【悲報】超絶成金プレイヤー、異世界転移する【課金できない】   作:課金は家賃まで

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(´・ω・`)<ギュッてするといい声で鳴くおもちゃ


死の支配者の鬱積

 

 

 

 

 

 

 豪奢な執務室の中心で丸鏡を前にブツブツと呪詛を吐く骸骨がいた。

 

 この死の支配者、異世界ライフ三日目にして半ば心が折れかかっている。部下にも配布した遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)、そこから得られる情報に、諜報担当のニグレドや恐怖公からの些細な報告までもが、今やモモンガの神経をすり減らす刃となっていたのだ。

 

 そんな彼は今、情報収集のために*1自らが赴くべき都市を探すため鏡と正対していた。

 

 

 

「都市、都市、都市、都市、これも不適、これも不適、これもこれもこれも…」

 

「……モ、モモンガ様。少しお休みになられては…」

 

「―――ハハ。そうだな。少し、疲れた。」

 

 

 

 しかし結果は今ひとつ。あらかじめ報告はあったものの、改めて自らの目で確認するとどうにも現実感がない。亜人どもはLv10とか、15とか、それほどレベルが高くないのに、人間種で構成されたどんな街に居住する市民も、皆Lvが25を超えているなんて。

 

 

 

 都市部における諜報活動において、恐怖公ほど適した存在はいない。彼は……その…

 

 …どんな世界にでもいる虫(ゴキブリ)を自らの支配下に置くことができるのだ。

 

 …そんな彼は、現在ナザリックのメンバーの中で唯一、都市部への潜入を許可された存在でもある。

 

 彼が主に調査をしているのは、スレイン法国のシクルランパティスという都市だ。初めはそこに行こうとした。だが、調査が進めば進むほどその都市の異常性が明らかになっていった。

 

 まず都市が明らかに、ユグドラシルの都市のように綺麗なのだ。これがゲームであればモモンガも理解できる。ゲーム内では当然ゴミや排泄物の描写などしないし、都市に暮らす人々の生活感なども感じられない。なぜなら、それは、ゲームだからだ。この都市にはユグドラシルに近しいようなある種の非人間的な要素がある。

 

 例えば治安。都市の中には少数だが衛兵がいる。だがそれは、あくまで『都市には衛兵がいるものですよね?だから衛兵を巡回させときますねー』というように、違和感の塊のような存在としてあるのだ。肝心の都市は巡回の必要がないほど治安が良い。少なくとも、かつての自分が住んでいた地区では考えられないほどに。きっとこの都市から明日、急に全ての衛兵がいなくなったとしても、彼らは普段通りの日常を続けるだろう。

 

 道行く人々や都市のにぎわいにも現実感がない。人々はたしかにそこにいる。それなのに、彼らの賑わいは完璧に制御されているかのようだ。モモンガの目には、彼らは文字通り信仰のために生きているように見えた。

 

 酒場や娼館はまさにその象徴だ。この二つは都市と蜜月の関係にある施設だと言える。前者は仲間同士の親睦を深め、後者は人間の根源的欲求に関わってくる。そのため前の世界にすら粗末ながらも存在していた。

 

 その二つは無論ここにもある。だが数が少ない。この都市の規模であれば十や二十はあってもよさそうなものだろうに、どちらも三つずつしか無い。その代わりとても規模が大きいが。

 

 社会人人生のほとんどをゲーム(ユグドラシル)と共に過ごしたモモンガにとって、これは不思議なことだった。緑あふれる大地、モンスター、城塞都市とくれば、その壁の中にあるのはユグドラシルでも見慣れたファンタジー……旧ヨーロッパの都市国家群のようなものをイメージするのは仕方のないことだ。だがこれはあまりにも……合理的?ここには人間が住んでいるように感じない。

 

 言葉にできない不安感が、恐怖公にこの都市、ひいてはこの国の歴史についての調査を行わせた。

 

 目頭を揉もうとして、無くなってしまった鼻の辺りを掠めてしまう。なんだか無性にやりきれなくなって、机の横に置いてある紙束に目をやる。そこには恐怖公から提出されたシクルランパティス市の調査レポートがあった。

 

 

 

"""

 

 シクルランパティス市はスレイン法国、エレステーゼ県に位置する都市で、県内では最大の都市である。現在の人口169,576人、内一般市民が…

 

 …法国の内地であるにも関わらず高度に要塞化されている。これは同地が戦時下において軍の主要な活動拠点になるためである…

 

 …

 

 …これほどまでに高度に整備された交通網、都市設計、発展した土着の宗教と宗教施設を有していながらも、同市は国家の中枢部であると言い難い。しかし、都市中央部にある城塞は市井の人々のレベルや保有する技術からは到底想像できないほど高度な防御網が敷かれており、探索は困難…

 

 …

 

"""

 

 

 

 ああダメだ。ダメだダメだダメだ!ほら見たことか!実際にそうなのかは置いておくとしても。相手が戦略上重要な場所であると定めている所にノコノコ顔を出せるわけ無いじゃないか!モモンガは思わず頭を抱えた。横にメイドがいる事すら忘れて机に突っ伏した。

 

 こんなところに行けるわけがない。そう思って別の場所は無いかと鏡とにらめっこしても、出てくる都市は全てスレイン法国のものばかり。旗はどれも黎明華(無尽黄金楽土)。黎明華、黎明華、黎明華!もうウンザリだ!気が狂いそうだ!なんなんだあのクズは!俺たちの行く先々をさんざん食い散らかして、自分だけが一番脂の乗ったイイところを下品に楽しんだかと思えば、興味を無くしたらすぐ捨てる!あの目立ちたがりの小心者が!

 

 アンデッドの種族特性、興奮した精神を抑制する機能が追い付かなくなるほどにモモンガの心は荒んでいた。結局モモンガは、積もりに積もった鬱憤を発散させることもできないまま自室に籠るのだった。

 

 執務室の扉が叩かれる。

 

 

「………………入れ」

 

 

 また糞のような情報が入ってくるのか、と思わず身構えたモモンガの予想は、いい方向に裏切られた。

 

 

「失礼します」

 

 

 訪問者はアルベドでもデミウルゴスでもパンドラズ・アクターでも恐怖公でもない。今日のモモンガ当番であるマドレーヌだった。手には小さな箱を持っている。

 

 

「……それは?」

 

「はい。お香です。先日アルベド様からモモンガ様に、と渡されまして……お悩みのようでしたので、気分転換になればと思い自室に取りに行っておりました。不要でしたか…?」

 

「ああ。アルベドの……ハハハ。いい、いい。お前の全てを許そう。では……私は香の焚き方を知らないのでな。頼めるか?」

 

「かしこまりました!」

 

 

 そう言ってメイドが香を焚くと……モモンガのベッドに撒かれていた香水と同じ香りが部屋を満たした。ふむ。いい香りだな…

 

 

「……マドレーヌ。お前の全てを許すと言ったが、撤回させてくれ」

 

「え?は、はい。お命じいただければ直ちにこの場で自刃を…」

 

「違うちがうちがう!いいか?お前を私の香担当に任命する。明日からお前の選んだ香を焚きに来てくれ」

 

「はい!かしこまりましたモモンガ様!」

 

 

 

*1
それと自らの息抜きのため

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