少女と怪物が戦う世界で三十代教師が戦い続ける話   作:かの おずの

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誤字修正機能の使い方がやっと分かりました。誤字報告ありがとうございます。誤字がいっぱいあって頭を抱えました。
本当にありがとうございます。


9話 連休のすごしかた

 

 休日初日は報告書(学園、上司、同僚、関係部署向け)と成績評価書の作成と、ローテ変わってもらった人への挨拶回りで終わった。

 

 休日2日目は資源ごみ出したり風呂とトイレ掃除したり、公共料金と税金の支払い手続きで終わった。

 

 休日3日目は昼まで寝て、カップ麺すすってボーッとしてたら終わった。

 

 休日4日目も同上。

 

 まずい、何もせずに連休が終わる...

 

 連休後半戦、今日からイケイケな休日なのだ。なにか、なにか有意義なことをしなければ。

 

 

 この世界において、商売するなら学園付近の繁華街だ。学生が金持っててパーっと使うから。

 

 そんな学生を狙った悪い大人達もいたが、警察の摘発と、顔を隠した学生有志のリンチで消えた。

 その後、マナーの良い人たちが次々と集まってきた。一度社会システムが崩壊し、いろんなものを捨てなければならない人類だったが、それでも礼節を捨てたくなかった人は多かったらしい。侵攻前の治安に回復後、混乱が嘘だったかのように各都市も立ち直った。

 

 つまり学園付近は治安が良く、金払いのいいカモがいっぱいいる訳だから、そりゃ発展する。人通りは侵攻前にも引けを取らない。

 

 ちなみに魔装少女、明日何があるか分からないから貯金する派vs明日生きてるかわかんないから宵越しの銭は持たない派、昔は後者が超多かった。死亡率が高かったからだ。

 

 だが現在は綺麗に逆転し、学園側で給金を積み立てて引退時に大目にもらえる制度も人気。未来に希望があるいい時代になったものだ。

 

 宵越しの銭は持たない派で生き残った人は悲惨だ。勉強もサボってたので引退後の再入学で単位もお金も足りずひーこら言ってた。みんなでバカにして笑ってたのも懐かしい。

 

 学園前の繁華街は洋服店や甘味処、カラオケやカフェが立ち並んでいて、ゴミも落ちてないし治安も良く栄えている。服やバッグをウィンドウショッピングしている女子カップルや、おしゃれな菓子を立ち食いしている一団が見受けられる。

 休日を楽しむ学生達が各々憩いの時を過ごしている。

 

 そんな中私は野球帽、サングラス、マスクにウインドブレーカーとデニムでウロウロしていた。学生達に気を遣わせないようにしたかった、ガサツ転生者の身バレ防止ファッションじゃい!

 

 いつものパンツスーツの格好で街を歩くとやたらと視線を感じるし、みんな立ち止まって丁寧に挨拶するもんだから、こっちが休暇の邪魔してるみたいで申し訳なくなってくる。

 そんな感じで変装しているんだが、ダサくなって悪目立ちしている気がしなくも無い。

 

 まじでファッションが分からん。学生の時は仲間にそれとなく聞けたが、今は同僚にも相談し辛い。結果こんな感じになってしまった。昔っからこの世界の流行りの衣服がマジで分からん。

 

 そんな思い出を振り返りながら、タコスを買って食べる。中のお肉が甘辛くてスパイシー。ここのタコスは肉が多めで美味しい。後輩から教えてもらった店だ。本当に色んな食材が生産復活してて良かった。公園のベンチで座って食べる。

 一時期は、新鮮な肉とか魚とか食べられなかったのだ。ある程度の土地と沿岸部を奪還してから供給されるようになった。

 次々海から現れる、タコの顔をした人間型怪物をしばき倒して回った甲斐があるというものだ。

 

 

 食後歩いていく。入っていくのは、メインストリートから一本入った路地。

 

 一昔前の建物と、値段の落ち着いた食事屋が並ぶここは旧メインストリート。商店街になっていて、私が学生の時はここが一番活気があったのだ。開発計画に取り残され、落ち着いた活気になっている。

 しかし、安く腹一杯食べられる店が多く、花より団子な学生諸氏はこちらに入り浸りお腹を満たしている。

 

 目的地のとある店へ赴く。

 看板に欠損、飛び散ったペンキ跡、壁を補修した跡もある、汚れてて入り辛い店構え。そんなボロいラーメン店、春春亭。なんとうら若き少女達で行列ができている。

 

 実は魔装少女の中では結構有名な店で、どの魔装少女も先輩に必ず連れて来られる。そのため、皆一度は食べたことのあるラーメン店になっている。

 

 なぜわざわざ連れてくるのかというと縁起が良いから。

 侵攻初期に怪物の流れ弾を食らい店舗が被害を受けた。店舗の看板は剥がれ、壁に穴が空き、天井も一部崩れた。しかし、避難を面倒臭がった主人が、次の日からそのまま営業を始めた。壁に穴が空いたままで。壁と天井の穴から美味しそうな匂いがするラーメン屋は目立った。

 

 その話が広まり、怪物に負けないラーメン屋として縁起が良いとされ、来店する人が続出したそうな。

 

 常連の魔装少女が店を勝手に補強したため、見栄えは悪いが倒壊の心配はなく、安心してラーメンを啜ることができる。味は昔ながらの鶏ガラ醤油で、あっさりして印象に残らないのに、時間が経つとまた来て食べたくなる優しい味がする。

