うんめいぎつね   作:マイケル行ける

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竜のいる国Ⅲ:ドラゴン(過半数)カルテット

 

近くの町へ向かい始めた歩。

 

「♪〜」

 

そんな彼の手を引いて嬉しそうに歩く清姫。ジャネットの家を出てから少ししたところ彼女がサーヴァントであると判明。

 

歩は自らと同年代かそれよりも下であろう彼女がまさか何かを成し遂げた人物だと驚いたと同時に尊敬も抱いた。

 

彼の中のサーヴァント像は特異点で出会ったクー・フーリン、そしてマシュ・キリエライトがその大半を埋め尽くしていた。

 

更に彼女に嘘は絶対につかないようにって念を押された為裁判官的な法律関係の英霊なのかもしれないと推測したのだが

 

ボウッ!

 

飛び掛かってきたワイバーンに向けて彼女は扇子を振り炎を放ちそのまま退けた。それを見た歩は目を見開き、他にどんな事ができるのかを質問する。

 

「へぇ~走るのが得意なんだ」

 

「得意と言うよりは…自信があります」

 

「自信?」

 

「ええ、あなた様がどこへ行こうとも追いつく自信が」

 

「凄いね」

 

(やっぱり法律関係か?)

 

健脚で炎を出す目の前の少女は生前一体どの様な事を成し遂げたのだろうか。

 

(気になる……)

 

興味は加速する。頭がそれ一色になってしま程に。彼女はその事を愛で察知し

 

(あなた様…わたくしの事で頭がいっぱいになっていらっしゃるのですね……これは両想い!)

 

愛が加速していた。

 

「あの」

 

結局頭で考えたことはどこまで行っても推測止まりと言うことで失礼を承知で

 

「清姫ちゃんって何やった人?」

 

そう尋ねた。

 

本人に聞くのが一番手っ取り早いのはそうなのだが、もしもこれが自らの行いに誇りのあるサーヴァントであれば雰囲気が悪くなってしまっただろう。

 

だが、そんな彼の言葉に

 

「……存じ上げないのなら…それで良いのです…また共に紡いでいきましょう」

 

「オッケー?」

 

表情はわからなかったが少し声色が暗いように聞こえた。

 

別に本人が言いたくないのならそれで良いと思ったのだが、何か嫌な予感がする。

 

モヤモヤを残しながら道を往く。

 

「そういえば良くフランスの道が分かるよね」

 

話を変えるために別の疑問をぶつける。歩が中心付近の街を目指そうと言うと清姫が自信満々に

 

「となるとここからはラ・シャリテが良いでしょう、あなた様お手を」

 

「おお」

 

その自信満々っぷりに歩も手を差し出すことに何も疑問を覚えなかったのだ。

 

(ラ・シャリテだっけ?すごいよね俺なんて今自分がどこにいるかもわかんないのに)

 

彼は同じ日本出身なのにと少し恥ずかしくなった。

 

「はい、聖杯からその辺りの知識を得てますから」

 

「凄いな…聖杯って」

 

願いを叶えるだけじゃなくてそういうサービスもしてくれるなんて手厚いにも程があると歩は聖杯に感服した。

 

「……愛する殿方をお導きたいという想いによるものでもあります」

 

聖杯に張り合うかのように囁いた。

 

「凄いな…愛って」

 

歩は自らの手を引く少女がサーヴァントであるという事に安心していた。自分の弱さが少女から愛する人を奪ったわけじゃないのだと。

 

だけどこのまま歩いていけば、自ずと弱さが招いたモノが見えてきてしまうのは解っていた。

 

それでも足が重くならないのは前を歩いてくれる人がいるからだろうか。

 

ピタッ

 

「ぐえっ」

 

「………」

 

「どうしたの…?突然止まったら危なぃ…」

 

の言葉は尻すぼみになっていった。抗議のために彼女と同じ方向を見たところ、1人の男がそこに佇んでいた。

 

歩は思わず唾を飲み込んだ。

 

伸びた髪、褐色の肌、身を包む鎧、大きな剣。そのどれもが目を引いた。だが真に凄まじいのはその鍛え上げられた躰。一目で格の違いがわかった。

 

「……あの方はサーヴァントです」

 

「……あぁ…だろうね

 

寧ろあれがサーヴァントでないのならなんと言うのだ。

 

「迂回しましょう」

 

その声は震えていた、もしも男が敵対者だとしたら勝ち目は限りなく0だ。今の歩は知る由もないことなのだが清姫自身の特性も相まって尚の事震えてしまっているのだろう。

 

「…ごめん俺は少しあの人と話してみるよ、清姫ちゃんは隠れてて」

 

藤丸達が来てくれかもわからない、来たとして竜の大群をかき分けジャンヌ・ダルクにたどり着かなければいけない。その為にも戦力はあればあるだけ欲しい、男がサーヴァントというのなら尚更。

 

敵だとしても清姫をここで待たせておけば情報を得る事ができる。

 

(後に繋げる戦いをしなくちゃならない段階だ)

