Project Sekai SCP incident feat .   作:唯尊

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第十五話 煉獄からの鉄槌

 大穴から出て来たグロテスクなゾンビは人型、動物型含めて300体を超えていた。セプター1は距離を取りつつ銃撃で足を止めようとするが、連中に銃は通じない。せいぜい動きを止めるぐらいだ。

 

 動物型の中には熊の様に大きな個体もあれば鳥型の様な飛行型もいる。

 

 ギシェアアアアアアアアアアアアアアア!! 

 

 

 煉獄からの亡者の如き餓鬼共は空陸一体の三次元攻撃を仕掛けてくる。セプター1の隊員達は次々とその牙に狩られていく。

 

 熊型に頭を食いちぎられる者……。人型4体に手足を引きちぎられる者……。鳥型に空中に攫われ鳥葬の如く食い貪られる者……。

 

 中には状況に絶望し自ら拳銃で頭を撃ち抜く者や感染を防ぐために傷をつけられた瀕死の仲間を介錯する者もいる。

 

 

 

 …………僅か5分足らずでセプター1は全滅した。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

「クソッ!! ジュリエット5よりジュリエット1! 多数の敵性個体を確認。個体は全て第1形態と見られる。現在も地下から大量に出現中ッ!!」

 

 

「了解……、ジュリエット1より司令部。適性アノマリーは地下に拠点を設置していると思われる。地下空間には第2〜第4形態の存在が推定される。大至急近接航空支援を請う。オクレ」

 

 

 悟からの報告に英牙は冷静に応え、空爆を司令部に要請する。

 

 

 

 [こちら司令部。了解した。対戦ヘリとブラックホークによる対地攻撃を行う。作戦地域に目標を釘付けにしておけ。到着予定時刻は10分後、オクレ]

 

「了解。傷肉共を軽く焼いておく、オワリ」

 

 無線で司令部との通信を終えると他の仲間に回線を変える。

 

「ジュリエット1よりオールジュリエット。’オデッサ’発動、繰り返す。’オデッサ’発動」

 

 

 英牙からの兵站維持の指示に各々が動く。

 

 初雪達は理雄達の目標施設脱出を援護する。向一のMG3が火を吹く、第二次世界大戦中に連合国軍兵士から[ヒトラーの電動ノコギリ]と呼ばれた当時史上初の汎用機関銃であるMG42を戦後ドイツのラインメタル社が再設計した銃だ。毎分1150発という爆速の発射レートで7.62×51mm NATO弾がばら撒かれる。

 

 赤く傷だらけの呪肉達は悍ましい絶叫をあげながら薙ぎ払われていく。

 

 その間に英牙達突入チームは施設から速やかに離脱する。

 

 途中、飛行型が数匹英牙達に襲いかかるが。悟のレミントンM870ブリーチャーから放たれる12ゲージバードバックショト弾にその尽くが落とされた。離脱中も相互支援を繰り返しながら迫り来る肉塊共から距離をとる。

 

「チッ……、邪魔だ!!」

 

 左側面から大量の肉塊が押し寄せて来た。理雄は焼夷手榴弾のピンを引き抜き投擲、2000度を超えるテルミッド火焔が業火となり焼き尽くす。

 前方の敵は信孝のMINIMIが薙ぎ払い突破口を開く。

 

 包囲されない様に外側から回り込む様にしながら初雪達と合流。射撃を続けながら英牙が無線を取る。

 

「ジュリエット1よりセプター2。白燐弾による砲撃支援を要請。座標 54SUE 883 493。繰り返す、883 493!」

 

 [セプター2、了解。砲撃する]

 

 セプター2の指揮官が要請に応え、後方から迫撃砲による砲撃が始まる。120mm重迫撃砲から放たれた白燐弾が花火の様な音を立てて発射され、

 シュルルルル……と落下してくる。

 

 ナパームより強力で味方にまで被害を及ぼしかねない故に、現代において白燐弾を使っている国は少ない。しかし人外の怪物共に化学の力は絶大な力を発揮する。今は危険で忌まわしいと思う事はない。焼き払われていく肉塊共を見て理雄達はむしろ感謝していた。

 

 その後も射撃を続けていたジュリエットチームだったが……

 

 

「いゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 [[!? ]]

 

 

 突如聞こえた悲鳴にチーム全員が反応する。

 

