風切音に左手で持った盾を合わせる。
ガキンッ!
甲高い音を奏でながら盾でナイフを弾き飛ばしお返しと言わんばかりにレイズアローを放つ。
「甘イ」
が、当然の事かの様に躱される。そんな事を繰り返している、お互い決定打に欠けるのが現状だった。唯一変わったのは場所だけだった、万が一にでもナイフがあいつらの所に飛んでいかないように押し込んたが…そこで畳み掛けていれば良かった。
にしても避け方綺麗だな、動き最小限じゃん。
だが、奴と違ってこっちには明確な勝利条件がある、それは立香がマシュを立ち直らせて、2体1の状況に持っていくことだ。今こうやって拮抗しているって事は何かが加われば一気に流れはこっちに来る。
お願い立香!俺の集中力が持つ内に早くマシュを…
『どうでしょうか…どれだけ武器を扱えても戦いそのものは…』
不安に揺らぐ声、恐怖を感じている目。それが脳裏を過ぎる。
そうだ、俺仮面ライダーじゃん。
仮面ライダーが駄目だろそんなんじゃ。
バチチチ!
「ぐぁっ!」
ナイフと装甲がぶつかり火花が散る。
「弱イナ」
うるせ、今ので心の火が…心火が燃えだしたところだ。
レイズアロー、当たらない。
レイズシールド、防ぐだけ。
当たらないなら、当てる。防ぐだけなら防ぐ以外も。やってやる。
「おらっ!」
アメリカヒーロー仕込みの盾投げ!レイズシールドは直線であいつに向かっていく。当然あいつは最小限にそれを躱すだろう。
ビュンっ!
奴の左肩を矢が貫く。
「ナニ…!?」
レイズシールドに矢を当て矢の軌道を反らした。倒すまでには行かないが…十分だ。
俺はシールドを拾い上げ、インファイトを仕掛けようと踏み込む。
「侮テイタ…私一人ダッタラ危ナカッタ」
は?まさかっ…
ザンッ
背中に感じる熱。倒れそうになる足を必死に力を入れせ振り返りざまに殴りかかるが簡単に躱される。
「行クゾ、ランサー」
「ハハ、ハハハハハハ」
影が…1人でも奇策を使ってやっとだった影がもう1人…もう、マシュだの何だの言ってられない。
「逃げろぉぉぉ!」
力の限り叫ぶ。足の力が逃げないように、燃える街に消されないように立香がマシュを立ち直らせるための言葉をかき消そうと。所長さんがビビって逃げ出すように力いっぱい。
ガギ…グググ
「あぐっ…ああっ」
何とか受け止めた薙刀が盾ごと押し込まれる。必死に踏ん張って…ほぼ拮抗…だが、拮抗じゃ駄目なんだ。
何とか盾で刃を逸らし拳を当てようとするが
ヒュンっ
「ッ!」
飛んできたナイフにそれを阻まれランサーと呼ばれた男の攻撃をマトモに食らい膝から崩れ落ち意識が明滅する。
「ソノ首貰イウケタ」
俺の首を切断しようと横振りに振られる刃。
何分…持った…?せめて…逃げれるくらいは稼いだよな…。
「……!」
転ぶように前に倒れ込み、その上を刃が通り過ぎる。
「うわあああぁぁ!」
起き上がりながら兎に角レイズアローやシールドを振り回す。
「往生際ガ悪イ」
「ハハハ!マルデ舞ダナ!」
わかってる。情けないって、まるで今の俺は駄々をこねる4歳児の様に見えるだろう。
『歩ったら今日は駄目って言ったでしょう?』
お母さんがそう言うけど当時の俺はその愛らしい目をしたクマさんとどうしても離れたくなかった。
『いや~!ぬいぐるみますたーになるんだ―!』
『もうあなたっ!また変な言葉ばっか教えて!』
『歩、父さんのためにここは一つ頼むよ』
『おねがいってのはてぶらでいいんかいっ!』
『あなたッ!』
ごめん父さん…ああ……そうだよな、手を変え品を変え…掴み取らないとな。
「イイ加減ニ…」
ドンッ!
