Project Sekai SCP incident feat .   作:唯尊

69 / 83

 明けましておめでとう御座います!今年も私の作品たちを宜しくお願い致します。


第五十七話 西暦2020年-----シブヤ

 

 『シブヤ・ステラプレイス』の3階にあるカラオケ店に入り、パーティールームを2時間で予約する。

 

「お〜!結構広いよ、いっちゃん!」

 

「うん、そうだね」

 

ノリノリでカラオケボックスの中に入る咲希と、それについて行く一歌。全員が中に入ったのを確認すると、理雄が声をかける。

 

「ドリンクバー行くけど、何か欲しい飲み物あるか?」

 

 真っ先に手を挙げたのは咲希だった。その後を一歌、穂波、志歩の順番で聞く。

 

「アタシ、メロンソーダ!」

 

「私はコーラで…」

 

「えっと……アップルジュースをお願いします」

 

「ジンジャーエールを…」

 

注文を聞き終えると、理雄は「了」と短く言ってドリンクバーに向かう。

 

「あっ……私も手伝います!」

 

「わたしも!」

 

「せんせー1人じゃ大変だしね!」

 

「その方が早く済むでしょ」

 

一歌が名乗ると、他の3人も続々とついて来る。結局5人全員でドリンクバーに向かう事となった。出来の良い教え子達の心優しい行動に理雄は思わず泣きそうになった。ウチのゲイバーのストリッパー(宮崎信孝)にも見習って欲しい。

 

「それでは!アタシから歌わせて貰いますッ」

一番手はやはり咲希だった。タッチパネル型の端末で選曲すると、マイクを握って軽く声出しをする。ウォーミングアップを済ませると、早速一曲目に入る。

 

「一曲目!『テオ』!」

 

 ハイテンポのボカロ曲をリズム間良く歌い上げる咲希。予想以上の歌声に少し驚いた。採点結果も89点となかなかの物である。

 

「ふぅ……じゃあ次はいっちゃんだね!」

 

「うん。じゃあ私は……この曲で」

 

続いて一歌が選んだのは『ヒバナ』だった。激しいロックのメロディと共に駆ける一歌の力強くも透明感のあるボーカルは、流石Leo/needのギターボーカルを務めるだけの実力を備えていた。歌い終え採点結果を確認すると……、

 

「マジかよ……いきなり95点か!」

 

「いっちゃん、やっぱりすごい!」

 

「あ、ありがとう…」

 

少し照れくさそうにマイクを握る一歌である。その次は志歩が『カゲロウデイズ』でエッジの効いた歌声を披露し、穂波が『ウミユリ海底譚』で包み込むような優しい歌声を披露してもらった。やはり2人とも上手い。

 

「はい!りおせんせーも!」

 

「お、俺もか?」

 

咲希にマイクを差し出され、戸惑いながらも受け取る。

 

「もちろん!せんせーの歌、アタシ聞きたい!」

 

「あ、私も聞きたいかも…」

 

 一歌にまで言われてしまっては断れない。受け取ったマイクを右手に構え、端末を操作する。自分は別にボカロに詳しい訳ではない。この時代の曲だと歌える物は限られる。端末を操作しながら自分に合った曲を探す。

 

「そうだな……あ、コレがいいな」

 

そうして選曲を終えると、改めてマイクを握り直し席から立ち上がる。

 

「りおせんせー頑張れー!」

 

咲希がいつの間にか手にしたタンバリンを鳴らして発破をかけて来る。苦笑しながら手を振ると、メロディが始まる。

 

 巡音ルカの『DYE』である--------。

 

 

 

 

最後のパートを歌い終えると、ふぅ…と一息吐く。直後に周囲からパチパチと拍手が起きる。

 

「すごい…ほぼ英語の曲なのに…!」

 

「さっすがりおせんせー!」

 

 三者三様の感想を受けながら採点結果を見る。

 

「91点か……久しぶりに歌った割にはまぁまぁだな」

 

そう言って席に座り直す。その後も歌の合間に話題が入り盛り上がった。

 

「じゃあ……全員で展望台に行く為にそんな無茶を?」

 

「はい、あの時の咲希すごい熱で…」

 

「ほんっと心配したんだから、咲希は無茶しすぎ」

 

「アハハ……ゴメンね?みんな」

 

苦笑しながら謝る咲希に自分は尋ねる。

 

「それで……展望台行きは断念したのか?」

 

