ヘルメット団員です。血反吐吐きながらがんばります   作:はみがきこな

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短いですよ


ヘルメット団員です。銃を買いに行きます

 

 

 

 

 

 あと3日。

 これを短いと思うか長いと思うか──俺は、短いと思う。

 なんせ、その3日は犯罪までの準備期間なのだから。

 

 正午の太陽光が入るリビングで、はぁとため息。

 ため息を吐いたのは、リビングにあるボロボロのソファに座っている俺──古草カスム。訳あって(そこまで深い理由ではない──ちょっと拉致されただけ)カタカタヘルメット団の一員となった俺の気分は、人生で1番沈んでいた。

 何が俺を落ち込ませているかなど、答えるまでもない。

 

「拉致、なあ……」

 

 現在、俺の目の前にある障壁が、そうさせていた。

 障壁。それは、アビドス高等学校所属、黒見セリカの拉致。

 犯罪などとは無縁の人生を送ってきた俺にとって、それはあまりにも大きな壁だ。

 拉致をされる──これならまだ分かる。されたくはないが。

 拉致をする──これはヤバい。緊張と申し訳なさがヤバい。キツイ。

 そんな訳で。

 俺は、リビングのソファに腰掛けていた。

 

 リラックスをするには丁度良いかもしれない──この部屋のいろいろな所が見えるから。部屋の造りも、団員の動きも。

 ほら、あそこ──リビングの片隅──でボスがなんかやってる。銃を分解して──ああ、手入れか。確かに、肝心な時に撃てなくなったら最悪だ。一方的に攻撃されて戦闘終了──いや、あのボスに限ってそんな事は無いか。格闘出来るもんな。

 ん? 

 あれ、俺は? 

 武器無い──遠距離無理。

 格闘──ボスより弱い。

 

「あ」

 

 クソ雑魚……ってコト!? 

 ど、どうしたら……! 

 そ、相談しよう。

 誰にしよう……? 

 ボス……ちょっと怖い。

 ……ヒロイ! 

 

 彼女ならいい感じに相談に乗ってくれるだろう──もしかしたら、何か銃を渡してくれるかもしれない。渡されたとしてもオンボロだろうけど。

 そうと決まれば早速、ヒロイの所へ! 

 

 リビングを見渡す。普段なら壁に寄りかかっているのだが。どうやら居ないようだ。

 部屋か? 

 リビングから2階に向かえる階段を上る。カツンカツンと硬い音が鳴った。

 2階の廊下は薄暗く、グレーのネズミの色をしていた。

 その廊下の奥、俺の部屋のすぐ前に彼女の部屋はある。今まで一度も中を見たことがない。まあそれは当然という物だろう。女子の部屋にズカズカと入っていくほど俺はアホじゃない。

 アホじゃないので、ノックする。

 コンコンと、心地よいような音が廊下に充満した。どうやらその音は扉の向こう側にも届いていたようで。

 

「何だ、カスム」

 

 と、ヒロイが少し開けたドアの隙間から顔を出した。

 いつものようにクールな顔で、クールに髪を1つ結びにしている。

 ……美人だなあ。

 何て、用件を忘れて見惚れてしまった。

 

「……どうした、カスム」

「あ、え、違うんすよ、見惚れてたとかじゃないっす」

「……どうした?」

 

 変な弁明。出す必要が無かった弁明が口をついて出る。

 

「ああっと、ほ、本題は! 俺は銃を持っていないよ、という事について!」

「……え?」

 

 銃を持っていないというワードに反応して、彼女は目を見開いた。

 

「……銃を、持っていない……?」

 

 彼女は心の底から驚いたようにそう言った。

 

「そ、そうなんだよ。だから、なんかお下がりとか出来ないかな〜なんて……」

「──今すぐ買いに行こう。何が欲しい? アサルトライフル? それともリボルバー? ショットガンか?」

 

 そして、彼女は驚くほどに食いついてきた。

 何で? 

 彼女がこんなに興奮しているのは見たことがない。

 

「いや、別に余ってる拳銃とかで良いんだが──」

「──いいや、そんなのでは駄目だ。しっかり自分自身の物を買わなくては。少し待っててくれ」

 

 そう言うと、彼女はバタンとドアを閉めた。

 ……どう考えてもおかしい。

 銃を持ってないのがそんなにおかしいのか? それともヒロイがとんでもないガンマニアなのか? 

 さてどちらだろうと考えるまでもなく、ヒロイは扉から出てきた。

 

「行こう、カスム」

「行こう、って……どこに」

「ショッピングセンターだ」

「……はぁ?」

 

 ちょっと待て、俺らはさっきまで銃を買いに行く話をしていたような……? 

 

「銃を買いに行くんじゃ……」

「売ってるぞ、銃」

 

 はぁー……? 

 この世界に来てから、俺は常に疑問符を浮かべている気がする。

 

 ……まあヒロイがそう言うんなら売ってるんだろう。

 ──あ、待てよ。

 

「俺、一文無しだ」

 

 今気づいた。

 寝てる時に財布常備してる訳ないもんな。もし持ってたとしてもこの世界で使えるかどうか分からんし。

 若干冷や汗を垂らしていると、

 

「私が払う」

 

 ヒロイは、なんてことないかのようにそう言った。

 ──俺の面子が立たん! 

