ヘルメット団員です。血反吐吐きながらがんばります   作:はみがきこな

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ヘルメット団員です。ボスは……。(2)

 

 

 

 

 

 事の顛末を聞かされ、沈黙が漂う。思考の為の沈黙。各々が、その事件について思考を巡らせていた。

 何故アビドスが? 連れ戻されていった──という事は、全会一致で決まった事じゃあ無いのだろう。独断? アビドスで、そんな内部分裂が起こるだろうか?

 有力な仮説を組み立てる。

 

「……だとすると、面倒だな」

 

 仮説はこうだ。

 まず彼女らは、俺達カタカタヘルメット団を警戒している。だってそうだろう、毎日のように襲撃を受けていたらしいのだから。

 そして、アジトに攻め入った。何か策があったのだろう。

 しかし、陥落は出来なかった──。

 そこで、意見が対立したのでは?

 もう一度攻めて、叩きのめすか。いいや、今一度作戦を考え直そう、という考えか。

 そして、独断で彼女らがやってきた。

 かなり、有力であると思う。

 その旨を伝える。

 

「……一理あるわね、それ」

 

 ボスは頷く。

 二人で攻め入るのはおかしいかもしれないと思ったが……俺達の戦闘力はそこまで高くない。

 見くびられていたのだろう。

 ボスが、徐ろに呟く。

 

「はぁ〜……。シロコかぁ〜……」

 

 それにはどんな感情が混じっていたのか。

 俺には読み取ることは出来なかった。

 

「……知り合い、なのか?」

「……ちょっとね。子供の頃にいろいろあって」

  

 その返事は、詮索の拒否の表れだった。

 ならば、大人しく引き下がるしかない。

 このまま会議を続けたかったのだが、ボスはしんみりとしたような、遠くを見る目をしていた。

 

「……じゃあ、これからの話をしよう」

「何でアンタが仕切ってんのよ」

「別に良いだろ。感傷に浸ってるみたいだったし」

「なによ。ぼーっとしてたって言いたいの?」

「間違ってないだろ」

 

 バチバチと目線がぶつかり合う。このまま取っ組み合いになったっておかしくはない──というか、望むところだ。

 そんな俺らを静止させるように、

 

「落ち着いてください、ボス。カスムも」

 

 ヒロイが言葉を放つ。

 

「へ〜い……」

「しょうがないわね」

 

 謝る。別に怒っている訳でもないので、すんなりケンカは終わった。ヒロイは、こういうのに慣れているようだ。

 

「じゃあ、これからの話をするわよ」

「はーい」

「はい」

 

 ボスが仕切り直し、会議が再開する。

 

「次、アビドスに襲撃されたらたまったもんじゃないわ。早めに手を打たないと。案はある?」

「アジトを別の場所に移せばいいんじゃないのか?」

「のこのこ引っ越しする気? 第一、こんな大人数が暮らせる場所が何処にあるっていうのよ」

 

 必要以上にボコボコに言われ、発言を撤回する。

 

「……まあ良いわ、聞くだけ無駄だし。私はね、敵の戦力を削げばいいんじゃないかって思うのよ」

 

 ボスはそう言う。

 

「どうやってやんだよ。攻め入って返り討ちにされるのがオチだろ」

「もう忘れた? ()()()()

「なっ──ボス、正気ですか!?」

 

 頭の中に、それがよぎる。思い出したくもなかった、暗い話題。

 そこで落ち込んでいる訳にもいかない。

 仕方の無いことなのだ、拉致は。

 

「ヒロイ、私はもちろん正気よ。……()()()()()()()()()()()()()()()()。黒見を人質に取って、色々しちゃえば完璧」

 

 ボスは、さらりとそう言う。

 ──確かに、その作戦なら敵はこちらに手出し出来ない。何かしてしまえば大切な友人が生き埋めにされるかもしれない、という恐怖をあちらに与えることも出来る。

 

「でも、いつやるんだよ。3日後……だっけか? 多分、その間があればアビドスの戦力は回復するぞ」

 

 根拠はある。

 まず、先生があちら側に付いているということ。彼は連邦なんとか──お偉いところからの使者らしい。なら、それ相応の補給は受けられるだろう。

 そんな補給を受けられたら、たまったもんじゃない。

 

「じゃあ、明日やるわ」

「はい?」

「え?」

 

 ええっと、明日?

