Project Sekai SCP incident feat .   作:唯尊

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番外編 花園への襲来

 いつの日だったかは忘れたが、宮女に勤め始めたばかりの頃に起こった最低の出来事を紹介する……。

 

 

 

 その日、宮益坂女学院体育館にて。全校生徒と教職員全員が集められていた。朝一から開かれた全校集会で校長が登壇する。

 

 

「最近、シブヤ周辺を中心に不審者による事故.事件が多発しています。現在警察の方々も地域の安全の為に全力を尽くしていますが、本校も生徒と教職員の皆さんを守るために対策を練る必要があります。よって、本日の1限目から防犯訓練を実施する事が決められました」

 

 

 体育館内の生徒達がざわめき始める。この中には一歌達を含めた直接事件に巻き込まれた人間もいる。生徒達の不安はもっともである。教育委員会に警察、保護者達の要請もあり宮女側は防犯対策の一環としてこの様な防犯訓練を行う事になった。校内には警察官も講師として来校している。

 

 

「今回の為に、警察庁生活安全局からお越し頂いた森裕樹巡査部長と。自衛隊にて服務経験のある志熊理雄先生に協力をお願いしました。……お二人とも、どうぞよろしくお願い致します」

 

 

 理雄の登場に周囲が驚きの声を漏らす。

 

 理雄は隣の警察官と共に生徒達の注目に晒されながら数日前の職員室での会話を思い出す。防犯訓練の実施が決まった際、理雄は一歌達を不審者から単身で助けだした実績と自衛隊服務経験から生徒達の防犯指導に協力して欲しいと言われたのだ。理雄としてはあまり目立つ行動は控えたかったが、理雄は短い期間でかなりの人望を得ていた。最終的に校長から頭を下げられてお願いされたため。結局引き受けることにした。

 

 

 

「防犯対策といっても様々だが、今回はストーキング、侵入犯罪、誘拐などへの対策と簡単な護身の知識、実践を披露する」

 

 

 

 来校した警察官は若く、どちらかといえば理雄が主導する形になった。

 

 

 人気の無い道は避けること、すぐに周囲の人間に助けを求めることや警察への速やかな通報。宅配などを受け取る際、インターフォンや覗き穴を使ってドア越しに人物を確認する事など。基本的な対策を伝えながら、実際に起きた事件や事故の例を引用して講義を行う。説明はシンプルかつ緊張感が出る様に被害者の受けた損害とその後の悲惨な人生を話す。基本的な対策さえしっかりしていればこれだけの惨劇は防げたと、生徒達の顔が青くなり始めた辺りで講義を終わらせる。

 

 

 続いて、森巡査部長とのマススパーによる簡単な護身術を披露する。道端で車に連れ込まれそうになった時の肘打ちからの腰投げ、極めの突き。武器を持った相手に対する速やかな逃走。それができない場合はナイフ護身術、空手の合気拳法による受け、捌き、投げ、極めにより相手を制圧する。特殊部隊がやる様な高度なCQC(近接格闘術)は披露しないが、生徒達も森もその鮮やかな体捌きに驚いていた。

 

 

 2限目は体育でジャージに着替えた一歌達に実際に護身術を教える。拳の握り方や打撃に対する防御、フォームなどの基本から始まり。ミット打ちや立ち関節技などを直接指導する。皆真面目に取り組んでいたが、若い男に触れられるのは年頃の乙女にはかなり恥ずかしいのか、理雄が彼女らの身体に触れると皆顔を林檎の様に赤くする。嫌がられた事はなかったが。

 

「あ、あれ……? ここは……」

 

「……相手の手首を捻る様にするんだ。ホラ……、こうやって」

 

 合気の要領で生徒を前方に一回転させ、背中が体育館に敷いたマットに落ちる前に支えてやる。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 その生徒は顔を赤くして俯きがちに礼をする。

 

 その後、休憩に入り。教えた生徒は友人達の輪に入っていき、はにかみながら何事か話し合い。友人達とキャッキャウフフと盛り上がっていた。

 

「…………」

 

 志歩は少し不満げな表情をしながらその様子を見ていた。

 

「どうした? 志歩……」

 

「……いえ、別に……」

 

 

 そう言って志歩はその場を去っていく。理雄はこの時志歩から好意を抱かれていると気付いているにはいたが、信頼と尊敬の延長の様なものだと思っていた。

 

 

 

 休憩が終わった後、2限目の後半に入りこれが終われば訓練は終了となる。

 

 

