ゴトッ
後ろからコンクリートが力無く横に倒れる音が聞こえてくる。
どう考えたって…ただの人間じゃないよな。
手に持つ『レイズアロー』から放たれた矢を難なく躱す黒衣の女。コンクリート真っ二つだし、動きめちゃくちゃ速いし、なんか鎌持ってるし!
全く当たらんね…ちくしょう…仮面ライダーの武器だぞ…!
骸骨を倒したら急に箱が出てきて中に入っていた、『アローレイズバックル』をドライバーにセットしたらあら不思議レイズアロー装備完了です。
これなんかの特別アイテムなんじゃないの?…通用しなくちゃ駄目でしょ普通!全然当たらないんだけど…
「…ッ!」
危ねっ!鎌掠ったっ!カマシスギ!
当たるかなって思った矢は鎖でいなされるし畜生…遠距離武器だからある程度距離取らないといけないのに…肝心のこれが当たらないんじゃどうすれば良いんだよ!未だ無事で居られるのは仮面ライダーがめちゃくちゃ高性能だからでしかない。
「へっぴり腰の逃げ腰で狩り甲斐のない」
そんな声をこの仮面はクリアに拾う。よく戦闘中に話せるよね、後引き撃ちって言ってくれないかな。自分でも情けなくて泣きそうになるから。
クソ…そろそろ体力がキツい…こうなったら…
ザッ
「諦めたのですか?なら一思いに」
なんか言ってるのを無視してレイズアローを黒女に投げる。
キンッ
「うわぁぁぁぁ!」
レイズアローは甲高い音がして弾き飛ばされるが一瞬の意識の空白が生まれている事を祈って突っ込む。引いて駄目なら押して押して押すんだッ!
「自暴自棄にッ」
振り上げた大鎌の内側に入り込む事に成功、捨て身のステゴロしか残った手段は無い。俺は好きなカンフー映画の主人公がやっていた様に細かなパンチをとにかく食らわせる。
「舐めたことを!」
素人の見様見真似じゃあまり効果が無かったようで、鎌を斬るのでなく、打つことに使われ弾き飛ばされ地面を転がる。
痛い痛い痛い痛い痛い―ヤバい…!
「これで終わりです」
頭の上から聞こえてくる風切り音。
「まだぁッ!」
振り下ろされる大鎌を弓で受け止め、ドライバーについているアローレイズバックルを引く。
『ARROW STRIKE』
ゼロ距離で放たれた光の矢が黒女を貫く。
「何…」
レイズアローは近接にも使える…でも素人の俺じゃただがむしゃらに振り回すしか出来ない…だったらいっその事確実に反撃が出来るようにした方が良いと思った。何とか成功したけど……もしもレイズアローと反対側に弾き飛ばされていたら…。紙一重…ほぼ幸運で勝ったみたいなものだ。
「そんな…」
黒衣の女は紫の光となって消えていく…やっぱりただの人間では無かったみたいだ。言葉が通じる相手を倒すのは…こんなに…
「なぁアンタ、名前は」
「なんで…」
「知らないといけない気がするんだ」
「…ああ…なん…て愚かな……『メデューサ』…そんな…へっぴり腰だと…すぐに死んでしまいますよ…」
「…自分を倒した相手に忠告しないでくれよ…」
もうそこには何も無かった。だけど鎌を受け止めた時の痺れと何かを奪った感覚が残った。
『メデューサ』彼女は確かにそう名乗った…忘れちゃいけないと思う…自分が倒した存在なんだから…仮面ライダーとして戦っていくなら…きっとそうなんだ。
ウジウジもしてられない…さっきの子達の安否確認をしなくちゃな。俺は来た道を戻っていった。
「ま、及第点と言ったところか?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
結構引き撃ちの為に移動したけど…あっまだいた。
「おーい、大丈夫か?」
オレンジ色の髪をしている子に呼びかけるが反応は無し、心臓の音なんかに異常は無いみたいだから……気絶みたいなものか、そりゃこんな燃えてる街にいたら身体的にも精神的にもそうなるか。
もう一人の子は…結構…傷付いちゃってるけど…流血はしてないから…とりあえずは安心…していいよな…この子凄い奇抜な格好だなぁ。もしかしてこの子は『メデューサ』と何か関係があるのか?まあ、なんにせよどちらも心音には異常無し。良かったぁ。にしても…どっちも髪色とか派手だなあ……なんたらデビューか?
