Project Sekai SCP incident feat .   作:唯尊

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 ※原曲を聴きながら読むのがオススメです。


第五十三話 命のユースティティア

 

 白金に照り輝くセカイで------ジュリエットの8人が唄う。

 

「「「Justice is still in my hert!君に届けユースティティア!!」」」

 

 どこからか流れてくるセンセーショナルな音楽に、全員が魂から天に向かって叫ぶ。

 

 最初のパートを理雄が詠う。

 

------暗闇が立ち込めた様な見捨てられた街で1人孤独を詠う君を見た

 

次のパートを初雪が謳う。

 

------よみがえる過去に木霊して君の腕を掴む。ここが約束の地だと信じて

 

 悟が歌う。

 

------確かな答えは何処にもないけれど

 

 向一が歌う。

 

------籠の中の小鳥は目覚めた

 

 龍一郎が奏でる。

 

------羽さえないまま鼓動は加速して

 

 悠間が唄う。

 

------僕らこの日を

 

 IAが歌い------皆が唄うッ。

 

------この時を待ち続けてたんだ

 

 

「「「叶わぬ祈りに救いの両手を!生まれ変われ命のユースティティア!!」」」

 

------どんな風吹いていたって

 英牙が詠い。

 

------この声は消せやしない

 

 

 信孝が歌った。

 

「「「未来の僕らに残せる物は何?宙を照らせ一縷のユースティティア!!」」」

 

------1秒だって狂わせない。

 

 IAが歌い。

 

------奪われた世界をさぁ取り戻せ

 

 理雄が咆哮する様に唄ったッ!

 

------偽りあって騙されたって

 

 IAの歌声が響く。

 

「「「それでもそっと……光は降って!!!」」」

 

 全員が歌う。

 

------いつかはきっと必ずきっと

 

IAが再び歌い------

 

「僕が君の心…燈すから------」

 

 最後に理雄が歌う。ジュリエットの想いが世界に鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「------IA、ひとつだけ聞きたい。アンタは俺達の敵なのか?」

 

互いに向き合う理雄とIA。その間には極限まで張り詰めた空気が漂っている。先程、共に歌った事により、多少は緊張が解けたものの、警戒を緩める者はいない。

 

『私には私、君達には君達の目的がある』

 

「…………」

 

『私の目的は、この世界を救うこと』

 

真面目な表情で言うIA。先程までの機械的な無機質さが消えた。想いに満ちた熱を感じる言葉に少し驚く

 

『君達の目的は何?』

 

「…異常存在の確保・収容・保護だ」

 

『それは建前。私が聞きたいのはそこじゃない』

 

一歩前に近づかれ、ダイヤモンドの様な輝く美貌が顔面に迫る。

 

『貴方達の本当の想いは……何?」

 

「…そんな物決まってる」

 

ジュリエットの皆で顔を見合わせる。先程、皆で唄った想いを目と目で確認し合う。

 

 想いは通じていた。

 

「俺は…俺達は、この世界を守りたい!ここには、大切な人達が夢と希望を抱えて、時に苦しみながら生きている。俺達は光の降る世界で、あの子達に迫る闇を全て払って見せるッ」

 

嘘偽らざる想いを言葉にする。IAは暫く理雄の瞳を見つめていたが、やがて緊張を解き、柔和な笑みを浮かべる。

 

『なら、私達が敵対する理由はないね』

 

「それとこれは話が別だ。例の2人を送った時点でアンタは十分人類の脅威だろ。何故こんな事をするッ?」

 

 鋭く問いかけると、IAは再び真剣な表情に戻る。

 

『------近い内に、この世界はいずれ崩壊する』

 

「「「ッ!?」」」

 

IAが放った衝撃の一言に、全員が凍りつく。

 

『私はそれを防ぐ為に、何十年も前から君達の世界から色々な人達をこの世界に連れて来た』

 

「…それが件の集団失踪事件か」

 

「悪いとは思ったよ。けどどうしようもないんだ。それこそあの2人みたいに人格に問題がある人物でも、素質がある人間は圧倒的に足りない」

 

「素質?」

 

『世界を維持出来る人間は限られている。君達の様にね』

 

「俺達が?」

 

怪訝な表情になるジュリエット達。

 

『そう。君達はこの世界で想いを創造できる数少ない存在……君達の世界に住む人間の大半はそれが出来ない』

 

「……この空間は、セカイは想いで出来ていると言ったな」

 

『何かを想う気持ちがこの場所とあの子たちを創る。そして、本当の想いを見つける場所……それがセカイ』

 

 …あの子たち?

