【悲報】超絶成金プレイヤー、異世界転移する【課金できない】   作:課金は家賃まで

12 / 17
(´;ω;`)<あああああああああ!!!(聞くに堪えない音)


神話再現〈天使降臨〉

 

 

 

 

 

 

 黎明華。俺がそう名乗った瞬間、眼前の男は絶望した。いいや、この男だけではない。この場にいる全員が自らの不幸を嘆き、各々の信仰する神に慈悲を求めている。

 目の前の男も、顔どころか身体中を青褪めさせ項垂れている。どうやら混乱しているようだ。

 

 

「そんな……では、我々の、失意と絶望に塗れた五十年は、いったい何のための…」

 

「俺に引き継ぐためだよ」

 

「……え?」

 

「少し歩こう。時間ならいくらでもある。気分転換にもなるしな」

 

 

 そう言ってカフェを後にした。

 

 

 

 

 

 

 程なくして歩けるぐらいに回復した男は、俺の横を歩いていた。ここは市街地に造られたかなり大規模な公園だ。シクルサンテクスは二十二世紀のアーコロジーに勝るとも劣らないほど都市緑化を行っている。その執拗さといったら、公園と市街地の区別がつかなくなるほどだ。しかし、人工的に造られた自然とはいえ打ちのめされた人間の精神を癒すだけの効果はあったようだ。

 

 先ほどより幾分マシな顔色をした男に語りかける。

 

 

「お前たちの記憶を読んだ」

 

 

 伏し目がちにこちらを窺がい見ていた男が、弾かれるようにしてこちらを見上げた。さあ、ここからが腕の見せどころだ。

 

 彼は今混乱している。突如目の前に神を名乗る存在が出てきて、神らしい振る舞いをした後、ふつうならあり得ないようなことを言った。これだけでも十分ショックだ。

 

 そんな彼に残されたなけなしの理性は『そんなことできるはずがない』と『もしかしたらやりかねない』で二分されている。

 

 彼をこちら側に付かせるのは容易い。

 

 彼がそれまでの人生で築き上げてきたあらゆる常識を破壊する。そして、混乱している彼の傷を癒し、慰めた後に、俺にとって都合のいい価値基準のもと彼を再構築するだけでいいんだ。

 

 そのためには彼のいかなる反論も許さず、浮かんだ小さな疑念が、生まれてから三秒も経たないうちにぶちのめされるようにしなければならない。それは、このやり取りを隠れて見ている彼の同僚達も同じ事だ。

 

 さあ腕が鳴るぞ。思考盗聴は前の世界でもやっていたんだ。むしろナノマシンを間に挟まない分こっちのほうがやりやすい。最悪魅了でもかければどうとでもなるし気楽にいこう。

 

 

「……まあいいんじゃないか?世界の脅威(WE)への対策を考えること自体は悪くない。対策が効果のあるものなら尚更な。問題は一つを除いてどれも現実的でない点だ」

 

「俺の詳細な強さについて知りたい?ああ……まあ、あれだ。キミたちの信じている六大神なんて比較にならないぐらい強いよ」

 

「あ、信用できない?確かに。俺も逆の立場ならそう思うだろう。なら何か見たいものを言え。天地を割って新しい山脈でも生み出そうか(ザ・クリエイション)?それとも死者を生き返らせてみようか(トゥルー・リザレクション)汲んでも汲ん(インヴァーテッド・)でも尽きない(イントキシケート・)魔法の葡萄酒(ウォーターフォール)?永遠の命をもたらす若返りの霊薬?卑しい金属を黄金に変える賢者の石か?」

 

「どれも違う……―――ああ。天使が見たい?なるほど…」

 

「…俺が召喚する天使とお前が考えている天使はだいぶ違うぞ。それでもいいか?」

 

「あー……そもそもお前の考えている人型の天使って、天使全体から見れば低級なんだよ。天使は神の遣いで、神に近しい存在だ。だから高位の天使であればあるほどむしろ異形に近づいていく。人なんていう下賤な生き物とわざわざ同じ形になるやつなんていないんだ。むしろ人型のやつらは、そうならざるをえないんだよ」

 

「というわけで……『燃え盛る聖膏薬(アレオパギタ・オイントメント)』〈上位天使召喚(サモンエンジェル)・10th〉。おめでとう。この世界で最初に、二番目に神に近い天使を見る事になるんだ。幸運に思えよ」

 

 

 アイテムボックスから取り出した本と、鈍色に輝く軟膏壺を掲げ、スキルを発動する。すると、薄い焼けるような臭い、七色の眩い光とともに三対六枚の漆黒の翼が現れた。というよりこれは翼のみ?だが翼の結合部には瞳を焼かんばかりに白く輝く光点があった。

 

 これはレイドボス化された……至高天の熾天使(セラフ・ジ・エンピリアン)だ!お目当てのものを一発で引けるとはやはり運がいい。

 

 こんなの上位ギルドがパーティを組まないとやってられないぐらいの存在だよ。だがまあ今回は特別サービスだ。どうせ殺されない限りは消えないんだし、いつか召喚する予定ではあったからな。

 

 

「神の近くに長くいたために、身体を構成する唯一の部位が黒く焼け焦げてしまったのさ。中心で輝いている白いのは星だよ。こいつを殺すのは俺でも骨が……いや、今ではそんなに大したことでもないか」

 

「ん?二番目に、とはどういう意味か?俺が一番だからだよ。簡単な話だろ?」

 

「だから……何者かって聞かれても黎明華としか…」

 

 

 人払いをしていたのだろうが意味は無い。最上位天使の降臨だ。カルマ値が善に傾いている、信仰に篤いものが住まう都市においてこれ以上の慶事は無い。そのためにわざわざ貴重なアイテムを使用して、召喚時にド派手な特殊エフェクトがかかるレイドボス化まで行ったのだ。これで注目されなかったら逆に困ってしまう。

 

 そうして天使の降臨を見た者は、同時に俺たちも見る事になる。

 

 滂沱の涙を流しながら跪いている、市民から全幅の信頼を寄せられている特殊部隊のリーダーと、それを立って眺める後光の射す(黎明華)を。

 

 

 

 

 

 




最後の後光は課金エフェクト〈特殊加工・神聖な後光〉と〈祝福のオーラ・Ⅴ〉の合わせ技です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。