でも今日負けすぎて書いちゃった。
競馬。
それを知ったのはいつだっただろうか?
話は長くなるだろうが、どうか聞いてほしい。
おそらく一番最初の記憶は子供の頃。日曜日の朝は親父にコンビニでスポーツ新聞を買いに行かされた頃だと思う。あ、でも中継は観てなかったかもなぁ。
それじゃあ京都競馬場に連れて行ってもらった頃かな?多分だけど2004年頃でゼンノロブロイやシンボリクリスエスとかが活躍していた時代。
初めて京都競馬場に行ったあの日、どんな馬たちが俺の目の前を走っていたのだろうか?名前は覚えていないけど、選んだ馬が一着になったのは覚えている。
もちろん子供の俺が馬券を買ったわけでなく、親父が参考程度に聞いていただけ。なぁ親父?当てた馬券の払戻金はどこに行った?まぁそれはいいか。
あー、今思い出すとそんなこともあったなぁなんて思う。
月日は流れ大人になった俺は、そんな頃のどうでもいい思い出なんて思い出すこともなかった。
けれどある日の深夜。
俺はあるアニメに出会った。
ウマ娘だ。それもいきなり二期で五話目。
ハマった。どハマりした。
一期からアニメをみたし、アプリもリリース日からやった。その頃はウマ娘はともかく、競馬にあまり触れる事はなかった。けどある日、友達に誘われて競馬場に行くことになったんだ。
大人になってから行った京都競馬場は綺麗になっていて、思い出の中の風景とは違った。意外と覚えてるもんだなぁなんて思いつつ綺麗になったフードコートで食べたのはあの頃と同じ牛丼だった。
『よし!一着!!』
『ウマ娘馬券やな!』
『あー、はずれた!』
『残念。やっぱり人気がなかったからあんまり強くなかったのかな?』
そんなことを言いながら一日を楽しんだ。
応援した馬が勝てば嬉しい。知識がなくても新聞に載っている知っている名前の子供たちが勝てば最高だった。
心の底から楽しんでいるからか馬券を外しても悔しいとかそんな気持ちが一切湧かない。
ただただその走りに圧倒されて、大きな歓声に感動していつの間にか虜になっていた。ちなみに今は外せば普通に腹立つ。
「楽しかったよなぁ」
それからは過去のレースを調べだしたし、歴史なんてのも少しは詳しくなっていった。あぁそうそう。京都競馬場に期間限定であったオグリキャップのレースを一番前で見ていますっていう体験コーナーみたいなのなんて鳥肌が立つほど震えた。名馬達の蹄鉄とか何枚も写真を撮ったな。
あとどうでもいいけどこの間引退してしまった世界最強馬を調子が悪い時に待ち受けにするとなんか当たるぞ。信じるか信じないかは……勝手にしてくれ。
「ウマ娘だけじゃなく、普通にゲームにも手を出したなぁ」
それだけやっていれば多くの馬達に興味を持つ。
ウマ娘にはまだ実装されていない馬にも興味が出たし、その馬達を少しでも知りたくて競馬シミュレーションゲームにも手を出した。ウイポはいいぞ。
「そんだけハマった競馬…………ない」
ない。
ないないないないないない!!!!!
馬券がない!!!!!!!
おいおいおいおい!!あのヒリつくような瞬間はもう味わえないの!?ここで賭け事してバレたら面倒なんだよなぁ!!!民度良すぎるんだよこの世界!!勘弁してくれよ!!俺は!競馬がしたいんだ!!!
2024年の宝塚記念で人生の全てを賭けて友達から金借りたと言っていた目の前の知らないやつとかもう見れないの!?あの崩れ落ちた姿とか見たいのに!!!俺も崩れ落ちたけど!!ニコニコしながら俺当てましたって言ってきた隣の知らんやつなんやねん!!でも最終レースで馬連で巻き返せてよかった!!!
