どうやらウマ娘からは逃げられないらしい   作:クウト

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地方の重賞は二つとも取れましたので書きました。
片方は三連複。もう片方は三連単でした。
土日の軍資金はできたな!!


トレーナーとして

そんな訳で本格的に始まったアーモンドアイとのトレーナー生活。

一応トレーナー業は欧州の方でもやってはいたが、あそこでは基本的にサブだった。……というか今更だけど通訳にセントライトってなに?おかしくない?一応トレーニング内容に口出しはしてこなかったけど、一部からセントライトから教えてもらっているって勘違いまでされてたよアレ。

 

「おはよう。トレーナー」

 

「相変わらず早いな」

 

早朝だというのに眠気ってのが一切ないのが羨ましい。いつも通りのキラキラお目目は社会を知り濁った俺の目とは大違いだ。

 

「どうかしたの?」

 

「いや、なんでも。……さて、しっかりと準備と柔軟してから始めるぞ」

 

「えぇ。今日も頑張りましょう」

 

指示通りの準備運動を済ませていくアーモンドアイを見つつ考える。最近増えている胃薬の量だ。

はぁ、この胃痛にもなれる時が来るのだろうか?契約を結んでから数日経つが、アレからのことは思い出したくないぐらい酷かった。

あ、あ、こういう時思い出しちゃう。

マイナス思考がががぁ!!!!

アーモンドアイを狙っていたらしい先輩から詰められそうになったり、それを偶然見た六平さんが早い者勝ちだろ?欲しかったなら先に動け素人か?なんて言いながら現れたり、俺のアホメッセージで射止めたと知った東条さんがニヤニヤしながら弄ってきたと思えば真顔でそう簡単に勝てると思うなよ?とか言ってくるし……!!

 

「トレーナー?また何か考えてるの?」

 

「ん?あぁ、気にしないでいい」

 

「大丈夫よ。全部私が勝てば問題ないんだから」

 

「は、ははは」

 

それができそうな君だからこその火種なのだが……まぁそんな最強になるだろうウマ娘といれるのだ。多少のやっかみなんて気にするだけ無駄だろう。

世間からも何かと言われることもあるだろうが、それも全て二人で走りながら振り切っていけばいい。

アーモンドアイなら、できるのだから。

俺はトレーナーとして全力で応え続けていけばいい。考え事ばかりしていないで、しっかり切り替えていこう。

 

「いつも通り、タイムを守りつつ帰ってこい。今日の放課後は買い物に行くからな。朝練でしっかりといい結果を出そう」

 

「わかったわ。それじゃあ行ってくるわね」

 

ザッ!と走るアーモンドアイ。

遅れる事なくストップウォッチで計測を行なっていく。……前世での記憶。アーモンドアイは新馬戦でニシノウララに負けてしまう。スタートも少し遅かったし、馬群に包まれてもいた。だがそこから抜け出してみせた末脚はものすごく、騎手が背負う斤量が違えば勝てていたかもしれない。実際、あの天才外国人ジョッキーもその斤量差ではとどかないと言っていたらしい。

 

「いいタイムだな」

 

騎手がいない。

だがその代わりにその騎手の脳でも入っているのだろうか?なんて思うほどアーモンドアイのレース感覚は冴えている。並走相手をつけてあげたらもっと多くの経験を得るだろう。

 

「量産型みたいなCMあったなぁ。……嫌な想像した」

 

あの人達をインストールしたウマ娘ばかりとか……冗談じゃない。一つのレースにレジェンドジョッキーの脳を搭載したウマ娘が何人も出走なんてトレーナーという立場からすると最悪すぎる。……ファンとしてはちょっと見たいけど。

っと、集中集中。

コーナーを綺麗に曲がり、直線に入るアーモンドアイを見つめる。フォームも綺麗だし、二足歩行のウマ娘は競走馬のアーモンドアイように追突に悩まされることもない。成長した姿を考えると……本当に楽しみだ。

 

「スパート!」

 

「ッ!!!!」

 