「フォウ…」
沈んだ様な鳴き声。
「ありがとね、連れてきてくれて」
骸骨を倒してたら出会ったこの謎の小動物の案内が無かったらきっと間に合わなかっただろう。エース…元気にしてるかな。まだ数時間も経ってないのに俺はあいつに愛着を覚えてるのかもしれない。
「ん…」
オレンジの子が呻く、チャンスだ。
「やばいぞ!早く起きないと遅刻だッ!」
「え、嘘ぉっ!?」
こちらに背を向けガバッと起き上がる。人を起こすにはこの手に限るよな。
「おはよう、良く眠れたか?」
「あはは…すみません、どなたかわからないですけど…」
そうオレンジの子は立ち上がってこちらに振り向き
「うわっ!」
驚いた声を挙げる。
あ…変身解除してないわ。そりゃ驚くよなぁ…いや、でも今変身解除するのも危ないし…どうしよう…
「えーと…俺は…」
「フォウ」
あたふたしかける俺の肩からあの小動物が肩を乗り出す。
「あ…フォウくん」
「フォーウ」
「お前…フォウクンって言うんだな」
フォウクンのお陰で恐怖が和らいだみたいだ。
「マシュ…!マシュは!?」
急いでオレンジの子があの奇抜な子…マシュって呼ばれた子に駆け寄って行く。
「少し怪我はしてるけど命に別状は無いと思う」
ホッとした様子のオレンジの子、よっぽど仲良しなんだな。まるで俺とエースみたいだ。(一方通行)
「その、助けてくれてありがとうございます……騎士さん?」
「いいよいいよ、俺仮面ライダーだし」
「仮面ライダー…?」
あ~そっか当然の様に仮面ライダーって言ってるけど知らない子もいるよな。
「アイ・アム・ヒーロー」
「そっか!よろしく仮面ライダーさん!」
差し出された手を握る、握手ってなんか燃えるよね。
「うぅぅ…」
マシュちゃんがうめき声を上げる、お、そろそろ起きるのかな。
「……先輩…と…アナタは?」
「仮面ライダー」
「?」
「ヒーローなんだって!それよりもマシュ身体の調子は…?」
「はい、動きに支障は無いと思います……あのサーヴァントはアナタが?」
サーバント…?えーと魔女って意味だっけ…?確かに『メデューサ』はそれっぽかったな…
「ああ、なんとか倒せたよ」
「そう…ですか…」
なんか思い詰めてる。
「すみません…先輩…私は先輩のサーヴァントなのに…」
「そんな…マシュは悪くないよ…」
マシュちゃんもサーバントなのか。って事は戦えるって事だよな、そりゃそんな大盾があるしそうか…
「私は…サーヴァント失格…です…」
「そんな気に病まなくてもほら、相性の差もあるだろ?」
見るからに重そうなこの大盾で『メデューサ』とやり合うのは正直キツそうだ。めっちゃ動き速かったし。
「それでも…」
「じゃあ次から気をつけよう!」
オレンジ髮の子が明るい声でマシュちゃんを励ます。
「私だってマスターなのに見ているだけで……だからさ、今から成長していこうよ!」
「はい!」
「うんうん、俺もそのサーバントからへっぴり腰だのなんだの言われちゃったし成長しないとなぁ〜」
「良くそれで倒せましたね…」
「ほんと、偶々…運が良かっただけ…だからお互い成長しながら生き延びようぜ」
「じゃあ、とりあえず霊脈…目指そっか!あの、仮面ライダーさんも着いて来て貰えませんか?」
「むしろこちらからお願いさせてくれ、正直1人この街は中々クル物が…」
「そうですよね…」
少し顔を曇らせてしまうオレンジの子…駄目だなマイナス発言は聞いた人の心もマイナスにしちゃうからな。
「ああ、よろしく頼むよ…えーと」
「あっ!私は藤丸立香!で、こっちのマシュが…」
「先輩…自己紹介の意味がなくなってしまいます…マシュ・キリエライトです、仮面ライダーさんよろしくお願いします」
「オッケー立香にマシュね、2人はその霊脈の場所わかってるの?」
「私はわからないけど…」
「私が把握しているので案内します」
「じゃ、さっそく…」
キャー!
