Project Sekai SCP incident feat .   作:唯尊

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第二十四話 カオス・インサージェンシー

 薺宏光三尉は先頭のバンの助手席に座っていた。車外の空気は湿り気を帯び始め天気は曇りつつある。雨になりそうだ。

 

「……大人気なかったかな」

 

「は?」

 

 宏光の独り言に部下が怪訝な顔を向ける。

 

「いや…あいつらへの態度さ…、現場で余計な思惑を持ち込んだ」

 

「警護計画も聞かすべきだったと?」

 

「現場で相互不信は厳禁だ。そんな新人でも分かる事を疎かにするとは…、リーダーとして情けなくなるよ」

 

「それはッ…上の連中がそう指示を…」

 

「関係ない。俺達にとって1番重要なのは任務だ。現場で政治を持ち出した挙句に、それに僅かなりとも便乗している時点でプロ失格だ」

 

今年で36歳になる宏光は、警務隊で勤務して15年目になる。部下の前でみっともない姿を見せてしまったことを恥じる。

 

「…しかし、それでもアイツ等は気に入りません!」

 

部下である東野の返答に宏光は「ガハハッ」と短く笑う。

 

「心配するな。俺だって好いちゃいない。だが奴等は財団のエリート中のエリートだ。同じ職責を全うしているだけじゃない。………まさに剣の切先だ。敬意は払うべきだろ?」

 

 東野はその言葉に対し何も言わなくなる。

 

 最初の目的地に着いたら改めて警護計画を話そう。任務が終わったら今日の詫びに酒でも奢って許して貰えばいい…そう思っていた宏光は窓ガラスの向こう側の景色を見る。

 

 大して面白みもない景色だ。10〜20階程度の高さのビルやマンションが右に流れていく様子を眺めていると、1番奥にあるビルがたまたま目に入った瞬間。

 

 屋上が光ったように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----航空誘導灯…?

 

 

 

 

 それが違うとわかった時には--------

 

 

 

 

 

目の前にロケット弾が迫っていた。

 

 

 

 

「敵弾ッ!!!!」

 

 

 宏光の叫びに咄嗟にハンドルを左に切る東野。真横を過ぎった毎秒200m程度のやや遅いタンデム成形炸薬弾頭は後方のリムジンのドアミラーを破壊し---------

 

 

 

最後尾のバンの前輪に着弾した。

 

 

 

         *

 

 

 

横転したバンの中で目覚めた理雄は、脳の痺れにより世界が歪んで見えた。上下逆転した状態で座席に逆さ吊りにされた理雄は、まず信孝たちに呼びかける。

 

 「宮崎…ユウさん…!」

 

 しかし2人からの返答はない。後部座席に座っていた理雄と違い、前席に座っていた信孝たちは衝撃を強く受けたようだ。

 

 ともかくすぐに脱出しなければ…! そう思ってシートベルトを外し車の天井に落下。

 

 「…ッッ!!!」

 

 受け身を取った瞬間、身体中に激痛が駆け走り歯を食いしばる。どうやら肋骨が折れたようだ。

 

 なんとか車外へ這いずり出ると、目の前は戦場に早変わりしていた。

 

 前方のバンはは左側の歩道の電柱に衝突。リムジンはその手前で急停止していた。周囲の一般人が悲鳴をあげパニックになる最中、さらなる狂宴が続いた。

 

   

  --------リムジンが穿たれていく。

 

 

 

 周囲のビルやマンションの屋上から耳をつんざく激しい銃声が木霊する。四方八方から銃撃を受けたリムジンは蜂の巣になり、エンジンが破壊され動きを封じられる。

 

 休む間も無く白い大型ワゴンが2台突入してきた。中から6人程の武装兵が飛び出してくる。

 

 ポルトガル製リザードパターン迷彩戦闘服やアメリカ製デザートパターンなどの戦闘服を着込み、ロシア製6B12アサルトベスト、もしくは6B13ボディーアーマーの上にチェストリグを付けた兵士達がAKMやAK74を手にリムジンを取り囲む。

 

「Ponlo alrededor desde la izrquierda!!」

(左から回り込め!!)

 

「No corte el rodaje!!」

(射撃を絶やすな!!)

 

兵士達が怒鳴り合いながらスムーズに動く。相互支援をうまくやりながら素早く行動する彼らはAKの引き金を引き続ける。

 

 屋上からも牽制射撃が行われ、弾丸が雨の様に降り注ぐ。

 

 ------どう見ても素人の動きではない。彼等はプロだ。

 

 隙をみて前方のバンの警護官たちが拳銃や短機関銃を手に飛び出すが、

一瞬で全員の全身に穴が空いた。

 

 後方のバンは片付けたと認識したのか。理雄たちを無視してリムジンを制圧しにかかる。

 

 やがて穴だらけのリムジンの中から雅弓と運転手が手を上げて降りてくる。

 

 「撃たないでッ、お願-----」

 

 返答としてAKの5.45mm弾や7.62mm弾が2人の身体に撃ち込まれた。2人が倒れた後も銃撃は続けられた。

 

 しばらくして銃声が止むと、彼らは雅弓の死体に近づき本人確認を行なう。目標の殺害に成功したのか、指揮官らしき男が撤収の指示を出す。

 

 その時、遠くからパトカーのサイレン音が聞こえた。

 

 もはや狂乱がぶちまけられたイタバシの街は逃げ惑う一般人で溢れ、その中を2台のパトカーが突き進む。曲がり角を曲がって車輌本体が見えてくると、指揮官が屋上にいる兵士たちに何やらジェスチャーを飛ばす。

 

 兵士達が取り出しのは------

 

 

 

------携帯式対戦車擲弾発射器 RPG-7。

 

 

 PG-7VL 対戦車榴弾が装填されたクルップ式無反動砲がパトカーの一台を照準に捉え-----発射。

 

 後方に噴き出される大きなバックブラストと爆音を残し、初速115m毎秒の弾頭が10mの地点で固体ロケットに点火、最大秒速295mに加速し飛翔。200mの地点でパトカーに命中した。

 

 命中したパトカーは爆発し炎に包まれながらも慣性の法則で前方に滑っていき停止。

 

 もう1台も地上のRPGに吹き飛ばされ横転、炎上する。

 

 その後、警察の応援が駆けつける前に彼らは素早く撤収した。

 

 地上にいた兵士たちは来た時に使ったワゴンに乗り込み撤収。屋上にいたチームもいつの間にか姿を消していた。

 

 

          *

 

 

 激痛で意識が遠のく中、彼らの正体が理雄には解っていた。

 

 彼らは白や黒の覆面の上にバンダナを巻いていた。そこにはスペイン語でこの様に書かれていた。

 

 『Muerte a la fundacio'n arrogante!』

   (思い上がった財団に死を!)

 

 彼らはかつてO5評議会直属の汚れ仕事専門の機動部隊。そして財団に反旗を翻した精鋭集団……。

 

 

 ……カオス・インサージェンシーだった。

 

 

 

 

 

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