Project Sekai SCP incident feat .   作:唯尊

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番外編 幼馴染を救え!日野森志歩 史上最低の任務とその1日 PART2

 

 早朝、志熊理雄は重い足を引き摺りながら帰宅の路についていた。

 

「クソ宮崎……ゲイバーから脱柵しやがって…」

 

24時間不眠不休で迫力満載のオネェ達と客の相手をするのは想像以上に苦痛だったらしく、見張りのガードマンを倒して逃走。

 

丸一日、日本国内全域を探し回った結果、イケブクロの喫茶店でストリップ衣装のまま餡蜜を食べていた信孝を発見------確保に成功した。

 

(眠い…、早く帰って寝たい…)

 

日本中を駆け回った我らがジュリエットチームだったが、そも日本という国家は離島が多く。今回、理雄はそういった場所に何度も派遣され、ある島では『口には出せない謎のヘンテコ儀式』を目撃してしまい、危うく現地の人に口封じを兼ねて殺されかけるという事態に遭遇。

 

死に物狂いの逃走の果てに台風で荒れ狂う太平洋に身を投げ、クラゲの様にぷかぷか浮いている間に英牙から『喫茶店で捕まえたぞ』と連絡を受け取った時は、信孝をスクラントン博士と同じ『現実性の狭間』に蹴り落としてやりたいと本気で呪った。

 

海水のおかげで髪はボサボサ、体中が磯臭く、口には砂の味が残っている。

 

寝る前に風呂だな…と手に提げたレジ袋を見る。この状態で朝食を作る気にはなれなかった為、近くのコンビニで購入した唐揚げ弁当が入っている。

 

エレベーターのカゴに乗り、扉の取手を握っておや…と思う。

 

戸締りがちゃんとされている。

 

(おかしい…、昨日は一歌達に留守を預けてそのまま出たから…)

 

彼女らに合鍵は渡していないはずだ。勝手に留守番させて、夜が明けるまで未成年者を自宅に縛りつける訳にはいかない。

 

こちらの連絡先も知らないのだから、闇鍋パーティーが終わり次第そのまま自宅を空けられても、文句は言えない。

 

だが、何故か鍵は閉まっている。

 

マスターキーで鍵を開けてみると、玄関には綺麗に揃えられた靴が4つ。

 

リビングのドアを開けると、クローゼットから引っ張り出した毛布に包まって寝るLeo/needの少女達が見えた。

 

「……おい、そろそろ起きろ」

 

「……ん…」

 

志歩の肩を揺する、猫みたいな呻き声しながら起き出す志歩。

 

「……あれ…理雄先生…?」

 

「おはよう」

 

「おはようございます…」

 

「悪いな、朝まで留守番させて…」

 

「いえ…、こちらこそすみません。シャワーとか……服も勝手に借りちゃって…」

 

「別にいいよ。けど臭わないか?ソレ…」

 

志歩が着ているのは半袖Tシャツ一枚のみだ。肩から膝までスッポリ志歩の体を収めている。潔癖な女子高生に自分の体臭を嫌がられないかと思ったが…。

 

「…いえ、先生の匂い、私……好きですから……」

 

そう言った直後、志歩は自分が思わず口走ったセリフに羞恥を覚える。寝起きたがらか、本来言うつもりがなかった事を口にした少女は、耳まで顔を真っ赤にする。

 

「あ、い…いまのはッ…」

 

「…気にならないなら良かった」

 

それだけ言って理雄はバスルームに直行する。

 

「………………」

 

自分の『好き』という言葉に対し完全無反応な理雄を見て、小柄な少女は

肩を落とす。

 

こういったアプローチはどうにも意図的に受け流されている感じがする。

 

……自分の事を子供扱いしてるのだろうか、だとしたら……少し嫌だった。

 

そもそも………自分は彼の事をどう思ってるのだろうか?

 

好きなのは間違いない、だが……、一歌達に向けている『好き』とは違う。この気持ちはなんなのだろう…。

 

再びみんなと一緒にいられるようにしてくれたから…?

 

あの時自分の命を助けてくれたから…?

