マイペース村娘と傲慢王子の魔王討伐旅物語   作:虎武士

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魔王の下っ端っぽいのがうるさいからグーで退治した

「ほえ?」

 

「は──?」

 

「ま、魔物…!?」

 

 なんか突然めっちゃ緑色の肌の小鬼みたいなのが茂みから出て来た。

 

 家にある魔物の事が記された図鑑に載ってた気がする。確か……ゴブリンだっけ?

 

 目の前のゴブリン達は棍棒や弓矢、短剣などを見せびらかして醜悪な笑みを浮かべている。

 

 最も注目の的になっているのは、真ん中にいる図体がでっかいゴブリン。

 

 2mぐらいの身長にでっぷりした腹、太い両手足になんかいやらしそうな目をしてる。

 

「な、何故魔物がこの村に…!?」

 

「でへへへへ……そんなの簡単なのねん。オラ達、この村の外で妙に魔物の数が頻繁に減っているからさぁ。魔王様がそれの調査をして来いって言う勅命を受けて来たのねん」

 

 あっさりバラしてるよ、この巨大ゴブリン。

 

「後ついでに邪魔な人間がいたら、遊んでいいって言われてるから、お前等で遊んでやるのねん」

 

 ユリウス王子がゴブリンの言葉に顔面蒼白にさせる。フェイさんが「殿下!気を確かにお持ち下さい!」と王子を呼び掛けてる。

 

「あれ〜?もしかして、人間の王子様?なんか頭が悪そうだし、凄くビビってる〜?」

 

「…! お、お前の様な魔物に言われたくはない…!」

 

 確信を突かれて王子は怒りに震え、腰に帯刀していた騎士剣を抜刀。

 

「わ、私はこのユニコル王国の王子、ユリウス・レグ・ノークスだ!き、貴様の様な(ケダモノ)に遅れを取る私ではない…!」

 

「殿下……」

 

 ユリウス王子を見てフェイさんは…。

 

「──足下が凄く震え上がっており、全然決まっていませんわ」

 

「喧しい!余計な口を挟むな、バカメイド!」

 

 やれやれと言った様子でめっちゃビビっている王子を指摘する。

 

 剣先もめっちゃ乱れているし、これじゃあまともに攻撃が当たんないよ?

 

「さあ来い、魔王軍の手先め!いざ尋常に勝負…!」

 

 勢いよく駆け出し、ゴブリン達に向かって斬り掛かった。

 

「ギキィ!」

 

「そ〜〜れ!」

 

「おぶぇっ!?」

 

 まあ、ド素人レベルの剣術だったので速攻でやられた。

 

 弓矢が手首に当たってあたふたする間に棍棒で吹っ飛ばされるって、攻撃すら届いてないや。

 

「殿下! ……何というおもし、痛々しいお姿に。おいたわしや……」

 

「言葉に心が籠もっていない……面白いと言おうとしただろ…?」

 

 棒読みして王子を労った後、フェイさんは双剣を構える。

 

「殿下をよくも……! 敵討ちをさせて頂きます」

 

「まだ死んでおらんぞ……」

 

 王子の呟きを無視し、フェイさんはゴブリン達に向かっていく。

 

「お前等、痛めつけるんだな〜」

 

 デカいゴブリンが言うとゴブリン達が動き出し、弓矢やら短剣やらを構えて駆け出した。

 

 ざっと10体のゴブリンはフェイさんを殺そうとする──けど。

 

加速(ハイスピード)

 

 ゴブリン達の視界からフェイさんの姿が消える。ゴブリン達はキョロキョロとあちこちを見るけど姿が見えない、勿論あたしもだけど。

 

「ウギャ!」

 

 ゴブリンの一体が喘ぎ声を上げて倒れる。その背後にはフェイさんがいて、双剣の一振りにはゴブリンの赤黒い鮮血が付着している。

 

「あれがフェイの(スキル)加速(ハイスピード)だ」

 

(スキル)ってなに?」

 

「おいおい、冗談がキツいぞ。(スキル)を知らんとは、相当な田舎育ちだぞ」

 

「あたし……外の人達とはずっと関わりを持たなかったから分かんないや」

 

「は!?本当に何も知らんのか!?魔王の事は知ってるのに!?」

 

 王子がボロボロの身体に鞭を打って、あたしを信じられないとばかりの表情で見て起き上がる……地味に傷つくんだけど。

 

 王子曰く、(スキル)は人それぞれに宿る特殊な技能。誰しもが宿っているわけじゃないけど、天性や後生に発現するらしい。

 

 それは騎士や魔導師と言った冒険者達、貴族や王族の様な血統を重んじている人達にも発現しているんだとか。

 

「へ〜〜……取り敢えず、凄い力だって言うのは分かった」

 

「……本当に理解しているのか?」

 

 あ、この王子バカにしてるな?おバカだけど、あたしだってちゃんと理解力はあるんだからね?