「はい……けど、良いんです!もっと素敵な場所に行けましたから!」

 

心からの笑顔で嬉しそうに言う咲希に理雄は首を傾げる。

 

「どこに行ったんだ?」

 

「ん〜……秘密です!」

 

「シーッ」とおとがいに人差し指を当てはにかむ咲希だった。よく分からないが、咲希が幸せそうなのでそれ以上追求はしなかった。

 

「そうか……バンドの方はどうだ?ライブとか決まりそうか?」

 

「はい!志歩からのノルマもクリア出来たので、志歩のバイト先のライブハウスで……そうだ!先生も応援に来れますか?」

 

一歌が鞄からライブのフライヤーを取り出す。ギターをかき鳴らす女性のイラストの上に、実施日程とガールズバンドグループの名前が連ねられている。セットリストにはLeo/needの名前も見られた。

 

「結構先だな……うん、これなら観に行けそうだ」

 

「ほんとですか!?」

 

「…ッ!」

 

一歌が顔を輝かせる。聞いていた志歩もピクリッと反応した。

 

「あぁ、流石に1カ月も離れはしないからな」

 

ジュリエットの帰還はあくまで一時的な物だ。チームメンバーも全員が退院しているし、完全復帰するまで時間はかからないだろう。

 

「チケット買っておくよ。本番楽しみにしている」

 

「はい!ありがとうございます!!」

 

「気合い入れ直さないと…!」

 

一歌と志歩がライブに向け燃える中、咲希が異なる趣旨の質問を投げて来る。

 

「そう言えば……せんせーってペンダント付けてますよね?」

 

咲希が不思議そうな顔で理雄の首元を見る。

 

「ん……あぁ、やっぱり男がこういうの付けるの変か?」

 

苦笑しながらロケットに繋がれた極細のチェーンを指で下げて見せると、咲希がブンブンと勢いよく首を横に振る。

 

「そんな事ありません!すごく似合ってますッ。ただ……ロケットの中が気になって…」

 

咲希が気になって仕方がないという表情で聞いてくる。興味津々といった様子の彼女に苦笑しつつ、理雄はロケットを掌の上に載せ、視線をそこに落とす。

 

「この中には、写真が入っているんだ…」

 

 自然と先程より声のトーンが落ちた。

 

「写真………誰のですか?」

 

一歌も気になったのか、志歩や穂波と一緒に顔をこちらに向けて来る。

 

「俺の幼馴染………夏鳶莉梨歌(なつとびりりか)だ」

 

 

 

 

 翌日、早朝。

 

 サイト-8156の『異常存在交流課』が管理する施設に足を運んだジュリエットチームの8名は、全員が私服姿で集合していた。

 

足元に目線をやると、パイプやらホースやらが何十本も連なり、その先に連結された円盤状の足場がある。白と銀色が目立つ謎の足場の正体は、この世界と元の世界を繋ぐ転送装置である。

 

「…『ターミネーター』で同じようなヤツなかったか?」

 

隣の信孝がぼやく。青いジーンズとグレーのパーカーを着ている姿を見ると、普通にしていればモテるだろうに……と少し残念な気持ちになる。

 

「アラン・テイラーの『新起動:/ジェネシス』で観たな……そういや、なんで監督がジェームズ・キャメロンじゃなかったんだ?」

 

悟が首を捻る。

 

「キャメロンがプロデューサーに脚本の権利の一部を売ったせいだな。おかげでその後しばらく作品に関われなかったらしい…」

 

悠間が呟く。

 

「チッ……だから3作目はあんなにクソだったのかよ。何やってんだキャメロンは…」

 

龍一郎が舌打ちする。

 

「お前ら、他人の作品の悪口はその辺にしておけ。映画は1人じゃ作れないんだ。どうにもならない部分はある…」

 

呆れた様子で背後から現れたのは、ジュリエットチーム担当将校の阿嘉慶三郎だ。後退した前髪が更に後退したように見えるのは気のせいだろうか。

 

「財団の技術スタッフ達が不休で完成させた転送装置だ。物だけじゃなく、人間を含むあらゆる生命体をお前たちの世界に送る事が出来る」

 

「…安全ですよね?」

 

説明する慶三郎に英牙が手を挙げる。

 

「何度も実験を積み重ねたんだ。とはいえ、財団とてエントロピーを超越できない(故障しない機械は作れない)以上、危険がある事は忘れるな。保証なんて出来る訳がない」

 

