少女と怪物が戦う世界で三十代教師が戦い続ける話   作:かの おずの

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1話 魔装少女は転生三十代教師

 

「禅苑先生この間の戦いはありがとうございます!」

 

「いいのよ気にしないで獅子神さん、怪我は大丈夫?」

 

「はい、先生が庇ってくれたので...斧野さんも今朝出撃できたみたいでお礼言いたいって」

 

「別にいいのよ?これが私のお仕事なんだから」

 

「こ、今度お礼します!楽しみにしててください!」

 

 うっすら頬を赤くし去っていく、ウルフヘア茶髪の生徒は私より20cm背が高い。

 180超えてる高い身長を活かして前衛でタンク役をするのが彼女の役目だったはず...重心移動をおしえとくかぁ。乳でかいし。回避にも攻撃にも使える技術は覚えておいて損はない。担任とチームに話通しておこう、[特殊技能]はなんだったかな、と気がつけば教師役も板についたものだ。

 

 この役目をするにあたり友人には心配されたがそれっぽく出来てるしいいんじゃないかな。しかし失礼な心配をしてたな、目がヤラシイとはなんだまったく。

 

 リノリウムの廊下は靴音をよく響かせる。ハイヒールを鳴らし相棒の武具を担ぎ歩く。

 しかしまさか転生した世界がこんなに物騒だったとは思わなんだ。学生の女の子しか戦えない世界観だし。魔力で動く[武具]がないと敵に歯が立たないそうな。なんでも敵の怪物たちの技術をリバースエンジニアリングしたものらしく原理があやふやらしい。

 [魔力]なる謎エネルギーを扱えるのが10代の女の子だけらしいし、男はそもそも死に果て[武具]なる魔力を使う兵器があるとなれば徴兵しかないよね、悲しいね。一応建前は学生の鳥獣駆除バイトらしいが。

 

 そして私だけ兵役がこんな続くとは思ってなかった。なんか例外らしい。は?スローライフ計画がおじゃんなんだが?

 

 そして女児向けでもないしエッチな成人向けでもない。怪物たちは普通に殺しに来る。

 こないだの敵は触手うねうねでエッチな展開になるかと思ったら普通に骨ごと溶かす液体飛ばしてきたしなぁそこは服だけだろうよまったく風情の無い世界ですわ

と益体のないことを考えてるとサイレンが鳴る。廊下を赤い照明が照らしだしている。うるさっまぶしっそしてこれは

 

 うわーんお仕事の時間だぁ!

 

 

 日も傾き始めた雑木林に巨大な影が蠢く。クビナガリュウのようなシルエットは恐竜を思わせるが、大きく開いた顎は八つに割れ、六本の足には鋭い爪が生え大地を踏み締めている。怪物は4人の小さな人影に向けて頭を振りかぶっていた。

 

「敵危険度は一級、怪我人は2人!1人は重症です!早く救援を!」

 

 桃色の髪を肩口で切り揃えた少女が首元の通信機に呼びかける。腕の中には意識なく血を流す小柄な女子が。

 

「美華、氷の壁を張って!さやは凛を連れて撤退!私が時間を稼ぐから」

「斧野、お前死ぬ気か!」

 

 斧野と呼ばれた少女は指示を出し、美華と呼ばれた青髪ショートの少女が叫ぶ。

 

 顎門からは赤い光が漏れると同時に赤黒い炎が辺り一体を焼き尽くす。間に合った氷の壁で難を逃れた4人は選択を迫られていた。

 

「私が[特殊技能]を捻じ込む、美華はアシスト!いくよ、[剛翔波]!」

「しゃあねぇ合わせろよ[氷結]!」

 

 氷の礫が龍の顔を撃ち気を取られた竜が青髪の少女を睨みつける。そんな竜の側面に、ツインテールの小柄な女の持つ大剣の先から飛ばされた衝撃波が突き刺さる。

 しかし黒くささくれた皮膚を貫通した様子もない。竜の機嫌を損ねただけかのようにみえる結果に斧野の背中に冷や汗が流れる。

 

「私たちだけじゃどうしようも」

「クソっこんなとこで犬死にかよっ」

 

 さやと凛は無事離脱出来たようだ。ただ四人がかりでようやく押さえ込んだ相手に、背を向けることが出来るのかと考えるが嫌な考えしか浮かばない美華。

 斧野は肩で息をしている。しかし二人で武具を叩き込み続けることでしか抵抗できていないのに竜には効いていない。

 

 数分稼いだ時点でよく出来た方か、このご時世殉職も珍しくないが

「まだ先生にお礼を言えていない!」

 

 意地で[剛翔波]をたたきこむ斧野。そして対抗してか竜が恐ろしい速度で突っ込んでくるが美華は気付いていない。

 斧野は体から溢れる魔力を武具に込め身体強化に回す。両刃大剣の腹で受けるが吹き飛ばされる。

 

「うぐっ」斧野の喉から息が漏れる

 

「いっ」庇って守ったはずの美華も諸共に吹き飛ばされた

 

 二人が目を開き見たのは、顎門を開き近づく竜

 目が合う

 

死ぬ

いやだ

 

 

 光と共に竜の顔が突然爆ぜる

 

 

 

 とうっ(スーパーヒーローキック)

 輸送機から飛び降りて魔力をチャージし足裏に溜め、竜を足蹴にするとそこにはボロボロの少女たち。

 斧野ちゃんの黒髪ツインテールがどろんこ。氷野宮ちゃんの顔に血が。許せねぇよ俺、許せねぇよこれ。おっと一言言っとこ

 

「二人とも無事?助けに来たから安心してね」

 

 二人は同時に大きく瞬きした。かわいいと思う。でもぼろぼろの服が痛々しい。魔力防護は間に合ったようで意識ははっきりしてる。でも地面に叩きつけられてしばらく動けなさそうだから時間稼ぐかぁ。

 

「なんで、先生」

「姉御、か?」

「二人とも動けるようになったら脱出、いいわね?」

 

「でもよ!」

「いや、美華、撤退よ」

 

 斧野ちゃんは分かってるみたいだけど私一人のほうが安全なのね...曲がりなりにも先生なので...なぜか倒れている二人を無視して噛み付いてくる敵をあしらう。

 魔力を片刃の武具に集め、敵と鍔迫り合う一点に集中させる。すごい硬いんですけど、と思うも私が呼ばれたのも納得。

 

「ごめんなさい先生、後はよろしくお願いします」

「...しますっ」

 

 辛そうに下唇を噛みながら撤退していく二人。そんな気にせんでも。

 

「帰ったら...伝えたいことがあります!ご無事で!」

 

 立てるなフラグを!斧野瑞稀!

 

「ええ、またお話ししましょう」

 

 すごい不穏。でも、教え子の分までがんばりますか!

 

 デカブツ相手はインファイト気味にヒットアンドアウェイが良さげだなと即決。足元ちくちく攻撃し続けヘイトとりつつ3時間。やっと膝が崩れ座り込んだ。そこから2時間ちくちく頭叩いてやっと目標沈黙。

 

 ど深夜になっちゃったよ〜やってらんねぇや!この仕事やーめる!

 

 でも辞めれないんだよな、人類の義務だから。ぺっ。

 

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