Project Sekai SCP incident feat .   作:唯尊

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第十四話 悪腫による世界の破滅 PART2

 暗視装置から見える世界は薄暗い。倒れた敵兵は冷たくなるにつれ色が暗くなってそのまま動かなくなる。まるでビデオゲームだ。訓練や実戦を積めば積むほどその意識は強くなる。

 

 自分達は守護者だ。人殺しは強く忌避する。だが人類全体を守るには綺麗事だけでは済まない。時間が経てば経つほどそれは身をもって思い知る。 心を凍り付かせ、人死を許容しなければならない場合が必ずある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少なくとも目の前のカスの命を奪う事に躊躇いは感じない。

 

 

 

「どうやってここに来たのかは知らん。だがやる事はすでに決まっている。当ててみろ」

 

 

 中背で痩せた体躯、ボサボサの頭髪とニキビが大量に付いた不衛生な顔。その上にボロいローブを着込んだ鳥丸は現在、元の世界で日本生類創研の職員として勤務し、ネオサーキシズムの諸団体とも関わりがあった人物であり、財団の監視下にあったはずだが……、彼はこちらの世界でプロトサーキックと接触していたようだ。

 

 

「……僕の力を認めないからだ……」

 

 怨みの籠った声を目の前の不潔カルキストは呟く。

 

「ア?」

 

「お前らが悪いんだ!! 皆僕を馬鹿にしやがって……、これは報いだ!! 死ねえぇぇぇェェ!!!!」

 

「黙れ」

 

 腰からトカレフ拳銃を抜こうとする前に、理雄のHK 416Cのサプレッサーから放たれた5.56×45mm NATO弾が冷たく平滑な声と共に放たれる。放たれた弾丸は鳥丸の顔に吸い込まれ顔を貫通。

 

 倒れた鳥丸の胸にもう2発撃ち込み、完全に連続性を断ち切る。

 

 部屋のすぐ外に付いていた他の4人が部屋に入り、初雪が鳥丸の顔写真をスマホで撮り作戦司令部に送る。

 

「こちらジュリエットチーム。ジャックポット」

 

 司令部から本人の確認が取れると、英牙が標的全員の殺害と建物の確保を報告する。

 

 

「いいのを決めたな。理雄」

 

 悟が鳥丸の死体を見ながら感想を呟く。

 

 

「………………」

 

 理雄は無言で目の前に倒れる醜悪卑劣な肉塊を睨み続けている。

 

 

(サーキックなんざに……、コイツみたいな奴がいるから……!)

 

 過去の惨劇を思い出し、瞳を憎悪の炎で燃え上がらせる理雄に対し誰もそれ以上声はかけなかった。

 

 

 話題を変えようとしたのか、それともたった今思い出しただけなのか。

 信孝が口を開く。

 

「そういえば……、コッチの財団はコイツの正体知ってるのか?」

 

「いや、上層部はともかく。末端の連中は'謎の財団機密漏洩者'って事になってるんだろう……」

 

 英牙がその質問に答える。地下防空壕の施設で由那達から受けた説明が全て事実ならば、この世界に要注意人物 鳥丸百九は存在していない様だ。

 彼女達も突然現れて財団の機密をどこかで手に入れて要注意団体にばら撒いている謎の人物としか認識していないようだ。

 

「元々はコイツ監視対象であって殺害対象じゃないですよね? なんで最重要標的に……」

 

「それが俺たちが突入チームに選ばれた理由だな……。元の世界の要注意人物がこっちに来たせいで人類の安全を脅かしているなんてこっちの財団にバレでもしたら……」

 

 悠間の疑問に対し英牙が最も考えられる推論を提示する。そんな事になればこちらの財団からの協力を得られなくなる可能性が高い。おそらく上層部……噂に聞くO5同士の密約によって握り潰されたのだろう。他の財団職員がそんな現状を容認するわけがない。鳥丸の事を知り、状況をある程度察していた元の世界から来たジュリエットチームにコッソリ葬らせるつもりだったのだろう。

 

 

 しかし……、何故そこまでして財団はこの世界に固執する? いや、そもそも鳥丸はどうやってこの世界に来た? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……’謎の存在’が大きく関わっているに違いない……

 

 

 ジュリエットチームの全員がそう確信した、その時だった。

 

 

 周囲から爆発の衝撃が響いた。鉱山爆薬を使った様な大きな振動が地下に広がり土埃が天井からパラパラと落ちる。その後、何かが陥没する様な音が聞こえる。

 

 

 

 

 

 なんだ……? と全員が身構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 [Island Fish! Island Fish!! ]

 

 

 

 

 

 

 

 

 無線からセプター1のリーダーからの声が聞こえてくる。声には焦りと恐怖が混じり、その周囲からは隊員達の悲鳴と怒号に加え消音された銃声まで聞こえる。それらとは異なる呻き声も……。[アイランドイフィッシュ] それは、緊急事態発生を意味していた。

 

 

 

 

 

 地上に戻ると、そこは地獄そのものを描いている様だった。

 

 

 

 山荘の周囲に直径50M程の大穴が空き、地表が陥没していた。その中からは…………。

 

 

 

 

 

 赤くにくにくしい餓鬼どもが湧き出していた。

 

 

 

「最悪だ……」

 

 

 理雄は思わず呟く。サーキック絡みと聞いてある程度予想はしていたが、1番最悪なものが飛び出して来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 [SCP-610 にくにくしいもの]

 

 

 

 

 

 

 かつてサーキックが生み出した生物兵器。ロシアのバイカル湖周辺を肉の地獄へと変え、ロシアのGRUスペツナズを壊滅させた悪腫だ。

 

 

 

 

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