 

その恩を『好き』と勘違いしているのだろうか?それとも……。

 

…自分の気持ちは不確かだ…、あやふやで、今まで知らなかった感情…。

 

だが……………そこまで悪い物ではないと思う。

 

(いつか……分かるといいな、この気持ち…)

 

ともあれ、咲希の言う通り自分の事を彼に見て欲しい事に変わりはない。

 

1人の………女として。

 

少し感傷的な気分に浸っていると、いつの間にか風呂から上がった理雄が半袖短パンというラフな格好で脱衣所から出てくる。

 

「友達は助けられたんですか?」

 

「ん…あぁ、まぁな……。それより、せっかくだし朝メシ食べてかないか?コンビニ弁当俺の分しか買ってこなかったから…」

 

「い、いいんですか…?」

 

志歩の表情が僅かに明るくなる。

 

「あぁ、一歌達も起こしてくれ」

 

「はい!」

 

嬉しそうな顔でリビングに転がる幼馴染達を起こそうと振り向き---------そこに咲希がいない事に気付いた。

 

「アレ……咲希?」

 

「………だよ」

 

「…咲希?」

 

ふとリビングの隅を見ると、咲希がこちらに背を向けて体育座りしている。

 

様子のおかしい咲希に困惑していると、理雄がキッチンから出てくる。

 

「どうした?」

 

「いや、咲希が少し…」

 

2人は咲希に近づき、その小さな背中に呼びかける。

 

「咲希、どうした?体調が良くないのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………私はブタだよ…」

 

 

 

 

 

 

 

「「……は?」」

 

 

あまりに衝撃的な一言に2人して凍りつく。

 

「さ…咲希…?」

 

志歩がより困難しながら遠慮気味に話しかける。

 

「私はブタなんだよ…、食って寝て肥るだけのいっちゃん達と家族に養われているブタ……。世間様に迷惑しかかけない醜いブヨブヨ生命体なんだよ。……あぁ、ブタは食べられるからまだマシか、私は蛆だ、蛆でいいや…」

 

「「…………」」

 

虚な目でブツブツと空言を垂れ流す咲希。

 

理雄と志歩は互いに顔を見合わせ、速やかに壁の端に移動する。2人の顔は真っ青だ。

 

「し、志歩…、咲希ってその………鬱の傾向とかあるのか…?」

 

「まさか…!いつもバカみたいに明るいあの子に限って…」

 

コショコショ耳打ちし合う2人は、咲希の惨状について考察を始める。

 

「志歩、昨日鍋にぶち込んだ食べた物に変なモノなかったか?」

 

「それは……いや、味はともかく、食材はいたって普通でした。焼きそばパン…スナック…アップルパイ…味噌ラーメン…キノコ…」

 

理雄は腕を組み考える。確かにそれなら人間の精神に異常きたすような病症は出ない筈……。

 

「…待て、キノコって……冷蔵庫に入れてあったヤツか?」

 

「え?はい…、先生が用意したんですよね?」

 

「……どっちを使った?」

 

「え?」

 

志歩がキョトンとした顔をする。

 

「冷蔵庫のキノコは2種類あった筈だ…、一つはタマゴタケで、もう一つは…」

 

志歩は理雄の言葉を聞いて考える。そこでハッとした志歩は慌てた様子で冷蔵庫に向かう。野菜室をガラリと開けると、そこには新鮮で張りのある艶やかなタマゴ模様のキノコがキッチンペーパーに包まれていた。

 

という事は……。

 

「……先生…じゃあ、私が使ったのって…」

 

「……アレは知り合いから押し付けられたヤツだ。見た目が毒々しい紫色だから食われないと思ったんだが……」

 

額を押さえ嘆息する理雄、それを見た志歩は戦慄する。

 

「ア…アレって、毒キノコだったんですか!?」

 

血相を変えた顔で志歩が詰め寄ってくる。

 

「落ち着け、まぁ送り主がアレではあるが……、死にはしない筈だ。その辺は信用してる」

 

志歩の肩に手を置き、落ち着くよう促す。

 

「あのキノコの正体は俺も聞かされていない。無理矢理押し付けられたからな…、アレは全部で8個あった筈だ。全員食ったのか?」

 

パニックになりかけていた志歩はようやく落ち着きを取り戻す。

 

「…はい、咲希が三つ。一歌と穂波が2つずつ、私が1つ…」

 

「君は大丈夫なのか?」

 

「はい…今の所は…」

 

