Project Sekai SCP incident feat .   作:唯尊

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第十話 即応要請

 その後理雄は一歌達と下校する事にした。下校中、咲希が部活でソフトテニス部に入った事や兄がテーマパークでバイトをする事になった事などを高いテンションで話していた。途中、スマホ画面を熱心に見ながら豊胸マッサージに関するネットの記事に食らいついていた志歩を穂波が

「どうしたの? 志歩ちゃん」と声をかけると、親の仇を見るような視線で穂波の胸を睨みつけながら「見ないで近寄らないで隣に今後立たないで」と志歩に拒絶された穂波が涙目になり、その様子を一歌が心配そうに見つめているというアクシデントがあったものの。スクランブル交差点の前まで無事に辿り着く。

 

「リオせんせー、また明日!」

 

「あぁ、また明日……」

 

 理雄は一歌達を見送りながら帰路につく。いつも通りの穏やかな1日が終わり理雄は内心ホッとしていた。やはり何事も無いのが1番である。そのまま

 歩いているとやや大きめの公園に入る。犬を連れて散歩している人間もいれば下校中の学生もいる。しかし理雄は公園に入った瞬間妙に嫌な予感を感じた。今までの過酷な任務からこうして何度も生き残っているのはこの予感に従ってきたからでもある。理雄は踵を返し公園の敷地の外に向かう。そしてちょうど外に出て一安心した時……。

 

「……わわ!!」

 

 女性の慌てる声と共に転倒する音が聞こえる。

 

「ってぇなコラァあああああ!! どこ見てんだテメェ!!」

 

 公園の外にいる理雄にまで聞こえる大喝が聞こえ、理雄はゲンナリした表情で振り向いた。背後を見ると茶髪の少女が怯えた様子で倒れており、その周りをガラの悪い少年達が3人で取り囲んでいる。どうやら何かに躓いて転んだ少女が運悪く彼らのうちの1人の足を踏んでしまったようだ。

 

「ごごごごっ……ごめんなさい!」

 

「ごめんで済めば警察いらねぇんだよ!!」

 

「あーあ、これ折れてんじゃね?」

 

「慰謝料だ慰謝料」

 

 周囲の通行人は関わりたくないのか。誰も彼女を助けようとしない。皆足早に通り過ぎていく。理雄も同じようにする。自分は人類の守護者とはいえ表向きはただの民間人。厄介ごとはごめんな上に素性がバレるリスクもある。そもそもこういうのは警察の仕事だ。自分はお門違いである。

 

(…………)

 

 立ち去ろうとした足を止め少し考える。助ける義理はないかもしれないが理不尽な目に遭っている人間を見捨てる理由をつけてなにもしない自分はそれで良いのか。ふと幼馴染の言葉を思い出す。

 

 ため息をついた理雄はその場で引き返し少年達の輪の中の1人に近づき肩を軽く叩く。

 

「……ナンダテメェは?」

 

 少年達は自分達より頭一つ分高い理雄の体躯に一瞬引くが、数の利を生かして凄んでくる。理雄はそれを冷たく無機質な目で見下ろし腰の後辺りにあるルガーLCPを収めているホルスターを2回叩く。それを見た少年達の目が剣呑な輝きを帯び始めた。しばらく睨み合いは続き……。

 

「……行くぞ」

 

 1人がそう言うと残りも一緒にその場から去っていく。彼らの姿が見えなくなると理雄は張り詰めていた緊張をとく。

 

(……もう2度とやるか……)

 

 そう口の中で呟き倒れている少女を見遣る。よく見ると彼女は宮女の制服を着ていた。彼女は生まれ始めて見た正義のヒーローを見るような輝いた目でこちらを見上げている。

 

「……あ、ありがとうございます……」

 

 理雄は彼女の手を取り引き上げる。

 

 

「礼はいい、とっと帰れ」

 

 ぶっきらぼうにそう言うと踵を返し立ち去ろうとする。

 

「まっ、待って!」

 

 すると彼女は理雄の裾を握ってきて……

 

「……ここ、どこですか……?」

 

 理雄はこのとき関わるんじゃなかったと後悔した。

 

 

 

 

 

 公園のベンチに少女を座らせ、転んだ時についた土埃を払うと足首を診て異常がない事を確認する。少女はされるがままになっている。

 

「‥なんか、慣れているんですね」

 

「訓練を受けてたからな」

 

 機動部隊は米軍のデルタフォース同様少数精鋭で作戦行動をとる事が多い。自分である程度怪我の治療や応急処置をできるようにしなければいけない。周りに負傷者を救護してくれる衛生兵は必ずしもいるわけではない。その点、自分達ジュリエットチームは恵まれていると言える。衛生隊員である勇刃雄間の存在は大きい。彼がいるというだけで士気が根本的に上がる。’負傷しても治療のプロがいて助けてくれる'というのは本当にありがたいのだ。負傷に対する恐怖も大きく和らぐ。