何者かの悲鳴が聞こえてくる。他の生存者がいるのか!
「「助けに行かなきゃ」」
自然と声は同時だった。なら、もう言葉は要らない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
骸骨の大軍がまるで狩りをするかの様に1人の人間を追い詰めていく。
「何なのもう...!なんでわたしがこんな目にッ!」
オルガマリー・アニムスフィア、人理継続保障機関フィニス・カルデアの所長である。
平静を保った彼女であったらこの場を切り抜ける事は容易かっただろう。だが今の彼女は突然炎燃える街へと投げ出された事、日頃抱え込んでいたストレスの諸々によって
「もう…イヤッ…レフ…レフ助けに来て...!貴方なら…貴方だけがっ!」
パニックに陥ってしまっている。災害や暴動の場で1番の危険はパニックになってしまう事…自らの命を短くしてしまうからだ。
ゴギャンッ
大軍の最後方から何かが砕かれる音が響く。発生源を探そうとした骸骨が砕かれていく。
「ッ!」 「はぁぁぁ!」
蹴りの1つに付き骸骨2体を倒せる事に味を占めた仮面ライダーとマシュキリエライトである。
(さっきのメデューサに比べたら…全然楽!蹴りでケリを付けてやるぜ!)
慣れた頃が1番危うい。彼の頭上から骸骨が飛びかかってくる。
「マシュ!カバー!」
ドコンっ!
飛びかかった骸骨の足が地面に着くことは二度と無かった。
「助かったッ!」
(漫然と戦っちゃ駄目だ…一手一手考え抜かないと…!)
「デミサーヴァントと…な、何あれ…?」
オルガマリーが困惑してる間にも骸骨は全滅。
「所長大丈夫ですか!?」
「貴方…」
マシュに視線をやると…
「…どうして今になって…」
ぶつぶつと考え込む。
「お、また箱出てきた」
開けると中に入っていたのは『シールドレイズバックル』
(見ただけで物の名前表示してくれるのはありがたい…名前付けなくていいし…シールド…盾か…生存率上がるのは助かる…それにマシュさんみたいに盾で叩けば痛いだろうし)
『アローレイズバックル』『シールドレイズバックル』
遠近どちらもカバーできるようになり少しホッとしたようだ。
「どっちもお疲れ様、いや~両方凄い!」
「ごめん、ありがとう助けてくれて」
「いえ、先輩の指示のお陰です」
「いやいや…マシュさんの見事な盾さばき…マジ尊敬っす、立香もナイス指示」
どっちも凄いって立香は言ってるけど正直…数段俺の方が劣っている様に思える。
「ちょっと!何さも当然の様に話してるのよ!」
(あ、部下が上司の事放ったらかしにしてたらそりゃ文句言われるか)
「?」
「言われてるぞ立香」
「あっ、すみません」
「違うわよ!わたしの演説の途中で居眠りした一般人がサーヴァントと契約しているとか色々おかしな所がありますが!それよりもアナタよアナタ!一体何者!?」
ビシッと指を指される彼。彼は
「だ、そうだお前は一体…何族何科なんだ!」
「フォウ…!?」
(え、私ですか!?)
とでも言いたげなフォウをワシャワシャと撫で回す。
「ほれほれ〜」
「フォ…フォーウ…♪」
「す、凄いフォウさんの顔が溶けてます…!」
フォウもどうやらご満悦の様だ。
「うがぁぁぁぁぁ!」
「所長!?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あのめちゃくちゃデカイ盾をここに置けば良いんだよね?」
「そうよ」
あの後なんとかマシュが宥めて冷静さを取り戻した所長さん。俺はただの人間ですなんて説明しても信じて貰えないし…この冷たさはめちゃくちゃ疑われてるってことか。俺だって頑張ってるのに…!
ドゴンッ
身体がすっぽり隠れそうな大盾、これを触媒?にして霊脈って呼ばれる場所に設置するんだって。多機能過ぎるぜ。さっきお願いして少し持たせて貰ったけど…重すぎじゃない?俺仮面ライダーなんだけど…
「今から召喚サークルを設置するから」
要は…ベースキャンプみたいな…いや良くわかんないから黙ってフォウクンを撫でておこう。
「………」ナデナデ
「フォウ♪」
このまま撫でまくってそのモフモフボディをツルツルに研磨してやるぜ、そう気合を入れようとした時、もう2本手が割って入ってくる。
「………」ナデナデ
立香だ。まさか…わからないのか…?聞いた口ぶりだと同じ組織の人間っぽいけど…立香俺と同年代位だし多分新人研修中かなんかなんでしょ。あれ?でもマシュの先輩で…あれ?