どこぞの整備兵みたいな事を言い出した。ハッキリ言われても、今更気にする者はいない。気に入らなくとも、やるしかないのだ。

 

「言っておくが、映画みたいに全裸になる必要はないぞ。腕時計や携帯電話、身に付けられる物くらいならまとめて転送できる。土産が多い奴は後で荷物を送る」

 

「チッ…」

 

「宮崎、あからさまに残念そうな顔をするのはやめろ。さて、荷物が多いのは小坂井と………桜庭、その紙袋の山はなんだ?」

 

慶三郎の視線の先には、山積みにされた商品袋が山脈を築いていた。

 

「えっと……妻子のお土産に…」

 

 悟が後頭部をポリポリと掻く。

 

「…後で転送先の住所を教えといてやる」

 

「助かります」

 

軽く溜息を吐いた慶三郎は、またどこかへと去っていく。

 

「…何を買ったんだ?」

 

悟の爆買いに興味をそそられた英牙が聞いてくる。

 

「瑠璃から色々とお土産買ってくるよう言われたんですよ。それと、生活用品の買い足しも頼まれたので…」

 

「…土産だけこっちで買って、残りは向こうで買えばよかっただろ」

 

「あ…」

 

悟が間の抜けた声を出す。時折忘れそうになるが、悟はこういう天然の入った所がある。

 

「まぁ、こっちの方が物価安いですからね。向こうと違って輸入品に莫大なコストが掛かりませんから…」

 

理雄が呟くと、ジュリエットの全員が苦笑する。

 

「まぁ、どんなに関税が高くても、こっちには"アイツら"がいないからな…」

 

英牙がどこか遠い目で言うと、白いツナギ姿の作業員が近寄ってくる。財団のシンボルマークが付いた帽子を目深に被っていた。まだ若い男の職員は不動の姿勢で挙手式敬礼をとる。

 

「天城曹長、準備完了しました」

 

「あぁ、分かった」

 

同じく敬礼を返すと、ジュリエットチーム全員に「行くぞ」と顎をしゃくる。

 

 施設内の電源が全て落とされ、非常電源に切り替えられた施設内は薄暗い闇に包まれる。この建物の電力の大半を転送装置に回しているのだ。

 

 転送装置の上に立つと、足場の円盤の縁から光の粒子が現れ始める。雪の結晶が舞い上がる様に粒子が天井に集まっていくと、やがて光の渦と化す。ブラックホールのように上に吸い込まれるような浮遊感に襲われる。

 

『転送地点を確認。プロトコル進行に問題なし」

 

『座標設定完了。西暦2020年5月より、ジュリエットチーム8名の転送を開始します------』

 

 女性職員のアナウンスが鳴り響く中、円盤から足が離れ、光の中に理雄たちは吸い込まれていった------------。

 

 

 

 

 空中に投げ出されたような不安定な感覚に襲われた直後、目の前に地面が迫ってきた。

 

「うッ…!?」

 

顎を引き、手を八の字にして前受け身を取ると、なんとか顔面を打ち付けずに済んだ。

 

「あー……クソッ」

 

毒を吐きながらゆっくりと立ち上がる。服に付いた汚れを払い落としながら怪我がない事を確認し、周りをキョロキョロと見渡す。

 

「…どこだよ。ここ……」

 

天気はやや曇っているが、足元の感触からして砂場に着地したようだ。掌には砂が付いたおかげでザラザラした感触が残っている。磯の香りと控えめに波打つ音からして海辺の地域だろうか。カーゴパンツのポケットから携帯電話を取り出して位置情報を確認すると、どうやら千葉県の南房総市に落ちたらしい。

 

 問題は、ここが自分の世界なのかどうかだ。予定では『SCP財団日本支部関東管区第818基地』に到着する手筈だった。

 

 その時、アップテンポなメロディーと同時に、開いていた位置情報アプリの画面が着信通知に切り替わる。英牙からだ。

 

『------おい!大丈夫か!?現在地オクレッ』

 

通話を開始すると、間髪入れずに英牙の怒鳴り声が響いた。フェニランの天馬司とは違った次元の大声に思わず耳がキーンと鳴る。

 

「こ、こちらJ-7(ジュリエットセブン)。現在地、0730、千葉県南房総市海岸。オクレ」

 

自分の現在地を伝えると、少し通話に間が空く。おそらく自分の位置情報を確認しているのだろう。仕事用携帯を使っているので、特定に時間は掛からなかった。

 

