うんめいぎつね   作:マイケル行ける

6 / 11
燃える街Ⅵ:仮面ライダー

 

目の前に扉が佇んでいた。どこにでもある、木製でドアノブがついている扉。それは俺の父親の部屋の扉だった。

 

もしも、あの日々の中でこの扉を開けていれば。言葉を交わすことを恐れなかったら、俺は……

 

その先に誰も居ないことはわかっていた、それでも俺はその扉を開けようと手をドアノブに添える。

 

ガチャ

 

風が俺を包んだ。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「………!」

 

キャスターとマシュと交戦していたセイバーがキャスターを追い詰めトドメを刺すかと思われた瞬間突然向きを変え、ある一点へと進んでいく。立ち上がった歩の方へ。

 

「逃げて!」

 

立香の悲痛な叫びは彼には届かなかった。仮に届いていたとしても生身の彼がサーヴァントから逃れられる筈は無かった。彼女は最後の令呪を切ってマシュを強化しようとするも間に合わない。

 

「当たりなさいよッ!」

 

オルガマリーが放った魔術を一瞥すらする事なく。

 

振るわれる剣が彼を両断するその刹那、彼の手に握られた赤が捻られた。

 

『BOOSTRIKER』

 

「ぐっ…!」

 

突如現れた紅い車体がセイバーを吹き飛ばす。

 

———!

 

鋭い雄叫びにも思えるエンジン音が空気を震わせる。

 

「あれは…」

 

「赤い……バイク…?」

 

彼を守るように佇むのはブーストライカー。

 

「……どうして…セイバーが……守ってくれたのか?」

 

意識を取り戻した彼が問うがバイクは何も答えない。

 

「なんか芯が無いだのなんだの言ったけどな、セイバー!」

 

「………」

 

セイバーは何も答えない。連れない奴、歩はそう思った。

 

『デザイアドライバー』

 

「こちとら芯がなくても変身があんだよ」

 

『SET』『SET』

 

「させると思うのか!」

 

彼女の直感は本来よりも鈍っている。だがそんな彼女でもハッキリとわかった。アレは危険だと。

 

使わせる前に仕留める、彼女の掌から黒い光が放たれる。それは彼一人を消し炭にするには十分だった。

 

「こっちのセリフだよっ!」

 

「らあっ!」

 

だがその光は彼に届くこと無く。

 

「ちっ」

 

「さっさとしなさいよっ!」

 

「変身!」

 

バキュンッ——ブゥゥゥゥン!!

 

『DUAL ON』

 

『GET READY FOR』

 

上半身に白い装甲、下半身に赤い装甲が装着される。

 

『BOOST&MAGNUM』

 

歓声が彼を包み込む。

 

「強い狐見せてやるぜぇ…!」

 

「決め台詞……微妙だなぁ…」

 

『READY…FIGHT!!』

 

それを合図とし足から火を放ちながら高速でセイバーに接近し蹴りを放つギーツ。

 

「はっ!」

 

ガキンッ

彼女の剣に防がれる。だが

 

「ぐっ……!」

 

ギュイーン!!!

 

そんな事お構い無しに更に足の炎はうねりを上げ強引に彼女の身体を吹き飛ばす。

 

(先よりも圧倒的に攻撃力と素早さが上がッ…!)

 

バキュン!

 

距離が離れれば当然弾丸が彼女を貫く。

 

(遠距離攻撃も厄介だが…食らうことに関しては問題無い……あの足にさえ注意すれば…)

 

彼女の直感が食らってはいけない攻撃を瞬時に割り出す。宝具を使えばいつでも宝具を展開できるように彼らの攻防を見ているマシュの宝具と鍔迫り合いになりその隙にギーツに仕留められるだろう。

 

「フッ!」

 

「飽きもせずに!」

 

再び接近するギーツ。だが此度は防ぐのでは無く避け斬る。

 

「……身のこなしが違う!」

 

「当然だ」

 

彼の攻撃は足による攻撃は全て避けられ、拳は弾かれカウンターを食らう。

 

身体能力の差よりも技術の差それが彼と彼女の近接戦闘に覆らない差を生み出していた。

 

「このッ」

 

苦し紛れの拳、彼女にはそう見えた。トドメの一撃を放つために鎧で受け止めようとする。

 

『REVOLVE ON』

 

彼の身体が文字通り回転し白と赤の装甲が入れ替わる。

 

ボッ!炎の唸りを上げた拳は振り抜かれ彼女を宙に持ち上げた。更に地面に手をつき

 

ガシャンッ!