反応もいい。

力強く踏み出される足。

人間には到底出せないような迫力のある音を響かせながらゴールを駆け抜けた。

 

「うん。問題なし」

 

タイムは良好。

今の段階を考えれば文句のつけようもない。

 

「トレーナー!どうだった?」

 

駆け寄ってきたアーモンドアイに記録用紙を見せる。劇的に良くなっているという訳ではないが、確実に成長しているのが感じられる成績だ。

 

「……うーん」

 

だというのに少し不満そう。

勝気だし向上心が強い。

何事も努力を欠かさないし、教官から聞いた話では成績も優秀。その教官が超までつけていたほど文武両道な子。

 

「アーモンドアイ。君は完璧主義すぎる」

 

「だって勝ちたいもの。どんな事にだって、わたしは負けたくないの」

 

「千里の道もってやつだ。君は世界を驚かすような存在になるけど、それでも地道に行くしかない。ゲームじゃないんだから簡単にレベルアップとか近道とかはできないよ」

 

「……そうね」

 

「それよりほら、見せて」

 

アーモンドアイをベンチに座らせてシューズを脱がせる。彼女は俺にシューズを渡す寸前、少し真顔になりながらとんでもないことを言い放った。

 

「……嗅がないでよ?」

 

「嗅ぐか!!」

 

揶揄ったのだろう。クスクスと笑うアーモンドアイからシューズを受け取り裏返す。

しっかりとつけられた蹄鉄を見る。やっぱり欧州で見ていたどの子よりも消耗速度が早い。

アーモンドアイの蹄鉄か……。

展示されているのを見たことあるな。

何枚も写真を撮ったものだ。

 

「トレーナー?」

 

「……今日、蹄鉄を見に行くからな。放課後は何か仕事を任されたりしないように。トレーナーに呼ばれてるって断っていいから」

 

「わかったわ」

 

思わず撫でてしまっていた蹄鉄から手を離し、アーモンドアイにシューズを返し、そのまま俺は地面にしゃがむ。

 

「爪も見るぞ」

 

「……こ、この瞬間はまだ慣れないわね」

 

「足はウマ娘の命だ。しっかりとケアしないと走れなくなるぞ?」

 

「わかってるけど……はぁ、これでいいかしら?」

 

競走馬のアーモンドアイは爪は想像できないほどに薄かったらしい。ウマ娘に蹄がある訳ではないけども爪が割れていないかとかをしっかりと見る。

史実のアーモンドアイについての記憶はもう何年も前のもので覚えていることは少ないけれど、それでも出来ることは全てやっていかなければならない。

例えばこんな状況になっても……。

 

「相変わらず見られてるわね」

 

「早い時間から練習していても、この時間になると流石にな……」

 

ウマ娘達から変な目で見られる事になったとしても、やらないといけないのだ。

……うん。問題なさそうだ。

むしろ俺が心配しすぎなぐらいだろう。

 

「爪のケアはしっかりな」

 

「えぇ、わかってるわ。勧められた食べ物もちゃんと食べてるし」

 

「必要な栄養素はしっかり摂っていくようにな」

 

まだデビューする前。

だからこそしっかりとしておきたい。

仕上げにステータスを見る。

スピードF+

スタミナG +

パワーF

根性F

賢さF

大体星四つより少し高いぐらいのステータスだな。

脚質は差し、先行型。

スキルは見れないこともないが、そこまでしたら頭が焼かれているかのような頭痛に襲われるからしない。現状大したスキルもないだろうし。末脚ぐらいはあるだろうけど。

アーモンドアイのステータスを見て毎回思うけど、変な因子継承とかしてなくて本当に良かった。

 

「さて、これからチームを組んでいる子達が集まってくるだろうし誰かに併走でも頼むか?」

 

「そうね。お願いしようかしら」

 

ストイックだなぁ。

さて、誰に頼む事にしようか……。

……流石にお前はねぇよルドルフ……こっち見るな。もうリギルの練習始まるんだからそっちに集中しなさい。

 

「あら。並走相手をお探しですか?ならば私と競い合いません?」

 

「……」

 

「……ぜひ!」

 

「……あ、ぁ。よろしく頼む」

 

「えぇ。こちらこそよろしくお願いしますわ」

 

声のした方を向けばジェンティルドンナ。

こちらもアーモンドアイと同じくデビュー前ではある。だがその溢れる気品とオーラが怪物のそれだ。

……一瞬呼吸が止まった気がするが、俺、生きてるよね?……あれか?前世の縁みたいな感じで牝馬三冠はまた別の牝馬三冠を呼ぶのか?あとアーモンドアイさん!?そんなにスイスイ提案に乗っていかないで!!