あと別の日なんてこんなん当てれんやろ!ってレースを当てた隣にいた知らないおじいちゃんがこれで家賃払えるとか言ってたのとかもう見れないの!?
うわーん!あんまりだ!!歪んだ性格だったのにドンドンまともになっちゃう!!……あれ?問題ねぇな。
「スピードシンボリぃぃぃ!!!!やったぁぁぁぁ!!」
「……馬連なら当ててた」
ゴールの前を一着で駆け抜けたスピードシンボリを見ながらつい言ってしまう。
何倍ぐらいついてたっけなぁこれ。
まぁ前の世界でスピードシンボリが走った時代には今ほどの馬券の種類はなかったらしいが……。単勝と複勝と枠連とかだったか?その辺はあんまり覚えてないな。
それはそうとここは阪神競馬場。
行われているメインレースは宝塚記念。
俺が見た宝塚記念は京都だったけど、それは阪神が改装中だったからだ。
そして俺の隣で叫んでいるのはこの世界での俺の親父。
「やっぱり君は最高だぁ!!!」
この世界に馬はいない。
代わりにと言っていいのか分からないけれど……いるのはウマ娘であり、この芝やダートを駆け抜けるのは彼女たちだ。
俺が望んでやまない競馬はもうできないけれど、やっぱり彼女達が一着を目指して命を燃やして走る姿。それは馬であってもウマ娘であっても……。
「……かっこいいなぁ」
「!?そ、そうだろう!?かっこいいだろう!!!」
「わっ!!」
興奮した親父に肩を組まれた。
間近で見る親父の顔は興奮しているのがすぐにわかった。そりゃ推しが一着でゴールすりゃそうなるよな。わかるわかる。
「いつもどこか冷めた目をしていたから興味がないと思ってたんだ!!そら!見てくれ!あれが俺の推しであるスピードシンボリだ!!おーい!君のおかげで息子もこの世界に興味を持ってくれた!!ありがとう!!ありがとう!!!」
「恥ずい……」
……いきなりだが、ウマ娘の耳はとてもいい。
レースを終えて肩で息をするほど疲労していてもそれは変わらないらしい。偶然、親父の必死な声を拾ったのかスピードシンボリがこちらを向く。そして少しゆっくりではあるが近づいてきたのだ。
親父は大興奮。震えている。
「やぁ。どうだったかな?この宝塚記念は」
「……」
「おや?どうしたのかな?」
「あ」
緊張していたらしい。
周りもさきほどの興奮が消えたかのように静かだ。
そのおかげで俺は少し冷静になれた。
「す、すごかったです。外からぐんぐんと伸びてきて差し切ったのは感動でした。それにレコードもすごいです。おめでとうございます」
「そうか。ありがとう」
さて、ここで一つ話をしよう。
長々と語ったことでわかっているとは思うが、俺は転生者なんだと思う。それを俺に突きつけるようにあるギフトも気がついた時には備わっていた。
ウマ娘の育成画面のパラメータはもちろん知っているだろう。それが見えるのだ。
だから気がついてしまった。
いや、あんた体力すっっくな!!!
育成すると絶対に失敗するやつやんけ!
史実ではスピードシンボリはこの約一ヶ月後にまたレースに出る。そこから惜しい結果が続き、引退レースとなった最後の有馬記念で一着となり、有馬記念を連覇するのだ……。
「ど、どうかしたかい?」
「あ、いえいえ」
親父が恐る恐るスピードシンボリのグッズを取り出してサインを貰おうとしているのを見ながら思う。
そりゃ負けるて……。
前の世界では年齢もあったのだろう。
騎手が背負う斤量の重さもあったのだろう。
ここは前の世界とは条件が違うはずなのに、このままだとスピードシンボリが負けると俺の心が叫ぶ。
アプリだと一ヶ月がすぎるのは一瞬だ。
だけどここではそうじゃない。レースの疲労は確かに残るのだ。ポンっと押せば体力を回復できる【お休み】なんてないのだ。
「あ、あの」
「ん?君にもサインを書こうか?」
「あ、はい。ありがとうございます」
一応こんなこともあろうかと思い持ってきていた色紙を渡す。
……って!違う!!