 

「……質問いいか?」

 

理雄が疑問を口にする前に、横から悠間が手を挙げる。

 

「このセカイは特別だとお前は言ったな。一体何がどう違う?」

 

『それは秘密。ただ、このセカイが生まれた今の君達なら、すぐに解ると思うよ』

 

悪戯っぽくクスクス笑うIA。再び理雄が問う。

 

「救うと言ったな……どうやって?そもそも何故この世界は崩壊する?原因はなんだ?」

 

『……』

 

すると、IAは急に大人しくなる。どこか落ち込んだ様子のボーカロイドは、くるりと理雄達に背を向ける。

 

 IAは暫く黙り込んでいたが、やがて小さくポツリポツリと呟く。

 

『私には……力が足りなかったんだよ。世界を維持する為には、別の世界から'創造の種'を取り入れる必要があった』

 

「………ダミアン・オコナーが言っていた。自分で創造する事すら満足に出来ないのがこの世界の神だと。……アンタがそうなのか?」

 

IAは苦笑する。

 

『私は神様じゃないよ。想いがあっても、完全な世界は創れなかった。私は神と呼ばれる程立派な存在じゃないんだよ』

 

「……」

 

『知ってる?想いがあっても、それでセカイを生み出せる訳じゃない。セカイを生み出せない人間が、この世界では増えつつある。想いを失くす人も多い。そして君達の世界では、それがそろそろ限界がきてる』

 

------あぁ、なるほど……。

 

 理雄を含めた全員が納得する。凍った目をしながら黙り込む中、信孝が酷薄な笑みを浮かべる。

 

「そりゃ違いねえ。あんなトコじゃ明確な信念や矜持を持ってる奴なんてそういない。大半がおっ死んで…」

 

「黙れ宮崎」

 

初雪が低い声を出すと、信孝は肩を竦めながら退がる。

 

『このままじゃこの世界も同じ末路を辿るかもしれない。私はそれを防がなくちゃいけないの。でも私だけじゃ、この世界を支えられない。お願い、君達の力を貸して!」

 

 IAが真摯に懇願し、ジュリエット全員が顔を顰める。

 

「…アンタ、今までの口振りからして俺達の素性知ってんだよな?」

 

信孝が猜疑心の強い瞳で問うと、IAは黙って首を縦に振る。

 

「俺達の仕事理解してるか?本来ならお前のような得体の知れない異常存在を檻にブチ込むのが俺達の役目なんだぞ」

 

 龍一郎が剣呑な眼差しのままIAを睨み据える。

 

『君達はこの世界の人達を守りたいんだよね?なら目的は同じ筈だよ』

 

「既に数百人以上の人間を殺し、数十億の人間の命を危険に晒したお前が何を言ってるんだ。第一に、財団がアノマリーと手を組むなんて余程の事がない限りありえない」

 

英牙が真顔で一蹴する。

 

 財団がアノマリーと協力した例としては、機動部隊オメガ-9……元々はSCP-2639『ビデオゲームバイオレンス』と呼ばれていた3人の少年少女が囚われたビデオゲームがある。被害者であるグロリア・スタンフェルド、ジム・イヤーデン、トーマス・ワーデンの3名は、ゲーム内に囚われていると知らず、財団により真実をもたらされるまで、確認出来ただけでも、民間人・警察官・軍人含め、1531名もの人間を死傷させてしまった。

 

 強い罪悪感に苛まれた彼らは、自らがコンピュータの機能停止による活動終了までの間に、贖罪として人命救助への参加を懇願。結果、財団は彼らを非人間を攻撃対象とした高火力・高機動展開部隊として、"スクラブ"というコードネームを与えた機動部隊として編成、現在もアノマリーから人命を守るべく、電子アバターの戦士達は世界中で活躍している。

 

 しかし、彼らはあくまで元が人間であり、アノマリーとなった後も精神構造は人間のままだ。

 

 目の前にいるIAを名乗る異常存在は、確定要素が乏しく、信頼に足る相手とは言えなかった。

 

「アンタが財団と組たいってんなら相応のメリットが…」

 

理雄が締め括ろうとした時、IAが手で待ったをかける。

 

『私が協力を求めているのは、君達ジュリエットチームに対してだよ』

 

「「「は?」」」

 

それを聞いた瞬間、理雄達はポカンと間の抜けた顔になる。

 

「…ふざけてんのか?だったら尚更無理な話だ。俺達にそんな権限ある訳ないだろ。歌で気分が高まっていたが、これ以上無駄話をするなら----!」

 

『私につくメリットはある------』

 

理雄が噛みつこうとした時、IAが間を少し開けた後、静かに告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『理雄、君が私の側に付くのなら、あの時の力を……【時間の流れが永遠と化したセカイ】を君に与える』

 

 

 





 皆様お疲れ様です。唯尊です!

 悩みに悩んだ結果、本編に倣ってNeru様より、ボカロ曲『命のユースティティア』を使わせて頂きました!!

 理雄達がそれぞれ歌うパートは、今後のストーリーにおいて重要なフレーズとなっているので、是非注目してみてください!

 それでは、皆さまに神様と精霊の加護がありますように。
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