「……とりあえず他の2人を起こそう。状態を確認しないと…」

 

リビングで未だ眠り続けている一歌と穂波を揺すって起こす。

 

「ん…………志歩…?」

 

「あれ…先生も…」

 

「2人とも起きてくれ、緊急事態だ」

 

現在の咲希の状態を2人に見せ、例のキノコの話をする。

 

「じ、じゃあ、私達も…?」

 

穂波が不安そうな顔で言う。

 

「…確認するが、2人とも食ったキノコは2個なんだな?」

 

「はい…」

 

「間違いなく…」

 

「オーライ…、じゃあまずは…、咲希を助けてやらないとな…」

 

理雄は咲希の方を見る。

 

「蛆か…、ふふ……私らしいな。蛆の後には蝿になって、ゴミの周りを飛びまわるんだ。ゴミ虫だけに…ふ…フフフフフ…」

 

相変わらずブツブツ鬱っている。

 

覚悟を決めろ志熊理雄ッ、彼女を救えるのは自分しかいない…やるべき事は1つだッ!

 

スマホを取り出し神速の捌きで画面を操作する!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1…1…9…と…。

 

 

 

 

 バタンッと後部扉が閉まる音がする。

 

パーポーパーポー…というサイレン音と共に救急車が走り去る。

 

室内からそれを見送った後、窓をピシャんと閉める。

 

「諸君、まずは状況を確認する………俺を除く君達全員があのキノコを食した以上、君達もああなる可能性がある…」

 

理雄の厳かな声が室内に響く。既に3人は制服に着替えている。

 

一歌、穂波、志歩の3人の表情は重苦しいモノだった。

 

「私が……ちゃんとキノコを確認していればッ……」

 

志歩が悔いる様な表情で両手を握りしめる。

 

「それはッ…!」

 

「志歩ちゃんのせいじゃないよ!」

 

一歌と穂波がそれに異議を唱える。

 

「あぁ、廃棄予定のキノコを冷蔵庫に入れっぱなしにしてた俺にも責任はある……あのキノコを1番食べたのが咲希なんだよな?」

 

その言葉に穂波が頷く。

 

「はい…、だから咲希ちゃんが真っ先にあんな風に…………ウッ…!」

 

すると突如、穂波が苦しそうに胸を押さえて蹲る。

 

「穂波!?」

 

「ちょっと…、大丈夫ッ!?」

 

「穂波!おい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………うるせぇよクソ虫どもがッ」

 

 

 

 

 

 

「「「…え?」」」

 

 

突如、穂波が信じられない程汚い言葉を吐き出した。

 

錆びついた目した穂波は、己の顔を理雄の顔面に近づける。

 

「特にテメェッ」

 

「え?」

 

「テメェに言ってんだよクソの極み虫がッ、テメェは神がドラックにハマって錯乱しながら創られた人間風のクソ虫だ!ママとパパがベッドにぶちまけたモノが偶々混ざったヤツにクソの魂が入り込んだのがテメェなんだッ!!」

 

「ち、ちょっと穂波…!」

 

あまりの罵倒と侮辱発言のウルトラミックスに志歩が声を挙げる。

 

穂波は志歩をギロリと睨むと…、

 

「…よ〜志歩、俺たちダチだろォ〜?ちょっっと懐が寂しいンだよな今ァ…、だから少し恵んでもらうぜ〜」

 

軽薄な笑みを浮かべながら志歩の制服のポケットに手を突っ込む。

 

「ちょッ…それ私の財布、返して!」

 

志歩を無視して穂波は取り出した財布の中身を物色する。

 

「…チッ、しけてんなぁ…、お前のその飛行機の滑走路並みの胸みてぇにしけてんなぁ…」

 

「ガッ…!!」

 

志歩が力無く崩折れ両手を地につける。

 

「き…傷ついた…」

 

「あ〜あ、クラスの連中もゴミみてぇなヤツらばっかだし、通学バスが事故って皆殺しにされりゃあいいのにな〜〜!!」

 

そう言って穂波は冷蔵庫からリンゴを取り出して部屋の隅に移動する。

 

「…ほ、穂波が部屋の隅でうんこ座りしながらリンゴ齧ってるッ…!」

 

いいとこのお嬢様とは思えない光景に一歌が戦々恐々とする。

 