「最後は不審者に対する避難訓練を行う。実際に不審者が校内に侵入した状況を想定した行動をとる。まず不審者役の男が窓から侵入し、その後……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如、体育館の窓が開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヴヴヴぇああァァああああ!! 新鮮な美少女共! 血とそれ以外の体液も全部吸い尽くして胸に俺の寄生体を植え付けてやる!! ヴふほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 窓から飛びいる様に乙女の花園に侵入した者は下半身は黒ジーンズ、上半身は鍛え上げられた裸体にサラダ油をたっぷり塗りたくり。ソフトな甘い顔は化粧とはお世辞にもいえない様な、絵の具同然の白い着色料を顔に広げ分厚い口紅がかなり強調された怪人だった……………………………………というか宮崎信孝だった。

 

「………………」

 

 悲鳴を上げパニックになるお嬢様方を見て奇声を交えながら笑う信孝を見て理雄は閉口する。

 

 

 関わりたくない……あんな生き物と顔見知りだなんて思われたくない。

 

 

 しかし無関心を貫けた時間は数秒ともたなかった。

 

 

「ギシシシシシ……、さ〜て誰から食ってやろうか……。よし! そこのちっこいのだ!! たっぷりと味わってヤルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」

 

 

 運悪くヤツの視界に入った小動物の様な可愛らしい少女……、小豆沢こはねはジュリエットチーム最凶の変質的超常’性' 命体にロックオンされ、涙目になりながら嬲られ貪られながら犯される恐怖に震え動けずにいる。

 

 

 ヤツの手がこはねに触れる前に信孝の顔面に蹴りが入った。

 

 

「ブベぇあっ」

 

 

 汚く短い悲鳴をあげ信孝は倒れそうになり‥……その場に踏ん張った。

 

 

 どうやら直前で右腕に防御された様だ。

 

 

 

 獲物の捕食を邪魔された信孝は目の前の女顔の男を睨みつける。それが理雄だと分かると途端にニヤけだし。

 

 

 

「よお理雄。ソイツはお前の上物か? 悪いが俺が先に……」

 

 続きを聞く気はなく、その口を閉ざす為に一瞬で踏み込み顎に二発の突きを見まわせる。 

 

 

 二発とも防がれる。

 

 

 信孝は右に回り込み左ストレートを打ち込むが、ダッキングで回避しタックルにもち込む。しかし信孝は足を取らせず上半身を押さえ込んで上半身を抱えると俵返しで後方に放り投げる。

 

 

「ぐっ……」

 

 肺から空気がしぼりでるがすぐに前方に回転して立ち上がる。立ち上がった瞬間に目の前に前蹴りが飛んでくる。

 

 身体を半身に捻って躱し逆体で構える。少し距離をとって互いに様子を見合う。長身故に攻撃範囲が広い信孝は間が広い一方で、接近すると組み合いになる。だが付けいる隙は結構ある。

 

 信孝の右ミドルキックに左スウェーで弾く様に合わせる。足を差し替え右ハイキックで返すがまた防御される。

 

「ノロいんだよ!」

 

 信孝は左右のジャブ、フック、アッパーなどで接近しながらら圧力をかける。右ストレートをしゃがむ様に躱しながら左足を踏み込み両膝を折る様にしながら中段に正拳を打ち込み信孝は腹から空気とともに呻き声が溢れる。一瞬蹲った信孝に組み付き大外車で床に叩きつける。倒れた信孝に対し、理雄は鳩尾を踵で踏みつける。

 

 

「グぼぇェェェェッ」

 

 引き潰されたカエルみたいな声を出して信孝は肺の酸素を全て吐き出され、白目を剥いてそのまま意識を失った。

 

 

 呼吸を落とし、残心をとる。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、変態を見事にぶちのめした理雄は学校中の生徒達から一気に注目されるようになり。理雄に好意を持った何人かが告白を申し出るようになった。

 

 

 

 

 理雄はあんな変態性欲者が知り合いと思われなかっただけ良かったと内心安堵していた。

 

 

 

 

 信孝は何かのバイトで不審者役としてあの場にいたらしいが、明らかに犯罪行為ギリギリだったのでこっぴどく叱られた挙句。報酬は貰えなかったようだ。

 

 

 

 しかし信孝は諦めず、その後も宮女の校舎周辺を徘徊したり生徒へ絡んだりしていた。

 

 

 理雄はアノマリーに一歌達が巻き込まれるよりも、チームメイトによる性犯罪の被害に会うのではないかという最低最悪な悩みにとりつかれる事となった。

 

 

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