 

「……ご、ゴメン……」

 

 両手を合わせて謝罪する。

 

「別に良い。そんな事よりも早く銃を買わなくては」

 

「早く」と言いながら歩いていくヒロイは、少し焦っている様にも見える。

 その様子に少しの疑問を抱きつつも、彼女を追いかけた。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 砂と共に風が吹き、ピシピシと体に当たる。

 周りを見渡せば一面が砂、上を見れば青の空。汗が滴り落ち、砂が暗く濡れる。

 これが砂漠だ、と言わんばかりに照る太陽が、俺の体力を蝕んでいた。

 

「……ヒロ、イ……。まだ、か……?」

 

 ちびちびと水を飲んで潤してきた喉は、思いのほかカラカラだった。そのせいで、先導しているヒロイにはさっきの言葉は聞こえなかったようだ。

 このままだと流石に死ぬ。

 リュックから水の入った水筒を取り出し、蓋を開ける。飲み口に口を付け、ぐびと水を飲む。

 足を動かす一歩一歩が重く感じる。

 

「んぐ、んぐ、んぐ……ふぅっ……。おーい、ヒロイー? まだ、ショッピングセンターには着かないのか……?」 

「あとすぐだ」

 

 その言葉はまるでオアシス。

 汗と疲労が支配する体に、ヒロイは一縷の希望を与えてくれた。正にヒーロー。

 ……いや、どうだろう。俺をこんな状態にしたのも、また彼女だ。俺を拉致してきたトラックがあるというのに、彼女が「徒歩で行ける」などと言い、さらに道を間違え続け……、気づけば何キロも歩くハメになってしまった──彼女は諸悪の根源かもしれない。諸悪の根源ですが、ヒーローをやってみます──なんてラノベがあってもおかしくないなあ、そんな現実逃避にも似た考えを巡らす。

 

 うざったらしく頬を伝っていく汗を拭い、前方に目を凝らす。

 そこには、蜃気楼のように淡く浮かぶショッピングセンターの姿が! 本当に蜃気楼だったら死を覚悟しなければならないな──なんて考える。

 

「なあヒロイ。あれって……」

「ああ。ショッピングセンターだ」

 

 本当の希望がやってきた。 

 自然と足に力が入る。体に活力がみなぎる。

 両腕を天に突き上げ歓声を上げる。

 

「うおおお! さっさと行こうぜ!」

「何もそんなに急がなくても、銃は逃げないぞ?」

 

 「違う、体の水分が全部逃げていきそうなんだ」と言いたいところだが、その言葉は飲み込む。そんな無駄な事をするよりはさっさと脚を動かした方が良いだろう。

 砂に足跡をこびりつけながら、俺達は歩いた。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「う、うおお……!」

 

 その巨体を見上げ、感嘆の声を漏らす。

 それは、砂漠で一際目立つような白い外壁に覆われている。数多の利用者を吸い込んでいくそれの元、2人の生徒が立っていた。

 

「これがショッピングセンター……、前の世界とあんまかわんねえんだな」

「ん? 何か言ったか?」

「あ、や、なんでもない。早く行こうぜ」

 

 異世界転生しました、とかほざいたら変な目で見られるのは回避できないだろう。俺だって、女の子とは仲良くしたい。

 誤魔化して話を切った。

 

 ショッピングセンターに近づくにつれ、砂漠の地面はアスファルトに変わっていく。懐かしいその感触に一瞬感動した。この世界に来てから全く踏まなかった訳ではないのだが。

 ショッピングセンターと砂漠とを隔てる壁、自動ドア。それは俺達を検知し、開いた。

 そこから、ふわりと冷たい風が吹く。

 

「すっ……涼しい!」

「当たり前だろう」

 

 思わず口に出すと、ヒロイにビシリと言われてしまった。

 いや、仕方ないだろう。先程までの状況において、"涼しさ"は命と同等の重さを持っていた。

 その冷気を堪能しながら、先を行くヒロイに付いていく。

 ショッピングセンター内は、混んでいるわけでもなく、閑古鳥が鳴くわけでもなく、といった感じだ。

 こんな砂漠のど真ん中だというのに、繁盛はしているらしい。

 

 さて、本来の目的に戻ろう。

 銃を買いに行く、それが目的だ。

 

 人と人との間を縫うように歩いていくヒロイの事を、すこし人にぶつかりながらも追いかける。彼女が道を知っているから、俺は付いていくだけでいい──何て楽なんだ! 少しヒロイの歩が速いのが大変だが。見失うギリギリのラインで追いかけている感じ。下手したら迷子になる恐怖をひしひしと感じながら、付いていく。

 道中、バッテンの描かれた黒いマスクを着けた少女らが、何か話し合っているのが見えた。

 

 魅力的な香りが漂ってくる店や、何かからくり箱のような物が置いてある店、その他特徴的な店、それら全てを無視してヒロイは進んで行く。入り口の方に比べ、少し人が少なくなったように感じる。

 

 急にヒロイが止まった。

 余りにも急だったので、俺は彼女にぶつかった。

 

「あいてて……何だ? 急に止まって……」

「ここだ」

 

 彼女は体ごと振り向いて、俺を見た。

 

「武器を選ぼうじゃないか」

 

 彼女の背後には、信じられないほどの量の銃器が並べられている店が、立っていた。

 

 その光景は、俺の瞳に焼き付いた。

 焼き付くほどに、見惚れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 









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