ヘルメット団員です。血反吐吐きながらがんばります   作:はみがきこな

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n番煎じのお届けです



ヘルメット団の団員になりました。これからがんばります。

 んんんん……。

 眩しい。

 俺の部屋、こんなに日、当たるっけ……。

 

 んんんんんんんん? 

 めっちゃ風当たるんだけど……。

 あ、口ん中に砂! ジャリジャリする。

 

 あれ? 

 外じゃね? 

 ぱっ、と目を開く。

 

「──ないないないないないない」

 

 塾から帰ってきて、温かい布団で寝たんだよ、俺。

 弟と布団取り合いながら、眠ったんだぜ? 

 

 なんで、青空が広がってんだ……? 

 青すぎだろ。

 

 え、なんですかこれ、誘拐? 

 ……いや、家ん中いたし……。鍵かけたし……。誘拐されて地面にほっぽかれるなんてありえないだろうし……。

 何……? 

 ほんと、何……? 

 

 俺は、困惑しながら、むくり、と起き上がった。

 起き上がって見えたのは──砂の世界。

 

「砂漠かよ!?」

 

 つい声に出してしまったが──いや、仕方なくないか? 

 目が覚めたら砂漠でした……ってどういう状況だよ。逆によくツッコミで耐えたよ。

 

「ど、どういうことだよ……」

 

 どういうことだよ……? 

 夢遊病とかそういうの? ……寝てるうちに飛行機乗ってエジプトでも来たのか……? さすがにありえないよな……。

 …………………………。

 若干、心当たりは、ある。

 ……ちょっとそういうあれ(厨二病)を疑われるかもだけど……。

 

 最近ホットな、あれだ。

 異世界転生だ。

 

 ……そう思ってから5秒ぐらいしてから、ぴきゃーんと、天啓を得た。

 異世界転生っていったらさ、お決まりのあれがあるじゃん! 

 

 美少女、なんじゃね……? 

 そう思ってしまったら止まらない。

 自分のあの大事なアレがあるかを確認する──! 

 ………………。

 ………………。

 ………………。

 ──ある。

 ええ……? 

 ついでに、今着ているものがどこかの学校の制服だと言うこともわかった。なんでこんなもの着てるんだ……? 

 

 はぁ〜、とため息をつきながら青空を見て、地面に手をつけた。

 その時に、手に、何か歪な感覚を覚えた。

 

「ん?」

 

 石とか、そういう(たぐい)の感覚。

 そういう類の──機械? 

 

 体を捻って後ろを見れば、そこには、()()()()()()

 砂から、黒い脊椎が突き出ていた。人の……ではない。ロボットみたいな関節をしている。

 鉄のような──脊椎。

 脊椎のような──鉄。

 

「──んだよ、これ……?」

 

 脊椎。

 機械の、脊椎だ。

 公園に咲く花みたいに、地面から突き出ている。

 

 ……抜いてみるか? 

 気になったら止まらない。

 埋まっている下はどうなっているんだろう。

 オーパーツ的なやつかな。

 

 ──止まる理由は無いよな。

 

 それを掴んで、引っ張りあげる──────!!!!!! 

 

 脊椎は、砂を押しのけ、押しのけ──やっと。

 やっと──地中から全て出た。結構重いので、すぐ地面に降ろしてしまった。

 ドサリ、そう音と砂埃を立てた。

 

「何、コレ……?」

 

 何だというのだろう? 自分の背丈くらいの、よく分かんない機械の脊椎。

 地面に横たわるその機械を睨み、思考する。

 

 思考する。

 思考──する。

 思考────しても。

 何も分からない。

 

「触ってみっか……」

 

 考えても分からないんなら、なんでもいいから実行するしかない。

 ゆっくり手を伸ばし、ピトッ、と触れる。冷たく、硬い感触が手を伝う。

 根元のほうから先端へと、触っていく。

 それまでは、何もなかった。 

 脊椎の先端、まるで棘みたいなその面を触った時。

 

 俺の体に、異変が起きた。

 

「ぅ、かっ────────!!!」

 

 苦しい。

 身体中が痛い。

 ドクン。

 心臓が強く跳ねる。

 

「あああ──────────!!!?」

 

