Project Sekai SCP incident feat .   作:唯尊

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第七話 愉快で狂った仲間たち

 GPNVG-18暗視装置とサイドレイル装着タイプのタクティカルヘッドセット、その他複数のタクティカルアクセサリーが付いたOps-coreのバリスティックヘルメット。VELOCITY Systemsのラグビーシャツの上にWarrior Assault Systems のプレートキャリアを身につけた男達6人が理雄の目の前の暗闇から音を立てず忍び出てくる。

 手にしている銃は様々なカスタムを施されたHK416やM110A1等と様々だ。色は全体的に黒で統一されており、顔はバクラバで隠されているがその声と何年も前から苦楽を共にしてきた故に覚えているその細かな仕草から誰かはすぐに判別できた。

 

 比較的平均的な体格の男が歩み出てくる。

 

「その様子だと英牙には会えたようだな」

 

 一見冷たく聞こえるが、他者を気にかける優しさを含んだ声が聞こえる。

 ジュリエット分隊副長 小坂井初雪に対し、理雄は直立不動の姿勢で敬礼する。

 

「認識番号、94131251。J-7 志熊 理雄 只今原隊復帰しました」

 

「2230、J-7の復帰、合流を認める。よく帰ってきた」

 

 時刻を確認後、初雪は理雄に対し労いの言葉をかける。

 

「いや〜、本当に生きていたんだな! よかったよかった」

 

 桜庭悟が理雄の肩を強く叩きながら笑いかけてくる。   

 理雄はふと思った事を聞く。

 

「今まで何を? ここに来てからそちらは一体…」

 

「俺から話す」

 

 初雪は事の経緯を説明する。元の世界での制圧作戦の際、あのオブジェクトとの接触で彼らもこの世界に転移したそうだが、妙な事が起きた。

 彼らは転移直後、理雄を除く7名でこの世界のとある廃ビルの6階に転移していたというのだ。作戦時に身につけていた装備一式含めてだ。

 その直後、まるで居合わせていたかのようにこの世界の財団のフィールドエージェントが接触してきた。

 その後、彼らは英牙からここに来たのは予定されていた事、この世界の財団と協力関係を結んでいる事、守護者として本来の職務をここでも行う事を説明された。作戦は順調に進んでいた。問題も特に無かった。

 

 ただ一つ、行方不明の隊員1名を除いて.

 

「今日の夕方にこっちの財団からの要請があった。財団のセキュリティに関する情報を持ったDクラスのカスが一名、サーキックカルトに接触しようと脱走。ソイツを始末するために奴が逃げ込んだショッピングモールでお前を見つけた」

 

「じゃあ、あの時アイツを撃ったのは…」

 

「俺だよ」

 

 後ろからの声に振り返る。

 

 そこには若干小柄な狙撃兵がいた。M110A1のロングバレルモデルを持った男が軽く手を振りバクラバ越しに笑顔を向けてくる。

 蒼部龍一郎 理雄以上に造形の整った女顔とは裏腹にかなり低めのテノールの綺麗な声が特徴的な理雄の先輩戦闘員だ。

 

「あの時、俺の事撃ちましたよね」

 

「警告射撃だ」

 

「いや、あれギリギリ当てるつもりだったでしょ! 弾道少し読み間違えたら足の甲に穴空いてましたよ!!」

 

「なんで分かるんだよ。キッショ」

 

 かつて龍一郎に狙撃訓練をつけてもらった時に、あまりに神がかったイヤラシイ狙撃は忘れることができない。1キロ以上離れた標的でもほんの僅かな調整で自由自在に仕留める事ができる彼の曲芸は理雄にとってほんとにホントにほんとに本当の気持ち悪さを植えつけた。

 まるで撃ち出した弾丸に彼の神経が通ってるかのように見えるからだ。

 あの時感じた気持ち悪さのお陰で理雄は狙撃の弾道が感覚的にではあるが読む事ができた。

 

「本人かどうか確かめたんだよ。あれができるのはお前だけだからな」

 

「……? ー ! そうだった、ここに来てから妙な事があった」

 

 理雄はここに来てからおかしな事が自分に起きた事をチームに伝える。

 

 

 知らない部屋で目覚めた事、何故かここで生きてきた記憶がある事、

 同じ名前と異なる経歴でこちらの財団に所属していた事を話す。

 初雪達は少し間を置くと、困惑気味にこちらを見る。

 

「……お前が行方不明になった時、こちらの財団の情報網を使ってお前を探した。その時……、’こっちのオマエ'を見つけた」

 

「!」

 

「少なくともソイツは財団で働き、そして最近死んで情報を抹消された……。それ以外の事は機密だそうだ」

 

「……」

 

「ただ……お前が俺たちの知っているJ-7……志熊理雄に変わりはない」

 

 混乱する理雄に初雪は励ましの言葉をかける。

 

(わからない事だらけだ……不安がないわけではない。だが……)

 

 

 

 志熊理雄はジュリエット分隊の皆の顔を見回す。決して折れないジュリエットの剣は仲間同士の強い絆でその強靭さを保つ。

 一歌達は絆ですれ違いを乗り越えた。彼女達なら今後どんな困難が降り掛かろうと、迷い、悩みながら葛藤しても最後は全員で乗り越えるだろう。

 

(俺に、いや……俺達にできないわけがない)

 

 

 何もわからないという不安や恐怖に理雄達は互いにぶつかりながらもここまで来た。やるべきことは分かりきっている。余計な不安は無視しろ。

 あとは踏み越えるだけだ。 

 

 コイツらとならできる

 

 志熊理雄はそう確信していた。

 

「……皆がいてくれれば闇に意味は投げられる……俺は大丈夫です」

 

 

「……そうか。なら今日はもう帰れ、明日から普通に呼び出すからな」

 

「了!!」

 

 最早誰も暗い顔をする人間はいない。理雄は仲間達の力強い笑みに見守られながらこの世界での新たな旅路に向かってその一歩を踏み出した。

 

 

「……そういえば、お前ここでの表ではなにやってんだ?」

 

 初雪の質問に理雄は清風明月の表情で答える。

 

 

「女子校で教師を務めています」

 

 

 

 {[…………………………]}

 

 

 

 瞬間、場の空気が大きく変わった。

 

 

 ジュリエットチームのメンバー達の理雄への視線が仲間に対する信頼と想いの目から、人の皮を被った牛鬼蛇神の怪異を見るような目になる。

 

 

「貴様何者だ……、その顔で戯言ほざくんならもっとマシなこと言え」

 

 戦友を騙る怪異と認識した初雪は絶対零度の声でHK416Fの安全装置を外し。

 

「ミーム汚染だろうか……お前耐性なかったもんな……すまない……」

 

 永遠に正常な生活を送れなくなった仲間を救えない自分を悠間は責め。

 

「救う方法はないのか……チクショウ!!」

 

 後輩の窮地にチャラい態度を一変させ、理不尽な現実に龍一郎は憤りを覚え。

 

 

「まだだ!アイツなら自力で多分どうにかできる!信じるんだ!!」

 

 根拠のない適当な信頼を悟は吠え。

 

 

「もうお別れか……悪いな、こんなヤロウが仲間で……」

 

 因縁がありながらも大切な同期に何もできない自分を信孝は恥じ。

 

 

「…………」

 

 ただ無言で、枯れてしまった大好きだった花を見るような悲しい目を向一は向けてくる。

 

 

 

 

 志熊理雄は新しいセカイで生きていく未来と仲間達の信頼に例えようもなく強い不安を感じた。

 

 

 

※使用SCP

 

 

http://scp-jp.wikidot.com/scp-939

 

 

 

 

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