 

足に移動した白の装甲からアーマードガンが展開され蹴りを突き刺すのと同時に弾丸を放つ。弾丸によって底上げされた蹴りの威力は彼女の身体を地面から離した。

 

「身体大丈夫なんですかそれ!?」

 

「大丈夫」

 

『REVOLVE ОN』

 

「マシュ、盾構えて」

 

「…わかりました!」

 

彼女は一瞬で彼の思惑を汲み取り盾を斜めに構える。

 

ダンッ

 

ギーツは自らの脚力とマシュの筋力により文字通り打ち上げられる。

 

空中なら後から動きを決められる方が有利だと考えたからだ。

 

「舐めるな!」

 

「うわっ!?」

 

だが、セイバーは聖杯から廻される魔力を用いて空中でも行動を可能としていた。自由とまでは行かないが機動力があるセイバー、ギーツも下半身にあるブーストキッカーによって無理やり機動を変えることが可能。勝負は互角になると思われた。

 

『GEATS MODE』

 

彼の足場となるように紅い狐が現れる。

 

「ナイスタイミング!行くぞ!」

 

『ブーストライカー ギーツモード』3次元的機動が可能となるモードである。これにより空中戦能力は互角以上へと跳ね上がり。

 

————!

 

雄叫びと共に彼女の身体を天井に叩き込む。

 

『BOOST TIME』

 

ブゥンブゥンブゥウウゥン!

 

ブーストレイズバックルのハンドルを捻り、マグナムレイズバックルのトリガーを引く。

 

この一撃で終わらせる、その思いで力を溜める。

 

だが、それを許さないと言わんばかりの黒き極光、『約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)』が彼に向けて放たれる。その光から逃れるにBOOS TTIMEを中断するしか無い、だがBOOST TIME終了後ブーストレイズバックルは使用不可となる。

 

(どうする…!?)

 

ブーストなしでセイバーとやり合うのは不可能だ、だがこの極光耐えきるのも

 

「坊主ッ!お膳立ては任せなっ!」

 

「ロード……カルデアスっ!!!!」

 

彼よりも高く飛んだマシュが極光と対峙する。

 

「どうやって…そういう事か!」

 

下に視線をやった彼の目に映るのは上半身と腕一本しのみのウィッカーマン。それは何かを振り下ろしたかような姿勢だった。

 

「嬢ちゃんの宝具1回分は残してやりたかったからよ…不格好になっちまったが…ま、そういうの見慣れただろ」

 

「うんっ!マシュ…守りきって!」

 

手の甲に歩く赤が弾け、マシュへ令呪のバックアップによる強化が入る。更に彼女の足元に魔力による足場が形成され宙を踏みしめることが可能になる。

 

『BOOST&MAGNUM』

 

 

「ありがとうマシュ」

 

光が収まると同時に彼女の身体は力無く下へ落ちていく。

 

「ブーストライカー…ブーちゃん、あの子を頼む」

 

彼はブーストライカーを後蹴りを背中に受け加速する。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

『GRAND VICTORY』

 

それが彼の勝利を告げた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

『グランドオーダー……聖杯を巡る戦いは始まったばかりだ』

 

そう言い残しセイバーは爆炎と共に光へと消えていった。

 

グランドオーダー……?俺が言われたのはデザイアオーダーなんだけど……下にいる所長達に聞けばわかるか。今はとりあえずこの高さから安全に降りてかないと

 

 

ボッッボッッッボッッッッ

 

よし小刻みにブーストを吹かせて、何とか地面に着地しよう。

 

ボンッ!

 

「……あっ」

 

ブーストレイズバックルが何処かに飛んでってしまった。

 

「ぁぁああああぁー!」

 

途端に重力が俺に夢中になり、地面が近づいてくる。

 

仮面ライダーが落下死はまずいけどどうしよう!アメリカの盾ヒーローみたいにシールドで……そんな機能ないか……ないかぁ…。

 

地面までもはや秒読み。

 

足に装甲を集中させて耐えるしか…!俺はベルトを回転させる。

 

『REVOLVE ON』

 

途端に感じる浮遊感。

 

「うおっ」

 

落下速度?みたいなのを無効化してくれたお陰で特に痛みなく足から着地することができた。

 

マジが、凄いぜ!リボルブ オン!!