『……確認した。どうやら転送時に座標の入力ミスが発生したらしい。こちらはお前以外の全員が揃っている。迎えが来るまで現在地で待機、オワリッ!』

 

それだけ言われると通話をブチ切りされた。転移した際にはぐれるのはこれで二度目だ。何度も心配をかけたせいか、かなりお冠のようだった。

 

 とはいえ彼の口振りからして、どうやら元の世界に戻れたようだ。

 

 暇なので懐からワイヤレスイヤホンを取り出し、プライベート用のスマホの音楽アプリを開いて接続。『命のユースティティア』を再生する。

 

 大人しくその場に突っ立っていると、次第に天気が晴れてくる。おかげで周囲の景色がだいぶ見えてきた。

 

 最初に目に入ったのは、岩場の辺りに墜落した航空機の残骸だった。潮風に当てられて久しいのか、塗装が剥げ、錆の侵蝕がかなり進んでいる。主翼のフォルムからして米空軍所属の攻撃機『A-10サンダーボルトⅡ』と推測する。

 

 沖の方を見れば、タコと多足虫をかけ合わせたような巨大な鉄屑のオブジェが鎮座していたが、こちらには錆びた様子が一切なく、散々と降り注ぐ陽光を反射している。直視すると目をやられそうな程の白銀の輝きを放っていた。

 

 防波堤には、大量の地雷が地中に埋設されてる事を警告する看板と、海中に設置された機雷がある為、沖に近づかないよう知らせる看板が立てられている。

 

 どうやら自分が今立っている場所こそが、その地雷源らしい。背後の山中には放棄されたトーチカが見えたし、おそらく待ち伏せに使われたキルゾーンがここなのだろう。サイト-8156の連中(あのアホども)はよりにもよって一番最悪な危険地帯に自分を放り込みやがったのだ。

 

 これでは動きたくとも動けない。救助に来る人間も、こんな場所では迂闊に近寄れないだろう。

 

 重く溜息を吐きながら、取り敢えずパニックに陥らないように現実逃避を兼ねて海を眺める。

 

 曲は丁度、サビの一番盛り上がるパートに入っていた------------。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西暦、2025年………。

 

 人類の前に突如として現れた地球外生命体は、最凶の無人戦闘兵器---------『アルギュロス』を用いて侵攻を開始。

 

 地球の総人口を十分の一以下まで駆逐した白銀の傀儡たちとの戦争は、エイリアンの司令部壊滅により、かろうじて人類の勝利に終わった。

 

 しかし、エイリアンの呪縛から逃れたアルギュロスは、新たな意識として自我の獲得に成功------人類との戦争を継続した。

 

 それから20年後………西暦2045年。人類とアルギュロスの戦争は、新たなステージへと突入し、未だ解決の兆しは見えてこない。

 

 裏ではアノマリーの脅威に立ち向かい、表では外宇宙から遣わされた白銀の天使達が地球を追い詰める。板挟みにされた人類に、希望なんて物はなく、ただ………今日を細々と生きる日々が続いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------これが、自分たちのセカイだ。

 

 

 




 
 次回、『西暦2045年-----渋谷』



 2026年!唯尊です。

 ようやく明らかになった理雄達の世界ですが、告知した通り『ヴァンガード・ザ・ウロヴォロス』や『壊却のオフィウクス』と世界観を共有しています。

 ただ、注意して欲しいのが、時間軸の違いです。

『ヴァンウロ』の世界は西暦2039年ですが、本作はそれから6年後の西暦2045年です。

 『壊却のオフィウクス』の時間軸は現時点では非公開とします。

 『ヴァンウロ』の世界では本作のオリジナルキャラクターも登場予定です。無論、プロセカとSCPの原作キャラクター及びその他情報は全て伏せますので、どちらかと言えばゲスト出演みたいな登場になりますし、これらの作品は他作品を読まなくとも、その作品内でストーリーが完結するように構成されているので、読者の皆様は充分に楽しむ事が出来る仕上がりとなっています。

 ですが、本作では明かされないオリジナルキャラクター達のサイドストーリーや謎などが描かれている為、興味のある方は是非ご覧ください!

 投票とお気に入り登録は今後の執筆活動の励みになります。今年も私、唯尊の作品たちの応援をよろしくお願いします!!

 2026年も、皆さまに神と精霊の加護がありますように。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。