「アアッ、やりやがったな!!」
零吾は耳を塞ぐのが遅れてしまい、その場にうずくまって震え上がる。一方のデビンスは顔を覆う仮面がそれを防いでくれたのか、街の喧騒程度の影響で抑えられていた。
シケーダマギーはその隙に、裏にある教員や来賓用の駐車場まで逃げていく。デビンスは零吾を近くの自販機コーナーにあるベンチに寝かせると、鍵束から1本のデビンキーを取り出して駐車場に向かった。
「俺ノ歌……聞ケヨオオオオオ!!」
シケーダマギーは駐車場の真ん中でカッターを乱暴に振り回していた。既に生徒や教員は体育館に避難しており、そこは嫌に静けさが増していた。
そんな中にもう1人の怪物が現れる。デビンスだ。
「そんなに聞かせたいなら、それなりの場所に案内するよ」
デビンスはデビルゲートからデビンキーを取り外すと、新たなデビンキーを代わりに突き刺した。
【セット・フランケン】
持ち手にボルトのマークが刻まれた鍵を突き刺すと、鍵から小さな稲妻が走る。
デビルゲートから飛び出した手は青白くなり、手の甲にはボルトが突き刺さった。奥にある目は緑に輝いて新たな力に呼応する。
「デビルチェンジ!」
デビンキーを回すと、デビンスに向かって上空から雷が放たれた。デビルフォームの装甲やアンダースーツが衝撃で剥がされ、肉体がデビルゲートを通じて大柄に補強される。
グレーのアンダースーツに緑の装甲、眼帯が焼け焦げて見えた虚には銀色のボルトが突き刺さる。頭部の角が抜け落ち、代わりにその抜けた跡にパッチワークが縫われた。
【 モンスター・ウィズアウト・ネーム】
【フランケンフォーム】
フランケンフォームに変化した瞬間、デビンスの身体から緑の電撃が放たれてシケーダマギーに命中する。電撃は周りの車にも影響を及ぼし、あちこちから警報器が作動して静寂を切り裂いた。
「痺れるでしょ?」
「アァ……ロックダネェ!!」
すぐさま復帰したシケーダマギーは、両腕のカッターを勢いよく振り下ろしてデビンスに攻撃する。しかし刃が当たった瞬間、デビンスの体内に流れていた電気がマギーに一気に流し込まれた。
「アバパパバババ」
「さあ、お休みの時間だ」
デビンスの両腕に大型の手甲『フラン
シケーダマギーはカッターを腕から引き剥がして尚も立ち向かってくるが、デビンスは電撃を纏った右ストレートで迎え撃つ。地面に倒れたシケーダマギーに、今度は腹に蹴りこんで電撃を食らわせた。
「シ、シビレ……」
「これで決めるよ」
何度も電撃を食らってグロッキー状態のシケーダマギーに駆け寄りながら、デビンスはデビンキーを回して力を解放した。
【フランケンストライク】
体内中の電気を右腕に集中させると、走り出した勢いのままシケーダマギーに打ち込もうとする。
「しびれる……」
その時、シケーダマギーから黒いオーラが放たれると、その姿は一瞬にして元の喜多川に戻った。技を放とうとしたデビンスはすんでのところで踏みとどまって喜多川の顔を覗き込む。
「人間、なのか……?」
「た、助け……て……」
しかし喜多川はすぐにシケーダマギーに戻り、デビンスにドロップキックを食らわせた。
丁度その時、耳鳴りから解放された零吾が駆けつける。彼の前では転倒するデビンスと彼に襲いかかろうとするシケーダマギーという光景が広がっていた。
「さっきのお礼だ。援護する!」
零吾はハントガンブレードからマギー目掛けて光弾を放つ。それに気づいたデビンスは起き上がって、マギーを庇うようにその攻撃を食らった。
「やめろ! ぐはっ!」
「マギーを庇った?」
シケーダマギーはデビンスの至近距離から奇声を放って隙を作ると、そのまま裏門から逃走しようとした。
それを追いかけようとするデビンスと零吾だったが、彼らの前に紫髪の少女が現れる。彼女はアクセサリー代わりに首につけていたルビーのデビンキーを取り外すと、ポケットから大型の黒い南京錠を取り出した。
「させませんよお、大事な大事なマギーちゃんなんですから」
「お前……ベルズィーズだな」
零吾はハントガンブレードの銃口を少女に向ける。
「あら! よくご存知で」
「そのキーとデバイスを置いて、両手を頭の後ろで組め! 早くしろ!」
荒々しく迫る零吾だったが、少女は意に介さずデビンキーを南京錠に突き刺して一回転させた。その瞬間、零吾は銃を発砲して彼女を攻撃する。
デビンスはとっさにそれらを庇って零吾に詰め寄る。
「何するんですか! 相手は──」
「丸腰じゃねえし、人間じゃねえよ。よく見ろあれを!」
零吾に促されて振り返ると、そこには赤黒いオーラに包まれた少女の姿があった。少女の背中から数十本ものバラの茎が生えて身体を包み、その可憐な顔を覆い隠す。
「その人の言う通りです。人間じゃありません。私の名前はヴァイオ、そしてもう1つの名前は……」
覆い隠された顔の部分から大きなバラが開花すると、その中央からティラノサウルスを模した顔が突出した。
「悪魔崇拝集団ベルズィーズ、特攻隊長ローズマギーだ!!」
ヴァイオが変身した怪人・ローズマギーは、全身の関節から生えたバラから花びらを放って名乗りを上げた。ローズマギーは右の掌から棘の生えた触手を出すと、それを蛇腹剣に変えて切っ先をデビンスと零吾に向けた。
「さあ、俺と遊ぼうぜ!!」
フランケンフォームの必殺技、不発……
次回もお楽しみに