Project Sekai SCP incident feat . 作:唯尊
この世界にきてからずっと違和感を感じていた。暗闇で生きてきた自分が表の明るい世界で様々人達に囲まれて生きている自分を幸福に感じていた。それはいい、幸福は誰だって享受したいに決まっている。だが…………自分は時々こう思うのだ。
(全てを忘れて平穏に生きたい)
と……、
それはジュリエットの剣であることの誇りを捨てるということになる。志熊理雄はそんな自分の想いの変化に驚き、恐怖した。唯一の自分を……守護者である名誉と立場を失いたくないのだ。あの時、自分の素性がバレるリスクを冒してまでみのりを助けた。財団職員の身元がバレた場合敵対する要注意団体に狙われる可能性はもちろん、機密保持の為に財団から何らかの処置……最悪終了処分が下される可能性もある。
(それでも……‥助けたかった)
それが志熊理雄の嘘偽りない本心であり、後悔はしていない。平穏に生きたいという自分と、誇りを失いたくない自分の気持ちで板挟みになる。自分は揺れている。
そして現在、魂の裏側にいる理雄は自分の世界にいる。
表の自分とは根本的に異なる空間、揺らいでいる自分を完全に切り離した裏の人格は殺意をそこで研ぎ澄ましている。[あらゆる非道が許されるセカイ]から、残忍なもう1人の志熊理雄が目を覚ました。
オペレーターの男性からの招集により、指定された所まで移動する。小さな駐車場にある一台のワゴン車に近寄りスモークガラス越しに顔を運転手に見せる。すぐにドアのロックが外れ理雄は車内に入る。ワゴン車はすぐに移動し東京郊外に向かう。山林に入って降ろされると、近くに見えた戦時中に使われていた古い防空壕に案内されると中に入る。運転手は一番奥の右手側にある木製の扉の南京錠を外すと、中から隠し階段が出てくる。
ほとんど垂直に近い急傾斜の階段を降りていくと鉄製の扉が現れ鍵を差して回す。その少し奥に古びた穴蔵に似つかわしくない電子ロック付きの扉が現れる。網膜スキャン、秘密IDのスキャンの後にパスコードを入力して解錠される。後にここは財団のシェルターとしても使用されている事を知った。
中はかなり広い、様々な部屋が存在し、作戦待機室に入るとそこにはジュリエットチームの面子が揃っていた。
「遅いぞ」
「申し訳ありません」
英牙に軽く謝意を申し椅子に座る。後から中に今回の作戦担当将校とエージェントが入室してくる。ブリーフィングが始まった。エージェントの30代女性が説明を始める。
「今回の作戦に関する情報は全てクリアランスレベル3とする」
前置きを軽く済ますと早速本題に入る。
「本日1845。サッポロ郊外で活動していたフィールドエージェントがサーキックカルトの関係者と思われる人物を発見。追跡、調査の末、アノマリー運搬の事実が確認された」
その言葉にチーム全員の緊張感が一気に高まる。
「運搬中のアノマリーの詳細は不明。テロによる切迫した脅威と判断し、本作戦の実行が決定された。任務内容はサーキック関係者の殺害、アノマリーの確認、確保もしくは排除を目的とする」
その後、彼女は現場周辺の民間人に対する記憶処理の完了。敵が陣取っている施設の詳細。敵の人数や装備といった基本情報の説明を終える。
続いて作戦担当将校の40代後半の男性が作戦行動を説明する。
「作戦目標は敵勢力の排除と施設の制圧、アノマリーの報告だ」
今回の担当である阿嘉慶三郎二尉は鋭い目を光らせる。
「収容チームのために施設の安全を確保しろ。施設内の全ての人間は必要に応じ無力化を行い、最終的には全員の殺害を完了。アノマリーの確認ができない場合は撤退。機動部隊シータ25Jが突入し、ニュー7が周囲を固める。近接重砲およびドローンによる空中偵察が配備される。またニュー7は複合即応部隊も率い、ゼータ9、ミュー13、ベータ7、そしてラムダ5で構成される。通常通り、ガンマ5がレーダー妨害を担当する。作戦は今夜決行…………。質問はあるか?」
手を挙げるものは誰もいなかった。
こうして作戦は始まった。
次回、サーキックとアノマリーが登場予定。