「貴方達…!」
「まぁまぁ…所長とりあえず設置を優先するべきです」
何か言いたげだけどグッと堪えた様子の所長さん。若いのに所長なんて凄いなぁ。それから少し経つと大盾から光の粒子が立ち込めて来た。これって『メデューサ』が消えていく時のと…色が違うけど…似てる…。
そう思った瞬間大盾を中心に景色が一変する。
「おぉ…」
なんかデジタル的な…ゼロワンのラーニング空間に雰囲気が似てるぜ。
『もしもし!藤丸くんっマシュ!音声だけだけど通信が戻ったって事はなんとか大丈夫だったんだね!良かった〜しばらくすれば映像の方も補給物資の方も…』
どこからか男の優しそうな声が聞こえてくる。え、マジでAI?
「はぁ!?どうして貴方が仕切ってるのロマニ!?レフはどこ!?」
ロマニとレフって名前なんかAIっぽいぞ!マジか〜遂にAIデビューしちゃう?ラーニングさせて貰えちゃう?
『うひゃぁぁぁぁー!?』
ん〜?待てよAIにしては感情が…シンギュラリティしたのか…?
『所長生きてらっしゃったんですか!?あの爆発の中で!?どんだけ!?』
爆発…?
「どう意味ですか!それよりもレフは!?なぜ医療セプションのトップがその席にいるの!」
ロマニもレフも人間で…本来ならレフさんがいるべき場所にロマニさん……これは…
『自分でも向いてないのはわかってるんです…でもボク以外に居ないんですよここに座れる人材が』
……ああ、そういう事か。
『現在生き残ったカルデアの正規スタッフはボクを入れても20人にも満たない…ボクが作戦指揮を任されているのはボクよりも上の階級の人間が居ないためです』
命が…数字になるなんて事はザラだ。何かの災害、1年の自殺者の件数、戦死者の数。その事の恐ろしさがわかっているつもりになっていた。だけど今こうして炎の街を見て…それが隣合わせになった途端無性に恐ろしくなって怖くなった。
『レフ教授は管理室でレイシフトの指揮を執っていたんです、あの爆発の中生存できているはずが無い』
何も聞きたくない嫌だ。だけどこの仮面は鮮明に話を聞き取っていく。
マスター候補と呼ばれる人達が危篤で医療器具が足りないらしい。それに対して所長さんは即座に冷凍保存を選択。凄いな。そんな沢山の命を即決で背負うなんて……考えたくもない。
『……以上で報告を終わらせていただきます、現在カルデアの機能の8割は不全に陥っています、なのでこちらの判断でレイシフトの修理とカルデアス、シバの現状維持に人員を割いています』
「…わたしがそちらに居ても同じ判断をしたでしょう…はあ、ロマニ・アーキマン納得がいきませんが私がそちらに戻るまで所長代理に任命します、まずはレイシフトの修理を優先しなさい」
どうやら話が纏まったみたいだ。…よし頑張らないとな。
「ところでロマニ、計器に何か異常は?」
『いや、特に…うん?なんか…反応が1つ多い…?えーと…所長とマシュと…藤丸くんと…』
「はじめまして〜お世話になります〜」
『ああ、これはこれはどうもご丁寧に…どちら様!?』
「こいつの反応はどう出てるの?」
『…どうも何も…普通の人間としか…現地の人って事ですか?』
「そんな訳無いじゃない!?映像見れないの!?」
『ちょっとノイズが…あ、よし安定してきたぞ…えぇ!?な!?』
「どうも」
『周辺にはエネミー反応も無いし…マシュ1人分しか霊器反応が無いはずなのに!?』
その言葉に安心してドライバーを外し
「俺は
しっかりと自己紹介をした。
アローレイズバックル
使用するとレイズアローという弓型の武器を使用するアームドアローと呼ばれる形態となる。
レイズアローは射撃を可能とする他、鋭利な弓部を使えば近接戦も可能というバランスの取れた武器である。