 全身が、痛い。

 呼吸が、うまくできない。

 ドクン、ドクン。

 心臓が、踊る。

 

「──────────っはぁ!!!」

 

 痛みの連鎖は、終わった。

 

「っはぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

 荒い息が溢れる。

 心臓が脈打っているのが分かる。

 

「はぁっ、はぁっ……」

 

 1分くらい呼吸を繰り返していたら、少しずつ楽になってきた。

 

「はー……クソ。触んじゃなかった……」

 

 後悔先に立たずというが、しかし、後悔せずにはいられなかった。

 ちらっ、と元凶である機械の腕を見る。

 

「は?」

 

 ──無い。

 どこにも無い。

 まるで──まるで何だ? 俺の今の脳みそでは上手い比喩表現を思いつくことが出来なかった。

 そんなことはどうでもいい。

 消えたのだ。

 あの奇怪な機械の右腕は。

 

「……はぁ……」

 

 何、これは。

 ホントに現実? や、異世界かもしれないけどさ……。

 

 いいや。

 キャパオーバーだ。俺の脳にはありあまる。

 もう寝まーーーーーーす! 砂漠で寝たら死ぬかもしんないけど。

 

 ドサ、と砂の大地に背を預ける。

 

「おやすみー……」

 

 なんて、この時の俺は、呑気にそんな事を言っていた。

 呑気に、何も考えずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……」

 

 ゴッ、ゴッと時々揺れる地面。

 時々唸るエンジン。

 体育座りしてる俺。

 

 上手く回らない頭ん中を無理やり動かして状況把握する。

 車ん中だ。

 トラック? 

 トラックの、コンテナ? 

 

「は……?」

 

 拉致? 

 ガチ?

 マジ? 

 

 疑うしか出来ない俺に、現実を突きつけるのは、目の前にいる、フェイスヘルメットを付けた女。

 そいつは。

 銃を携えていた。

 

「ひっ……」

 

 怖い。

 健全な日本男児として、銃なんて見たのは、映画の中とアニメの中と動画配信サイトだけだぞ。

 

「ん、起きたか」

 

 そいつは俺を見て、そう言った。

 俺は緊張のあまり、何も言葉を発せなかった。

 

「……水、飲め」

 

 そいつは俺の右足の近くのペットボトルを指差して、それだけ。

 それだけ言った。

 

 確かに喉は渇いている──緊張か、暑さかどっちかのせいで。だから、水はありがたかった。

 

 震えている右手を伸ばしてペットボトルを掴む。

 蓋を外して、中身の飲料水を口に含む。それは、カラカラの口を潤し、体内を潤してくれた。

 水って、こんなに美味しかったのか。

 

 そんな水のありがたみに感謝する暇なく、そいつは話しかけてきた。

 

「お前……砂漠で寝てたから、助けたんだが」

 

 ……? 

 助けた……? その銃はなんなんだ? 助けた奴が持ってて良いもんか?

 

「た……助けた?」

 

 コクリ、とそいつは頷いた。

 

「私たちはお前に貸しを作った。お前にはその貸しを返してもらう」

 

 ……? 

 何勝手なこと言ってんだ……? 

 

「か……貸し? 何言ってんだ、全然分かんねぇよ……!」

「簡単な事だ」

 

 そいつは、いとも簡単だろう、という口ぶりで言う。

 

「私たちに与しろ」

 

 そいつは続ける。

 

「私たちはカタカタヘルメット団。裏社会のハイエナだ」

「なっ……なんなんだよ、それ! 急に裏社会とか……!」

 

 俺の喚きには一言もリアクションを取らずに、そいつは話す。

 

「今現在、我々は人材不足に追われていてな。今すぐにでも戦力が欲しい」

 

 淡々と。

 映画やアニメなどでしか聞かない言葉が、どんどん出てくる。

 

「勿論、報酬は用意する」

 

 何だ? 

 意味が分からない。

 ドッドッドッ、と心臓がうるさく鳴る。

 

「……急にこんな話をされても、困るよな」

 

 そいつは、そんな、優しい言葉を。

 そんな言葉を、急にかけてきた。

 

「ただ、私たちも本当に困っていてな。お前の助けが必要なんだ」

「なっ……何も出来ねえよ、俺」

「出来るさ。君も、このキヴォトスに生まれた一人なのだろう?」

「……は?」

 

 キヴォトス? 

