機動戦士Gundam GQuuuuuuX-AL1S開発部だいぼうけん! 作:邪竜神デスドラグーン
人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって既に半世紀が過ぎていた。
ジオン独立戦争は多くの死者を出したが、それ以上の居住空間が失われ、大量の難民が発生した。
サイド6は、不法移民を認めなかった。彼らには権利も保障も与えられない。
まず住所が無ければ真っ当な雇用契約は結べない。それが無ければ、通信回線も契約できないし社会保障番号も申請できない。かといって連絡先も社会番号も無ければ住居契約は認められない。詰んでいる。
確かな技術、実績とコネを持ってくる正規の移住者以外は要らないし、それ以外がいてもらっては困る。コロニーの資源は有限で、市民として受け入れられる人数には限界があるのだから。
これがサイド6の――いや、宇宙全体の基本姿勢と言える。
「でも締め付ける一方では、いつか爆発してしまうものです」
そこまで説明してから、ユウカはスマホを操作してミレニアムの公式サイトを開いて見せる。
短期教養プログラムの案内。
「難民向けの特別コースだな」と、シャーレの先生が頷く。
「はい。一時的に学生としての身分を与え、寮や部室を住所登録させて社会参画を促す試みです」
「学生服が、移住労働者の
「そう、ですね」
「私たちは働いてないよ?」
「奨学金と部費で暮らしてきたね」
「あなたたち以外はほとんどみんな外の企業で働いてるか、働き口を探しまわってるところなのよ。こっちの新造棟の生徒は。公的住所と学生証があるうちに生活を安定させようとしているの」
それは教育の建前での移民選別制とも言える。テストに合格したものを市民として扱う窓口。
難民枠のユズが設立したゲーム開発部は、元々短期間だけの存在だった。ユズは1年だけで卒業するか、もしくは卒業できずに退学なのだから。
覆せるのは相応の成果だけだ。ガンダリウム合金の生産改善でミレニアムプライスを取った新素材開発部のような、圧倒的な実績が要る。ごく少数の成功者、最先端と認められた技術の持ち主だけが難民枠からの一般編入を許される。
「だっていうのに、あなたたちは今まで何をやってきたの?」
「なにってゲーム開発だよ! ゲーム開発部だもん!」
モモイの抗弁に、ユウカは目を細めて斜めに見つめ返す。
「ふーん。勝手に作った巨大地下室に人を集めて踊らせるのがゲーム開発なの?」
「うっ」
「急にアイドル活動なんてやり始めて、鳴かず飛ばずであっという間に引退したり」
「それは」
「ソシャゲに影響された勢いで無許可でコーヒーショップ始めちゃったり」
「ぐぐっ」
「挙句に地下室は崩落して怪我人まで出ちゃって」
「ぐぇー」
「それは……ひどいな」
先生もこれには渋い顔で俯いた。
「そう! ひどいんです! 変なことばっかりして、ぜんぜんゲーム部として活動していないんですよ」
「私がキャラデザ出しても、お姉ちゃんがピンと来ないとか言ってシナリオ書かないから」
「や、ミニゲームとかはちょくちょく出してたよ! 地味かもしれないけど、市場の反応を見るちゃんとした活動で」
「とにかく!」
ユウカは座ったまま前のめりになって、二人に目線を合わせる。最初にモモイを。次にミドリをじっと見つめて、それから部屋の隅に視線が行く。
「ゲーム開発部は解散になるわ。早く今後の生活の備えをすることね」
「でも、それじゃユズは」
「モモイとミドリとで、改めてゲーム同好会でも立ち上げることね。ちゃんとした活動を続けていけば部活として認められる見込みもあるし、元学生ってことならユズの学外参加もきっと許されるはずよ」
「部費も部室も無くなっちゃうじゃん!」
「だから今後のための備えを早く始めなさいって言ってきたのよ」
そう言ってユウカはバッグから大量の資料を取り出した。カラフルなチラシ、リーフレットにパンフレット。厚みのある封筒。何かの申請書類。
「うちに通いながら就職した先輩の事例紹介とか、相談会とか合同説明会の案内ね。生活相談の窓口は予約システムが更新されたからその資料も。このへんユズちゃんに見せておいて。あとそれからこっちは同好会活動に関する誓約書と……」
「要らない」
モモイはそれをまとめて突き返した。
「ちょっと、お姉ちゃ――」
片手でミドリを制し、次いでその手でユウカに指を突き付ける。
「全部結果で示す。そのための準備だってできてるんだから」
「準備できてた!?」
「ミドリは知ってるじゃん。ちょっと問題があるだけで、計画はできてたでしょ。
私たちには切り札があるっ。ミレニアムプライスで優勝すれば文句ないよね?」
ミレニアムプライス。学内団体が成果物を出して競い合うミレニアム最大のイベント。部活だけじゃない、学内の研究室も、大規模な産学連携プロジェクトだって参加してくる。
そこで最優秀に選ばれたなら、それはもちろん文句は無いだろう。けれどゲーム部が優勝を目指すなんて、戦ったことのない民間人がいきなり赤い彗星に挑むようなものだ。
「超合金がなんだ。Iフィールド間衝突解析とかサイコサブフライトシステムとか、全然楽しくない! いつまで戦争してるつもりなの。
未来を考えさせる営み。我々がいま居る場所を知り、進む先を選ぶための道しるべ。ミレニアムプライスの設立理念が言ってるの、ぜったいゲームの方がいい!」
「……分かった、じゃあそれまでは待ってもいいわ」
「ほんと!?」「ほんと!?」
「ええ」
ユウカは感情を表に出さないよう、つとめて平静を装って言った。
随分前に話したことを、モモイが覚えていたとは思わないけれど。今のアカデミアが実学に――軍事に寄りすぎているのは確かなのだろう。ゲーム開発部の無邪気さが、そうした空気を少しでも和らげてくれたらと、そんなことを昔祈ったのを思い出して。
「優勝まで行かなくても、入賞できれば十分な実績になるでしょう。最後のチャンスだと思って頑張りなさい」
ただし、ミレニアムプライスがダメだったらいい加減切り替えること。そう何度か念を押してユウカは去っていった。