【悲報】超絶成金プレイヤー、異世界転移する【課金できない】 作:課金は家賃まで
モモンガは己の財をなげうって、広大な平地を有する第七層にLv20程度のアンデッドの大軍を召喚していた。総兵力はおおよそ四十万。正しく脅威的な物量だ。この世界の亜人種のレベル平均が10~15、人間種がLv25であることを考慮すれば、この軍勢は正しく脅威といえるだろう。
それだけではない。自身で小隊規模のアンデッドを産み出す事のできる〈死者の大魔法使い〉の量産も同時に行っている。一日に二十体、パンドラズ・アクターと合わせて一日四十体、初心者救済用お供召喚アイテムも、全て〈死者の大魔法使い〉に割り当てられていた。
それだけではない。〈上位アンデッド創造〉によって産み出される〈
倉庫内で余っていた〈ゴブリン将軍の角笛〉までも編成に組み込んでいる。重要度の高いアンデッド兵を召喚する際には戦場から回収した亜人の死体を用いているため、制限時間や召喚数上限も撤廃されているが、全体的に質では法国に劣る。
法国兵は全員Lv25だ。だが〈死者の大魔法使い〉が召喚できるモンスターのレベルは最高でも20。この差を覆すには―――
「弓兵隊もここまで揃うと壮観だな…」
「はい。モモンガ様の記録通り〈
「……継戦能力の面で言うならより多くの矢を装備している〈長弓兵〉のほうがいい。だが問題は撃った矢の回収だ。デミウルゴスよ、どうするか?」
「〈
「相手が矢120本では足りない量の兵士を運用してきたら?黎明華がいるんだ。法国の全軍を〈
「だとすればそれこそ好機です。〈
「ではその間私とパンドラズ・アクターの護衛は誰がする?」
「近接戦闘の行えるコキュートス、セバス、シャルティアにはヴィクティムを。ペストーニャも控えさせます」
「……この戦争が
「スレイン法国と黎明華、ナザリック地下大墳墓間の相互不干渉条約を締結します。同時にギルドホーム移転方法の研究を行うよう法国と連携します」
「この問題の発端は、奴らの庭の中に我々が出現してしまった事です。『準備さえ整えばすぐにでも出ていく。互いに無用な血は流ししたくないでしょう?』と言い、我々の方からその姿勢を見せれば、黎明華が乗ってくる可能性はあります。奴は自分のものに傷をつけられるのを極端に嫌う人種ですから」
「であればそれこそ、〈ナザリック〉という将来的に敵対する可能性のある勢力を野放しにするだろうか?」
「
「奴は人類の発展ではなく現状維持を目的としている。しかし法国はそうではありません。法国としては人類の支配領域を広げたいため、亜人国家への侵略を行っていますが、それは黎明華の意思ではない。結果、形式上は黙認しているという状態に落ち着いています」
「この世界の人類は永遠の停滞期に入りました。そして、奴は国家運営を遊戯のように捉えています。新たな科学的発明を規制し、生活用魔法の研究ばかりを熱心に行っているのはそのためでしょう。モモンガ様の仰っていた『
「奴にとって国家運営は永遠の長生に飽きないための暇つぶしでしか無く、法国にも優勝杯以上の価値を見出していない。また、遊戯的価値観からも、法国の現状からも。この世界の人類にとって付近の亜人はもはや脅威ではない…」
「…ある程度力を得た国家は付近の、より弱い国家を併合したがります。しかし長い停滞期は人々の感性を、戦争の際に発生するごく少量の人的損失にさえ敏感になるよう変化させた。そして黎明華も、自分の所有物が勝手に傷付くことを避けたがる…」
「
「黎明華が遊戯を続け、人類が亜人への侵略に対する嫌悪感を無くし、法国上層部が侵略的拡大の大義名分を得る。そしてその結果我々も時間を得ることができる。時間は黎明華と我々、両方の味方ですが、我々により多くの実りを与えてくれます。その代償として、我々は千年続く戦争を戦わなければなりませんが……こうすれば全てが丸く収まる方向に着地できます」
「黎明華の治世において過度なユグドラシルアイテムの使用は見られない。しかしだからと言って、和平案の中で我々の保有するWIやユグドラシル金貨を要求されないことなんてないだろう」
「―――世界最強の大魔王討伐の報酬を前払いするなんて興醒めでしょう?」
「素晴らしい」
「素晴らしい。さすがはウルベルトさんの創造したNPCだよ」
「ありがたき幸せです。モモンガ様」
「しかし一点付け加えるとするならば、一連の流れの中で万が一私が死んでしまった場合の展開だ」
「それは…」
「後日他のシモベたちにも言うつもりだがな。もし仮に私が命を落としたとしても、私の後を追って死ぬなどという下らないことは決して、決してするな。デミウルゴス。道半ばで倒れてしまった私を置いて、最後までやり遂げるんだ。お前たちならできる。私はそう確信しているよ。なんて言ったってお前たちは、幼稚園卒の私よりずっと頭が良いんだからな」
「―――御心のままに。モモンガ様。いと尊き慈愛の君よ」
そう言ってデミウルゴスは深く礼をした。彼の声が震えていたのを指摘する者は、この部屋には誰もいなかった。
「俺のできることももうほとんど無いかな…」
デミウルゴスが退出した後、モモンガはぽつりと呟いた。椅子の背に身体を預け天井を見ると、この数日間の光景が浮かんでは消え、浮かんでは消え…
…思い返せば早いもんだ。俺が今まで生きてきた中で一番濃密な数日だったなあ……
ともかくようやく一段落ついたんだ。
コン、コンコンコン、コン。
「…」
「失礼しますモモンガ様。本日のお香をお持ちしました」
「………………入れ」
マドレーヌ。彼女とも数日の付き合いだ。他のメイドたちは道ですれ違う時なども圧倒的な上位者を見るような目で俺を見るが、一般メイドの中では彼女は幾分フレンドリーだ。
そうだな……守護者達の業務が一段落ついたら懇親会などやってみるのもいいかもしれない。前の世界では、俺のような下級市民は糞のようなレーションしか食えなかったから…
…あれ。そういえば俺料理……あ、食べれるんだった。いつぞやのアプデで追加された味覚エンジンの影響でどんな種族のプレイヤーでも食事を摂ること自体は可能になったんだよな。効果はないけど。
「そういえばモモンガ様。何か良いことでもございましたか?」
「む?ハハハ。そう見えるか?まあそうだな。ここ数日働き詰めだったが、ようやく仕事が一段落着いたんだよ」
「おめでとうございます!あ。もしかしてそれって、最近噂になっていた〈黎明華〉のことですか?」
「メイド達の間でも話題になっていたのか……まあ、あまり詳しくは言えないがね」
「アハハ。確かにそうですねー…」
「本人には言えないもんね」
(´・ω・`)<来ちゃった♡