Project Sekai SCP incident feat .   作:唯尊

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第三話 繋がりを求める者たち

  

 宮益坂女学院の入学式が終わってから数日後、自分が受け持つ1-Cの教室に担任に案内されながら向かう。

 

「しかし驚きました。まさか9ヶ国語を喋れる方が来るとは..。」

 

 

 

「厳密にいえば7ヶ国語です。中国語とロシア語は苦手です。」

 

 

担任教師の女性教諭と会話しながら廊下を歩く。50手前の人物だが、引き締まった体躯と凜とした美しさを持った女性だ。

 

「当校は進学校ですので、あなたのような広い視野と智見がある方は生徒も心より歓迎するでしょう。」 

 

「ありがとうございます。女子校なので、正直不安ではありますが、そう言ってくれると助かります。」

 

「大丈夫ですよ。皆優しい子達ですから。」

 

教室に入り、生徒たちを見渡す。高校生活がまだ始まったばかりだからか皆緊張気味の表情だ。

 

「志熊理雄です。皆さんの語学を担当します。客員講師ですが、海外での生活経験を活かして皆さんの力になりますので。勉強のこと以外でも遠慮なく相談してください。よろしくお願いします。」

 

 

爽やかで優しい笑顔と声を投げかける。自分でも気持ち悪いくらいの優男を演じる。

 

生徒たちはそれを見て、優しいイケメンと認識したのだろうか。張り詰めていた教室の空気が比較的緩やかものになる。

 

その後は簡単な自己紹介を行なった。好きな食べ物、動物といったよくあるものから、好きな異性のタイプや彼女はいるかといった女子高生が好みそうな質問を投げかけてきた。

 

「僕は寿司が好きだよ。ホタテがとくに好きかな。」

 

「先生のこと何て呼べば良いですか?」

 

「お好きなように」

 

「じゃあリオちゃんせんせー!」

 

「そういう呼び方されるのこれで201回目なんだけど...,」

 

金髪をツインテールにした元気な女子生徒の質問に苦々しい顔で答えると周囲から笑いが上がる。ちなみこれは本当の話だ。昔から名前と顔が女性的とみられ、それで良い思いも悪い思いもしたものだ。特に気にしたことはないが。

 

ホームルームを終わらせると、早速英語の授業に入る。

 

 

進学校の生徒なだけあり、個人差はあるが、皆基本はできているので授業は進めやすかった。最初に当てた青髪ショートの生徒は特に優秀だった。なんでも元国民的アイドル(無論俺が知るわけない)だったそうだが、多忙な身でここまで出来るとは正直感心した。

 

その次に当てた黒髪ロングの生徒は心なしかボーっとしており、3回読んでようやく気づき、「ひっ、ヒャい!」となんとも間抜けで可愛らしい返事をした。

 

授業が終わり、俺は教室を出て廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。

 

「あのっ!」

 

「?」

 

見てみるとさっきの黒髪ロングの生徒だ。何か覚悟を決めたような表情をしている。

 

「ボーッとしていて何か聞きそびれたかい?」

 

 少し意地悪に揶揄する。

 

「い、いえ…授業中はすみませんでした。」

 

 彼女は素直に頭を下げる。かなり真面目な性格のようだ。

 

「いや、別に……それで何か用かい?」

 

 彼女は不安そうにしながらも真剣な表情で口を開く。

 

「私の……大事な友達のことなんです。」

 

 

 

 

 

 

 

彼女の名は星乃一歌。中学の時にすれ違いになった幼馴染達との関係を修復するべく奮闘しているらしいが、どうも壁に当たっているらしい。

 

 

「つまり、昔のように4人一緒にいたくても、お互い言えないことや諸々の事情で離れ離れになり、今も1人離れたまま...と。」

 

「はい…」

 

一歌は沈んだ様子で答える。彼女なりの努力で他の2人とはひとまず関係を持てるようになったものの、最後の1人が心にトラウマを負っており、接触すら出来ないらしい。

 

「……」

 

 理雄は考える。正直くだらないとは思う。自分の意見を相手に伝え、相手の意見をしっかり聞いてからお互いにすり合わせなければ事は運ばない。ただ、それを心身共に未熟な女子高生に伝えるには言葉を選ぶ必要がある。

 

「確認したいんだけど…」

 

「はい…」

 

「君は彼女らと一緒にいたいんだね?」

 

「はい!」

 

力強く答える。

 

「それは向こうも同じだと思うよ。」

 

「…!」

 

「君達の仲は詳しくは知らない。けど話を聞く限りこのすれ違いはお互いの優しさ故に起きたんじゃないかと思うんだ。」

 

「……」

 

「想いが同じなら、繋がりを求め合う者たちならまた一緒になれる。だから、まずは君の想いを伝えるんだ。そしたら今度は相手の想いを聞く。あとはお互いの絆を確かめ合うだけだ。」

 

「私の想い……穂波の想い…」

 

しばらく自分の気持ちを確かめる時間を取ると彼女は意を決して立ち上がり、深々と頭を下げた。

 

「ありがとうございます。少し、答えが見つかったかもしれません。」

 

「…そうか」

 

 相談に使っていた空き教室を出ると2人で教室に戻る。

 

 廊下をしばらく一緒に歩いていると、一歌がふと聞いてきた。

 

「あの……先生にも想いが同じ人っているんですか?」

 

「どうした?急に」

 

思わず聞き返すと、一歌は少し恥ずかしそうな様子で。

 

「いや…少し気になって…」

 

「…いるよ」

 

 理雄はシータ25-Jのメンバーを思い出す。一歌たちと比べたら汚らしく歪みまくりながらも、同じ誇りを持った絆で結ばれたジュリエットの剣たちを想う。

 

(あいつらは無事だろうか…)

 

 

 

「そうですか……あ、もしかして幼馴染…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「---------------------------------------」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幼馴染(クズ) 金かしてー、宿題見せてー、あと金かしてー。

 

幼馴染(カス) エロゲーのあかりルート進めないから手伝ってー。

 

(ゴミの中のゴミ) その辺のjk攫ってきてよ。あそこに○○○して○○○するから。ハァ、ハァハァ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思い出したくない連中を一気に思い出した--------思い出してしまった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せ、先生?」

 

フリーズした理雄を不安そうに見上げる一歌。

SCPー096の顔写真を見てしまった者のような絶望と諦念をまとった顔をしていた理雄はしばらくすると醜悪の冥府から帰還し、この世の優しさ全てで覆ったような聖人の笑顔を作ると--------、

 

 

「大丈夫。君の想いを伝えてあげるんだ。」

 

 

 

あまりに力強く、温かい優しさに一歌は幼馴染達への尊い想いも、ミクへの崇拝も忘れて惚れてしまいそうだったが、<教室のセカイ>のミクが

「想いを忘れちゃダメー!!」と涙目で叫んだような気がしてハッと我に帰り。顔を赤くしながら一礼して教室に帰って行く。

 

 

志熊理雄は優しい笑顔でそれを見守り、そのだいぶ下に隠した虚な目で常識の外側で己の欲望をぶちまけている。魑魅魍魎どもを呪った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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