どうやらウマ娘からは逃げられないらしい   作:クウト

4 / 11
高知ファイナル当てたので書きました。


ここから先は逃げられない

俺は一体何をやっているのだろうか……。

お師匠様を放っておいてトレーナー室を飛び出した。それも殴り書いた『俺と一緒にシンボリルドルフを皇帝の座から引き摺り下ろそうぜ!!』なんて紙を持って……アホ丸出しだ。

 

「はぁぁぁぁ……」

 

最近定位置になりつつあるベンチに座りうなだれる。

 

「……そういやあれって」

 

少しだけ離れてはいるが、目の前にあるのは中が空洞になっている大きな切り株。大樹のウロ。

そこはトレセン学園に所属する多くの者たちが様々な思いを喚き散らすことで有名だ。色々な思いを受け止めて来たそのウロに、何故か俺は引き寄せられていく。

 

「……スーッ!」

 

大きく息を吸い込む。

そして全てを吐き出す。

 

「何やってんだ俺のアホ助ぇぇ!!!!!」

 

限界まで吐き出す。

大きな声を出すと言うのは意外とストレス解消になるのだ。このスッキリとする感じはカラオケとかでは味わえない。日常生活の中で大声を出す瞬間とかある?それも自分の喉が張り裂けそうなほどに。

俺は競馬場に行ったとき、帰りには声が枯れていた。勝っていても負けていても、全力で馬や騎手を応援して声を出していると、仕事や日常生活で溜め込んだストレスを発散できたのだ。

……あー、嫌なこと思い出した。隣で競馬初心者であろう女の子に笑われた記憶が蘇る……。

 

「人間性が出るねってなんだぁぁ!!!!!」

 

くすくすと笑って言ったよね君!!推し馬出てたら一着固定で応援するだろ!?でも三着だった!!ヨレちゃったもんね!!仕方ないね忙しかったねあのレースは!!でも頑張ったからオッケーです!!

君の応援馬券はファイリングしてるし、頭数少なかったから買った三連単の馬券も保管してるよ!!

そんな応援している子が走っていたら何もかもむき出しで応援するのがファンってもんだろ!?

 

「あー、スッキリした」

 

少しだけ息を切らしながら顔を上げる。

キラキラお目目が目に入った。

 

「あ、終わりました?初めまして。私、アーモンドアイって」

 

「……」

 

「……え?また!?」

 

ウロの中に顔を突っ込む。

……なんでいんの?

顔を上げたらアーモンドの瞳。

驚きでバクバクとなり続ける心臓を感じながらも、頭の中では冷静にフサイチパンドラの子供って見た目がいいとか言われてるもんなぁ。アプリでも見たけど実物はもっと美人さんだなぁなんて考える。

 

「あのー。大丈夫ですか?」

 

待って。肩トントンしないで。

君がやらないといけないことは、ここから静かに去ってくれることなんだ。それだけなんだ。

 

「………………」

 

行ったか?

こんなウロの中に頭を突っ込んでいる大人なんて見ていたくもないだろう。って訳でもう大丈夫やろ!

なんて思い顔を上げた。

 

「あ」

 

「あ」

 

「って!待ってください!」

 

なんでまだいるの!?

急いでウロの中に逃げようとしたら肩を掴まれてしまう。手加減は勿論しているみたいだが、こうなったらもう逃げられない。ただの人がウマ娘の力になんて敵うはずもないんだ……。

……腹を括ろう。

 

「なんでしょう……」

 

「これ、本気ですか?」

 

俺の肩を両手で固定しているアーモンドアイが目を向けた方向を見る。そこには俺が書いたアホな文字。

 

「今、このトレセン学園でこんなことが言える人なんていません。……単刀直入に聞きます。あなたと契約すれば、生徒会長に、シンボリルドルフに勝てますか?」

 

キラキラと輝いて見える瞳。

アーモンドアイの名前の由来である美人とされる顔の目の形。その瞳に真っ直ぐに見つめられる。

前世でアーモンドアイに会ったことなんてない。目の前で走っていた姿を見たこともない。ウマ娘としてのアーモンドアイなんてキャラストも出てない段階だから詳しく知るはずもない。

だというのに脳内ではあるはずもない記憶が溢れて止まらない。

ただウイポをやっていただけなのに、中に入って経験したかのような記憶が溢れるのだ。

 

「不思議なんです」

 

「え?」

 

「何故でしょうか?あなたとなら、どこまでだって走っていける気がするんです。こんな感覚は今までなかった」

 

「……」

 

……こういうことも、あるのか?

