最終回の倉庫でキラとニアのゾンビ籠城ライフ 作:ルーシー統括主任
Episode.if 新世界の終焉-バカヤロウの誤射
キャンプにYB倉庫メンバーが移ってからちょうど1年が経ったこの日、コテージの庭では賑やかなBBQが繰り広げられていた。
木々の間に吊るされたランタンが暖かな光を投げかけ、テーブルには焼き肉や野菜が並ぶ。この1年でSPKと捜査本部のメンバーはパトロール資格を取得し、拳銃を携行する許可を得ていた。ゾンビの脅威が続く中、彼らはキャンプの秩序を守る重要な役割を担っていた。
松田は肉を焼きながら笑顔で騒ぐ。
「いやぁ、1年かぁ!ゾンビだらけの世界でよく生き延びたよな!月くんとミサ、そしてキラのおかげでキャンプも安定してきたし!」
相沢が渋い顔で串を手に持つ。
「そうだな。だが、油断するなよ。ゾンビはいつ出てくるかわからん。」
茂木がビールを飲みながら頷く。
「統制は確かに効いてる。キラ…いや、月がいるからだな。」
ミサは月の隣で目を輝かせ、彼に寄り添う。
「月がいるから私たちみんな生きてられるんだよ!ねえ、月!」
月は穏やかに微笑み、ミサの頭を撫でた。
「ありがとう、ミサ。皆が協力してくれたからだよ。」
(駒としてよく働いてくれる。感謝はしてるよ、表面的にはね。)
ハルは少し離れた椅子に座り、静かに肉を食べるが、どこか複雑な表情を浮かべている。SPKのレスターとジェバンニはニアの近くに立ち、彼を見守る。
ニアは無言で、ただ皿の上の野菜を弄んでいる。
その時、地面が微かに揺れた。誰もが一瞬動きを止め、顔を見合わせる。
「何だ…?」
茂木が呟いた瞬間、コテージの庭に隣接するマンホールから異様な唸り声が響き、蓋が勢いよく吹き飛んだ。数十人規模のゾンビが一斉に這い出し、腐った肉と血の臭いが風に乗り広がる。
「うわっ!ゾンビだ!」
松田が叫び、テーブルがひっくり返る。ミサが悲鳴を上げ、月にしがみついた。
「月!どうしよう!」
月は冷静に立ち上がり、声を張る。
「皆、落ち着け!パトロール資格者は市民を誘導しろ!俺が指示を出す!」
(統制さえ保てば、この程度どうにでもなる。)
最初は訓練通りに動けた。相沢が拳銃を構え、ゾンビの頭を正確に撃ち抜く。茂木とレスターが市民を各コテージ内に誘導し、ハルがゾンビの進路を塞ぐ。月は中央で指示を出し、混乱を最小限に抑えていた。だが、松田が異変を起こす。
「うわぁぁ!多すぎる!どうすればいいんだよぉ!」
彼の手が震え、拳銃を握ったままパニックに陥った。その瞬間、松田の指が引き金を引いてしまい、銃口が月へと向く。
バンッ!
銃声が響き、月の左肩に弾が命中した。彼はよろめき、血がシャツを染める。
「馬鹿野郎ぉぉ!!松田、誰を撃ってる!!ふざけるなぁぁ!!」
月の声は怒りに満ち、松田を睨みつけた。
「え!?月くん!?ごめん!俺、わざとじゃ…!」
松田の顔が真っ青になり、周囲が凍りつく。
「松田!何やってるんだ!」
相沢が叫び、茂木が慌てて松田に駆け寄る。
「お前、正気か!?月を撃つなんて!」
ミサが泣き叫び、月の肩に手を当てる。
「月!大丈夫!?血が…!」
ハルが目を大きく見開き、動揺を隠せない。
「松田…何!?どうして…!」
レスターとハルはゾンビ対応に追われつつ、混乱する状況を横目で見る。ニアは依然として無言、ただ静かにその光景を見つめていた。
だが、松田のパニックは止まらない。彼の手がさらに震え、立て続けに3発の銃弾が月へと放たれた。
バンッ!バンッ!バンッ!
1発が腹部、2発が肩に命中し、月が膝をつく。血が地面に広がり、彼は苦悶の表情で叫んだ。
「んん...くそ...!!なんだこれは...。魅上ぃ。何してる...!!書け!!こいつらを、殺せ!!...。ミサはどうした....。高田はぁ!!だ...誰か...。一体どうすれば...。」
月の声は途切れがちで、血を吐きながら地面に倒れ込む。
「月ぉぉ!」
ミサが彼に駆け寄り、泣きながら抱きしめた。
「やめて!月が死んじゃうよ!」
魅上は呆然と立ち尽くし崇拝していた存在が悶える瞬間を見つめる。
「神…!」
彼の声は震え、何もできないまま混乱していた。
松田は銃を落とし、地面にへたり込む。
「俺…俺、月くんを…撃っちゃった…!どうしよう…!」
相沢が松田の襟首を掴み、怒鳴りつけた。
「松田!お前、何てことを!月くんが死んだらこのキャンプはどうなるんだ!」
茂木がゾンビを撃ちながら叫ぶ。
「皆、落ち着け!ゾンビがまだいる!月くんは…なんとかしろ!」
ハルが月の側に駆け寄り、応急処置を試みるが、手が震えて止まらない。
「月…しっかりして!こんなところで…!」
レスターがゾンビを仕留めながら呟く。
「ニア…どうするんだよ、この状況…!」
ハルが頷き、ニアに視線を向けるが、彼は依然として無言。ゾンビの唸り声と銃声の中で、ただ静かに見つめていた。
リュークは空中で哄笑し、リンゴを放り投げる。
「クックック!月、やられたねえ!松田に撃たれるなんて、最高のオチだよ。お前が新世界の神になる前に終わっちゃうのか?いやぁ、面白い!」
彼の赤い瞳が輝き、楽しそうに月を見下ろす。そして、リュークは突然動きを止め、懐からデスノートを取り出した。
「なぁ、月。お前、もう十分楽しませてくれたよ。新世界の神になる前に、俺が終わらせてやる。」
ペンを手に持つと、素早く「夜神月」と書き込む。
「40秒後だよ、月。心臓麻痺でさよならだ。」
月の体が一瞬硬直し、彼の目が見開かれる。血だまりの中で胸を押さえ、苦しげに喘ぐ。
「リューク…お前…!」
そして、40秒が経過した瞬間、月の心臓が止まり、彼の体が完全に動かなくなった。
ゾンビの数は減りつつあったが、キャンプは混乱の極みに達していた。そして、月が動かなくなった直後、レスターがニアの側に近づき、静かに呟いた。
「ニア...。終わりましたね。」
ニアは初めて口を開き、短く答えた。
「はい...。」
彼の声は小さく、感情のない響きだった。庭には血と煙が漂い、BBQの残骸が散乱する中、夜神月の「新世界の神」としての夢は、松田の誤射とリュークのデスノートによって終わりを迎えたのだった。