Project Sekai SCP incident feat .   作:唯尊

13 / 83
第十二話 天より剣は刺し貫く

    東北地方上空 高度27000フィート

 

 特殊作戦輸送機 MC-130 コンバット・タロン内でジュリエットチームのメンバーは各々の装備の最終点検に入っていた。米空軍が運用するC-130 ハーキュリーズを特殊作戦に従事させるために改装された機体であり、理雄達が乗っているのは最新のMC-130J コマンドーⅡである。今回の作戦は空中起動作戦なので、航空機やヘリコプターなどを用いエアボーンとヘリボーン戦術一体で行われる。ニュー7率いる複合即応部隊はヘリボーン戦術で作戦地域に展開。ジュリエットチームはエアボーン戦術によるHALO降下(高高度降下低高度開傘)を行う。時間的に東京から北海道に直接行くにはヘリでは間に合わない為このような形になった。

 

理雄達は酸素マスクや自由降下傘のチェックをしていた。そんな中信孝がふと思ったことを口にする。

 

「…何で日本で財団本部管轄の機動部隊が出動するんだ?日本支部の連中に任せるのが筋だろう」

 

信孝の疑問はもっともだった。超地球規模で活動する財団は世界中に支部を持っている。本来なら日本で起きた事案は日本支部の管轄のはずである。その疑問に答えたのがジュリエットチームのナンバー2の初雪だった。

 

「本部からの強い要請だそうだ。日本支部の連中だけじゃ不安なんだとよ」

 

「彼らはそれで納得したんですか?」

 

「納得するも何も、本部からの要請にアイツらが逆らえると思うのか?」

 

 

ジュリエットチームの全員が嘆息する。第二次世界大戦で敗戦後、日本はアメリカを始めとした連合国に占領されてから事実上言いなりになり続けている。それは日本政府だけではなく、それまで日本国内のアノマリーを独自に収集・管理していた[蒐集院]と呼ばれていた組織をも吸収し、財団日本支部を誕生させている。SCP財団はアメリカ発祥の組織で本部もアメリカに置かれている。日本国は表の政治の世界だけではなく、こうした裏の世界でもアメリカにいいように飼い慣らされている。噂では大量のskipが誕生し続ける日本列島を丸ごと収容施設にする計画もあるとか…。財団本部管轄の部隊とはいえ日本人としては複雑な気持ちだ。

 

 

「何せ相手はあのサーキックだ。事と次第によってはKクラスシナリオが発生しかねない…」

 

{(…………)}

 

 

全員が息を呑む。サーキシズム……肉を崇拝し、カニバリズム、心身御供、肉体の増強や魔術まで使える彼等は、自らが神格化できると信じ、生贄で悪魔的儀式を行う危険なカルト集団だ。次元操作や疫病をばら撒いたりもする彼等は世界征服を最終目標としている。そんな連中を野放しにすれば間違いなく世界が滅ぶ。主に2つの宗派に分かれており、今回の敵はプロト・サーキックと見られている。

 

(閉鎖的で貧乏な黒魔術師どもが相手か…しかもアノマリーまでいやがる)

 

元の世界でも連中がばら撒いたskipに殺されかけた経験があるんだ。理雄は過去の自分を思い出し………、そこで無理矢理過去の記憶を頭から切り離す。

 

(これ以上はよせ…、余計な復讐心は身を滅ぼす)

 

 

しかし理雄の目から消える事は無かった。いや、そもそも消えた事がないのだろう。その憎悪に燃える瞳はいつも誇りの輝きで隠している。

 

 

「そういえば、要注意人物が関わっているそうですね。今回の件」

 

理雄は思考を切り替え初雪に言葉を投げかける。

 

「あぁ、最近ニュースで不審者の事件・事故が多かっただろ?どうやら財団の元関係者がグロカルトの連中とつるんでサーキックやDクラスとかの末端の人間を使って情報を盗もうとして全部潰されたんだよ。幸い情報が連中に渡った事は無いようだがな…。1番関わっている可能性が高いのは…」

 

 

「予定空域にもうすぐ入る!総員、降下準備!!」

 

全てを語る前に英牙の指示が飛ぶ。その後、現地の地図を使って降下後の動きの確認を済ませ、降下準備に入る。

 

 

             *

 

北海道日高山脈上空 高度27000フィート

 

     東京から約1時間半、時刻 2030。

 

  北緯42度43分10秒 東経142度40分58秒

 

 機体内部側面の左右にあるベンチに酸素マスクを付けた職員達の中から8人の男が立ち上がる。マスクを外し機体中央にある荷をばらし始める。タクティカルベスト、ヘルメット、小銃など、それぞれを互いにチェックしながら身につける。準備を終えた直後、機体内部がアラームと共に非常電源の赤く暗い光に包まれる。全員が降下用酸素マスクをつけ、赤いランプが点灯し英牙が両手を広げ…

 

「5分前だ!」

 

とマスク越しに叫び他の仲間も手と指を広げて仲間にハンドシグナルを送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機体の後部ハッチが機械音を立ててゆっくりと開き始める。人差し指を高く上げ降下1分前のハンドシグナルを送り合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッチが完全に開き、親指と人差し指でコの字をつくり、降下30秒前のハンドシグナルを送り合う。

 

 

 

 

 

 

 

ランプが青に変わり、降下が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ついて来い」

 

暗視装置付きのヘルメットとマスクでターミネーターのようになった英牙から次々と降下を始める。暗い雲海を貫き、ジュリエットの剣が舞い降りる。暗視装置越しの空は薄暗い緑色に見え、氷点下62度にもなる冷たい風を受けながら自由降下が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この話はかなり区切りながら進めますが、その分面白いものをお届けします。次回もお楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。