というわけで、2話です。リンちゃんは不憫枠。オリ主は基本ずっと不憫。
エレベーターの扉が開くと、複数の生徒たちがお出迎え……というより詰め寄ってきた。
見知った顔。手早く前世の記憶を思い浮かべる。
(たしか、
「ちょっと待って! 代行! 見つけた、待ってたわよ! 連邦生徒会長を呼んでき、て……」
「首席行政官。お待ちしておりました。おや……?」
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています。え……?」
三者三様に、「先生」を見て言葉を失う。スズミもまた、同様に先生を見つめていた。
(なんかめっちゃ見られてる!? もっとこうなんかリンちゃんが詰められる展開じゃなかったっけ!?)
内心動揺しまくっているものの、彼女らは一様に英雄王を見ている。
このままだんまりを決め込む訳にはいかないと悟った彼は、しぶしぶ声を出した。
もっとも、その言動にはAUOフィルターがかかっており。
「どうした? 貴様らはこの者に何か言いたいことがあったのであろう? 何を呆けている」
――泣けるぜ。
彼は既に諦めの境地にある。今までの事態を思い返して、ぼんやりと気付いていたのだ。
その肉体はギルガメッシュそのものであること。そして、その影響で言動がおかしくなっていることを。
多少言動に制限がつく*1ものの、先の展開が分からず、生身の人間には過酷すぎる場所で先生として生きていくためには仕方ない*2のかもしれない。
そう無理やり自分を納得させ、リンの方を見やる。
自覚なしに、
「あぁ……面倒な人たちに捕まってしまいました。にしても、流石は先生ですね」
そう感心して頷いた後、疲労とストレスが限界に達している行政官は殺気の籠ったまなざしで彼女らを見て。
「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん」
「こんな暇そ……大事な方々がここを訪ねてきた理由は、よく分かっています。今、学園都市に起きている混乱の責任を問うために……でしょう?」
「もっとも、今の目的は少しばかり違うかもしれませんが」
七神リンは、そう言って隣に立つ偉丈夫を見やる。
「……そうよ! そこにいる大人の方はいったい誰なの!」
「先ほど先生と仰られていましたが、そういうことなのですか?」
「いつから赴任なされたのでしょうか、今までそんな情報は……」
ユウカ、ハスミ、チナツがそれぞれに口を開く。
彼はそれに答えようとして、言葉に詰まる。自分の体はギルガメッシュそのものだが、その精神はただの一般人。
彼女らがギルガメッシュを知っていた場合、どう作用するかがわからない。
直観する。ここでどう答えるか、それがこの先の命運を握っていると――!
「先ほどこのざっsいや、お……リンが言っていた通り、キヴォトスで先生をすることになった。
「特別に、ニル先生と呼ぶことを許可しよう。光栄に思えよ?」
やはり、だめだったか……。
心の中でがっくりと膝をつくニル。正直なところ、最初は興奮していたし、彼女らを見た時からはテンションもうなぎ上り。
AUOボディーによって多少コミュニケーションが難しくなっても、なんとかなると思い込んでいた。
その結果がこれである。
リンを含む全員から、白い目で見られている。
ニルは、光栄に思うどころか相手にされないのではないかと本気で心配していた。まぁ、顔や
「とにかく、こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの? どうして何週間も姿を見せないの? 今すぐ会わせて!」
「……。連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」
「結論から言うと『サンクトゥムタワー』の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です」
リンは内心面倒だと思いながらも、隣の
「認証を迂回できる方法を探していましたが……先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでした」
「この先生こそが、フィクサーになってくれる……はず、です。きっと」
「フフハハハハハ!! おおよその事態は把握した。その管理者権限とやらにアクセスすることが出来るのは、先生たる我だけなのだろう?」
「ならば、疾く我をそこへ連れて行くことだな」
そう言ってニルは悠然と腕を組み、心の中で先の展開を思い出す。
(たしか歩かなきゃいけないんだよな、何キロだったっけ……)
「……その前に、先生がなぜこちらに来たのかの説明を」
「良い、
「たしか、超法規的機関……だったか」
連邦捜査部シャーレ。単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを、制限なく加入させることすら可能。
また、学園の自治が重要視されるここキヴォトスにおいて、各学園の自治区で、制約無しに戦闘活動を行うことも可能であるという権能。
(まぁ異常だよなぁ……)
「はい、概ねその認識で構いません。シャーレの部室はここから約30㎞離れた外郭地区にあります。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に『とある物』を持ち込んでいます」
「先生を、そこにお連れしなければなりません。……モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど……」
リンが、モモカと呼ばれる生徒へと通信をつなぐ。しかし、内容が芳しくないのか、一段と険しい顔つきになっていく。
「まあでも、もうとっくにめちゃくちゃな場所なんだから、別に大した事な……あっ、先輩、お昼ごはんのデリバリーが来たから、また連絡するね!」
能天気な声が聞こえた後、通信は唐突に切断された。
「……」
「ククッ、フハハハハハッ! ずいぶんと良い部下を持っているようだな、リンよ」
(なんでさ!)
AUOに慰めなどない。あるのは嘲笑のみ……なはずはないのだが。ニルの思惑とは正反対に、愉快そうに笑う英雄王。
この先生、人の心とかないんか? そう思いながらも、リンはこの後の展開を脳内でシミュレーションする。
ヘリで行くより時間はかかるだろうが、それでも通行不能になった訳ではあるまい。
「…………大丈夫です。少々問題が発生しましたが、大したことではありません」
「そうだな。ヘリコプターが不可能なのであれば、別のものに乗り込めば良いだけのことよ」
「ええ。ちょうどここに学園を代表する……はい?」
話を聞いていなかったのか? とばかりにニルを睨みつけるリン。
しかしニルは、その視線をさらりと受け流してみせた。
「ヘリポートに案内せよ、リン……それと、向こうで何かあっても面倒だ。貴様らもついてくるが良い」
もはやツッコミをする気力さえ失われた面々は、それでもニルのカリスマ*3に当てられ、渋々といった表情でついてくる。
そして、一行はリンに案内され、ヘリポートに到着した。
「ここがヘリポートになります。ですが、今ヘリを飛ばすのは……」
「ふん。着陸する場所など、
そう言って、ニルガメッシュが指を鳴らす。
――突如、男の背後の空間に黄金の波紋が広がった。
その中から、これまた黄金に輝く乗り物が現れる。
「な、なにこれ……船、いや飛行機? それとも……」
「これは我が財宝の一つ、
事も無げにそう言ってのけるニルガメッシュ。現在は魂と肉体の意見がある程度一致しており、ブレーキがかかることもない。
「現地で制圧作業を行うかもしれん、リン以外は全員乗るが良い。我が許す」
「ちょ、ちょっと! 先生の勢いに乗せられてここまで来ちゃったけど、私にそんな義理は……!」
「まぁ、嫌だと言うのならば無理強いはせんがな。戦力は多いに越したことはないが、なんとでもなる」
「ただしリン、お前は別ルートで来い。顔が割れている可能性が高いからな」
そう言って、ニルは全く後ろを振り返らずにヴィマーナに乗り込んだ。他の生徒たちもそれに続き、リンはヘリポートを去っていく。
一人残されたユウカは。
「~~ッ! わかりました! 乗ればいいんでしょう!」
腹立たし気にドスドスと足音を鳴らしながら、ヴィマーナに乗船することとなった。
余談ではあるが、その際ニルに「重量二脚」という誹りを受けたユウカは、そのことを一ヵ月以上根に持っていたという。
天翔ける王の御座、というか王の財宝が便利すぎる件について。
誤字報告等よろしくお願いします。