最終回の倉庫でキラとニアのゾンビ籠城ライフ 作:ルーシー統括主任
YB倉庫での籠城生活が続き、物資の発見から数日が経った。松田は落ち込む日々を過ごしていたが、ある日、ハル・リドナーがシャワーを浴びる時間を見計らい、再びカーテンの隙間を覗く日課を始めた。彼女がシャワーを終えると、案の定、鋭い叫び声が響いた。
「松田!またお前か!いい加減にしろ!」
ハル・リドナーがタオルを手に持って飛び出し、松田を睨みつけた。
「ご、ごめん!つい癖で…!」
松田は慌てて後退し、頭を下げたが、ハル・リドナーは容赦なく近くのバケツを投げつけた。
「癖なら治せ!次やったら本当に許さないから!」
その騒ぎに、相沢が顔をしかめて近づいた。
「松田、お前まだやってるのか?ゾンビよりお前が問題だよ。」
「悪気はないんだって!ただ…誘惑で気になって…」
「気にするな!」と相沢が一喝し、松田は肩を落とした。
一方、夜神月はベッドに座り、このやり取りを冷ややかに見ていた。
「松田らしい。無駄な行動ばかりだ。」
彼の隣にいた魅上照が呟いた。
「キラ様の前でこんな下品な行為を…許せません。」
「放っておけばいいさ」と夜神月は淡々と返した。
ニアは倉庫の片隅で、SPKのレシャーとジョバンニに指示を出していた。
「夜神月が自身をキラだと認めた以上、彼を自由にしておくのは危険だ。簡易的な牢獄を作ろう。」
レスターが眉をひそめた。
「牢獄?物資はあるけど、そんなスペースあるのか?」
「倉庫の奥に使ってない部屋がある。あそこを鉄パイプと板で囲えば十分だ」とニアが冷静に答えた。
ジェバンニが頷きつつ言った。
「確かにその方が安全だ。だが、彼が協力的な今、急ぐ必要はあるか?」
「キラはキラだ。油断はできない」とニアが断言した。
この会話を耳にした夜神月が立ち上がり、近づいてきた。
「牢獄か、ニア。僕を閉じ込めて何になる?外はゾンビの世界だよ。」
「あなたの罪が消えるわけじゃない。裁きは必要です。」とニアが冷たく返した。
「裁きか…生き残りが何人いるかも分からないのに?」
「正義は人数で決まるものじゃないですよ。夜神月。」とニアが言い切り、夜神月は苦笑した。
「相変わらずだね、君は。」
松田が遠くから聞き耳を立て、「この状況で月くんを牢屋に?それは…ちょっと可哀想じゃない?」と呟いたが、誰も相手にしなかった。
ある日、夜神月と魅上照、そして見張りのニアとジェバンニ以外のメンバーで床下の物資の整理、運搬を行っていた。松田が物資の整理を手伝っていた時、倉庫にあった2冊のデスノートのうち1冊を間違えて手に持ったまま地下倉庫へ向かった。しかし、奥で缶詰を整理している間に足を滑らせ、デスノートを物資の山の奥に落としてしまった。彼は「あれ?なにか落とした?」と呟いたが、気にせず戻ってきてしまった。
その後、レスターがデスノートを確認しようとして異変に気づいた。
「ニア、デスノートが1冊しかないぞ。残り1冊はどこにあるんだ?」
ニアが眉をひそめ、夜神月に目を向けた。
「夜神月、あなたが何かしたのか?」
「僕だってずっとここにいるよ。隠す時間なんてない」と夜神月が肩をすくめた。
魅上照が慌てて立ち上がり、「キラ様がそんなことをするはずない!」と叫んだ。
「じゃあどこに行ったんだ?」とレスターが苛立った声で尋ねた。
松田が首をかしげ、「なにかあったんですか?」と呟いた。
数日後のとある日ハル・リドナーは夜神月の傷心した姿にますます惹かれていた。ある夜、彼女は彼のベッドのそばに座り、小声で話しかけた。
「夜神月、あなたがキラでも、私には関係ないよ。もう戦う気がないなら…そばにいてもいいよね?」
夜神月は驚いて彼女を見た。
「リドナー。お前、何だその考えは?僕に何を期待してるんだ?」