本当に、君は多くの功績を上げてくれた。

史実では九つの冠を掴み取り、俺と駆け抜けたゲームの中ではもっと多くの冠を……ごめんね。いっぱい無理させちゃったよな……。

 

「あなたとなら、私は皇帝シンボリルドルフを超えて「できるよ」へ?」

 

「君はシンボリルドルフを超えられる」

 

まずい。

 

「君には、トリプルティアラでさえ通過点だ」

 

押し付けるな。

 

「この日本で、世界で、誰も到達したことがない領域まで」

 

「……」

 

最強となるアーモンドアイを見たい。

それは俺の願いだ。

けれどそれは彼女に聞かせて押し付けるわけにはいかない醜く汚いものだと思えた。

競馬ファンとして、ウマ娘好きとして、友人達と語り合う分にはいいだろう。だけど、馬ではなくウマ娘で人の言葉がわかり、コミュニケーションを取れてしまえる子に対してこの願いを聞かせるのは、押し付けるのは、人としていけないのかもしれない……。

だけど、この口はもう止まれない。鳴り続ける心臓は、俺の中にある熱量を更に上げろと言わんばかりに動き続ける。

 

「君は、新たな歴史の創造者になれる」

 

「……え、えっと」

 

「俺と一緒に、皇帝すらも超えて、誰も想像できないような場所にまで、走ってみないか?」

 

緊張で声がまともに出ない。

手が震える。

けれど、どうか手を取ってほしいという一心で彼女に手を伸ばす。願わくば、この手を取ってほしいと……ただそれだけを思って……。

これが、この世界での俺とアーモンドアイの出会いだった。

 

 

 

長居をしてしまった。

URAの海外事業部を任されていて多忙とはいえ、私にも休息が必要だ。あの時、一星に休めと言われてからその辺は特に気を遣っている。

 

「もう少し、もう少しだけ」

 

師匠と呼んでくれる子のトレーナー室。

彼と学生生活を送れていたらどうなっていたのだろうか?セントライトに認められるほどのトレーナーに成長した子だからこそ、もしもを想像してしまう。だから、もう少し……と長居をしてしまった。

 

「ん?」

 

近づいてくる足音。

一星の足音と……。

 

「ふふ。さっそく捕まえて来たな?」

 

まだ帰っていなかったと驚くだろうか?

彼が選んだウマ娘。きっと多くの驚きを届けてくれるだろう。その未来を少しだけ想像して楽しみにしながら扉が開くのを待つ。

 

「さて」

 

どんなウマ娘か見極めてやろう。

なんて、思っていたのだ……。

一星と一星が連れて来たウマ娘が向かい合うようにソファに座り、これからのことを話し合う。

私はただ、その光景を微笑ましく見ていたかっただけなのに……。

 

「まずはトリプルティアラ。そしてそのほかも合計して、最低でもGⅠを九回勝ってもらう」

 

「……」

 

「……きみは、何を言っているのか分かっているのか?」

 

連れて来た子の名前はアーモンドアイ。

言い放たれた言葉に驚き、目を見開いている彼女の名前だ。

私から見てアーモンドアイの評価だが、まだ少し足りていない気もする。少し華奢に見え、どこか頼りなさげなような……だが、それでもこの子に何かを見たのだろう。

なんて思っていたら何を言ったコレは……!

