少女と怪物が戦う世界で三十代教師が戦い続ける話   作:かの おずの

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24話 治療、ドン引き、作戦会議

 

 

 後方の簡易キャンプに送られ、応急処置を受ける。

 

 桜井さやちゃんの撹乱&救出作戦の後、無事に全員合流して帰還。私クラスの技量の敵と戦って怪我がなくて良かった。

 

 そして私は軍医に傷を消毒、縫合されていた。

 情報伝達と作戦立案で口を動かしながらになる。ごめんねお医者さん。さぞ縫い辛かろう。

 

 とりあえず敵の罠から脱出する事は出来た。しかしあの特殊な敵は必ず殺さなければならない。

 あの系統は根絶やしにしないと、さまざまな対人技能を真似た昆虫人間が魔装少女を刈り尽くしてしまう。

 

 私の特訓を受けた斧野小隊だったから奇襲が成功しただけだ。

 普通の怪物を相手する小隊や、魔装少女になりたてのルーキーが相手をしたら一瞬で御陀仏だ。

 

奴らは対人戦に特化しすぎていて危険だ。親個体を見つけ出して必ず消す。

 

 そんな事を告げると、小隊一同と指揮官は事態の深刻さに沈黙する。

 

 あ、お医者さん、その薬鎮静剤はパスで。打たなくていいよ。眠くなるから。抗生物質だけちょうだい。

 

 ベッドから上体をあげて話していた訳だが。お医者さんが鎮静剤を打とうとしていたので止める。今、呑気に寝るわけにはいかない。

 

「せんせ、もう寝てていいんだよ?」

 

「流石にその顔色の人に出撃しろとは誰も言いませんよ」

 

 美華ちゃんから借りた手鏡で私の顔を見る。鼻血の跡と土気色の顔。少し無理しすぎたか。凛ちゃんとさやちゃんの二人に諭されながら、濡れタオルをもらって顔を拭く。

 

「いや、さやちゃんの背中で少し寝たから。休憩も取れたし。今傷の手当て受けてるから、ちょっとすれば大丈夫」

 

 かなりのピンチだったが、体感ではまだいける。伊達に一度死んだわけではない。皆が思うほど死にそうな訳ではない。

 

「まだ限界まで少しだけ余裕がある。動けるよ。傷が塞がるまで集中して魔力流してるから、少し待ったら私も出撃できるよ。あとさやちゃんごめんね、服汚しちゃって」

 

 もったいないけど血液製剤使わせてもらおう。血が足りないだけで比較的元気なので、寝てるのも申し訳ない。

 

 お医者さんに頼んで輸血させてもらった。治療のプロを振り回してごめんね。でもほら、私の方が階級上だから...

 

 皆に宣言しておく。

 

「今回の敵は手強い上に、逃がして増殖を許すと厄介な事になります。私も後詰めに出撃します」

 

 そう、おそらく進化した奴らを倒せるのは私しかいない。

 ので、今回うっかり逃すと私の休日は消滅してしまうのだ。休みなく昆虫人間を追いかけ続ける日々はイヤー!

 

 幸い、敵の狙いはあくまで私。私が前線に出れば、敵は全戦力を私に集中させるだろう。敵の作戦運用から確定である。

 

 面倒だが、休日の為にひと働きさせてもらおうか。

 

 そう思って皆の顔を見ると、信じられないものを見る目で見られた。

 

「先生、禅苑先生。あなたは、いったい...」

 

 さやちゃんは呟いた。生徒みんなの目には、理解できないものを見る恐怖と畏怖が浮かんでいた。

 

 ドン引きされた。かなしい。

 

 

 禅苑先生は頭がおかしくなっている。

 

 顔色も悪く、全身傷だらけ。特に酷いのが腹部の刺し傷で、縫合跡は酷くグロテスクだった。現在はガーゼで隠されているが。

 

 背負う時に見た裂傷は、生きているのが不思議なほど大きかった。服も損傷が酷く廃棄されている。現在は上半身の服を脱ぎ、医官に手当てされながら話している。

 

 私が立てた作戦はうまくいって、先生を助け出せた。でも、敵に囲まれてなかなか辿り着くことができなかった。もっと早く助け出せたら、あんな怪我も負わずに済んだだろうか。

 

 先生は応急処置の薬についても詳しいらしく、眠気が来るものや倦怠感を感じるものを断っていた。まだ出撃するつもりらしい。

 

 間違いなく、魔装少女という生き方を誰より長く続けた結果だ。

 彼女は価値基準が狂い、自らの生存より敵の殲滅を提案する気狂いになっている。

 

 傷の手当てを受けながら、淀みなく敵の特徴、行動、作戦を解説する彼女。指揮官は慣れているのか、副官に筆記させながら作戦を議論している。

 

 私以外のメンバーもこの空間の異様さに気づいたらしい。本来なら気絶していて面会謝絶クラスの怪我。それを負った人間がもっとも働いていた。

 禅苑先生が大好きな、斧野瑞稀や獅子神ましろの二人ですら息をのんでいる。

 

 いま私は、新たに現れた怪物よりも目の前にいる病人が恐ろしい。

 

 

 指揮官と情報共有を進めよう。

 私がいなかった前線はどうなっているの?

 

「昆虫の特徴を有した人型の怪物ですが、有翅型しか前線にいませんでした。物量で壁のように展開しており、禅苑先生となかなか合流できず申し訳ありません」

 

 いや、助けてもらえたし別に良いけど。

 私と戦った奴は居た?

 

「先生と相対した対人戦に特化した型は確認されていません。有翅型でこちらの戦力を分断、孤立した禅苑先生を狙ったのではないかと」

 

 なかなか練った計画じゃん、虫ケラのクセに。

 

「確実に貴女を排除したい意図を感じますね」

 

 まじで私狙いに全投入していたのか。わたし、何かやっちゃいました?

 

「桜井さんからの情報もあって、対人戦特化型の怪物には実力者を集めて対処させています。なんとか一定範囲に押さえ込んでいます」

 

 これは経験からなんだが、間違いなく敵には情報の取りまとめ役がいる。そいつが昆虫人間の増殖も担当しているはずだ。

 

 私の戦い方のデータを子分に集めさせて、自分に取り込む。そして新しい子分を生み出すんだろう。

 

 死んだ仲間の共食いと形状変化の急激な進化はそれだ。進化した形質が他の個体でも確認されたのは原因が今分かった。

 

 親玉の敵は、おそらく女王蜂みたいなタイプだと思う。

 

「その女王をここで撃破しておきたいですね。女王自体が増殖すると、人類はかなり危機的状況に陥ります」

 

 時間を置くとこのまま逃げられる。そうしたら最悪だ。

 私に致命傷を与えられる敵が前触れなく生徒に襲いかかることになる。

 急いで探さないと。

 

 あーあ、こういうとき、敵のいる方向を教えてくれる能力者がいたらなー

 

 ちらっと目線をテントの入り口に向けて、大声で言ってみる。

 

 苦笑いと共に現れたのは、いつぞや共闘した槍使いの細身な少女。

 表原莉子は口を開く。

 

「先生、相変わらず無茶してるみたいだね。私の力が必要なら、是非今度こそ借りを返させてくれ」

 

 お見舞いに来たんだけどなあ、と頭をかく生徒の登場でようやく作戦が決まった。

 

 腹の刺し傷、リベンジさせてもらおうか。

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