Project Sekai SCP incident feat . 作:唯尊
8月11日は星乃一歌ちゃんの誕生日です!Happy birthday!
こんな馬鹿な事があってたまるか……。
SCP財団ベネズエラ支部、セクター78で勤務する白衣姿の上級研究員、天馬司は警備室に設置された監視モニターの前で思わず呟く。
『撃て!撃ち続けろッ!』
『近寄りすぎるなッ、ヤツの現実改変能力は強力だが効果範囲は狭い、距離さえ取れば現実性は------ぐああああッ!』
『チクショウッ…!このバケモノめぇぇぇぇ!!』
監視カメラの映像には、UZIサブマシンガンを連射する警備兵の姿と、集中砲火を受けるミイラ女の姿が映されていた。
放たれた9mm口径の銃弾は直撃する寸前で陽炎の様に消失してしまう。まるで、
『ぎゃあああああああああああッ!!』
やがて、地下で応戦していた最後の警備兵が殺害される。
「第775基地警備小隊、通信途絶!第397基地警備小隊が急行していますッ」
オペレーターの叫びに思わず嘆息する。
「もういい!鎮圧は失敗だ。現場に向かった治安部隊は全て撤退させろ」
隣に立つ警備責任者に命令すると、これからどうするかを考える。やはり物理的な手段で封じ込めるのは不可能だろう、となれば、数十分前に突然沈黙したスクラントン現実錨の方をどうにかするべきだろう。
「制御室の方はどうだ?
ヒューム値のコントロールさえ取り戻せば、この惨劇も終わる。そう期待していたが、オペレーターの反応は予想外かつ最悪なものだった。
「そ、それが……、先程から何度も呼びかけているのですが、制御室との連絡が取れません」
しばし言葉の意味が理解できず、呆然とする。
「なに……どういう事だッ」
「事態の発生からすぐさまコールしたんです。ですが誰も応じず…。制御室内を映している監視カメラも全て切られているのか、映像が届きません」
「誰でもいい!職員に様子を見させてこいッ!」
「もうやりました!ですが誰一人帰って来ないんですッ!」
「なん……だと…」
司は思わず後退る。それはつまり、スクラントン現実錨のシステム管理を行う制御室で何らかの問題が発生したという事だ。
外部からの攻撃?それとも内部の人間が起こしたテロ------?いくらか原因は考えつくが、すべて憶測の領域を出ない。
ともかく、今は時間がない。これ以上被害が拡大するより先に行動を起こさなければ。
「サイトに常駐している機動部隊の連中を叩き起こせ!制御室が敵に占拠された可能性がある!」
「て、敵とは…?」
「俺が知るかッ、それより早く部隊を招集しろ!用意ができ次第すぐに突入だ!!」
「り、了解ッ!」
狼狽える部下に命令を下すと、彼はすぐ様無線機でどこかへと連絡を取る。もはや時間との勝負だ。監視カメラで録画された映像には、屍山血河、死屍累々、血流漂杵……どの言葉を用いても、この地獄を言い表すには圧倒的に足りない凄惨な現場が映されていた。
既に4ダース以上の警備兵が"彼女"に殺されている。どの遺体も手足や首を切断されたり、臓物が引き摺り出されている。モニターの映像越しだというのに、心なしか血の臭いまで漂ってくる。
早くムンドゥスを……彼女を止めなければ-------。
「天馬上級研究員!アレを見てくださいッ」
突如、オペレーターの一人が血相を変えて叫ぶ。モニターに視線を戻すと、マップを示したウィンドウに職員のマーカーが示されている。一階のフロアに、Cクラス職員が4名取り残されていた。移動中の様だが、その進行方向には------。
「…おい待て、あのまま進んだら…!」
「進行方向からして、ムンドゥスに接触します!」
瞬間、司の顔から血の気が引く。
「隔壁を閉鎖して時間を稼げ!ヤツを地上に出すなッ!」
司は身を翻して警備室のドアへと向かう。
「ちょっと!一体どちらにッ?」
「あの4人をブロック98まで送り届けるッ、それと外部の財団施設に応援を頼め!サイト管理官が不在な今、俺達だけじゃ対処しきれないッ!」
警備室から飛び出し、全力で廊下を走る。向かうのはセクター78だ。
------俺は、もう二度とあんな惨劇は繰り返さない!