 何処だ? 

 

「ちょちょちょ、ちょっと待て……。俺の生まれは日本だ」

「ニホン?」

「日本をご存じでない!?」

 

 本格的に異世界か、これ! 

 

「まあ何処だか知らないが、君が良い戦力になることを期待するよ」

 

 その言葉を言い終わると同時に、まるで計算されたみたいにピッタリと、トラックが停まった。

 運転席にいた奴らがコンテナを開けて、あいつは出ていった。

 そして最後に。

 

「砂漠で生きていくのは難しい……早く決めないと死ぬぞ?」

「は、おい待て」

 

 その言葉はどこにも届かず、ただ宙を揺らした。

 俺も立ち上がって、その開いた扉から外へと飛び出した。

 

「うわ、眩し……っ」

 

 外では太陽がこれでもかというほど光っていた。

 それとは違って、コンテナの中は光が少ししかなかった。そんな暗さに慣れた目が急に太陽の光に当たったら、そりゃあ眩しいだろう。

 ぎゅっと目を瞑って、瞑って、開く。

 そこもまた、砂が散乱していた。

 寝る直前にいた場所と違っているのは、建物があることだ。廃虚だが、人工物があるという、それだけで安心感がある。

 

 ざっ、ざっ、と砂の大地に足跡を残しながら、前に続いている足跡を追う。

 足跡は、あの廃墟に続いていた。

 拠点だろうか。

 

「とりあえず行くしか、ねぇよな……!」

 

 途中砂に手を触れ、バランスを取りながら走る。砂の上は走りにくかった。

 靴の中に砂が入る。

 それでも走って、追いかける。

 

 アイツの背中はそう遠くない。このまま走れば直ぐに追いついて、色々話せるはずだ。

 色々話して、食料でも少し分けてもらって──どこか行こう。

 

 ザッザッ、と音を立てながら走って、アイツの肩に触った。

 

「……おい」

「何だ?」

「……少し話したいんだ」

 

 そう言ったら、腹部に何か硬い感触がした。

 見れば、アサルトライフルの銃口があった。

 

「……くそ」

「残念ながら我々にそんな時間は無くてだな。大人しく従え。戦うだけで衣食住がついてくるのだぞ? お前にとっても、不利な条件ではないだろう」

 

 クソ。

 何で、こんな目に遭わなくちゃいけないんだ?

 

「……本当にすまないな」

「謝罪の気持ちがあるんなら、帰してくれよ」

「ふっ……。帰る場所もないだろう? そのニホンだとか言う場所に行く方法は、恐らく無いぞ?」

 

 ……そんな事は、若干分かっていた。

 直感だ。

 しかし、面と向かって言われると、堪えるものがある。

 

「……だよな」

「ん? 大人しくなったな、着いてきてくれるのか」

「それしか無さそうだからな」

 

 あの暖かい家に戻りたい。

 あの柔らかい雰囲気に包まれたい。

 しかし、それが無理だと言うのなら。

 行くしかない。

 

「なら、ボスに伝える」

 

 そう言って、そいつはポケットからトランシーバーを取り出し、俺に背を向け、ヘルメットを外し、耳に当てた。

 

「こちら黒川。1人入団志願の者が──はい、分かりました」

 

 ソイツは、ヘルメットを脇に抱えて、振り向いて言った。

 初めて素顔を見たソイツは、美人だった。

 クールな顔をしている──カッコいい、というのが褒め言葉になるのだろうか? ならなくても、俺はカッコいいと思った。ヘルメットのどこにしまっていたのか分からない、背中の半分まであるポニーテールも、凛々しさを向上させている。

 

「入団おめでとう。名前は?」

「……か、カスム。古草カスム」

「カスム。これから君にはカタカタヘルメット団で働いてもらう」

 

 ふむ。

 働く、ねえ。

 職業体験くらいしかやったことないけど。

 

「が。その前に、一旦休憩がいるだろう? 存分に休め」

 

 ……え?

 優しくね?