 

「うへへへ……いい女だなァ〜〜」

 

 デカいゴブリンが手下を一掃していくフェイさんを品定めする様に涎を垂らした、しかも眼差しも凄くいやらしそうだし。

 

「メイド、お前はこのアルゴス様の性奴隷にしてやるのねん。その綺麗な身体、可愛がって上げるのねん」

 

 しかも益々鼻の下を伸ばしていて、彼女をナンパしている。

 

「──申し訳ありませんが、謹んでお断りします。私は貴方の様な下賤(げせん)で獣臭い方よりも、自身で見定めた御方と添い遂げるつもりです

 

「!?」

 

 あ、ハッキリ言っちゃった。デカいゴブリンはプルプルと肩を震わせ、血走った(まなこ)をこっちに向けてきた。

 

 まあ此奴に同情の余地なんて皆無だし、あたしもハッキリ言っちゃお。

 

「ぶっちゃけゴブリンさんってさ、顔はブサイクな上図体がデカいだけのポンコツだし、その顔でナンパとかかっこ悪いよねー」

 

「!! うるさいのねえええええええん!!」

 

 デカいゴブリンはジャンプして跳んだと思うと、あたしに向けて棍棒を振り下ろした。

 ゴッツンッと頭に鈍い音が響いた。

 


 

 ※

 

「アンジー様!」

 

 フェイを飛び越えて巨大ゴブリンの棍棒が小娘に振り下ろされ、土煙が舞い上がる。

 

 風圧で私は転がり、起き上がると巨大ゴブリンが醜悪な笑みを浮かべている。

 

 幾ら力が強いとは言え、あのような重い一撃を真面に受ければ…!!

 

 思わず脳内にその末路が安易に想像され、次は私が塵にされるであろう。

 

 己が死にたくない一心で立ち上がり、剣を向けるがやはり身体が震えている。

 

 だが見ず知らずの無垢な村娘が犠牲となって、此処で迎え撃たなければ私はそこまでの男。

 

「でへへへへ……命知らずの馬鹿が此処にもいるのねん。さっきの小娘みたいにミンチにしてやるのねん!」

 

 私の顔を見て巨大ゴブリンは笑みを深くし、棍棒を私に向ける。

 

 向けたのだが…。

 

『へ?』

 

「あ……?」

 

 思わず私とフェイは揃って呆然となった。巨大ゴブリンも私達の反応に訝しみ、その視線を見てみると…。

 

 私達の身の丈もある棍棒が、見事に折り曲がっている。

 

 自身の得物の変わり果てた姿に巨大ゴブリンは「なんじゃこりゃあああ!?」と絶叫、何が起こったのかも分からず混乱している。

 

「いった〜〜」

 

 呑気な声音が土煙の中から聞こえてきた、その視線を追っていくと…。

 

「ぎゃあああああああああ!?ば、化けて出たのねん!!」

 

「失礼だなー。ちゃんと生きてるよ」

 

 あの小娘が頬を膨らませている。

 

「アンジー様、御無事でしたのね…!」

 

「無事避けた様だな」

 

「?違うよ、思いっきり棍棒で殴られたんだもん」

 

『………え!?』

 

 私達は口を揃えて驚愕する。

 

 な、何故あの小娘は無傷なんだ!?出血もしてなければ、激痛が走った様子でもない。

 

 しかもあの棍棒の凹みよう、殴られただけでああもなる筈が…。

 

「ななななななななな、何がどうなっているのねん!?お前、どうして生きて…?!しかも無傷で……お前、何者なのねん…!?」

 

「何者って、唯の村人だけど?」

 

「んなわけあるかあああああああああ!!?」

 

 巨大ゴブリンの言葉には確かに賛同する。奴は小娘を畏怖して錯乱状態のあまり凹んだ棍棒を振り下ろす。

 

 流石に危険だと思って駆け出そうとしたが、それも杞憂に終わった。

 

 棍棒は彼女に直撃した直後に粉砕され、彼女はのほほんとした表情を一貫する。

 

 そんな彼女を巨大ゴブリンは得体の知れないものを見たかのように青褪め、「ひいいいい!!?」と後退(あとずさ)った。

 

「わ、悪かった!も、もう此処には来ないのねん!見逃して!助けて欲しいのねん!」

 

 恐れを成して命乞いまでしてくる始末、しかし小娘は──アンジーの気は済まないだろう。

 

「ダメだよー。村を荒そうとしたんだから、グーパン一発お見舞いして上げる」

 

 幼稚な口調に何か得体の知れない殺気が籠っていて、内心戦々恐々とするしかなかった。

 

「てい」

 

 バゴッ!!!

 

「のぎょばああああああっ!!?」

 

 緩い拳から放たれた破滅的な破壊力の一撃、それを頬に食らった巨大ゴブリンは身体がくの字形になって吹っ飛び、木々を突き破っていく。

 

 その姿は段々と見えなくなり、後には薙ぎ倒された木々だけが残った。

 

 私もフェイもその惨状に絶句、言葉を失った。

 

「ふー……終了〜〜っと」

 

 背筋を伸ばして息を吐くアンジー、のほほんと笑みを浮かべて私達の方へと振り返る。

 

「ちょっと疲れたから休憩にしようか。良かったらお茶でも飲んでく?」

 

 天真爛漫に笑顔を向けてきて、私達は一先ずこの娘の家へと上がる事となった。

 

 

 続く

 

 

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