Project Sekai SCP incident feat .   作:唯尊

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 ※これまでのあらすじ。

鳳親子「「「話す事なんか何もないッ!(キリッ)」」」

由那「あらそう(ドカッ、バキ!ボコッ!)」

鳳親子「「「うぅ……全部話します…」」」

由那「最初からそうすればいいのよ」

財団に捕まったえむのパパとお兄ちゃん達は、意地悪なゆなたんにボコボコにされ、全身イタイイタイ状態になりながら全てを自白するのだった。

一歌&レオミク「「何これ」」




第七十話 撃つべき敵は

 

 第818軍事基地に集められた理雄達は、テーブルの席に着きながら更なる説明を待つ。

 

「俺から説明する」

 

ふと聞き覚えのある英語が耳に入ると、部屋の奥からスキンヘッドの白人男性が現れる。グレーのスーツがよく似合っていた。

 

「あれ、ジェイコブズかッ?」

 

「久しぶりだな!メン・イン・ブラック。元気だったか?」

 

悟と龍一郎が拍手で出迎えると、情報部所属のエージェント、ジェイコブズ・アディンセルがデスクトップを持ちながら歩いてくる。

 

「異世界での旅行はどうだった?」

 

「中々に楽しめたよ。あ、そうだ。聞いて驚くなよ?向こうではなんと、コイツが女子校で教師やってるんだ。どうだ、衝撃的だろッ?」

 

 英牙がニヤけ顔で理雄を指差す。ジェイコブズがキョトンと間の抜けた顔で見てくる。

 

「……それ何かの冗談か?この陰険野郎が教師?それも女子校でッ?悪いが想像できん」

 

「ホントだって!それもただの女子校じゃなくてお嬢様学校だ」

 

「尚更信じられん。仮に就けてもすぐクビになるだろ、更衣室から生徒の下着とか盗んで」

 

「大丈夫だよ、そんな事しなくてもコイツなら普通に10人くらいナンパしてゲットできる。ホテルで相手になってくれそうな子も何人かいたしな」

 

「理雄は陰険だが顔は良い。いつだったか、勤め先の学校近くを通りかかった事があったんだが、その時に猫を被った理雄を見た。なんというか………気持ち悪いくらいの優男だったな。その時は一人称『僕』だったし……。本性を知ってるだけあって鳥肌が立ったよ。マジで悪寒を感じた…」

 

「最近は素で接してるらしいけど、距離の近い子も多いし、普通にモテているよな。……ウィスキーの奴らも理雄に一番懐いていたし、なんだかんだ歳下の女に好かれている。……ヤバいフェロモンでも出してんじゃないのか?お前」

 

「うわ……、これ以上更にロリコンが増えるとかマジで業が深いなお前ら…」

 

 どいつもコイツも好き放題言いやがる。ドン引きするジェイコブズと、腹を抱えてゲラゲラと笑う仲間達を前に苦い表情をしていると、「お前らその辺にしておけ…」と與一が注意する。が、当の本人も口元が若干笑っていた。

 

「まぁ、それはさておき---------。本当なのか?チャーリーの(かたき)が見つかったってのは」

 

英牙の一言を皮切りに、全員の表情が真剣なものへと変わる。

 

 突如訪れた仲間達の非業の死。本来果たすべき報復を自分達は果たさぬまま、元の世界へと帰還している。やり残した復讐をようやく成し遂げるチャンスが現れたのだ。

 

「状況に変化が現れたのは、今から二日前の事だ」

 

テーブルの上にデスクトップを開くと、カタカタと慣れた手つきでキーボードを操作する。

 

 連動した大型ディスプレイに表示されたのは、どこかの街で銃撃戦を繰り広げる映像だった。周囲の映り具合とアングルからして、兵士のヘルメットカメラが録画したものらしい。

 

「グリニッジ標準時、午前7時48分。カナダの首都、オタワから『誘拐事件が起きてる』との通報が住民から入った。地元警察が駆けつけたが、重武装の相手に激しい銃撃戦となり、最終的には財団カナダ支部の戦術部隊が制圧した。これは戦闘に参加した兵士が撮影したものだ」

 

「……?犯罪者相手のストリート戦争になんで財団が介入したんだよ?」

 

悟が疑問を口にする。

 