 

「……志熊先生、ですよね?」

 

「何故知っているんだ?」

 

「遥ちゃんから聞いたので」

 

 少女は嬉しそうな笑顔になる。その時理雄は目の前の少女が宮益坂女学院

 1-Aの花里みのりであると今更ながらに知る。

 

「あぁ……君が……、桐谷さんから話は聞いているよ」

 

「えぇ!? 遥ちゃんが!? えぇと……私のことなんて言っていましたか……?」

 

 みのりはモジモジしながら期待を込めた眼差しで問うてくる。理雄は少し目を逸らすと。

 

「‥生粋の遥オタク……と」

 

「あ……、アハハ……、確かにそうですけど……」

 

「人一倍陰残な幼少期がありそうだとか言っていたな……、『死ねぇ!ミミズめ!ヒュドラの毒で悶えながら永遠の死と苦痛を味わい続けるがいい!!』とか言って自分のオシッコかけていたらしいな?うん、分かるよ。楽しいよねあれ」

 

 

「私の事そんな風に言っていたんですか!?っていうかそんな風に見えますか!??」

 

「冗談だ」

 

 反応がいちいち面白いなと思いながら理雄は笑う。彼女はう〜っと唸りながら不満そうな顔をする。

 

「桐谷さんは喜んでいたよ。面白い友人ができたって嬉しそうに言っていた」

 

「ほっ、本当ですか!? 遥ちゃんが……ハゥ〜‥!」

 

 

 突然大きな喜びを身体中から溢れさせたみのりはそのまま天に召されるかのように仰け反りながら倒れた。しばらく彼女の楽園タイムに付き合ってやった後、理雄は本題に入る。

 

「……で、ここがどこってどういう意味だ? 道に迷ったのか?」

 

「えっと……実は……」

 

 みのりは恥ずかしそうに事の顛末を話し始めた。新曲の振りコピを色々考えながら下校していたらいつの間にか知らない場所に辿り着き。どうすればいいのか右往左往していたら、ハトから生物兵器(フン)を頭上にピンポイント爆撃され、続く爆撃を回避した先でサッカーボールを弄んでいた小学生男子のシュート(流れ弾)を鳩尾に食らい。満身創痍の状態で辿り着いたこの公園で何もないにも関わらず何故か躓き不良少年の足を踏ん付けて今に至るらしい。

 

 

(何だその不幸天使の詰め合わせみたいな話は……)

 

 思わず顔に出してしまったのらしく、みのりは理雄の表情を見て苦笑する。

 

 

「昔から運がなくて……でも、私は頑張ります! いつかドリームライブができるようなアイドルになります!!」

 

「……」

 

 やはり彼女はタフだと思う。彼女なら自分の力がなくても自力で望む未来を手に入れられるだろう。

 

「……駅前まで先導する。それなら後は大丈夫だろ」

 

「は、はい! ありがとうございます!」

 

 2人はベンチから立ち上がり歩き出す。移動している時、みのりはふと思い出したように理雄に訊ねる。

 

「……そういえば、ショッピングモールで志歩ちゃんを助けてくれたの先生なんですよね?」

 

「……志歩の友人なのか?」」

 

「はい! 同じクラスなんです!」

 

 2人はクラスメイトなのか……。志歩が何か言ったのだろうか。

 

「襲ってきた人の頭にフェニーくんのぬいぐるみが飛んできたらしいんですけど……、ぬいぐるみとは思えない程重そうだったって不思議がっていて。あれ先生がやったんですよね? フェニーくんに何か細工でもしたんですか?」

 

「あぁ……、ワタを全部抉り出して変わりに砂だの石だのをありったけ突っ込んで強化したんだ。即席の質量爆弾としては悪くなかったよ」

 

「……。そのフェニーくん、その後どうなりました……?」

 

「ちゃんと埋葬したぞ」

 

 志歩を助けるべく己を犠牲にし解剖と強化手術を受けた英雄は立派に務めを果たし、重傷を負ったのちに名誉の戦死を遂げた。その後は理雄に敬礼されながら棺(モール備え付けのゴミ箱)に入れ埋葬した。彼は勇敢なワタと布の戦士だった。そんな可愛らしい英雄の亡骸の扱いにドン引きしたみのりであった。

 

 

 

 駅前でみのりと別れた理雄は自宅につくと夕食の準備を始める。すると携帯が鳴った。仕事用の方だ。

 

「もしもし?」

 

 

 

 

「1845。非常事態発生」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 理雄の目が殺意に凍り付く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……状況は?」

 

「コードレッド、タイプA、ハードオプション」

 

「了……」

 

 平穏な時間は終わった。ここからが……………………本当の俺のセカイだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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