 

少しでも戦力になる可能性がある行為はなんでもやる。そんな思いを胸に歩は男に向かって歩いていく。

 

「………」

 

少し近づけば男は歩が向かってきていることに気がついた。男は何か用かと声を尋ねようとしたがただ黙って歩を待つ。敵意が無い事、歩の表情が覚悟を持った自らが動く事を決めた漢の顔をしていたからだ。

 

向かう者と待つ者が双方明確にお互いを認識しているのなら本来静寂はあり得ない。だが男2人、その間には沈黙が転がっている。

 

「「………」」

 

やがて歩は男の目の前に辿り着き、近くの木に片手を付き寄りかかると沈黙を破った。

 

「さ…最近調子はどうよ?」

 

「……」

 

再び、沈黙が帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…本当にすみません…緊張しすぎちゃって」

 

同じクラスで仲良かった相手が違うクラスになってしばらく経って廊下で偶然対面しちゃった時のテンションは万能ではなかった!

 

「気にしなくて良い、俺も話すのはあまり得意じゃない」

 

こちらを気遣うような目でフォローされてしまった。

 

「っすぅ…」

 

俺は乾いた雑巾を絞ったような返事しかできなかった。

 

かっこいい剣持ってて人もできててムキムキで高身長でかっこいい剣を持っている……俺は俺が情けなくなってきた。

 

「君は俺に用があるんだろう」

 

2つの目が俺を見下ろす。その目を見た瞬間1つの言葉が脳裏を過った。

 

『芯の無いものが、王の前に立つな』

 

その時の俺は何が芯だ、こちとら変身じゃい!って言い返したが、そっかこれが芯か。

 

『ぁ?…あ……お前ッ!おまえぇっ!』

 

俺はその目から目線を外そうと

 

「あなたの手を…借りたい」

 

する前に口が勝手に動いた。

 

「………」

 

その目は更に俺を深く見ていた。

 

「……今、この国は竜の魔女と呼ばれる者によって王が殺され町には竜が溢れて……俺に想いを託して死んでいった兵士もいたんだ…」

 

「……」

 

「だけど俺じゃ届かなかった、届いたと思い込んでみすみす手からこぼした、怒りに任せて竜の魔女に挑んで…何も成せなかった」

 

『あなたがあの……どうかお願いします…あの娘が苦しんでいれば……いつでもここに帰っておいでとお伝えしてもらえませんか』

 

「だけどまた俺は1つ託されました、性懲りもないと笑われてもおかしくない……それでも……」

 

歩き続ける。百回だって、どんな道だろうと関係ない。

 

深く頭を下げフランスの地面と見つめ合う。

 

「俺は百道歩、俺にあなたの力を貸してください」

 

地面と俺の間に銀が差し込まれる。

 

「ジークフリート、クラスはセイバー……竜殺しとして君と共に戦おう」

 

「ありがとうございます!!」

 

うおぉー!鎧の感触凄いぜ!聞いた?ジークフリートだって!どっかで聞いたことあるし、竜殺しだってーそれってさ、最強ってことじゃんっ!

 

「ジークフリートさんはどこに行こうとしてたんですか?俺たちはラ・シャリテってところを目指してて」

 

「どうやら目的地は同じだったようだな」

 

「おぉ~!」

 

運命を感じるわ。

 

「アルク、すまないが俺のことはセイバーと呼んでくれ」

 

サーヴァントによっては弱点がバレてしまうから隠さないといけないんだっけ。

 

「わかりました!セイバーさん!あ、もう1人…同行者…友達…?がいて…あそこら辺で待っててって言ったんで呼んできますね!」

 

清姫ちゃんビックリするかなぁ。でも俺が斬られてないからわかっちゃうか。

 

「あぁそう…か?」

 

「どうしました?」

 

何故か歯切れの悪い返事。

 

「その友人と言うのは…女性で和服を着ているか?」

 

「そうですぜ、あれ…もしかして知り合い…なわけないか……なんでわかったんです?」

ジークフリートさんって探知系の能力を持っているのか…?

 

「…君にしがみついている」

 

「え…?」

 

シャー!……わたくし達…友達なのですか…?あなた様…

 

首だけを動かしたら見えてはいけないもの感を漂わせた清姫ちゃんが確かにそこ(背中)に居た。

 

「…あら、清姫ちゃんはカワイイんだからもっと可愛らしく威嚇しなくちゃ駄目だよ」

 

「そんな…急に可愛いだなんて……しゃー♡

 

「そうそうそんな感じ、この娘が同行者の清姫ちゃんです」

 

「慣れている様だな」

 

フルフル

 

「怖いが何処かに行っちゃった…」

 

俺の恐怖心、誰か見ませんでしたか。見つけてくれたら半分あげます。きっと1人じゃ抱えきれないから。

 

「そうか…」

 

出会ってから一番優しい目をしていた。

 

 

 

「……背中に乗ってたのに…気がつけない俺って…」

 