「現場に到着した警官の無線に、妙なやり取りが確認された。その内容を傍受したフィールドエージェントが危機感を覚え、緊急武力介入を要請したんだ。その後調査した結果、警官のボディカメラにとんでもないモノが映っていた」

 

 映像が止まり、画面が切り替わる。別の動画が再生されると、そこには---------。

 

「……ッ!」

 

「これは……」

 

各々が息を呑んだり、小さく呟いたりする。

 

 動画の中には、AR-15で武装した覆面の男達と、ソイツらに捕まった一般人らしき人間が漆黒のクライスラーの後部トランクへと詰め込まれる様子が収められていた。

 

「制圧後、このクライスラーは我々により押収された。Dクラスを用いた実験を行った結果、間違いなくSCP-213-JPだと分かった。これで現在、財団が確保している48台に加え、新たに49台目の同型オブジェクトが発見された訳だが………」

 

そこで一旦言葉を切る。

 

「確認した所、SA-5000-2でも同様の事態が発生している。つまり、こちらと向こうの両方で、同じアノマリーが同じ事件を起こしている訳だ」

 

不意に沈黙が訪れる。

 

「……偶然、なんて事はないよな?」

 

初雪が鋭い視線を投げかける。

 

「続きは向こうの捜査官に聞いてくれ」

 

デスクトップを操作し、再び画面が切り替わると、今度はある人物とのビデオ通話が開かれる。

 

『休暇は楽しめたかしら?ジュリエットチーム』

 

田上由那だ。自室の執務机に座る形で対面する彼女は、見慣れた黒のパンツスーツ姿で理雄達を見る。

 

『貴方達が英気を養ってる間、私達は不眠不休で調査を続けたわ』

 

「そうらしいな、目元の隈がすごい事になってる。綺麗な顔が台無しだ」

 

『あら、ありがとう英牙。てっきり自分と同年代以上の女には興味がないものかと思っていたわ』

 

「それはこの3人だけだ」

 

英牙が龍一郎、信孝、理雄の方を指差す。頭髪を掻きながら理雄が溜息を吐いた。

 

「中学生と結婚した人に言われてもなぁ〜……」

 

「バッ…!人聞きが悪いぞ!付き合い始めた頃の弥生が中学生だっただけだ!!当時の俺は高校生だッ」

 

 十二分に危ないではないか…。全員がそう思っていると、画面の向こう側から由那が深く嘆息した。

 

『全く……貴方達って初雪以外だとロリコンしかいないのかしら。そっちの財団の未来が心配だわ…』

 

「俺も含まれているのか?」

 

悠間(奥さんは同い年)が質問をぶつける。

 

『貴方の奥さんは写真で見たけど、どう見ても26歳には見えないわ。幼妻とか好きそうに見える。悟もそんな感じだし、向一はよく分からないけど、初雪の奥さんに至っては歳上にすら見えない。あとなんか犯罪臭がするし……。っていうか初雪が老けすぎなのよ。実年齢プラス10歳年とってるんじゃない?主に外見年齢』

 

「あァッ?」

 

 初雪が睨む。

 

「おいおい、君だって二次元のショタ属性にしか夢中になれない哀れな人種だろ。そんなだから婚期を逃すんだ」

 

『生きたまま毒蛇島(ケイマーダ・グランデ島)に放り込むわよ』

 

「やめろ勘弁してくれッ!」

 

 英牙と由那の漫才に與一が「ゴホンッ!」と咳払いする。

 

「---------話が脱線しているぞ」

 

見れば、四瀬将補が無言のまま二人を睨んでいた。

 

『……失礼しました。説明に戻ります』

 

英牙と共に由那が居住まいを正すと、改めて此方に向き直る。

 

『我々の調査により、同じシブヤ区内だけでも既に6件のSCP-213-JPによる誘拐事件が発生しています。警察の追跡により、今朝シブヤのオフィスビルにて新たに49台目の213-JPが確保されました。誘拐騒動は収まりましたが、容疑者2名と複数存在すると思われる被害者達は未だSCP-213-JP-1に囚われたままとなっています』

 

「じゃあ、この一連の事件はそいつらの仕業か?一体何者なんだ」

 

理雄の疑問に答えたのは、由那ではなくジェイコブズの方だった。

 

「カナダでの事件後、現場で射殺した誘拐犯の中に『不死鳥運輸』の社員が含まれていた」

 

瞬間、室内にどよめきが齎される。

 