珍しく声を荒げそうになりながらも、あまりに無茶を言う一星を止めようとした。

 

「トリプルティアラがどれだけ難しいことか!いや、それ以前にGⅠを勝つこと自体どれだけ難しいかを」

 

「できます。アーモンドアイなら」

 

思わず頭を抱える。

あぁくそ。一星は悪い癖を全開にしている。

どうやって止めるべきか?そう悩みつつアーモンドアイに目を向ける。

 

「どこで生徒会長と戦いますか?」

 

……。

 

「それは……わからん。でもルドルフならアーモンドアイが成長しきったいいところに合わせて出てくると思う。そこで完璧に仕留める」

 

「なるほど」

 

なるほどじゃない。

何故この子は乗せられているんだ?ソワソワするな。そんな場合じゃないんだぞ?

 

「なんかすぐにでも挑みたそうだけど無理だからね?今やったら手も足も出ないどころか、何もさせてもらえないぞ?」

 

そういう話じゃない!!

 

「わ、分かってます!……そんなにハッキリ言わなくても……」

 

あわよくばって雰囲気だったろう君は!!

脳内がパニックになりつつある私を置いて、彼らの話は進んでいく。

 

「まぁアーモンドアイのペースで行こう。大丈夫、ルドルフだけじゃなく色々な強敵と当たっていくから暇はしないさ」

 

「強敵?たとえば?」

 

「そうだな……。海外のウマ娘とか、クラシック三冠、トリプルティアラ、他にも色々なのがゴロゴロと」

 

……は?

まて、三冠?海外?それに当たるレース?

一星。君には一体、何が見えているんだ?

 

「……今すぐ走りましょう。すぐに!」

 

君も、何故こんなことを疑いもせずに受け止められるんだ?先ほど会ったばかりだろう?長年連れ添ったかのような雰囲気すらもあるのはいったいなぜだ…………?

 

「ほらはやく!天川トレーナー!」

 

「待って、先に契約書書かないとダメです」

 

「……それは仕方ないわね。なら早く出して」

 

……ついつい大きくため息。

もう止められない。

……おそらくだがこれから先、一番大変なのはアーモンドアイだろう。最低でも九冠。そこに辿り着くまで、この二人にどれだけの困難がやってくるのか。それは想像したくない。だけど同時に少しだけ、新たな時代を作るのはこんな子達なのかもしれないとも思う。

 

「よく、師匠に恐れずに挑めとか言われるんだ」

 

ん?

 

「俺達も恐れず全力で駆け抜けよう。……改めて、自己紹介。天川一星だ。よろしくお願いするよ。アーモンドアイ」

 

「えぇ!この私、アーモンドアイは、あなたと一緒に新たな伝説を作ることを約束するわ。だから、二人で一緒に駆け抜けましょう。よろしくね天川トレーナー」

 

……まぁ、いいか。

この光景を見れたことを誇りに思う事にしよう。

……少しだけ羨ましいと思ってしまうが、私は私でできる限りのサポートはするさ。海外にも挑戦しそうだし、これからしっかりと考えてみないとな。

テンションが上がっている二人を邪魔しないようにしながら部屋を出る。

 

「時代は変わる……か」

 

過去に言われた言葉を思い出す。

 

「ははは。俺も年かな?」

 

応援しているよ。

一星。アーモンドアイ。




当てたと言っても1-11ワイドです。

アンケートには震えました。みんなアモアイ好きね。
ジェンティルが差し込むと思ってました。スズカもスタートが悪かったのか逃げれませんでしたし、アヤベさんも後方でバ群に包まれたのか抜け出せませんでしたね。シービーはいいところまで追い込んでましたけどとどかず…………。
やっぱりアーモンドアイって最強なんやなって。

さて、これからアイちゃんは大変です。
このドアホはアーモンドアイならいけるやろ!って精神できますし、前世は調教師でもないただのウマ娘トレーナーとウイポプレイヤーですからね。のしかかる期待はものすごいと思います。
だからと言って潰すようなことはしませんが。頑張れアイちゃん!負けるなアイちゃん!

それはそうとこうなったからには頑張ります。
こうじゃねぇよ!って思うこともあるかもしれませんが優しくしてね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。