『SHIELDSTRIKE』
盾を思いっきり地面に叩きつける。アスファルトの破片や砂、その他諸々が巻い俺達を包み込む。
ナイフを投げてきていたやつは手負いだから今は放置でいい……薙刀野郎はここで倒す。
『ARROWSTRIKE』
「ヨモヤ……いや…当然か…理性無き者が…勝つ道理など…」
影は緑の閃光と共に宙に溶けていった。
「はぁ…はぁ…」
顔に感じる地面の凹凸感。
ああ、ということは俺変身解けちゃったんだ。ヤバイよな。動かないと死ぬのに…動けない。
「見事ダッタガココマデダ」
返事するのも億劫だ……ああ、丁度いい瓦礫無いかなぁ…あったら投げてやるのに。
「やぁぁぁぁ!」
ガコンッ
己を奮い立たせている様な声が俺と影の間に入る。
「マシュ!落ち着いたら絶対勝てるよ!」
勇ましくそれでいてまっすぐマシュを見つめる、立香。
「怪我は!」
心配する所長さんの声。
「なんだ…意外と早かったじゃん…もう少しゆっくりでも……ごめん」
戦わせちゃって
「ちょっと!?」
俺の意識は暗闇に落ちていった。
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いくつもの光の線が辺りを囲むソファーの上で歩は目覚めた。まるでこの部屋だけ世界から切り離された様な、そんな印象を彼は受けた。
それだけでもかなり目を引くがそんな状況より彼の目を釘付けにするものが
『ここからがハイライトだ』
空中に投影された映像。そこに映る先ほどまでの自分とほぼ同じ姿。気がつけばソファーに腰掛けただその戦いを見ていた。否、魅せられていたと言うのが正しいだろう。
(これと…同じだって…?)
冗談では無い。共通点は姿だけだった。大胆でそれでいて正確、トリッキーでいてダイナミック。どれも自分には無いものだ。そして何より
(安心感がある)
戦う姿を見て負ける気が一切しないのだ。
『まあ…見てるこっちが疲れそうになるよね』
先ほど、藤丸立香に言われた言葉が脳裏に何度も反響する。
「ギーツ凄いでしょ、これはアーカイブだけどね」
横から声が、聞こえた。
「ギーツ…」
(変わった名前の人だ)
彼は画面から目を逸らす事なく呟く。
「ああ、今は君もそうだ」
「……仮面ライダーギーツね…」
ギーツ…確かにしっくりと来た。いづれはエースと一緒に名前を考えようと思っていたが、他の名前はもうしっくり来なくなってしまった。
「俺の推しだよ」
「オシ…?」
やけに馴染みのない言葉だった。
「そうか、時代が違うのか…ファンみたいなものだと考えてくれればいいよ」
「あ…そうなのね」
(もしかして意識高い系か?)