「待ってくれッ、不死鳥運輸って……なんで向こうの-------SA-5000-2の人間がこの世界で事件を起こしてんだ?」

 

「情報を総合するに、それぞれ異なる世界に存在するSCP-213-JPは、互いに内部の異次元空間である213-JP-1で繋がっていると思われる。知っての通り、あの空間は電波が完全に遮断されている。ドローンが使えない以上、我々は有人探査にしか頼れない。よって此方から戦術分遣隊を送ったが……途中で潜入がバレ、派遣した7名の内1名が死亡、2名が負傷した。帰還後、彼らが撮影した写真に拉致被害者と思われる人物が数名確認できた」

 

その写真の何枚かがディスプレイに表示される。年齢層は幅広く、日本人の他にも、白人や黒人。その他アジア系らしき様々な人種が監獄の中で拘束されていた。世界中の凡ゆる所から拉致されたらしい彼らの多くは、長期間の身柄拘束と迫害により、酷く衰弱していた。辛うじて体力が残っていた者は、鉄格子の隙間から必死に手を伸ばし、撮影する兵士に助けを求めていたが、少人数で編成される彼らに鉄格子を破り、自力で動く事すらままならない被害者達を救出する術は無かった。

 

「これらの写真を撮影した直後、見回りのSCP-213-JP-2に発見され戦闘へと突入。撤退した彼らの話によれば、拉致された被害者は確認出来ただけでも8名。おそらくもっといるだろう。敵は素人ではなく明らかに訓練を受けたプロの傭兵だ。接敵した時はそれが50人近くいたらしい。財団から横流しされた銃火器で武装してな」

 

そう言ってジェイコブズは財団の武器庫から紛失した銃器のリストを配る。こちらは紙媒体だ。

 

「HK416が25丁、型落ちのAR-15系自動小銃が80丁以上……。あとはクリスヴェクター短機関銃とMP9が数丁程度。……随分と盗まれてんな、おい」

 

初雪の指摘に、由那が嘆息しながら答える。

 

『此方の腐敗細胞をようやく特定したわ。密輸された物を含めて、相当な量の銃器を奴らは保有している。それは今回、保安部が検挙した汚職・収賄の疑いがある職員達を自白させて作らせたリストよ。……想像以上に流れていた事に私も驚いたわ。こうなると呆れて、もはや溜息も出ないわね』

 

「これで全部か?」

 

『私達が把握してる限りはね。ただ、今回は想定外の事が多いから。もっとヤバいのが向こうにあるかもしれない。財団と不正に取引されたオブジェクトの中に武器になりそうな物は無かったけど……。どこから何が渡ったかは不明だから、注意はして頂戴。それと、不死鳥運輸の社員の一部は経歴に不審な点があり、詳しく調べたら色々と判明したわ。どいつもこいつも、自衛官くずれや海外の元軍人よ』

 

由那がディスプレイに何人かの顔写真を表示する。

 

遠藤尚瑠輝(えんどうなるき)、元陸上自衛隊第一空挺団所属。マーク・ライザーベルト、元アメリカ陸軍特殊部隊(グリーンベレー)。イ・ヨンマン、元第707特殊任務団(白虎部隊)。イーゴリ・ヴィノグラードフ、元スペツナズ----------』

 

「運送会社の社員にしては随分と豪華な面子だな……」

 

悠間が呆れたように溜息を吐く。

 

『これらの社員は全員、社長である盾壁と共に消息を絶っている。……ま、逃げ込んだ先は普通に考えて213-JP-1でしょうけど。それと、戦術分遣隊が撮ってきてくれた写真の中には、活き活きとしたコイツもバッチリ写っていたわ』

 

 最後に表示された写真の中には、SCP-1983-2らしきモノが写されている。全身が黒く人型のような見た目からしてまず間違いないだろうが、仮に戦術分遣隊がコイツらとも接敵した場合、銀の弾丸を装備していても集団で襲われればひとたまりもないだろう。

 

「つまりこういう事か?その盾壁とかいう成金野郎がどこかで213-JPを手に入れて、二つの世界を股にかけた連続誘拐劇を繰り広げて調子に乗っていたら、たまたま1983をゲット。遊びたくなって俺達の世界の砂漠に解き放った所を財団に補足され、対応に当たったチャーリーが被害にあった------こんな感じか?」

 

信孝がここまでの話を要約する。

 

