デバックコード   作:豚足と豚骨の化身

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異世界転生

齋藤 義澄 (さいとう よしずみ)

25歳。独身。童貞。実家暮らし。

訳あって、今はニート生活をしている。

「あぁ〜だっる・・・・・」

そう言ってベッドから起き上きあがる。

強烈な臭いと、散乱するゴミ。

おおよそ寝室とは思えない見てくれだ。

だが、気にするなかれ。

これが彼のデフォルトである。

「ビールでも飲むか・・・・」

無性に酔いたい気分だった義澄は、キッチンへと向かった。

冷蔵庫を開ける。

そこにあるのは、冷たい空気と大量の飲食物。

しかし、その中にお目当ての物は見つからない。

「マジかぁ・・・・・」

目的の物がない時、普通人間はどうするべきだろうか。

「コンビニ、行くかぁ・・・・」

まぁ、もちろん買いに行くというのが正解だ。

それはこんな男でも例外では無い。

気だるげな身体奮い立たせ、萎れた財布と共に家を出た。

ギラギラと照る太陽。

恐らく下校中だと思われる学生達。

(眩しいなぁ・・・・・)

そんな事を考えながら、義澄は目の前の信号が青になるのを待っていた。

しばらくすると、信号は進めの合図を出す。

白線に従い、横断歩道を渡る。

彼はつまらないと思った。

親に頼りきりのニート生活。

あまりにも惨めだと分かっているのに、それから目を背け続ける毎日。

もう嫌だ。

(いっそのこと・・・・・死んで異世界にでも行ければなぁ・・・・・)

そんな刹那に消える儚い希望が、彼の頭に浮かび上がった時に、それは起こった。

突如として全身を駆け巡る衝撃。

視界の端に映るトラック。

跳ね上がった身体を認知する暇もなく、彼の意識は暗闇へと落ちてゆく。

義澄は、この時この世界での生涯を終えた。

 

次に目が覚めたのは、他人の腕の中だった。

正確に言えば母親の腕の中であるが。

(え?誰?)

そんな混乱の中、周りを見渡す。

西洋に彩られた部屋。

そこにいるのは、涙を流してこちらを見る大量のメイドが居た。

その表情には、安堵と喜びが見て取れる。

そして、彼を腕に抱いている女を見上げる。

「本当に・・・・可愛い子。」

彼女もまた、その喜びを傍らにいる男と分かちあっていた。

どちらも綺麗な顔立ちと、優雅な服装に身を包んでいる。

(すっげ〜美人だなぁ・・・・)

義澄が初めて母親に抱いた感想はそれだった。

「グリム・レヴリアス・・・・・それが、お前の名だ。」

傍にいた男が義澄へと語りかける。

(なんなんですか・・・・・あなた達)

義澄がそう口にしようとした時、とある事に気がつく。

(・・・・・なんで!?声が・・・・・!!)

声が出ないのだ。

それだけじゃ無い。

なぜか声を出そうとする度に、泣き声が口から出てくる。

(なに!?なにこれ!!?)

この状況に、混乱した彼は手足をジタバタと動かした。

すると、視界に映る自分の手。

丸く、柔らかで、とても幼い。

腕もそうだ。

まるで風船のように膨れた可愛く小さい腕だった。

(まさか俺・・・・赤ん坊になってる!?)

そこで初めて、彼は自身が赤子の姿になっていることに気がついた。

「あらあら・・・・・」

目の前の女が彼の身体を持ち上げ揺すり始める。

「グリムはどんな子になるだろうなぁ・・・・・」

「気が早いのではありませんか?」

「ハハッ・・・気になるじゃないか。」

「ん〜・・・そうですねぇ。やはり貴方様のよつな立派な剣士になるのでは無いでしょうか。」

「いや、案外魔法使いにでもなるかもしれんぞ?」

2人が楽しそうに会話する。

それを聞いて、義澄の中にとある1つの可能性が浮かんできた。

突如赤ん坊になった自分。

騎士団や魔法使いと言った単語。

そして、ファンタジーテイストなこの空間。

(まさか俺・・・・・異世界転生しちゃった!!?)

こうして、現代のニート義澄改めて、貴族グリム・レヴリアスの新たな人生が始まった。

 

 

それから5年が経った。

日本人だった彼も、そろそろ貴族グリムとしての生活が見に染み付いてきている。

「お母様〜!お父様〜!行ってきます!!」

そんな大きな声とともに、グリムは家を飛び出した。

元気にはしゃぐ彼を見ながら、彼の親である2人は仲睦まじそうに話をする。

「あの子・・・・元気ですねぇ。」

「もう少し貴族としての尊厳はわきまえて欲しいがなぁ。」

「まだ5歳ですよ?いいじゃないですか。あの子・・・・あぁやっていつも森に魔法を練習しに行くんです。」

「知ってるよ。アイツ、騎士団の稽古場に突然現れて、魔法使えるやつと手合わせして全員倒しちまったんだぜ?」

「あの子の親としては・・・誇らしい限りですね。」

「ウチの騎士団の面子は丸潰れだがな。」

グリムが生まれた家は、代々国を守る騎士団の団長を務める、それはもう有名な貴族家であった。

その才能は例外なく彼にも継がれており、生まれながらにしての魔法の才を、彼は持っていた。

その実力は、既に並の魔法使いを超える程だ。

正に、この世界のバグとも言える天才であった。

さて、そろそろ視点をグリムのいる森へ移そう。

「ウォーターボール!!」

彼がそう叫んだ瞬間、目の前に水が生成され、圧縮。

そのまま弾け飛ぶように前方の岩へとそれが吹き飛んで、爆発する。

成人男性2人分はあろうほどの大きな岩。

しかし、その岩は先程の爆発によって跡形もなく消えていた。

「かなり強くなってきたな。」

グリムが晴れ晴れとした笑顔でそう言った。

彼はこの世界に来てから、ずっと魔法の練習をしていた。

(これで・・・・これで俺も・・・・)

彼には目的があった。

前世の惨めなニート生活。

それに神がチャンスを与えるように、突如起こった異世界転生。

次こそは充実した人生を送りたい。

だからこそ……

(冒険者になって、ハーレム生活をしてやる!!)

「異世界生活!頑張るぞぉ!!」

高らかにそう叫ぶ。

ここから、彼の物語が始まるのだ。

 

 

「今日はこれでいいか……そろそろ帰ろう。」

日も傾いてきている。

今日は切り上げ、その場を立ち去ろうとした。

その瞬間、視界が赤に染まる。

「へ……?」

なんだこれ。

グリムはそう思った。

なんで赤くなっているんだ?

いや……違う。

これは血だ......。

視界が上下逆転する。

そのまま、彼の首は地に落ちた。

吹き上がる鮮血。

それにまみれた、白い髪。

キメ細やかな素肌と、綺麗な黒い瞳に、少年のような小さな体躯。

「バグの始末……完了〜。」

そして、気だるげな態度。

グリム……いや、この世界に産まれ落ちた「バグ」の首をはねた小さなナイフを懐にしまう。

彼の名前はレイズ・リムベル。

「血まみれじゃぁん……最悪……」

この世界の「バグ」を始末する、「デバッカー」だ。

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