「期待じゃない。ただ、あなたのそんな顔見てると放っておけないだけ。それと、ハルって呼んで。」と彼女が微笑んだ。
夜神月は一瞬言葉を失ったが、傷ついた心を癒すためか、彼女の言葉を受け入れた。
「…好きにすればいいさ。僕にはもう何も残ってない。」
「それでいいよ」とハルリドナーが優しく返し、彼の肩に手を置いた。
その様子を遠くから見た松田が、「何!?ハル・リドナーが月くんとそんな仲に!?」と驚いたが、すぐに相沢に「いいから黙れ」と一喝された。
ジェバンニはラジオに取り憑かれたように、毎日ノイズ混じりの放送を聞き続けていた。ある日、彼が興奮して皆に報告した。
「新しい放送だ!生存者が東に集まってるらしい!」
レスターが近づいて尋ねた。
「本当か?どの辺だ?」
「ノイズでよく聞こえないけど…希望はあるかも」とジェバンニが目を輝かせた。
ニアが冷静に割って入り、「情報が曖昧だ。焦って行動を急ぐのは危険です。」と警告した。
「でも、何もしないよりマシじゃないか?」とレスターが反論した。
「確かに…でも証拠が欲しい」とジェバンニがラジオをいじり続けた。
夜神月は遠くから聞き、「生存者か…興味深いね」と呟いたが、行動する気はなかった。
ニアの指示で、倉庫の奥に簡易牢獄が完成した。鉄パイプと板で囲まれた小さな部屋。ニアが夜神月に近づき、言った。
「夜神月、ここに入ってください。我々の安全を担保するためです。キラとしての危険を排除します。」
「随分と急ぐんだね、ニア。ゾンビが先じゃないのか?」と夜神月が皮肉を込めて返した。
「ゾンビは外の脅威だが、あなたは内の脅威です」とニアが冷たく言い切った。
ハル・リドナーが反対した。
「待って、ニア!彼はもう戦う気がないのよ。こんなことする必要ある?」
「感情で判断しないでください。彼はキラで、ただの大量殺人鬼です。」とニアが静かに諭した。
夜神月はため息をつき、「いいよ、入るさ。どうせ何も変わらない」と自ら牢獄へ入った。
魅上照が叫んだ。「キラ様を閉じ込めるなんて許せない!」
「黙れ、魅上!」とレスターが一蹴した。
その夜、松田のシャワー覗きは止まらず、再びハル・リドナーの入浴中に隙間を覗いた。彼女の叫び声が響いた。
「松田!何度言えば分かるんだ!?」
「ごめん、ハルちゃん!つい…!」
彼女はタオルを手に持って飛び出し、松田に缶詰を投げつけた。
「次やったらゾンビの餌にしてやる!」
相沢が呆れ顔で言った。
「お前、本当に学習しないな。」
「だって…つい目が…」と松田が言い訳したが、誰も同情しなかった。
夜神月は牢獄の中で聞き、「松田のバカ。」と呟いた。
夜神月が牢獄に入った後も、ハル・リドナーは彼に近づき続けた。鉄格子の間から話しかけた。
「夜神月、閉じ込められてても、私には関係ないよ。そばにいるから。」
「お前、、、いや、ハル…君は本当に奇妙だ。キラに何を見てるんだ?」と夜神月が尋ねた。
「キラじゃないよ。傷ついた人間としてのあなた」と彼女が優しく返した。
夜神月は心が揺れる気がした。
そして彼女の手を握り返した。
「…ありがとう、ハル。少しだけ気が楽になるよ。」
「それでいい」と彼女が微笑んだ。
魅上照がその光景を見て、「キラ様が…あんな女と…?」と呟いたが、口を噤んだ。
デスノートの紛失が気になり、レスターが地下倉庫を再確認した。そして、物資の奥に落ちている1冊を発見した。
「あったぞ!これだ!」
ニアが近づき、「どうしてここに?」と尋ねた。
松田が慌てて言った。
「あ!!えっと…俺、整理してた時に落としたかも…」
「お前か!」とレスターが怒鳴り、相沢がため息をついた。
「松田、お前本当に何もできないな。」
「わざとじゃないんですよぉ!」と松田が弁解したが、誰も聞かなかった。
ニアがデスノートを手にし、「これで夜神月の罪を再確認できる」と呟いた。