 

「い、胃が痛い……!」

 

沖田トレーナーにでも頼んでトプロと走ってもらうつもりだったのに!!だからルドルフ!さりげなく立候補してますって感じで手をあげるな!!

 

 

 

ジェンティルさんとの並走は多くのことを学べた。

デビュー前だというのにあの迫力のある走り……わたしにはできているだろうか?トレーナーは褒めてくれるけど、なんだかこう……何やっても肯定してくれそうなのだ。

 

「でも達成感はあるのよね」

 

しっかりと成長を感じれる。

わたしが一人だとできなかった事ができている。トレーナーと出会うとこれが普通になるのだろうか?

 

「今日も仲良しやったね」

 

「ん?あ、ララ」

 

ララ。

ラッキーライラックが話しかけてきた。

今日もって……やっぱりトレーナーに足を見られている時は注目されてるなぁ……最初は今よりも恥ずかしくてトレーナー室に行ってからでもいいんじゃない?って提案したのだけど断るし。

 

『もし歩行に異常があったら歩かせないけど、最悪抱えるがいいか?』

 

抱えられて学園を移動っていうのはハードルが高すぎる。というかトレーナーは心配しすぎなのよ。

 

「ほんで実際どうなん?あの人が色々と噂になったトレーナーさんなんやろ?」

 

「その色々な噂が今も増え続けている事以外はとてもいいと思うわ。実際、タイムも徐々に良くなっていってる」

 

「確かに色々と噂の絶えんヒトやなぁ。すこーし聞いただけでも信じられんものばっかりやったわ」

 

「アーイー!」

 

「あらまぁ、元気いっぱいな子が来はったわ」

 

大きな声をあげて教室に突撃してくるのはブラストワンピース。だがどうしてだろう?その元気いっぱいの声は焦っていて、机にぶつかりながら駆け寄ってくる姿に驚いた。

 

「ど、どうしたの?」

 

「なんや慌ただしいなぁ。ほら、深呼吸しぃ」

 

「そんな場合じゃないぞ!?聞いたぞアイ!アイのトレーナーさんがアイの足を食べようとしてるって!!」

 

「へ?」

 

「はぁ?」

 

「さっき聞いたんだぞ!?トレーナーさんが久々に焼肉食べたいって言いながら歩いていたって!アイの足食べられちゃうのか!?ヒトってあたたかくて優しいって思ってたのにあんなヒトが居るなんて思わなかったぞ!?」

 

「待って。本当に待ってちょうだい。一体どうしてそうなったの?その説明じゃ全然わからないのだけど……!」

 

「あのトレーナー……ものすごい誤解されてはるなぁ……」

 

「アイのことはブーが守るからなぁ!!」

 

あぁぁぁ……。

わたしのトレーナーの変な話ばっかりが学園内に広まっていく……!いや、そんなことを考えている暇はない。今は一刻も早く誤解を解かないと!

 

 

 

「なんて事があったのよ」

 

なんて言いつつ焼肉を食べるアーモンドアイ。

……え?学園内の俺ってそんなよくわからない変なやつになってるの?本気で不審者?

アーモンドアイが使うシューズや蹄鉄を見るために学園の外にやってきた俺たち。装蹄師の方と色々な話をして、後日アーモンドアイの蹄鉄をオーダーメイドで作る事になった。

だけどここで問題が一つ。

俺が話に必死になりすぎたせいで門限が近くなり、急遽たづなさんに連絡をして時間外の外出許可をもらう事に……。そしてついでだし、アーモンドアイも頑張ってるし、俺が焼肉食いたいしってことで焼肉に行く事になる。

そして聞かされた話がアーモンドアイの学校生活であったこと。……なんでそうなったのか説明を聞いても理解しきれなかったぞ?