彼は良くわからない言葉を使う人種はそれで一纏めにする癖がある。危うく、マシュとオルガマリーもその括りに入れようとしたが分からないほうが非常識っぽい感じだったため認定から逃れている。
(ん?ファンって事は…)
「俺の戦い方観てた?」
「ああ、バッチリ観てたよ」
「……もしかして怒ってたり…?」
そこで初めて彼は隣を見た。髪に青い線の入った青年が自分と同じように画面を見ていた。
「はは、事情が事情だからね前の俺なら思う所があったかもしれないけど今は箱推しだからね」
「それは…良かった」
もし今、悪口を言われていたら歩は泣き崩れただろう。
「……なんでこの人じゃなくて俺なんだ?」
(この人ならサーヴァント相手にも…)
自分との明らかな実力差。それを感じ彼はナイーブになっている。
「……流石の彼も歴史改変に耐えながらの戦闘は難しかったみたいでね」
「歴史改変…」
(歴史を取り戻すってのは…そういう事か、ならどうして俺は)
『マシュ!一時の方向!』
『はぁっ!』
ガコンッ
声が頭に響く。
『はぁ…はぁ…これ以上の戦闘は——』
戦っている。マシュが、立香が、所長が。
「そろそろ目覚めの時かな」
「声が聞こえたから多分」
「そうみたいだね…彼は彼、君は君…それで良いと思うよ」
「そうッ——」
彼の姿は消えた部屋から消えた。その部屋に1人残った青年は
「それで良いって言ったけど…」
注意力を鍛えるべきと忠告するべきだったかと少し後悔する。
「まさか…拾い忘れてるとは思わなかったな」
彼の視線の先には白いレイズバックルを使うギーツの姿があった。
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「遠慮はしなくて良いぞ、俺もマスター諸共遠慮なしで殺しにいくからよ」
「…!?」
「それは…」
「アナタ正気!?訓練なのよこれは!」
所長が声を張り上げる。
「サーヴァントの問題はマスターの問題…運命共同体って言わなかったか」
起きたらすっごい物騒な会話してらぁ。何あのイケメン嫌いじゃないわっ…でもめっちゃ怖い。本番だと思って訓練しなさいの本気バージョンじゃん。
「わかってるよな、盾の嬢ちゃんが立てなくなった時が手前の最期だ」
「わかってる…マシュ…立てる…?」
「はい…私は…先輩の足手まといには…なりませんから……!」
限界だろうに凄いな。
どうする、今起きたらめっちゃ空気読めない奴だと思われそう。でも、もしかしたら2人とも死んじゃうかもしれないし…こっそりと援護射撃…
「そうこなくっちゃな…おい坊主…手出しなんて無粋な真似すんなよ」
下手すりゃ睨まれただけで死人が出そうな眼光がこちらを射抜く。
あ、バレてる…
「へ、へへ…わかってますぜ」
「アナタ…起きてたの!?」
「今の今ね!……必要な事なんだろ?じゃあ邪魔しないよ……2人共!逆にこの人ボコボコして命乞いさせようぜ!」
「…ボコボコにしても…宝具が使えるようにならなければ…」
「そのくらいの気持ちで頑張るって事!行くよマシュ!」
「はぁっ!」
大盾を構え突進するが、
「猪だってもう少し技巧的だぜ、ほら早く守んなくて良いのかい?」
軽く躱され逆に、立夏に向かって炎が
「くぅっ!」
届く前に何とかマシュが間に合う。
「所長さん、あの人もサーヴァントなの?」
ソワソワして落ち着かない様子の所長。
「そうよ!ああもう…マシュと藤丸が死んじゃったらどうするのよ…!」
「…訓練って言ってたけど戦い方の訓練なの?」
だとしたら俺が参加しないのはおかしいか、うーん…サーヴァント特有の何かの為のものだろう。
「マシュは…宝具が使えないの、だから今ああやって本能を目覚めさせるためにあんな事してると言ってるけど…」
「宝具…あの盾の事じゃないの?」
防戦一方だが何とか食らいついているマシュ。
とっくに扱えてるように見えるけど…
「あのね…」
そこに続く所長の言葉は
「焼き尽くせ、木々の巨人…」
「まさか…宝具を…!?」
今、ハッキリとわかった。あのイケメンが何か唱え始めた瞬間空気が、圧が変わった。
「炎の檻となりて」
どうする、本当に———!
ドライバーを取り出す。
「
それをみた瞬間、割って入る気なんてどこかに消えてしまった。シールドレイズバックルだけでどうにかできる攻撃じゃない。
「あれが…宝具」
「…もう…アナタとあのサーヴァントで……この特異点を…」
「所長さんしっかりしないと、マシュも立香も全然折れてない」
立香はまっすぐ前だけを見てる。これを防いだ後の事を考えながら……なら、マシュはそれに応えるタイプだ。
「ああああぁぁ―!」
振り下ろされる巨人の手。だけどマシュは一歩も引かない、そのための咆哮。その背に立香は手を添える。
かっこいいな。
確かな光が巨人を退けた。
シールドレイズバックル
使用するとレイズシールドという盾型の武器を使用するアームドシールドと呼ばれる形態となる。
レイズシールドは防御力が高く、1200度の熱に耐える事もできる。