 てっきり、こう、さっさと働け! みたいな事言われると思っていた。

 

「……この口調も疲れるんだ。早く行こう」

 

 手を掴まれ、引っ張られた。

 やべ。

 なんか、ドキドキする。

 

「私の名前は黒川ヒロイだ」

「お、おう……。よろしく」

 

 ヒロイは、俺の手を掴んだまま、古びた建物に向かって歩く。引っ張られる形で、俺もそれに着いていく。

 建物の入口らしい扉を開くと、何人かのヘルメットを被った人が出迎えてくれた。

 

「黒川さん、こんにちは! ……隣のは?」

 

 "の"っつったぞ、"の"って。

 モノ扱いですか俺。

 

「新人だ」

「え、マジすか」

「ああ」

 

 恐らく部下らしい人は、手を差し出してきた。

 

「よろしく」

「……よろしくおねがいします」

 

 手を握る。

 

「大変な事もあるだろうけど、頑張れよ」

 

 手を離し、先に歩いていたヒロイに駆け寄って付いていく。

 

 ヒロイは広いリビングの様な場所を突っ切り、階段を上った。

 階段を上ると、ドアが沢山ある廊下に出た。

 ヒロイは、その廊下の一番奥の、右側のドアを開けた。

 

「ここがお前の部屋だ。何か不便があっても、私達にはどうすることもできない」

「そりゃ、不便そうだな……」

「手伝う事は出来るが」

「例えば?」

「料理とか」

「家庭的……!」

 

 ヒロイは、俺の部屋の前のドアを開けた。

 

「私の部屋はここだ。じゃあな」

「え、あ、じゃあ」

 

 ヒロイは、廊下に立っている俺を残して、部屋に入ってしまった。

 廊下は、フィラメントが切れかけている電球で、淡く照らされていた。

 

「じゃ、俺も」

 

 後ろを振り返って、鉄製のドアノブに手をかける。

 回して引くと、ドアが開いた。

 

 部屋の中は簡素なもので、机と椅子と布団、掃除ロッカー、それとホコリがあった。  

 

「こりゃ、掃除しねーとな……」

 

 掃除なんてガラじゃないが、やるしかないときはある。

 掃除ロッカーからホウキとチリトリを取り出し、軽く清掃を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 パッパッ、と手を叩く。

 だいぶ綺麗になった。

 やりきった感が出た。

 

 床に敷いてあった布団に寝転がった。砂とは違う柔らかな感触を味わいながら、色々考える。

 いや、予想以上にいい奴らだった。

 ヘルメット被ってて、銃持ってんのに、接しやすい奴らだった。

 建物に入って直ぐ、「よろしく」だとか歓迎の言葉を言われたときは嬉しかった。

 勿論、家には帰りたい。

 が、ここもまた心地よくて良い場所だろうという事も、確かだった。

 

 うん。

 衣食住あるっつってたし。

 死ぬことはないだろう。

 そう考えると、安心できた。

 

「ふぅ〜……」

 

 外はまだ明るいが、眠くなってきた。 

 ま、昼寝は悪いことじゃないし。

 

「おやすみ〜……」

 

 ねま〜す。

 

 と、思ったその瞬間。

 赤い光が、俺の体を包んだ。

 ウウウウウウ、ウウウウウウという警報が、否が応でも脳を覚醒させ、警戒させる。

 

「なッ……何だよ」

 

 起き上がって、部屋から出る。

 ヘルメットを被った団員達が、各々の得物を持っていた。

 

「何が起きたんだ!?」

「見てわかれ、襲撃だ!」

 

 ヘルメット団員の1人が、警報に負けないくらいの音量で叫んだ。

 

「クソッ、アビドスの奴ら……!」

 

 階段を駆け下り外に出てみれば、4人の少女らが、ヘルメット団員を攻撃していた。

 "戦闘"、というよりは"狩り"に近い戦いが繰り広げられていた。

 4人の狩人が、ヘルメット団員を狩っている。

 戦慄を覚えた。

 4人の生徒が、銃を当たり前の様に使っていたから、ということも関係している。

 怖い。

 怖い。

 怖い。

 

 じり、と後退りする。

 逃げたい。

 

 そんな時、肩に、ポン、と手が乗った。

 

「私が出る」

「ヒロイ……!」

 

