ヘルメット団員です。血反吐吐きながらがんばります   作:はみがきこな

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"シャーレの先生です。彼らは一体……。"

 

 カスムらが会議をする少し前。

 スーツを着こなした、二十代半ばの男性──先生は、テロの後始末をして、ショッピングセンターからアビドス高等学校へと歩んでいた。

 タブレット端末に、話しかけながら。

 

「"アロナ、さっきの子たち……すごかったよね"」

 

 彼は、何故かそれに話しかける。

 傍から見たら異常者・不審者と見えるだろうが──彼は至って真面目だ。

 何故ならば、彼はタブレット端末の中の、AIのようなモノに話しかけているからである。

 

『そうですね! 並の生徒さんじゃあんな動きできないと思います』

 

 AIのようなモノは返す。この声は、先生にしか聞こえない。何故だろう?

 

「"ねえ、アロナ"」

『はい?』

「"あの子達の情報……少し探ってもらってもいいかな"」

 

 先生の言うことならば、このAI──アロナと言う──は言う事を聞く。

 

『分かりました! 出来るだけやってみます!』

 

 その返事を聞き終えた先生は、タブレットを仕舞った。

 

「"嫌な予感がする"」

 

 先生は、一人呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アビドス高等学校。

 生徒5名、借金アリ、閉校寸前の学校。

 そんな学校を救うべく私はやってきた。やれた事は少ない。生徒らの手伝いと、戦闘の指揮を少ししただけだ。

 しかし彼女達は自分に心を開いてくれているらしい。純粋に嬉しい、と思う。初日は警戒やらで内輪揉めが起きそうな雰囲気だったし。

 私がキヴォトスに来た初日はこの世界の法則にも慣れていなかった。それに慣れることができたのも彼女らのおかげでもある。

 うん、彼女らにはだいぶ助けてもらってる。

 と言うことを、この砂漠を歩くたびに思っている気がする。

 だから「日焼け止めとかあげたら喜んでくれるかな」と思ってショッピングセンターに行ったのだが、そんな場合では無くなってしまった。

 またの機会にしよう、と半分砂漠と化した住宅街を往く。

 

 アビドスは広い。

 本当に広い。

 初日は迷子になって死にかけた。

 そして。

 恥ずかしながら、今回も──。

 

「”やば……い”」

 

 大の大人が歩道で仰向けになっているのはかなり情けない。人通りの少ない場所だから見られることはないが──助けられることもない。

 視界がだんだんぼやけていくのを感じる。

 

 アロナは今来れない。私がお願いしたからにはあの子は結果が出るまでやってしまう。

 アビドスの子たちは……ん?

 シッテムの箱に通知が来た。

 モモトークの……メッセージ?

 

「”シロコからだ……”」

『先生も柴関ラーメンたべる?』

「”無理だね……”」

 

 このままだとラーメンより先に水分がなくなる。

 目を閉じる。

 

「”はぁ……はぁ……”」

 

 息が荒くなってきた。

 これは、ヤバいぞ……。

 

 そうやって死の淵と格闘していると、何か音が聞こえてきた。

 ざっ、ざっと言う音。紛れもない足音だった。

 

「……はぁい、大丈夫?」

 

 響くダウナーな声。

 ……誰の、声だ?

 

「……水、いる?」

「"いります……!"」

 

 かろうじて声を出すと、顔面に水が降ってきた。

 

「"あば、あぼ、あぼぼ"」

「……飲んで」

 

 ちょ、これ……絶対人に水与えるやり方じゃないよね? 飲むしかないから飲むけども。

 ごく、ごくと飲むたびに体が生き返っていく。与えられ方がどんなであれ、死にそうな体には水の美味しさが染み渡った。

 目を開ける。

 

「……こんにちは」

 

 と少女の声がした。

 目を開けて見えたのは、立って私を見下ろす少女の姿。彼女が私を助けてくれたという事は間違いないだろう。水が滴る空のペットボトルを持っている事からもわかる。

 

「"助けてくれて……ありがとう"」

「……大丈夫」

 

 立ち上がって、スーツについた砂を払う。汚してしまったのは残念だけど、仕方ないと割り切る。

 少女を見る。

 キレイな白いメッシュの入っている落ち着いた黒いロングヘアー、光の少ない鼠色の目。ジッと私を見つめる目は半分閉じていて、活発な子、というわけではなさそうだ。

 着ているものはどこの制服だろうか。

 

「"水の分のお金渡すよ。いくらだった?"」

「……そんなこと、しなくても」

「"いや、私が納得できないから"」

「……100円……だった」

 

 ポケットに手を入れて財布を取り出す。チャリ、と小銭の当たる音がする。

 その中から100円玉を取って、差し出す。

 

「"はい。……ホントにありがとね"」

「……はぁい」

 

 彼女は小銭を受け取ってくれた。懐に入れ、そして話を始めた。

 

「……シャーレの先生、だよね」

「"ん? うん"」

「……なら、良かった」

 

 それだけ言って、彼女は踵を返した。

 途端。

 

ぐぅ~

 

 と鳴ったお腹の音を、私は聞き逃さなかった。

 

「"お腹減ってるの?"」

「……えっと」

「"お腹、減ってるんだよね?"」

「……はぁい……」

 

 少女は申し訳なさそうに俯いた。顔を赤くしているのはすぐに分かった。

 それと対象に、私の口角は上がる。

 

「"じゃあ、食べに行こうか?"」

「……?」

「"私ね、美味しいところ知ってるんだよ"」

「……お金が、無い」

「"……ダイジョブ、私が払うから!"」

 

 少女は暫く迷うそぶりを見せたが、本能には勝てなかったようで、

 

「……ごちそうさせてもらう」

 

 と言った。 

 その言葉に笑顔で返す。

 

「"じゃあ、行こっか"」

「……はあい」

 

 柴関ラーメンまでの道のりは……知らないから、アロナに聞こう。流石にまた倒れたら死んでしまう。

 

「"そう言えば、名前は?"」

「……」

 

 黙ってしまった。

 ……まあ、初対面の大人に言いたくないよな。無遠慮に聞いた私が悪い。

 と思っていたのだが。

 

「……小川(おがわ)レイ、といいます」

「"うぇ?"」

「……なあに? 名前変?」

 

 まさか言ってくれるとは思ってなかったから、変な気の抜けた返事をしてしまった。

 

「"ありがと、レイ"」

「……はあい」

 

 そして私達は柴関ラーメンに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チリン、と入り口の鈴が鳴った。誰かの入店を知らせる音だ。それを聞いた客は、すぐに入口を見る。

 

「ん、やっと来た」

「げえぇ、ホントに来ちゃった……!」

「うへ、セリカちゃん怖いよー? 笑顔笑顔〜」

 

 その店は珍しく木造で、賑やかで、活気あふれる店だった。客の中で不満そうな顔をしている人は居なかった。ここは良い店だな、とすぐに分かった。

 

「"みんなごめんね、待たせて"」

 

 店にあがる。アビドスの皆は奥の大人数用の席に座っている。

 

「大丈夫ですよ〜♧ まだ皆んな選んでる最中なので!」

 

 とノノミが元気な言葉を返してくれて少し安心した。

 くる、と後ろを向いて、戸の後ろに隠れている少女に声をかけた。

 

「"レイもほら、入っていいんだよ"」

「……はあい」

 

 レイが姿を現した。

 その姿に皆は──。

 

「「「誰ーー!!?」」」

 

 と、叫んだのだった。

 

 

 

 




おひさしぶりですね
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