「く……やむを得ないかッ…」

 

理雄は再びスマホを手にする。

 

「ひはは、そうだ!これから学校の連中にカツアゲしに……て、おい!なんだよお前らッ、放せッ、放せよお------」

 

バタン------

 

 

 

パーポーパーポー…

 

 

 

 

 

 

 

さて、どうしたものか…と一歌を見る。

 

幼馴染の変貌ぶりに心が折れそうになるも、気を持ち直し、一歌は座り込む志歩の正面に周りその顔を見据える。

 

「志歩…、大事な事を話すからよく聞いて欲しい…!」

 

「い、一歌…」

 

その目を志歩は知っている。

 

あの時……【教室のセカイ】の屋上でも……彼女は私達を……!

 

 

「志歩……私…」

 

「うん…」

 

「…………………………………………………………………志歩の胸をペロペロしたいの!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………へ…?」

 

 

志歩の口から思わず間の抜けた声が出た。

 

 

隣を見ると理雄も絶句していた。

 

 

「ほら制服の上着をめくってッ、ちっさいブラを外してよりちっさい航空母艦のカタパルト並に平坦で硬くて男の胸と大差ないモノを見せてッ!」

 

頬を紅潮させハァハアと吐息を荒くしながら両指をワキワキさせてにじり寄ってくる一歌。

 

「ち、ちょッ…!」

 

「はやく脱いで……早く脱げつってんだよッ!このメスガキがぁァァァァァァァァァッッ!!!!」

 

「ギャアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

飛び掛かってきた一歌に対し、傍のギターケースを全身全霊の力を使ってフルスイング。

 

「グベキャッ」

 

一歌は変な声をあげて体をくの字に曲げながら3m先まで吹き飛ばされ------沈黙。

 

「…や、殺っちゃった…」

 

ゴトンッとギターケースを取り落とす志歩。

 

不可抗力とはいえ、幼馴染をその手にかけてしまった自分の手が震える。

 

その時、肩を強い力で掴まれる。

 

ビックリして背後を振り返ると、剣呑な雰囲気を纏った理雄の顔が近くにあった。

 

「今、あのキノコを押し付けてきた奴と連絡がついた。君も一緒に聞け」

 

理雄はスマホのスピーカーをオンにすると、電話越しの相手を呼びかける。

 

「おい先生!聞こえるか?」

 

『よく聞こえているよ理雄くん』

 

突如聞こえてきた女性の声に志歩は一瞬ビクリとする。

 

「アンタからもう一度、俺の教え子にアレの事を説明してやれ」

 

なんだかいつもより口調が乱暴な感じの理雄に戸惑いながらも、志歩はスピーカー越しに相手の女性に話しかける。

 

「あ…あの、私は日野森志歩と言います。理雄先生にはいつもお世話になっています」

 

するとスピーカーの奥から愉快そうな声が聞こえてきた。

 

『やぁやぁ、私はメリッタ・リム・柳瀬。理雄くんとはセフレの関係にある者だ』

 

「…は????」

 

瞬間、志歩の声の温度が氷点下を下回った。

 

凍り付いた表情のまま殺意の籠った視線が理雄に突き刺さる。

 

「ねぇよ!先生、アンタありもしないデタラメ言うなよ!」

 

理雄が怒鳴るとスピーカーからファハハハハハハハハハ!という笑い声が聞こえてきた。

 

理雄がウンザリした様子で頭部を掻きながら「あーもう…、いいから本題に戻れよ」と言う。

 

『------さっき理雄くんから大体の事情は聞いている。君の幼馴染達の症状は間違いなく彼女らが食べたキノコが原因だ』

 

「どんなキノコなんですか?アレ…」

 

『…………いいだろう、教えてやるから聞き逃すなよ』

 

メリッタは少し間を空けると、やがて厳かに口を開く。

 

『そのキノコは…』

 

「そ、そのキノコは…?」

 

『……【頭がクルクルパーになる茸】だ』

 

「頭がクルクルパーになるだけ…?」

 

『違う、【頭がクルクルパーになる’茸’】だ』

 

「食べるとどうなるんですか?」

 

『頭がクルクルパーになる』

 

「まんまですね…」

 