 

 ここは魔装少女にとって心の故郷みたいな店なのだ。

 

 裏口から声をかけると、店主の奥さんが出てくれた。すいません忙しいのに、例のもの取りに来ましたー。中の詰まった壺を受け取る。

 

 久々に近くまで来たが、店主も元気そうで何よりだ。偏屈そうなお爺さんだが単純にマイペースなだけなので話すと面白い。あ、斧野小隊の皆が並んでる。快気祝いだろうか。

 

 

 旧メインストリート商店街、とある定食屋に入る。今日はそこの若旦那と結婚した、元チームメイトの頼みで春春亭に寄ったのだった。

 

「久しぶり、はいこれ頼まれてた春春亭のメンマ。元気だった?」

 

「元気だった、はこっちのセリフよ〜思いついた時にしか連絡よこさないんだから。あんたまだ現役なんだから、命の危険があるのはそっちよ。ちゃんと休んでる?」

 

「まあまあかな?今日も連休で来たんだよ。こないだはありがとね!」

 

「久々に腕が鳴るって頑張っちゃったわよ、ハッキング」

 

 そう、こいつが私に三つ編みのやり方とハッキングを教えた張本人。この前の研究所襲撃の時、遠隔で手伝ってもらった元魔装少女である。私は頭がそんなに良く無いので、ツールでカードリーダーこじ開けるくらいが限界。研究所内の情報を盗む時はこっそり遠隔で手伝ってもらったのだ。

 

 こんな感じで元魔装少女とか元軍人がこの辺でセカンドライフを営むケースが多いのも治安の維持に一役買っている。

 

「はい、これお化粧の時に使いなさい。おすすめのファンデーションとリップ。どうせあんたその辺適当なんでしょ?社会人なんだからちゃんとしないと。あぁ、春春亭さんのメンマ分けたげる。うちのお惣菜もいれとくから。タッパー持ってくるから待ってて、タッパー返さなくていいから」

 

「オカンかよ、ありがたいけども」

 

 バタバタと走り去っていく。すっかり定食屋に馴染んでる。現役時代は、ギラついた目であちこちのセキュリティに喧嘩売って回る、電子の狂犬だったのに。たしか子供は幼稚園入園したっけか、他人の子は成長が早い...

 

 

 近くの図書館に寄って行こう。ショルダーバッグにメンマとお惣菜と化粧品をしまって少し歩く。住宅地の中にある小さい年季の入った図書館。

 旧市立図書館と呼ばれるそこに、眼鏡をかけた片足の司書がいる。

 元魔装少女で、脚の怪我で引退した後、資格を取りここで司書をしているらしい。そして、彼女は私のかつての後輩だ。

 

 ランドセルを背負った子どもとすれ違いつつ、受け付けを目指して歩く。

 

「近くまで来たから寄ったよ。はい、お土産」

 

「禅苑先輩じゃないですか、なんで、どうして、わざわざここまで?」

 

 買っておいたタコスを渡す。

 

「...図書館は飲食物持ち込み禁止ですよ。でも、ありがとうございます。私の好物、覚えていて下さってたんですね。嬉しいです」

 

 かつての公共サービスは大きく規模を縮小した。しかし、ここ最近は傷痍退役軍人の受け皿として機能するケースも多い。

 

「久しぶり、こんな近くに居るなら教えてくれれば良かったのに」

 

「先輩には言えなかったんです。今も戦い続ける先輩には。もう二度と会うことも無いって、思ってたんですけど」

 

「なんだよ、水臭いな。いつでも会えるだろ」

 

 犯罪組織が魔装少女を狙っていた頃、見せしめに吊し上げても問題ない奴を探していた時、たまたま助けたのが彼女だった。それから仲良くしていたのだ。私と別の任務中に片足を失う怪我をしたとは聞いたが、遠くの病院に入院してから関係が切れていた。

 

 定食屋の彼女に連絡した時教えてもらったのだ。この図書館にいると。

 

「ここでの生活はどう?」

 

「楽しいですよ。本は好きですし。それにここ、子供がよく使う図書館なんです。やりがいもあっていいですよ、子供の相手は大変ですけど。そうそう、平日の昼間に絵本の読み聞かせもやらせてもらってるんです。好評なんですよ」

 

 ...そうか、充実してるのか、本当に良かった。彼女の柔らかい笑みにこちらも微笑む。

 

 こんなこと言う気はなかったのに、思わず口から出てしまった。

 

「なんで、私に黙ってたか聞いてもいい?」

 

 彼女は失った脚の付け根を撫でながら、目を伏せる。

 

「私の体のこと、知られたくなかった。もう戦えない役に立てない、情けない自分のこと。直接会ったら先輩が悲しむかもしれない、いや、何を言われるか、怖かったんです。それでも、学園から近いここに来ました」

 

「実は私、先輩の活躍が知りたくて、この辺りに就職したんです。噂の届く場所から、ひっそり応援しようと思って」

 

「まさか会いに来てくれるとは夢にも思わなかった。あの優しい先輩が変わってなくって嬉しいです」

 

 淡く微笑んだ彼女の目から涙が溢れる。顔は笑ってるのに、涙が頬を伝って落ちていく。

 

「な、泣かなくてもいいじゃん。た、タコス食べよ?旨辛美味しいから、すぐ涙も引っ込むよ」

 

 涙を拭った後輩は、慌てる私に優しく注意した。

 

 先輩、図書館は飲食禁止ですよ。

 

 

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