 

「ウマ娘を食べるモンスターって……」

 

「他にもウマ娘のトモを見ている変態って思われてるわよ?」

 

「そんなストレートに言われると傷つく。まぁ、練習後のケアはやめるつもりはないけど」

 

「あんなに色々言われても?」

 

当たり前だろ?……はぁ、俺は怪我がないようにって見てるだけなのに。

でも実際、周りの視線は割とどうでもいいのだ。

無事之名馬なり。

 

「君には多くの偉業を達成してもらうつもりだ。けど第一に、アーモンドアイが無事にレースを終える。怪我なんて無縁な状態で走ってほしいからね」

 

輝かしい一着。G Ⅰの冠。

確かに魅力的だし、この世界のアーモンドアイが史実を超えてくれることは俺の願い。だけどそんなことよりも大事なのはアーモンドアイなのだ。

 

「君に怪我なんてさせない」

 

「そ、そう」

 

「無理してるってわかったら強制的にでも止めるから覚悟すること。それを踏まえた上で無茶するようにね?」

 

負けず嫌いのストイックウマ娘に釘を刺す。

目を逸らされるが関係ない。

こちとらステータスが見えるのだ。君の無茶は一瞬で見抜くし、ダメだと思えばすぐに力づくで止める。もしそうなれば俺の方が怪我するだろうけど……。

 

「ウマ娘思いなトレーナーでよかったって事にしておくわ」

 

「そうか」

 

「だからこれ頼んでいいかしら?」

 

「霜降りにんじん?何それ肉食え肉」

 

「すいませーん!」

 

「聞いてる?焼肉屋に来てまでにんじんなの?まぁいいけどさ」

 

色々と問題はあるが、ある程度は打ち解けてきたのだろうか?育てていたハラミを食べる。うまっ。

ガツガツと白米を食べてふと視線を感じ、アーモンドアイの方へと向く。

 

「な、なんだ?」

 

「ふと思ったのだけど、トレーナーってわたしのことをアーモンドアイとか君って呼ぶわよね?」

 

「そうか?」

 

そうかも?

 

「アイでいいわよ?もうトレーナーとその担当ウマ娘って仲なんだし。それにずっと他人行儀な気がして少し寂しいわ」

 

「……ほら、肉食えアイ」

 

「!ええ、じゃあそのカルビを」

 

「カロリー過多になるからダメ」

 

「トレーナーは食べてるのに!?」

 

少しだけ気恥ずかしいのを誤魔化した。

だがフルネームや君なんて呼び方じゃなくアイと言ってからはどこか嬉しそう。ステータスを見なくても調子が少しだけ上がったのが分かるほどだ。

 

「霜降りにんじんくるだろ?それ食ってデザート食べたら帰るぞ。……デザート無しならカルビは食ってよし」

 

「どれにしようかな。ねぇ、トレーナー。この季節限定フェアのやつ少しだけ分けてもらえないかしら?」

 

肉より甘味だったらしい。

……明日のメニューは少しだけキツくしよう。

一部の例外を除いてゲームのように一ターンで太り気味になる訳ではない。

だがなられたら厄介だからな。

この世界では保健室で休んで不調が治るなんてことはほとんどないのだ。多少の体調不良なら治るけどね。

 

「明日は坂路コースな」

 

「えぇ、わかったわ」

 

今回は急遽決まった二人での食事だったが、多少は距離が縮まったらしい。俺も少しは話しやすくなってきたし、アーモンドアイ……アイの方も遠慮というものがなくなってきた。これならコミュニケーションを取りながら過酷な道を一緒に走っていけるだろう。

まずはデビュー。

お互い無事に、そこを通過していこうな。




俺の中のクロノジェネシスが「今週のメインは荒れますよ」って言ってます。
ですので明日は予想に忙しいので更新しないと思います。
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