「まぁね、ある農家さん(要注意団体)から接収……ゲフンゲフン、頂いたものなんだが、理雄くんに食わせたらどんな顔するかなと思ってね、けどその様子じゃ食べてもらえなかった様だ…、いやはや残念だよ」

 

心底残念そうに溜息を吐くメリッタ、志歩は理雄の方に何とも言えない表情を向ける。彼の交友関係がいったいどうなっているのか…、自分には全く想像できなかった。

 

『まぁ簡単に説明すると、そのキノコは2つ以上食べると人間の脳をクルクルパーにさせる』

 

なるほど、では自分は大丈夫な訳か…。

 

「私の幼馴染達が2つ以上食べてしまったんですが…、治りますよね?」

 

『金髪ツインテールと胸のデカい女の子の事かい?安心したまえ、病院で私が持つ治療薬を打ったからもう大丈夫だ。ただ…』

 

「ただ…?』

 

最後の一言に志歩の声に不安が混じる。

 

「このキノコ、食べて14時間経つと……元に戻らなくなる』

 

「…え?」

 

志歩は一瞬、ポカンとしてしまった。

 

『14時間経つと治療薬も効かなくなるんだ、ソイツは一生クルクルパーのままだ』

 

「そ、そんな…」

 

状況に絶望していると、体が急に揺れるのを感じた。

 

「しっかりしろ志歩ッ」

 

鋭い声に驚いて顔を上げると、理雄が自分を見据えていた。真剣な表情に思わずドキリとしてしまう。

 

「最後にキノコを食べたのは何時だ?」

 

「えっと……昨日の20時だったと思います…」

 

理雄は左手首の腕時計を確認する。

 

「今は8時……クソッ、あと2時間しかない…」

 

『急いだ方がいい』

 

会話を聞いていたメリッタが話しかけてくる。

 

『ついさっき近くの商店街で火災が発生してね、火の回りからして救急車は殆どが出払っている状態だ。だから理雄くん…』

 

「解ってる、俺が一歌を車で運ぶ!」

 

「で、でも先生…、私、一歌を…」

 

「安心しろ、俺が蘇生でもなんでもして…」

 

「どいやぁぁァァァァァァァァァッ!!」

 

「え…」

 

刹那、理雄の目の前には足が迫っていた。

 

なんて事はない。

 

避ければいいだけの話だ。

 

だが、その足が自分のよく知る生徒…星乃一歌のドロップキックから放たれた物であり、制服のスカートの中から除く水色の清潔感溢れるショーツに目が奪われてしまった……。

 

故に理雄の身体は動きを止めてしまい、結果として一歌の両足が顔面に突き刺さった。

 

「ぐベェッ」

 

理雄は轢き殺されたヒキガエルみたいな悲鳴を挙げて背後の壁に激突、その後ドサリッと地にその身を縫い付けられた。

 

「ふう…、なんとか倒せたな…」

 

一息吐く一歌、突然の事態の急変に唖然としていた志歩が慌てて彼女に食って掛かる。

 

「ちょっと一歌!無事だったのは良かったけど……、なんで理雄先生にドロップキックしてんのッ」

 

すると一歌はキョトンとした顔をする。

 

「なんでって…、中世のペスト医師のマスクを被って全身を黒いローブに包んで人間とオランウータンと豚の死体をゾンビにしまくりそうな変態厨二病野郎がいたから倒しただけだが?」

 

「いや意味分かんないんだけどッ!?」

 

志歩が絶叫していると、スマホからメリッタの声が聞こえてくる。

 

『おい!どうした何があった!?』

 

どう答えたらいいのか分からなかったが……とりあえず事実のみを伝える事にした。

 

「あの……先生が色々あって倒されちゃって…」

 

見れば理雄は白目を剥いて微動だにしていない。とてもすぐに車をまわせるような状態じゃなかった。

 

『そうか…、では志歩ちゃん……と言ったね、君が一歌ちゃんを病院まで運んで来るんだ』

 

その言葉に、志歩はゴクリと唾を呑んだ。

 

『いいかい志歩ちゃん…、これはおそらく、君の人生における史上最もアホみたいな任務となるだろう…』

 

こうして……日野森志歩の史上最低の1日が始まった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 
 次回でこの番外編は終わります。

その次の第3章はワンダジョのメインストーリーとなります。

 お楽しみに。
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