不甲斐なさに溜息を1つ落とした。これが仲間であったから良かったものの、敵のサーヴァントであった場合溜息ではなく命を落とす事になっていただろう。

 

もっとも彼が気が付けないのも無理はない。相手が悪いにも程がある。

 

なにせ彼女は人類史でもトップクラスのストーカーだったのだから。そのお手前はジークフリートですら彼が後ろを向くまでは気がつけなかった程。

 

「そう気を落とすな、俺も背中はあまり得意ではないんだ」

 

「フォローありがとうございます…」

 

「むぅ…あなた様…あまり他の方ばかり構っていたら…わたくしおかしくなってしまいます」

 

頬を膨らませ拗ねたように、脅すような言葉。

 

「構ってって…こうやっておんぶしてるじゃん」

 

「その……精神的な物も…欲しいと言いますか…」

 

どうやら気に入ってしまったようで背負ったままラ・シャリテに向かう事にした。不思議と重さは感じなかった為、肉体的にはそう苦ではなかった。

 

(そういえば…こんなふうにお母さんがおぶってくれてる写真あったよな)

 

あの写真に写っていた母の身長は今の自分よりも大きかったのだろうか。記憶には無い過去に思いを馳せ歩いていく。

 

ラ・シャリテまで遂にもう少しというところで

 

「んんぅ…」

 

草原で丸まって眠る姿を見つけた。特筆する点は髪の色だろうか派手派手しいピンクと赤の中間色をした髪色。草原では待ち合わせ場所にすらなれるだろう。

 

「…あの娘は…」

 

「気配と格好からサーヴァントでしょう」

 

「……微弱な竜の気配を感じるが…」

 

起こさないように小さめの声で臨時会議を行う3人。

 

「……あまり戦力になるとは思えないので無視で良いでしょう」

 

触らぬ竜になんとやらと言ったところだろうか。

 

「サーヴァントとはいえあのままにしてたら危なくない?」

 

「ああ、良いサーヴァントならまだしも…人を襲う可能性があるなら放ってはおけないな」

 

もしかしたら人を襲うかもしれないし、竜に襲われるかもしれない。

 

「ならば…寝込みを…」

 

「いやぁ…仮面ライダー的にそれは…」

 

「騎士としては正々堂々…」

 

話は平行線になるかと思われたが

 

「ねぇ、そこの男2人は別にいいんだけどさっきからアンタ1人だけ殺意高くない?」

 

上半身を起こして不満気な表情を浮かべていた。きっとここからが正念場だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい!新メンバーのベトちゃんでーす、よろしく〜!」

 

「…あだ名つけるにしても普通エリちゃんとかにしない?」

 

話は早く終わった。どうやらジャンヌ・ダルクが新メンバー…エリザベートに因縁のある者を召喚したようでそれを倒す為に行動する為に行動していたとの事。

 

ならば一緒に行動しようぜ、その方がタイマン張れると歩が交渉。その因縁のある者には彼女以外手を出さないという条件で見事勝ち取る。

 

「あなた様ぁ…わたくし1人では満足できないということでしょうか…」

 

「……ジャンヌ・ダルクだけならまだしも…他にもサーヴァントがいるなら戦力的には満足できないんだ」

 

敵の情報が全く得られていない。味方が多くて困ることは無い。

 

「…むぅ」

 

いじけてはいるものの背中から降りる様子は見られなかった。

 

「あらアルク、アンタめんどくさそうなのに目をつけられちゃってるのね、言ってくれればソイツそこら辺に縫いつけてきてあげるわよ」

 

そう言う彼女の目に含まれているのは歩への少しの同情と清姫への嘲笑い。

 

「うふふ、所詮は愛を知らない蜥蜴風情の戯言…いえ、蜥蜴には番がおりますもの…蜥蜴に失礼でしたわね」

 

「駄目だよ、悪口は」

 

そう嗜めるも言われた側は黙っていられない。

 

「はぁ?アンタのそれは最早愛じゃなくて発情じゃない、今度は蛇じゃなくて兎にでも変わったら?」

 

「悪口は駄目だよ」

 

「…へぇ…そんなに丸焦げになりたいのなら素直に言ってくだされば良いのに」

 

するりと歩の背から降りると扇子を構える。

 

「アンタこそ殺されたいなら早く言ってくれれば良かったのに」

 

負けじと槍の切っ先を清姫に向けるエリザベート。

 

「喧嘩に武器は不味いよ!」

 

そう言いながらもデザイアドライバーをちゃっかり巻いている歩。

 

「三人共街がもう近い、すまないが今は矛を収めてくれ」

 

天下の竜殺しには流石の2人も収めるものを収めるしかない。

 

「ほら、清姫ちゃんカムバック」

 

彼女が乗り込みやすいように少し屈む。

 

シュバッ!

 

それを合図に目にも止まらぬ速さで戻る。

 

「……」

 

さっきまで張り合っていた相手のそんな様子を見てエリザベートは少ししらけた顔を浮かべた。

 

そんな一幕が有りつつもラ・シャリテに4人は到着したのであった。

 

 

 

 

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