*
警報が鳴り響く廊下を駆け抜けながら、研究セクター78が置かれた部屋へと突っ込む。
「司くん!」
「類!悪いが急いで機動部隊と一緒に制御室に向かってくれッ」
「…どういう事だい?」
水色のメッシュが入った紫髪の青年、神代類が怪訝そうに眉を顰める。
「制御室が何者かに乗っ取られているかもしれないんだ!制圧は機動部隊に任せるが、万が一SRAが損傷していたら直せるのはお前しかいない!頼むッ、危険ではあるが彼らと同行してくれ!」
類は両腕を組み、暫し考える間を取る。
「……分かったよ、寧々は先に避難させたから、少なくとも今心配なのは居場所が分からない桐谷くんだけだが…」
「その桐谷が危険なんだ!他の職員3人と一緒にムンドゥスの進行方向に向かってるッ」
司の切羽詰まった様子に、類は事態が深刻なものである事を理解する。
「その4人と連絡は?」
「ここに来る途中で試したが、どっかの馬鹿がサイトの内側から妨害電波を発していて繋がらないッ!」
司は忌々しげに「クソッ」と吐き捨てる。
「おそらく、非常事態行動が発令されてから何処かで対応ミスが起きたんだろう。タイプ・グリーンの収容違反で皆んなパニック気味だったからね……、そっちは僕の方でなんとかしておくよ」
「助かるッ、類!」
「司くんはどうするんだい?」
「今すぐ桐谷達の所に向かうッ、ムンドゥスと接触する前にブロック98へ退避させる!」
類の黄色の瞳が鋭く細められる。
「……危険だよ?」
「それはお互い様だ!それより、制御室の方は頼んだぞッ」
絶対の信頼が込もった眼差しを向けられ、類は肩を竦めて苦笑する。
「あぁ、任せておきたまえ」
デスクの棚からイタリア製自動拳銃、ベレッタ90-Twoを取り出し、マガジンに弾丸がフルで装填されているのを確認し、スライドを引いて薬室に弾を込める。
「待つんだ」
部屋を出る直前に呼び止められ、類から何かを放り投げられる。慌ててキャッチすると、それは掌よりやや大きいプラスチック製の装置だった。長方形の箱型で、中に金属でも入っているのか、ズシリとした重みを感じる。
「まだ試作品だが、個人携帯用の小型SRAだ。銅ベリリウム合金を使っているから重量は多少あるが、それが起動している限り持ち主を中心とした半径3m以内のヒューム値は一定に保たれる。どんなに強力な現実改変だろうとそれなら大丈夫な筈だ。ただし……バッテリーが少ないから稼動限界時間にはくれぐれも注意してくれ、スイッチをオンにしてる間は、10分しか起動しない」
ダイヤル式のスイッチを捻ると、車のエンジン並みにデカい音がして起動する。装置の側面に付いた円状の部分が赤く発光する。どうやらこの光が点いてる間は装置の効果が働いてるらしい。
「ありがとう類、感謝するッ」
「桐谷くん達を頼んだよ」
その場で分かれると、司は白衣姿のままセクターを飛び出した。
*
「ハァ、ハァ、ハァ……」
奏を背負ったまま、桐谷遥は既に一時間近く移動している。
「ゼェ、ゼェ…。ねぇ!なんでこんなに時間掛かってるのッ?」
息切れしつつある絵名が絶叫する。
「特別封鎖プロトコルの実施で、あちこちの通路が隔壁で封鎖されているんです!使える通路が限られているから、遠回りしなきゃ…!」
「でも、このままだとボク達まずいんじゃ…!」
後ろから背負われた奏を支える瑞希が不安そうに言う。
確かにマズイ……。このサイトに収容されている現実改変能力者は、遥が知る限りムンドゥスしかいない。だが奴が収容違反を起こしたという事は、厳重な制御化に置かれていたスクラントン現実錨が機能不全に陥ったという事になる。それ以外考えられない。しかし、だとしたら原因は一体…。
その時、すぐ隣の隔壁が唐突に開かれる。
「……ッ!」
「お前たち無事か!?」
姿を現したのは、遥の直属の上司、天馬司であった。
「天馬さん!?どうしてここに……」
「4人の職員用GPSで見つけたッ、それよりこの通路はダメだ!このまま進んだらムンドゥスに……」
直後だった、猛烈な爆風と共に、5人の意識が刈り取られたのは。
---------To be continued.