 炎と傷肉の向こう側にある大穴から10代の少女が飛び出して来た。サーキック関係者かと思って理雄が銃を向けるが、服装からして一般人のようだ。

 

 何故あんな所に……人払いは済ませたはずだ。

 

 一瞬の困惑もすぐに合点がいった。そもそもこれだけの感染者がどこから来たのか。地下から這い出て来たのは直接確認したが、感染者となる人間は何処からここに来て何故感染したのか……。

 

 ……理由は明白だった。300体以上いる感染者の内非人間型数十体は近隣に生息している動物達だろう。そして人間は……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 近隣から誘拐された人々だろう。

 

 

 

 

 

 日高山脈は現在に至るまで人の手がほとんど及んでいない未開の地だ。

 行方不明者が何人か出ていても捜される事は勿論、迂闊に近寄る人間も少ないだろう。国立公園付近ならともかく、極寒の険峻に踏み入る事は簡単ではない。

 

 おそらくあの少女も近隣の町からサーキックに誘拐され、’クソ儀式'の生贄にされかけ何らかの要因で一応の生を得ていたらしい。

 

(まずい……、この状況じゃ助けられない……!)

 

 前方には高熱と肉塊の壁が蠢めいている。助けるどころか近寄る事すら出来ない。

 

「いやっ! 来ないでっ……やめてェェ!!」

 

 泣き叫ぶ少女に呪肉が群がる。

 

 理雄は少女の周りに近づく感染者を撃とうとしたが、自分達に津波の如く遅い掛かってくる傷肉の波を押し留めるのに精一杯だ。

 

(誰か……撃てるやつは……)

 

 少女の存在には全員が気づいていたが、火力の中心である信孝と向一は波を何とか押し留めている状態だ。それは他のメンバーも同じだった。

 

 そして遂に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少女の腹部に奴らの爪が刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

「あ……アア……」

 

 自分の体の現状を受け入れられないのか、信じられないものを見る様な目で己の腹部を少女は凝視する。

 

 直後、激痛が走り少女の体が食い貪られる。

 

 腸が引っ張り出され、内臓を生きたまま食い散らかされていく。

 

 

「いた……い、いたい。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!!!」

 

 少女の絶叫を無視して感染者達が我先と群がる。

 

 

 チームの中でも視力と感覚に優れていた理雄の脳にその光景は目を、耳を、空気を通じてダイレクトに伝わる。

 

 

 刹那……、少女と目が合った。理雄にはそう見えた。

 

 

 

(助け……て)

 

 

 少女の口が助けを求める様に開く。

 

 

 この時、少女の顔にかつて最愛の幼馴染の顔が重なった。

 

 

 

「……ッ!」

 

 一瞬の動揺をすぐさま殺意で押し殺し、HKの光学照準を100m程離れた少女の額に合わせ……発砲。

 

 放たれた慈悲の一撃は少女の頭を貫き、その魂をこの世とは違う彼方の世界に送る。はるか遠くに……、遠くに……、アノマリーなんてものが存在しない世界へ……。

 

 

(許せ……、これくらいしかしてやれないんだ……」

 

 

 理雄の行いを誰も責めなかった。単に忙しいだけではない。立場が違えば自分達も同じことをするからだ。

 

 

 理雄は一瞬で意識を切り替え射撃を継続する。今やるべき事は罪悪感に沈む事じゃない。ここで共に死線を掻い潜って来た仲間を守る事だ。

 

 

 そして10分が経った。上空にMH-60DAP ブラックホークと、その反対の空からAH-64D アパッチ・ロングボウが飛来する。

 

 [こちらフルメタル25。只今よりマチューテ16と共に近接航空支援を行う。オーバー」

 

「了解、焼き払ってくれ」

 

 ブラックホークの機長は英牙との無線通信を終えると、蠢く肉の海に向けM134D ミニガンを掃射する。

 

 凄まじい砂煙が列をなぞって舞った後、休みを与えず対戦ヘリのAGM-114ヘルファイア対戦車ミサイルが放たれる。

 

 

 16発の対戦ミサイルの後にブラックホークのロケット弾ポットとミニガンの再掃射が行われ、轟音と共に爆炎が上がる。理雄達は地面に伏せて距離をとっていても、その衝撃は体中に響く。

 

 

 徹底した空爆により、肉の海は炎に包まれ死滅した。機動部隊ニュー7の対戦ヘリとブラックホークが煉獄に匹敵する火力を鉄槌として振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

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