 1人のヘルメット団員が、ヒロイに駆け寄った。

 

「無理だよ、逃げな」

「私が行かずに誰が行く?」

 

 それだけ答えて、ヒロイは出ていった。

 

「ああもー! ぜってームリなのに……! なんでアイツ意地張るかな! ほら、残った奴らは避難しろ!」

 

 皆んな支度して、出ていく。

 どんどん人数が減っていく。

 

「お前! 新人! さっさと逃げろよー!?」

 

 最後にそう言って、出ていって。

 出ていって──俺は、1人になった。

 ドアが、バタン、と閉じ、光を遮断した。ランプの真っ赤な光が闇を照らしていた。

 

 逃げないと。

 

「逃げないと」

 

 でも、足は動かない。

 もう一度、外を見た。

 

「ヒロイ……どこだ」

 

 恐らくヒロイであるヘルメット団員を見つけた。

 彼女は、銀髪の、狼の耳のようなものが生えた、マフラー少女と戦っていた。

 マフラー少女は、鋭い蹴りをヒロイの腹部にぶち込んだ。

 そして、マフラー少女はヒロイの腹部を銃撃した。ヒロイは辛うじて避けたが、腕に弾丸が当たっていた。

 

「ヒロイ……っ!」

 

 逃げないと。

「さっさと逃げろよ!」と言う声が頭の中でまだ響いている。 

 でも。

 

「助けないと」

 

 ここで逃げてたまるか。

 俺が囮になればヒロイは、ヒロイだけは逃がせるんじゃないのか?

 なら、行くしかないだろ。

 

 ドアをバンッと開けて、戦場へと駆ける。

 砂に足が沈んで走りにくい。

 そんな事を気にしている暇はない。

 走っていると、アスファルトの地面が顔を出した。

 

「ヒロイ! 逃げろ!」

 

 ヒロイとマフラー少女はこちらを振り向いた。

 ヒロイは後ろにステップし、そのまま走って行った。

 

 マフラー少女の銃口はこちらを向いた。

 その途端、機械音声が頭の中に響いた。

 

『戦闘形態に移行します。過負荷に注意して下さい』

 

 マフラー少女の動きは酷くゆっくりに見えた。

 

──避けれる。

 

 銃弾が発射された。

 右脚で地面を蹴った。

 弾は空気を貫いた。

 

──やっぱり。

 

 次々に銃弾が発射されている。丁寧に俺の頭を狙って。

 俺は四つん這いになって、それを避けた。

 四肢を全て使って、地面を蹴った。

 2秒もせずにマフラー少女の元に辿り着いた。

 彼女は後ろに跳んで距離を取ろうとしたが、足を掴んて阻止する。

 バランスが保てなくなった彼女は、背中を打ちつける形で地面に倒れた。

 銃を無理やり取り上げ、捨てる。

 そして、肩固めをキメる。

 

 右目から、何か液体が流れているのを感じた。

 裾で拭う。

 裾は、赤色に滲んでいた。

 血だ。

 

「……ウッソだろ……」

 

 1回鏡で目を見てみたいところだ。

 

 目に気を取られ、マフラー少女を見ていなかったのが災いして、マフラー少女は抜け出し、銃を取ってしまっていた。

 彼女は、銃を俺に突きつけた。

 

「大人しくして」

「無理だ」

 

 しゃがんで、左に転がる。すぐ後ろから銃弾が地面を抉る音が聞こえた。

 左に移動しながら立ち上がり、地面を蹴る。

 マフラー少女の後ろに立った。

 回し蹴りを食らわせる──いや、相手は女子だぞ? まだ残っているそんな思考が、一瞬体を強張らせた。

 その隙をついて、相手は退いてしまった。

 

「ん……。強い」

「そっちこそ」

 

 軽く言葉を交わし、さあ第2ラウンドだという所で、マフラー少女は後ろを向いて走っていってしまった。

 彼女の背中を見ながら、俺は、頭の中に響く声を聞いた。

 

『戦闘終了。戦闘形態を解除します』

 

 そして俺は、気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 読んでくださってありがとうございました
 感想、評価いただけると次に繋げることが出来ると思うので、よろしくお願いします
 関係ないですけど、私の好きなキャラクターは三日月・オーガスです
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