 

ベルトからマグナムレイズバックルを外す。

 

「ふぅ~」

 

慣れないといけないのはわかってるけど、結構疲れるわ。

 

「歩君!」

 

「よっ」

 

みんな、疲れては居るけど大きな怪我は……

 

「……キャスターさんは?」

 

「消えちゃった……多分セイバーを倒したから」

 

「そっかぁ…」

 

お礼したかったな、マグナムもくれたし。

 

『それにしても歩君のあの形態凄かったね、聖杯のバックアップを受けたあのアーサー王と一対一で戦えるなんて』

 

「いやぁ~皆が居なかったらやばかったんで」

 

「キャスターさんと先輩の力添えがなければ…」

 

「マシュあっての作戦だったからねー」

 

確かにブーストレイズバックルは凄まじいの一言だった。だけど、俺がまともに攻撃を当てられたのはREVOLVEONによる不意を点いた1回とマシュが光を抑えきった時の1回。計2回のみだった。

 

差は大きいな。

 

「……そういえば所長さん、グランドオーダーって何?」

 

「なんですか?突然…待ってどうしてその呼称を…」

 

「セイバーが言ってたから気になっちゃって、ほら俺の方はデザイアオーダーだし」

 

「なんで、あのサーヴァントが……いや、そもそも……どういう事…?」

 

考え込んじゃった、となるとグランドオーダーってのは魔術的常識ではなく、カルデア特有の物ってことだよね

 

「てことで解説のマシュ・キリエライトさんお願いします」

 

「よっ、待ってました!」

 

あの立香もわからないとはとんだ難問のようだぜ。

 

「え?あっはい…冠位指定(グランドオーダー)とは……」

 

「まさか君達がここまでやるとは、計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ」

 

突然緑の服の男が現れた。紳士は神出鬼没らしいから、多分相当な奴だぞ。

 

「おい、人の解説に韻踏みながら割って入るとはさぞ高名なラッパーだとお見受けられる」

 

「……48人目のマスター適性者、全くの見込みなしの子供だからと、善意で見逃してあげた私の失態だよ」

 

あっ、すっごいスルー……所長を思い出す……さては関係者だな。

 

「見込みなしだの、見逃しただの……眼鏡でも買ってきてあげようか?」

 

「レフ教授!?」

 

レフ教授って……カルデアの人だよね…?

 

『レフ教授…!?彼がそこにいるのか!?』

 

「その声はロマニ君か、君も生き残ってしまったのか……すぐに管制室に来てと言ったのに私の指示を聞かなかったんだね」

 

「駄目だよ~ロマニさん、組織なんだから上司の言う事は聞か……」

 

「どいつもこいつもどいつもこいつも統率の取れないクズばかりで吐き気が止まらないな……どうして人間というのは定められた運命から外れたがるんだい?」

 

「じゃあ眼鏡とかやめといた方がいっか」

 

酔っちゃって余計気持ち悪くなったらまずいものね。

 

「さっきから……ああ、どんな能天気な奴かと思えば……恐怖心からハイになってるだけか」

 

「……いつもこんなもんだよ」

 

そう、ドライバーを持つ手が震えて着けられないのも武者震いだし、一目見たときから叫びだしそうになったのも勇ましい闘争心からだ。

 

「先輩!歩さん!下がってください……あの人は危険です」

 

「……ッ…」

 

息が苦しい……ドーパミンかなんかのせいだ……戦え…着けろドライバーを

 

「はぁ…はぁ」

 

「歩君……」

 

立香が心配そうにこちらを見る。大丈夫、俺は…大丈夫…だって…だって?