『大筋としてはそんな感じかしらね。活性状態のSCP-1983をどうやって手に入れたのか………。謎は多いままだけど、知る為には盾壁を生きたまま捕らえて尋問する必要があるわ』

 

その発言に、理雄の脳裏にある疑問が浮かぶ。

 

「ロメオが拉致したあの親子は?何か知ってるんじゃないのか?」

 

事件の主犯格として見られているあの3人ならば、聞き出せる情報はあるのではないか、と思ったが。由那は小さく首を横に振る。

 

『あの3人は何も知らないわ。少なくとも、今回の件に『フェニックス・グループ』は直接関与していない』

 

「……どういう事だ」

 

 全員の視線が注目する中、由那は深く息を吸い、ゆっくりと吐き出した。

 

 呼吸を整えると、理雄達を見据えながら低めのトーンで話す。

 

『現在拘束中の鳳親子から色々と話を聞けたわ。どうやら、黒幕はフェニックス・グループではなく、不死鳥運輸------厳密にいえば、盾壁弘毅率いる犯罪者集団を利用した『マーシャル・カーター&ダーク株式会社』よ。『北海道サーキックカルトテロ事件』、『ダウンフォール事件』、そして今回のチャーリーチーム全滅と連続誘拐事件。……これら一連の事件は、全て彼らによる裏ビジネスの一環だったわ』

 

 由那の瞳が、鋭く冷徹に細められる。

 

『コレが、我々が撃つべき真の敵よ』

 

 

 

 

 

 

 いつからだろう、重い十字架を背負いながらひたすら走り、貫き、扉を閉ざす人生に身を投じたのは。

 

 薄暗い監獄の廊下を、二人の男は全速力で駆けていた。

 

 妹の死と、犯人達への復讐---------。もう既に終わった事だと思っていたのに、実際は違った。自分は何も変わっていない。あの日からずっと、同じ場所から動けぬままだ。

 

『お前はただ、ずっと妹さんを救おうとしてるだけだ、お前はヒーローなんかじゃねえ、人殺しだ』

 

自分の隣を走るオレンジ色のジャンプスーツを着た男は、かつて自分にそう言い放った。

 

その通りだ。自分は誰も救っていない。ここにいるのは罪なき人を救う為じゃない。監獄に閉じこもり、重りで腐る足を見て、その重さで満足していただけだ。

 

 自己満足、或いは一種のナルシズムだったのかもしれない。あの日、妹を見つけたあの瞬間から、自分はずっと逃げてきた。ずっと、ずっと、ずっと逃げて。そして、誰かを助けたふりをして---------止まって、死のうとしていただけだ。

 

『…俺達は銀の弾丸だ、不幸にも心臓を貫き、そのまま抜け出しちまった弾丸だ』

 

 だから止まれない。自分は監獄から出なければならない。運命の呪縛から逃れられぬとも、いつか地に落ちるその時まで、死に向かって突き進み、貫いていく。開け放たれた扉を閉じるために、鍵を壊すために---------。その先は、考える余裕すらない。残酷で無意味なこの世界で。

 

『おい!本当にこの道で大丈夫なのかッ?』

 

不意に、自分達を弾丸だと吐き捨てた張本人が顔を向けてくる。

 

『安心しろ、何度も通って確認した脱出路だ------。そのままダクトに入れ!それでヤツらは追って来れなくなるッ』

 

アメリカ人の彼に英語で返すと、ダクトの入り口に向かって直行する。背後からは気色の悪いイソギンチャクみたいな化け物が追ってくる。ここで捕まる訳にはいかない。

 

『なぁ、覚えているか?俺達の誓いをッ』

 

ダクトに突っ込む直前、そんな事を聞いてくる。

 

 もう何年---------いや、あれから何十年経っただろうか。監獄(ここ)からの始まりの日が、今では果てしなく遠い出来事の様に感じる。だが、彼との出会いから始まった弾丸としての役目を、誓いを、一瞬たりとも忘れた事はない。

 

『死にゆくまで------!』

 

『そうだ。死にゆき------忘れ去られるその時まで!俺達は飛び続けるし、どこまでも貫いていく銀の銃弾(シルバー・ブレット)だッ!!』

 

2発の弾丸は飛び続ける。地に落ちるには早い、まだ---------落ちてたまるものかッ!

 

 





 ※今回引用したSCPの記事

http://scp-jp.wikidot.com/silver-bullet
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