 なるほど、明日か〜……。

 なーんだ、明日ね〜……。

 

「──とはならねーよ! 出来るわきゃねーだろ!?」

「出来ないじゃなくて、やるのよ。貴方が言ったんでしょ、待ってる暇は無いって」

「おま……準備とか……出来てんのか……?」

「今やらせてる。そろそろ上がってくるんじゃない?」

 

 無茶苦茶だ! こんな計画で拉致しようなんて!

 ライブ感で生きるな!

 

「はぁっ……」

 

 しかし、この組織の最高権力は彼女にある──俺ごときが何を言っても、彼女はなびきそうにない。

 諦めるしかない。

 

「まあ、いいじゃない。善は急げ、って言うでしょ」

「……そうかもな……」

 

 それと相反(あいはん)することわざがあった気がするが、この際無視しよう。

 実際、それほど致命的に悪い作戦でもないし……これくらいしか方法が無いし。

 この路線に舵を切るしか無い。

 

「じゃ、緊急会議終了。準備しといてね」

 

 そんな言葉と共に、あっさり終わった。

 ヒロイは部屋の片付けに、ボスは自分の部屋に。そうやって、各々が行動する。

 

 窓から、夕焼けが差し込んでいた。

 ああ、もうそんな時間か──。

 長い一日だった。いや、短くも感じた。

 ここに来てから毎日が騒がしいから、体感時間が前世(死んではいないが)の比では無い。

 それで、前の生活を思い出す。

 親がいた。

 弟がいた。

 友人がいた。

 青春があった。

 

「──何だよ」

 

 とうに、割り切れていたと思っていた。

 そんな事は無かった。

 

「──ああ、クソ──!」

 

 沈んでゆく太陽を睨む。

 そんな事をしても、何にもならないと知りながら。

 ただ、足掻きたかった。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 私は、姉が好きだった。

「カナメ」と私を呼ぶ彼女。

「しーっ」と唇に人差し指を当てる仕草をする彼女。

「あはは」と鈴を転がすように笑う姿の彼女。

 私は好きだった、全て。

 

 視線に追われていた毎日だった。

 彼女が安心できる時なんて、()()()以外無かったのだと思う。

 だとすれば、あの結末は理にかなったものだったのだろう。私を置いていったけれども、それは仕方のない事だった。それが分かるのに、随分時間がかかったと思う。

 

 逃げるな。

 

 違う、仕方ないことでは無かった。

 思い出せない。

 何でああなったのかが思い出せない。

 何が起こっていたのか思い出せない。

 それでも、罪は私にあった。

 

 組織ごっこ、のような事をしていたと思う。

 私が「ボス」で、彼女が「相棒」みたいな……何かのドラマを観たのかは、定かではない。

 悲しいドラマだったから、主人公の相方は死んじゃってた。

 そういう、オカルトみたいな死に方でもあったのかもしれない。だとすればやりきれない──私の命名のせいで殺した事になる。

 

 いや。

 それも、あながち間違ってはいない。

 

 私の姉──(うつぼ)カサハは。

 

 私が、殺した。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うああっ!!」

 

 ガバリと起き上がる。

 体中が冷や汗を流す。心臓が爆発しそうだ。体中が痛い。震えている。何処が? 手?

 

「はあっ、はっ、はっ、はっ、はっ──」

 

 喘ぐ。

 体が酸素を欲している。

 部屋が暗い。

 今は一体何時だろう。夜であることは間違いなかった。

 呼吸が落ち着いてくる。

 

「もう……やだ……」

 

 頭を押さえる。

 悪い夢だ。

 ()()()()()()()()()()()夢だ。

 その夢を思い出す必要は無い。

 

 だというのに。

 

「うっ……」

 

 吐き気が込み上げてくる。

 枕元に置いてある洗面器に、顔を突っ込む。

 

「うおええっ……うええっ……おえっ……」

 

 体が無くなっていくような感覚。苦しさ、怖さを兼ね備えた感覚。

 それにももう慣れた。

 

「……っ……。何やってるのよ、(うつぼ)カナメ……。貴女は、ここのトップでしょ……!」

 

 無理やり自分を奮い立たせる。それが無茶だと分かっていても。

 

「そうよ……。それでいいのよ……」

 

 私は、この組織のトップなのだから。

 ──いつまでも、完璧でいなくちゃ。

 

 

 

 

 









人の上に立つには、それ相応の思いが必要であると思う
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