 

「レフ……ああ…レフ私どうすれば良かったのかわからなかった!」

 

「所長……いけませんその人は!」

 

歩に2人の会話は聞こえなくなっていた。レフと呼ばれた男を一目見た瞬間感じた恐怖、悍ましさ。それが彼をその場に縛り付ける。

 

だって俺はなんだ?全部このドライバーが無かったら出来なかった。これが着けられない俺は…じゃあ仕方ない…

 

動かない理由ばかりを探す。戦わなくて良い言い訳ばかりを創る。怯えた表情ばかりを浮かべる。

 

「予想外のことばかりで頭がどうにかなりそうだった!でも良いの…あなたがいれば…なんとかなる……今までも……今回も助けてくれるんでしょう?」

 

ほら、あの嬉しそうな所長さん見なよ何話してるかわからないけどやっぱりレフさんはいい人なんだよ。わざわざ戦う必要ないじゃないか!

 

「爆弾は君の足元に設置してたのに良く生きていたね」

 

「え…は?………え?何を言ってるのレフ…?」

 

怯えた表情を浮かべる所長さん。やめろ見るな。

 

「君の肉体はとっくに死んでいる」

 

何も聞くな。俺は黙ってマシュの後ろにいればいい。

 

『…ああ…なん…て愚かな……『メデューサ』…そんな…へっぴり腰だと…すぐに死んでしまいますよ…』

 

なんで、今

 

『サーヴァントは基本本当の名前は明かさないらしい。なんでも英霊の死因とかが弱点に直結しちゃうからヤバいんだってさ』

 

……こんなところで蹲ってたら死んじまうよな。

 

「いや、助けて———いや!誰かっ!わた、私!こんな所で死にたくない!」

 

聞くな———聞け。

 

戦う理由を作らないでくれ———理由なんていらない。

 

「だってまだ褒められてない……!誰も、私を認めてくれていないじゃない…!」

 

立つな———立つよ。

 

「歩君…?」

 

怯えて走れないだろ———歩けば良い急げ。

 

「歩さんっ!?」

 

『今のカルデアスは……ブラックホールとほぼ同じ状態だ……所長はもう助からない…!』

 

「どうして…!どうして私ばっかり!誰も私を評価してくれなかった!皆私を嫌ってた!」

 

嫌いだったか?———いや?

 

『デザイアドライバー』

 

「やだやだやだやだ!まだ何もしてない!生まれてから一度も誰にも認めてもらえなかったのにっ!」

 

『SET!』

 

走れ!——わかってる!だって俺は!

 

「お願い…助けて——仮面ライダー」

 

「変身!」

 

仮面ライダーだから!

 

接近するだけで警告音がけたたましく鳴る。それだけあの球体がヤバいってことだな!あと少しで所長さんが吸い込まれてしまう。全力で走るぞ!

 

「無駄なことを既に死——」

 

『HANDGUN』

 

ダダダダダダ!

 

なんか言ってたけど今はいい!

 

思いっきり飛べばなんとか届くか!?

 

「歩さん!駄目です!一緒に消滅してしまいますっ!」

 

俺は力の限り地面を蹴り上げ手を伸ばした。

 

「所長さん!手!」

 

「……!」

 

所長さんの力いっぱい伸ばした手を掴——

 

ゴーン

 

「はっ…?」

 

目の前に広がるのは我が家の玄関。

 

「どうして……」

 

あれは夢だったのか?

 

そう思いそうになるが、手に持ったそれ(デザイアドライバー)が夢ではないと俺に強く告げる。

 

「………届いたのに」

 

所長さんの手の感触がまだ残っている気がした。

 

「歩くん出かけるの?」

 

後ろから声がかけられる。

 

「……2階の冷蔵庫に牛肉しか無かったので、買い物に行こうかなって」

 

「えぇっと…全然一階の冷蔵庫の物使ってもいいんだよ…?」

 

「あはは、牛肉に祟られるので牛肉食べますよ」

 

靴を脱ぎ家に戻る。

 

「祟られ…」

 

「食べますか?誠美さん」

 

「えぇーと…食べないと祟られちゃうの…?」

 

「さあ?俺は友達になったんで牛肉の肩を持ちますよ」

 

「んん~」

 

眠そうにこちらの様子を見る顔。

 

「おはよう、美耶ちゃんは牛肉食べる?」

 

「食べる」

 

一野誠美、一野美耶。俺の父親の奥さんとその娘だ。

 

 




評価、感想、お気に入り登録ありがとうございます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。