買い物途中で並べられている『雛人形』が目に入り、由来など教えてくれている友人と眺めていた。
そんな時に通りの先が騒がしくなったかと思うと、“あるモノ”が飛んできて…

Pixivにも投稿してます。

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桃の季節はアグレッシブ

「あかりをつけましょ、ぼんぼりに〜♪」

そんなBGMのもと、赤い絨毯が敷かれた段に丁寧に並べられた華やかな人形たちを見つめる。

 

共に買い物していた友人があれは“ひな人形”なるものだと教えてくれた。

この国には『ひな祭り』という女の子の健やかな成長を願う行事があり、ひな人形は病など災厄からの身代わりとしての役目があるという。

「オレには妹たちがいるから実家では飾っていると思うミキよ。年に一度しっかりと飾りつけることで、引き受けてくれた穢れをはらう…みたいな事だったかな、多分」

ひな祭りは女の子の為だけなのかと問えば男児の行事は5月にあるらしい。そちらは勇ましい姿の人形を飾りつけるらしいので、それはそれで見るのが楽しみだ。

 

「まぁ、こんなに立派なものはお値段もいいし、雛壇を飾る場所もそれなりに必要だからな。最近の住宅事情を考えるとそうそう手を出せないんじゃないかな。代わりに1番上の“お雛様たち”だけというのもありますよ、ほら」

そう彼が指を差した所にあったのは、2体の人形だけというこじんまりとしたサイズだ。確かにこれならば収納も容易だろう。

「トテモ、美シイ思イマス。私モ1ツ、欲シイデス」

思わず呟いた私に対し一瞬キョトンと見つめたものの、ふと何かに思い至ったようて納得したように笑って頷いた。 

「確かにキレイですものね。海外の人が美術品として買うこともあるようですし、良いと思いますよ」

 

そんな事を話しながら表通りまで出ると何やら騒々しい。

「また吸血鬼関連でしょうか…。巻き込まれないよう戻ってカフェでお茶でm…」

「イヤじゃーーー!!!」

友人の言葉を遮るようにおそらくは女性のものであろう叫び声が轟き、それはだんだん遠くからこちらへ近付いてくる。 

その声は何故か人混みの中から、ではなく頭上からだった。目線を上げるとそこに文字通り飛び込んできたのは、紛れもなくお雛様 (・・・)

「イヤじゃ!せっかく自由になれたのじゃ、動けるようになったのじゃ。いつまでも同じ面々と顔を突き合わせて鎮座するなんて…何年一緒にいると思うとる。もうそなたたちの顔には飽きたわ、飽き飽きだわ!」

赤を基調とした十二単衣装はとても品格があり優雅だ。しかし当の女雛本人は興奮しているのか気品溢れるすまし顔を崩し、随分と感情的になっていた。

「あぁ、外の世界にはこんなにも民が溢れておるではないか!眉目秀麗の者もそうでない者も沢山居る…なんて、なんてよりどりみどりなのじゃっ!あの者共よりも妾に相応しい伴侶やら家来たちを探し出して見せるぞい!」

そう高らかに宣言し浮遊しながら眼下の我々をじーっと品定めしていた。だが御気に召す人物がいなかったのか若干下げていた高度を戻した。

「いた!あそこだ!」

「女雛様、お待ち下さいませ!!お戻り下さい!!」

彼女の後方から先程と同じように飛来してくる数体の小さな影と地上から聞こえてきた複数人の足音に、女雛は不快そうな表情を浮かべた。

「来るでないわ!妾は好きなように生きていくのじゃ!!」

そんな事を叫びながら女雛は逃げるように飛び去っていった。

その後を追いかけていく赤い衣装の退治人達の後ろ姿を暫く見送る。

「トテモ…元気ナお雛様デシタネ」

「アグレッシブな御方でしたね。ツクモ化して動けるものだからはっちゃけたのかなー」

とりあえず規制はされていないのでそのまま家へ向かって2人で歩き出す。

 

道すがら民家の横を通りかかると庭木にピンクの花が見事に咲き誇っている。愛らしい花に思わず足が止まる。

「これは“桃”ですね。ひな祭りは別名『桃の節句』とも呼ばれています。桃の花言葉は『チャーミング』『気立ての良さ』など女性を象徴するものなのですよ。」

「チャーミング…ピッタリデス。」

そう花を見つめて頷く私の隣で、ああ!と手をポンッと打つ。

「『天下無敵』という言葉もありました!この街の女性に似合いそうですね。」

 


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