ヘルメット団員です。血反吐吐きながらがんばります   作:はみがきこな

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元気! 私は





……小川レイ。今からラーメンを食べる。

「……01番、意識はあるか」

「……」

 

 水の中で目を覚ました。いや、培養液の中で目を覚ました、と言ったほうが正確か。

 視界には、私を見る白い彫像のようなモノと、私のいる水槽に繋がれた幾つものチューブ、波打つ心電図がまずあった。

 そして、暗かった。

 私の最初は、そんな景色だった。

 

「意識はあるようだ。発声は?」

「……できる」

 

 液体の中だが声は出せた。

 

「発生可。さらに理性、知性、共に問題なし……最初から上手くいったな」

 

 ガラス越しに彫像のようなモノが話しかけてきたから、返事をした。後から知ったが、こいつらは「無名の司祭」というらしく、個々に名前は無いらしい。

 

「神の創造に大いに役立つだろう。出せ」

 

 無名の司祭の1人が、そう指示を下した。それと共に培養液が減っていく。

 別の司祭が1人やってきて、私を解放した。

 

「こっちへ来い」

「……はぁい」

 

 裸の足で触れた床は冷たい。

 司祭は何も言わない。言葉を発するのが不必要だという考えのようだ。

 そのまま施設を20mぐらいは歩いた。

 私が入っていたような容器が等間隔に設置されていたが、無人だった。しかし肉の腐った匂いがしたのを覚えている。

 

 見えたのは棺桶のような容器。池のようなモノの中に1人で浮かんでいる。

 司祭が何か言葉を発すると、棺桶の蓋が開いた。

 

「入って、寝ていろ」

「……いつまで?」

「お前が呼ばれるその時までだ」

 

 仕方なくつま先から棺桶の中に入っていく。何故か、棺桶は沈まない。

 

「成功を祈る」

 

 そして、蓋がバタンと閉められ、視界が闇一色に染まった。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 

「”レイもほら、入っていいんだよ”」

 

 穏やかな声が聞こえた。

 フラッシュバックした暗い景色から一転、木造の食事処へと意識が戻る。

 

「……はぁい」

 

 今の記憶が蘇ったのはなんでだろうと考えたが、それらしい理由は出ず。

 代わりに足を踏み出せば、女子たちの驚きの声が聞こえた。

 

「「「誰ーー!!?」」」

 

 アビドス高等学校の制服を来た女子ら。その視線が全て私に向けられる。

 なんだか居づらくなって、ひとまずお辞儀をしてみた。

 

「……小川レイ……よろしく」

「うへ、拾った猫がまた猫を拾ってきちゃった……先生?」

「”こ、この子は私の命の恩人だから、信頼に値すると思い……ダメ?”」

 

 先生への視線が若干尖って、しかし私に対する視線はなんとなく優しくなった。

 

「ま、まぁ、とりあえ注文しましょうか? セリカちゃんが待ちぼうけてて……」

 

 そう言って場を仕切るのは赤いメガネの女子。立場が高いのだろうか、それとも一目置かれているのか、全員それに従った。

 セリカちゃん──というのは制服を着ている猫耳の娘だろう。

 

「”あ、レイはここに座って”」

「……はぁい」

 

 クッションの敷かれたベンチのような椅子に座る。隣にはマフラーをつけている狼の耳の娘。

 

「ん、じゃあ、メニュー決めて」

「ラーメンというのは……何を食べるの?」

「……小麦粉? ……とか……豚肉…………あと野菜」

「へぇ……味は……何がいいの……?」

「とりあえず、醤油でいいと思う」

 

 醤油、というのは聞いたことはある。確か調味料だったはずだ。

 少しわくわくする。こういう気持ちが自分にあったことにも。

 皆はセリカという娘にメニューを一個ずつ言っていく。その内容をセリカはメモしていく。その流れに乗って、私も「醤油ラーメン」と一言言った。

 ラーメンの見た目は、この店に入った時に見ることができたから知っている。細い紐のような食べ物に、草や肉──シロコが教えてくれた──が乗っている。多くの人は、紐に向かって息を吐いていた。

 

 セリカはラーメンの名前を叫んで、厨房というらしいところに駆けて行った。

 そして口を開いたのは黄色っぽい色の髪の娘。

 

「それじゃ、自己紹介しましょうか♠︎」

「では、一年の私から……。奥空アヤネと言います。アビドス廃校対策委員会の書記を務めています。よろしくお願いします」と言ってメガネの娘は行儀良くお辞儀をした。

「二年、砂狼シロコ。同じく対策委員会。よろしく」と隣の娘は簡潔にそう言った。

「同じく対策委員会所属の二年生の、十六夜ノノミで〜す! 気軽に、ノノミって呼んでください!」と黄色っぽい髪の娘はダブルピース。

「じゃあ、おじさんの番かー。小鳥遊ホシノ、三年で、対策委員会の委員長やってるよー。よろしくー」と、ピンクの娘はふなふなとした滑舌を披露した。

「あ、それと今バイトしてるのが黒見セリカちゃん。アヤネちゃんと同じで一年生だよー」

 

 と、いうふうに彼女らの自己紹介は終わった。

 

 そして口を開いたのはアヤネ。 

 

「あ、そういえば……レイさんはどこの高校に所属してるかとか聞いてもいいですか?」

「あ、それおじさんも聞いてもいいー?」

 

 ホシノも同じことを思っていたらしい。

 

「……私は……学校に、行ったことがない」

「「「「”え!?”」」」」

 

 全員が驚愕の表情を浮かべた。無理もないだろう。私の聞いた常識によれば、学校というところには全員が通うらしい。それをしていない──つまり普通ではないのだから。

 ホシノはもう納得したような表情をしていた。

 

「そっか、だから……。もしかしてシロコちゃん、分かってた?」

「ん」と言ってシロコは首を縦に振った。ノノミも何だか納得したふうだ。当人達にしか分からない内容だろう。だから3人は落ち着いているが、残りの2人──アヤネと先生──は口をあんぐり開けたままだ。

 

「学校へ行ったことがない!?」「”どういうこと!?”」「どうやって生きてきたんですか!?」「”どういうこと!?”」「先生は黙っててください!」「”はい……”」

 

 話すわけにはいかない。返事の代わりにラーメンを啜った。

 

 うんうん考える2人と、距離の近いシロコと、見守るノノミとホシノ。

 初めてのラーメンは、それほど悪くなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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