「しっかり、休養をとってください」
「ん?」
「タフなのは知ってます。けど、自分が思っている以上に限界だと思います」
「……」
「いつもより少しだけでいいです。お願いします」
頭を下げた。
何故こうしたのか……少し考える。
……まぁ目に入ったらなぁ……。この世界は史実と同じような歴史を辿るかもしれない。けれど、何かが変われば別だ。天気は?馬場状態は?レース展開は?……怪我をすれば?
彼女たちは命懸けなのだ。
人間には到底出せないスピードで転ぶと大怪我だ。
最悪、死すらある。
この先、あの時に言っておけば……なんてことがあればと思うと怖いのだ。だから、つい言ってしまった。
「……わかった。気をつけよう」
「ありがとうございます」
「……不思議な目だな」
「へ?」
「いや、なんでも……それじゃあそろそろ行かないと」
「あ!」
「な、なんだ?」
「芦毛の子に目を奪われすぎないように」
「?」
何言っているんだ?という表情で去っていくスピードシンボリ。親父もこいつ何言ってんだ?って顔してる。
さて。俺がこんなことを言ったのには理由がある。
スピードシンボリには面白いエピソードがあるのだ。
それは二歳下の牝馬であるハクセツという子に恋をしていたらしいという事。この子は白い美少女と言われたぐらいに綺麗だったらしく、返し馬ではハクセツにばかり気を取られていたらしい。
「まぁ実際可愛いしなぁ」
ハクセツちゃん可愛い。
この世界での人気も高い。
さてさて、そろそろ家に帰りますかね。
あの時は、こんな未来が訪れるなんて思わなかった。スピードシンボリが目の前で走り、レコードを取った興奮からか余計なことを言いすぎたと帰ってから何度悶えただろうか?
「そこでだ」
あの後、噂ではスピードシンボリはしっかりと休養をとったらしい。いつもなら練習をしていた時間も自身のケアのために使ったとかなんとか……どこかの雑誌で読んだ親父が言っていた気がする。
「君には何かが、特別なものが見えているのだと思う」
あの後のレースにはハナ差で負けてしまったがそれでも二着に入っていた。圧倒的な人気だからなぁ俺の時代にいたと考えたら二着固定で馬単かなぁ。妙味とりたい。
「まだ学園を卒業したばかりの身だが、私にもできることはある。日本のウマ娘達が更なる進歩をする為に君の力が必要なんだ」
いや、まてまて。
お願いだから話しかけないで。
俺はできるだけウマ娘に関わらないように生きていたい。だって好きなキャラいっぱいでしょう?アプリでは実装されていない名馬達もいるかもしれないんでしょう?
「まずはURAに掛け合ってみる。家の力でもなんでも使って必ず叶えたい。それほどまでに君には可能性を感じている」
いやいやいやだ!!!
だって名馬達だよ!?俺には無理!馬券でその馬に課金することしかできない!!馬券ないけど!!
「トレーナーを目指してほしいんだ」
「よろしくお願いします!」
「黙ってろ親父ぃ!!!」
あんたが返事をするなぁ!!!
天川一星。
この度余計なことをしてしまった相手であるスピードシンボリに家凸されて進路を決められそうです。
親父は乗り気です。
オカンはあらあらって感じです。
スピードシンボリはやる気です。
逃げ場はないようです。
「共に、恐れずに挑もうじゃないか!」
どうやらウマ娘からは逃げられないらしいです。
スピードシンボリは師匠枠です。
書くつもりなかったので特徴を捉えてない……。
まだ社会人になりたてだからって事にしててください。
さて、どの子を出していこうかなぁ。